【完結】私、ジャブローのモグラ志望って言いましたよね???   作:むにゃ枕

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20 アムロの乗るアレックスと戦いたいやついる??

 メラン・メラーラを失ったあとでも、ティターンズの動きは迅速だった。ティターンズ艦隊はメラーラを奪われたが、その動きは崩れなかった。

 

 ブライト・ノアにしても、アムロ・レイにしてもメラン・メラーラを完全には信用していなかった。彼らの考えていた、何かが起きた時にメラーラを排除するためのシナリオは、皮肉にも、包囲されたこの場で遺憾無く発揮されたのである。

 

 パプテマス・シロッコとその部下がメラーラを攫った後、包囲に参加している連邦軍は積極的に攻撃する様子を見せなかった。彼らがした攻撃らしい攻撃は、遠巻きにミサイルやビームを撃つことだけだ。

 時折、シロッコの麾下らしき部隊が襲撃してきたが、アムロらがそれを排除すると、ついには砲撃すら止まってしまった。

 

「敵艦隊、包囲を中断したようです。撤退していきます」

「モビルスーツ隊を呼び戻せ。グリプスへ向かう」

 

 グリプスへと向かう最中、ノーマルスーツを着たままのアムロがブリッジに上がってくる。

 

「ブライト、これはどうなっている?? 連邦軍は俺たちと戦いたくないように見える」

 

 ティターンズ艦隊は、連邦艦隊が自ら退いたことにより包囲を脱出した。これはとても奇妙であった。

 

「我々に道を譲ったあの艦隊の乗組員は、メラーラ中佐に感謝しているそうだ。自分たちの代わりにジオンに復讐を果たしてくれたと、謝意を含んだメッセージを送ってきた」

「つまりなんだ。メラーラのおかげだと言うのか?」

 

 アムロ・レイはメラン・メラーラがあまり好きではない。彼女に不気味なものを感じるからだ。世界をあまりにも俯瞰しており、アムロには見えないものを見て絶望している。

 メラーラには、能力と功績がある。ニュータイプとしての素養もアムロに負けずとも劣らないレベルだ。しかし、彼女は未来を見ようとしていない。自らの殻に引きこもり、ありもしない脅威に怯えている。それこそアムロがメラーラを嫌う理由だった。

 

 また、アムロと身体を重ねた強化人間のこともある。アムロにはメラーラに噛み付き、最終的に膝枕をされた過去があった。未だに気まずさを感じているのも事実だ。

 

「ティターンズの今の総司令官はメラーラ中佐だ。パプテマス・シロッコと名乗った敵に利用される可能性はあるが、彼女の救出を急ぐべきだろう」

「……それはそうだ。しかし、まず情報を集めるべきだ。あのパプテマス・シロッコと名乗った男は何者なんだ?」

 

 ブライトとアムロが、今後の指針について話している中で、オペレーターの顔色が変わる。

 

「艦隊がこちらに向かって来ています! 距離4000!」

「シロッコの艦隊か? こちらを追ってきたか。それにしては早すぎる」

「ミノフスキー粒子を散布しているようで、探知不良が生じています。赤外線ではまだ遠い距離です」

「モビルスーツ隊に探らせる。ジム・クゥエルを偵察に送れ」

 

 2機のジム・クゥエルが偵察のために送られる。

 

「こちらは、ティターンズ、グリプス残留艦隊だ。オーガスタから上がった部隊もいる。現在の戦況を教えてほしい」

 

 偵察機が持ち帰った情報は喜ばしいものだった。敵と思われていた部隊は、味方である。それに隻数も充実していた。

 

「ひとまずグリプスもオーガスタも無事だったというわけだな」

 

 ブライトがキャプテンシートで、溜め息をつき、脱力する。ティターンズの全てが失われているという最悪の事態は避けられたのだ。

 

 アルビオンにて、状況を整理するための会談が行われた。出席者は、ブライト・ノアとアムロ・レイ。オーガスタ基地司令であるゴドウィン・ダレル少将。そしてグリプスの留守を預かっていたマシケ大佐だ。

