【完結】私、ジャブローのモグラ志望って言いましたよね??? 作:むにゃ枕
グレイファントム隊は正式には第14独立部隊を名乗っている。ホワイトベース隊にあやかって生まれたのがウチの部隊だ。
私には出世のために前線に出たいという目的があり、連邦軍参謀本部にはルナツーや各コロニー駐屯軍への牽制をしたいという目的があった。というわけで私のニーズと参謀本部の目的が合致してグレイファントム隊が組織されたのである。
参謀本部はルナツーや各方面軍から嫌われている。嫌われているというのは控えめな表現であり、実際のところはジャブローのモグラと侮蔑される有様だ。
口さがのない現場の連邦軍人は参謀本部を馬鹿にし、ジオンに初戦で大敗したのは上がジオンを舐め腐っていたからと評している。
私も現場の軍人の意見には同意する。参謀本部がジオンを甘く見ており、連邦軍の初動が遅れたということは明白な事実だ。
しかし、参謀本部の権勢は必要である。私はジャブローのモグラ志望だし、権力が大好きだ。権力の源泉は近くに有ってほしい。
それに、参謀本部という頭脳が無くなるか弱るかすれば、手足がティターンズのように暴れ出してしまうだろう。いずれそうなるとは言え、私は
さて、グレイファントム隊の話に戻ろう。我々の役割は後方での護衛任務であったり、哨戒任務だ。参謀本部高官の娘である私がいるので危険度が高い任務には就かない。
我々は前線部隊というよりも、参謀本部が「働いていますよ」「軍閥化するなよ」「見てるからな」と牽制をするための政治的な道具なのである。
とは言え、幾つかの危険度の低い戦場を潜り抜け、経験を積んだので、それなりの練度を得ることができた。
我が部隊はソロモン攻略戦には参加しなかった。ソロモン攻略戦は危険度が高い。参謀本部はルナツーや他の方面軍にちょっかいを出す駒をうっかり失くしたくはないと考えていたのだろう。
私たちは、ソロモン攻略戦の代わりにコンペイトウと名を変えた要塞の警備をしている。
楽な任務である。陥落したソロモンを攻めに来る敵などいない。つまり戦闘はあり得ないのだ。
「la,la,la,la,la.laaaaaa」
そう言えばソロモン近海に来るんだよな……。ララァ・スン。こっちは危険度の低い任務だと思っていたのに。
現在、グレイファントム隊で哨戒任務に出ているのは私とスカーレット隊だけだ。しかしスカーレット隊はララァの前には役立たずなので、退避させなければならない。
「グレイファントム、味方のサラミスやマゼランを盾にしろ。スカー、リベ機は私と邀撃する。スカーレット隊はグレイファントムの直掩を行え」
ララァ・スンのエルメスがなんぼのもんじゃあ。こちとらジムスナイパーⅡが3機に、強化人間2人、なんちゃってニュータイプが1人だぞ! 3人で勝てるわけ無いだろ! 足止めして味方を呼んで数の暴力を食らわせてやる!
3機ともビーム・ライフルとシールド装備だ。最悪の場合、2人を盾にして、グレイファントムも盾にして私は生き残る。
「……アレがこわい。おそろしい白鳥が、来る」
「悍ましいプレッシャー。まるで悪霊」
2人が萎縮している。いやいや強化人間なのにビビってるんじゃないよ!
「la,la,la,la,laaaaaaa」
「来たかプレッシャー! そこッ!」
当たった。行進間射撃と、遠距離の射撃において私の右に出る者はいない。機動しながらビットを落とすくらい出来らぁ!
「プレッシャーが分かりやすいんだよ! スカー、リベ! 本体を叩け!」
なるほど。これならララァをやれるな。そもそも私は大砲屋なので遠距離はめっちゃ得意なんだ。ビット程度ならいける。ビットを落としてエルメスを丸裸にしてやる。
強化人間ペアを援護しビットを落としていると、アラートがコクピット内に響き渡った。
「貴様がララァを傷付けたのか!」
「うわっ出た」
赤いゲルググが至近距離にいた。待って。助けて。近接戦は素人なの!! やめて!!