 

「メラーラ中佐が攫われただと!?」

「……頭が痛いな」

  

 ブライトから、話を聞いたダレル少将とマシケ大佐が苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「パプテマス・シロッコ大佐は木星船団出身だ。奴は木星船団の一部を私兵とし隠密裡にライヴラリを創設した。バックにいるのはジーン・コリニー大将だろう。表向きは木星船団の再編だったため、察知が遅れた」

 

 結局は、連邦政府内のいざこざである。ブライトが連邦政府に改革が必要だと思う理由だ。この政府は大きすぎる。

 

「オーガスタ基地に被害は出ましたか?」

「オーガスタは無事だ。襲撃してきた連中は、アミリアが全て撃退したよ」

 

 ダレル少将の影に隠れ、携帯ゲームをしていた少女が、ペコリと頭を下げる。

 

「アミリア・レイ……です。アムロお兄ちゃんの、妹……です」

 

 特徴的なくるくるとした癖っ毛を弄っている。アミリアの無意識でのクセなのだろう。アムロのクローンであるが、性格は本人と似なかったようだ。

 

「敵はやっつけたの……です。私の敵じゃなかった。弱かった……です」

 

 オーガスタ・スクールの最高傑作であるアミリアは、人見知りでコミュニケーションには難がある。しかし、その能力は特級品であった。

 彼女専用のギャプランは、圧倒的な速度と機動力で襲撃者を消し去った。

 

「お兄ちゃんほどじゃないけど、私は強い……です。だから、オーガスタのみんなを守る。私は強いから守れる」

 

 アムロが視線を向けるとアミリアは目を逸らした。アムロの様子をチラチラ伺っている。しかし決して目を合わせようとはしない。

 

「彼女がアムロくんに会いたがっていたので連れてきたんだ。戦場の空気を吸わせたくはなかった。しかし、我々が不甲斐ないばかりに彼女に人殺しをさせてしまった」

 

 ダレル少将が申し訳なさそうな表情をするが、アミリアは気にしていない。

 

「私が強かったからリタもゲーツも他のみんなも守れた。だから、心配しなくて良い……です。私は自分の居場所を守れたから」

 

 マシケ大佐が、薄くなった頭を掻きながら発言する。

 

「グリプスも襲撃されたんだが、ビダン技師の息子くんが活躍してなんとか撃退できた。民間人に助けられるとは思わなかったよ」

 

 パプテマス・シロッコは同時多発的にティターンズの拠点を襲撃した。おそらく、斬首作戦を考えていたのだろう。

 モビルスーツによる強襲で、ティターンズ首脳部を刈り取り耐え難い打撃を与える。効率的であり、シロッコの非凡さが表れている。

 

 ティターンズが再起不能な打撃を避けられのは、ある程度の反撃ができる戦力がいたことと、運が良かったからである。

 

 シロッコの失敗は戦力の推定が甘かったことだ。オーガスタにちょっかいを掛けず、グリプスに集中させればグリプスを陥落させられだろう。宇宙において主導権を握り、日和見主義者の支持を取り付ければ、連邦政府を掌握できた可能性はあった。

 

 そもそも当初のシロッコが思い描いていたプランは、ティターンズの撃滅である。

 まずエゥーゴを暴走させ、ティターンズと衝突させる。その後、アクシズを核弾頭で破壊しジオン共和国軍を巻き込む。そしてティターンズ主力を完全に疲弊させ、自らの艦隊で壊滅させる。

 このプランはほとんど成功した。しかし、シロッコの予想を遥かに上回るティターンズの戦力が残存していた。このことがシロッコの策を破綻させた。

 

 メラン・メラーラを攫ったというのに、ティターンズは動揺しなかった。そのため連邦正規軍は、損害を恐れシロッコの指示を無視し積極的な攻勢に出なかった。

 仕方なくシロッコは貴重な直属の部隊を送った。が、アムロ・レイやティターンズのパイロットによりその部隊はスペース・デブリへと変わった。

 その様子を見た連邦正規軍は、攻勢を完全にやめた。内ゲバで犠牲を出すのがバカバカしいと思ったのだろう。

 

 連邦正規軍は包囲には協力した。けれども、成り上がりのシロッコの言うことを聞き、ほぼ無傷のティターンズとの直接戦闘を行うことには否定的であった。

 出る杭であるティターンズが、弱りきっていれば叩く。そうでなければ戦わないということが彼らの基本方針である。

 

 そもそも、この連邦正規軍のスポンサーである連邦政府保守派は、ティターンズを完全に滅ぼしたいわけではない。確かに30バンチ宣言は気に食わない、勢力を増していることも困る。とはいえ、ティターンズのジオン残党狩りは有用なのだ。

 彼らにとってパプテマス・シロッコをぶつけるのは牽制であった。成功すれば良いが、失敗しても問題はない。取るべき手段は他に幾らでも考えられる。

 

 シロッコが上手くやり、ティターンズとの同士討ちをすれば、有力な軍閥は消える。メラーラとシロッコどちらが生き残ったとしても彼らの軍閥はボロボロだろう。呼びつけて殺せばティターンズにしろライヴラリにしろ崩壊する。そういった計算を保守派はしていた。

 

 保守派の息が掛かった連邦正規軍は、お溢れにあずかろうと包囲には参加した。けれど、自部隊が矢面に立って無益な戦闘で犠牲を出したいわけではない。

 ティターンズはジオン残党狩りをしてくれる友軍なのだ。しかも精鋭である。シロッコの勝ち馬には乗りたいが、彼に心酔しているわけではない。なので、道を開けることに躊躇はなかった。

 

 シロッコは己の才覚に溺れ、凡人を見誤っていた。連邦軍は腐敗しているが、末端組織まで完全に腐りシロッコに魅了されているわけではない。

 

「統合参謀本部も、議会もオーガスタの部隊が抑えている。連邦軍がこれ以上、シロッコに与することはない」

 

 オーガスタ基地は広大であり、兵力も大きい。統合参謀本部や議会を占拠する程度はやろうと思えば簡単に出来る。

 そして、コロニー落としの津波による被害が大きかった西海岸やアジア環太平洋の各連邦軍が、オーガスタ基地に協調した。

 

 その結果、連邦政府や各方面軍はティターンズの支配を受け入れることとなる。マンハンターなどの警察組織もこれに従ったことで、連邦政府は事実上ティターンズに乗っ取られた。

 

「……それは、クーデターなのでは??」

「これは自衛だよ。我々ティターンズのボスであるジョン・コーウェン中将にそんな大それた野心があるわけないだろう」

 

 ジョン・コーウェン中将は、蚊帳の外であった。後世の歴史では、ティターンズによるクーデターの首謀者と考えられているが、完全な誤解である。

 

「ちなみに今後の展望は??」

「ティターンズによる独裁は現実的には厳しい。ゴップ派に抑えてもらいつつ、ジーン・コリニーの影響を排除する。オルト・メラーラ中将はゴップ議長と親しいからな」

「……我々は連邦議会や連邦政府の中枢を乗っ取ったわけですが、市民からの反発は見られないのですか?」

「分からん」

 

 ダレル少将はそう言うと、豪快に笑った。

 

「連邦議会を解散して選挙でもすれば良い。なんなら連邦議会の議員数は、人口に対して少なすぎる。ある程度税を納めている不法移民や、スペースノイドにも参政権を与えれば面白いんじゃないか」

「マシケ大佐……めちゃくちゃなことを言いますね」

「ワシは政治を知らんからな」

 

 シャアの反乱からの一連の動乱は、ティターンズによる地球連邦政府の改革という形で終幕を迎えた。

 この一連の改革は、連邦政府に波乱を齎すこととなる。

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