「ちょいちょいちょい。タンマ!」
ライフルを斬り落とされ、ジムの片腕を持っていかれる。盾をぶん投げて、ビーム・サーベルでナギナタを受け止めるが明らかに不利だ。
「貴様がけしかけた女どもがララァをおかしくしている!」
「イカれたレズは、私に関係ない!」
「貴様の仲間だろう!」
仲間か…? まあ、同じフネに乗ってはいるが……消耗品と言うか、情が移ったらやりにくくなるので扱いとしては家畜だろうか。あるいはペットかもしれない。
強化人間だから寿命も短いし、可哀想だから甘やかしてはいるが仲間と言われると微妙だ。なんなら情が移ってしまっている。
「なんとか言ったらどうだ!?」
「うるせー!! ロリコンマザコンファミコンの三重苦野郎!」
ゲルググ強くないか??? 私、雑魚狩りはしていたけど、エースとやり合ったこと無いわ。
アカン。これじゃ私が死ぬぅ……
「ララァ!!」
「マ?」
ボロボロになり片方の砲身をへし折られたエルメスが、よろよろとこちらに向かってくる。来ないで…!
「たいちょー。失敗しました。コイツ強いです」
「私の中を覗いて来ました……キモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイ」
失敗したか……まあ良い。ワンチャンやれれば良いなぁと思っただけだ。生きていてくれて良かった。
「大佐……頭が…いたいで…す」
双方とも消耗しているのでお開きにしませんか?? 私は死にたくないです。
「戦場に女連れとは。ジオンの赤い彗星は、相当な好き者なんだな。大事な女なら戦場に連れてこない方が良い」
「…………」
ララァと一緒に隠遁生活でもしてれば良いのに。エゥーゴとかネオ・ジオンとかやめてね。そんな願いを込めたというのに、ゲルググが無言でナギナタを向けてきた。やろうっていうのか?? いけ、強化人間! 私を守れ!
「……ぅ」
「ごめんなさい……」
くそ! ララァの毒電波にやられてダウンしてやがる!
「待て。話し合おう。暴力は良くない。話せば分かる」
「問答無用!」
「ぎに゛ゃ゛ーー」
結局、私は助かった。ディープブルー隊とスカーレット隊がこちらの援護に来てくれたので、九死に一生を得たのである。
やはり数の利は大きかった。エルメスのビットをほとんど落としたので、敵戦力を削ぐことには成功したと言って良いだろう。敢えて逃がしたのだ。そう敢えてである。ボコボコにされて心が折れているとかではない。
「こ、腰が抜けた……」
グレイファントムに無事収容された私の機体はボロボロだった。収容作業が終わりコクピットでぐったりとしている私を、ジャス中尉が見下ろしてくる。彼の瞳には複雑な感情が浮かんでいるようだ。
彼とは戦争に関する方向性の違いで揉めているのだ。ここで撃たれて殺されてもおかしくない。普通ならそんなことはしないはずだ。しかし、人間、常に正気とは限らない。
「メラン大尉、俺はあなたを許せない。けれど、あなたは命懸けでグレイファントムを守った。俺はあれこれ言うだけで赤い彗星と戦えなかった。……艦を守っていただきありがとうございました。
俺は、俺の正義を貫くために強くなります。大尉とは相容れませんが俺を鍛えてください」
今、気が付いたんだが、私、漏らしてるわ。殺されかけたんだから仕方がないと言えば仕方がない。
真面目な顔をしているジャス中尉には悪いが、私は失禁している状態をどう誤魔化か考えている。
「私は、そんなに立派じゃないんだ。……腰が抜けて動けないし、おしっこを漏らしたから気持ちが悪い。シャワー室まで連れて行って欲しい。なんなら洗ってくれたって構わない……」
「は???」
「人は死の恐怖や強いストレスに晒されると、生存本能が刺激されて性欲が生じるんだ。中尉は見るからに童貞だろう?」
「……お疲れのようですね。医官を呼んできます」
仏頂面の女性医官により、私はシャワー室に運ばれ身体を乱雑に洗われたあと、検査に掛けられた。命のやりとりをして殺されかけたのだ。精神状態も体調も悪くなる。
というか、医官さん、私がボロクソにしたから心無しか対応が雑。めっちゃ雑。これも因果応報か……