【完結】私、ジャブローのモグラ志望って言いましたよね???   作:むにゃ枕

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21 彼ぴっぴしゅきしゅきビーム!(サイコ・ウェーブ)

 パプテマス・シロッコは、紛れもなく天才である。彼の設計したモビルスーツは、一級品の性能を持っていた。若くして大佐まで成り上がり、木星船団を率いたという実績もある。彼は自らを天才と自認しており、事実として地球連邦軍の中でもエリート中のエリートであった。

 

 シロッコのティターンズ攻略作戦は間違いなく途中まで上手くいっていた。ティターンズをエゥーゴとぶつけ、ジオン共和国と衝突させた。連戦を続けさせ消耗させたのだ。そして、その上で総司令官であるメラン・メラーラを拉致した。

 また、ティターンズの生産拠点であるオーガスタや、本拠地であるグリプスにも同時に強襲を掛けている。

 

 ティターンズが普通の組織であれば、これで瓦解していたはずだった。トップを拉致られて、主力が引き払っている本拠地と生産拠点に奇襲を仕掛けられているのだ。これでピンピンしていたらおかしい。

 しかし、事実としてティターンズはメラン・メラーラを拉致されてもピンピンしていた。さらにグリプスとオーガスタへの奇襲は失敗に終わった。

 

 百歩譲って、そこまでは良い。しかし、味方のはずの保守派艦隊は、ティターンズを素通りさせ包囲を台無しにした。ティターンズの主力を包囲しており撃滅する絶好の機会であったのにも関わらずである。

 そして、なぜかシロッコと協力していた連邦政府保守派は排除されてしまった。さらにはカウンター・クーデターが生じ、連邦政府はティターンズに乗っ取られている。

 

「どうなっている!?」

 

 木星帰りの男で、天才を自認するシロッコであっても、この目まぐるしく情勢には追いつけなかった。

 

「ちっ、メランが目を覚ますまでにケリが付いていたはずだったというのに!」

 

 シロッコの弱点は直属の部隊が少ないことである。もし、彼に直属の兵力が2倍あれば、ティターンズは消えていただろう。

 

「パプテマス様、ティターンズおよび連邦正規軍から降伏勧告が届いております」

「無視しろ」

「しかし、このままでは……」

「ハイロゥを使う」

 

 保守派の連邦正規軍が、シロッコに見切りをつけ敵艦隊に加わっている。彼我の戦力差は圧倒的であった。

 

「ハイロゥを!? アレは敵味方の区別が出来ません! 味方にも被害が生じます!!」

「ここでティターンズを打倒せねば未来はない」

「起動はどうするのです? 現在の我々では、起動すら出来ません!」

 

 木星圏は過酷であり、ニュータイプと言われる超能力じみた力に目覚めることがままある。そんな中でニュータイプ研究者により考案されたのが、このプロト・ハイロゥだ。

 この兵器は使用者の意思を拡張し、サイコウェーブにより射程内の全ての人間に無理矢理、感応現象を起こすことを目的とした兵器だ。

 

 例えば、使用者が自殺しろという意思を伝えれば、範囲内の人間は何らかの方法で自殺を実行する。全裸で踊り狂えと命じれば、範囲内の人間は老若男女問わずに全裸になり踊り狂うだろう。

 しかし、威力の代わりに代償も大きい。起動には、ニュータイプ能力を備えた人間が必要であり、絶大な負荷が掛かる。

 

 シロッコは己のクローンを大量生産し、ブースターとすることで、この絶大な負荷の軽減を考えていた。

 しかし、現状において生産され加工されたクローンの数は目標の五分の一にも満たない。起動しようものなら起動者には死が訪れるだろう。

 

「起動は私がやる。管制も射出もだ」

「無茶です! ブースターはまだ不完全なのですよ! 自殺するようなものです!」

「この私がその程度で死ぬわけがない! それにメランが目覚める頃だろう。彼女と分かり合えれば、ハイロゥなど使わなくても良いかもしれん」

 

 パプテマス・シロッコほどのニュータイプが、プロト・ハイロゥを使用すれば、最低でも敵艦隊は間違いなく射程に入るだろう。

 

「パプテマス様、ハイロゥの準備が整いました」

「ご苦労。残念だがメランは頑なだった。ジュピトリス隊で前線を支える。使いたくはないがアレらも出せ。私もオーヴェロンで出る」

 

 敵の一部が防空を破りかけている。ハイロゥの起動を妨害されてはたまらない。装置を守るためにシロッコ自らが、オーヴェロンで前線へ出ることとなった。

 シロッコは天才であったが、現在の彼には時間も味方も足りていない。

 

 

 機体をパクりました。メラーラです。

 

 ドレスを脱ぐ暇もないので、ノーマルスーツを着けていない。とても不安だ。

 

「機体名はタイタニア。おや、ファンネルまであるのか」

 

 アクシズが吹き飛んでいるので、キュベレイは影も形もない。にも関わらずこの機体にはファンネルが搭載されている。

 オーガスタでは、ジオン公国軍から奪ったサイコミュやビットの技術を保持している。連邦軍の研究所などからこの技術が流出した形跡はない。

 シロッコはどうやってこんな技術を手に入れたのだろうか。 独自開発だとしたらとんでもない。でも、天才ならあり得そうだ。

 

「ファンネル使えるかなぁ」

 

 私が白いドレスを着させられており、機体色も白っぽく女性的なため、二重の意味で花嫁のように見えなくもない。

 空いている機体がこれだけだったので、仕方なく乗っている。なんか嫌だな。

 

「で、アムロは何をやっているんだ……」

 

 アレックスに乗っているアムロは、どうも手こずっている様子。ボリノーク・サマーンとかジ・Oがアムロとやり合っているようだ。

 シロッコが複数いるのか? いやこれクローンだな。しかも女性タイプだ。TS同一CPとか、拗らせ過ぎだろシロッコ。

 

「ねぇ! 早くパプテマス様を助けに行かなきゃ!」

「騙して悪いが仕事なんでな……」

 

 なんでよーー!! と叫ぶサラ。兵装を無力化したが殺してはいない。モビルスーツで追ってきたのが悪い。

 

「メラン、そのドレスもモビルスーツも君によく似合っている。君の為にあつらえたんだ。改めて私と共に歩む気になったかな?」

「なると思うのか?」

「ああ。君の大事な部下や連邦軍の兵士諸君が、君の返答により容易く死ぬ状況だ。これなら君の意思も変わるんじゃないかと思ってね」

 

 嫌に強気だ。シロッコの自信の源はあれか。あの円形の物体からは嫌な気配がする。なかなか巨大だ。

 中央にはモビルスーツが収まるスペースがあるから、シロッコがアレに入るつもりなのだろう。というか運べるサイズのエンジェル・ハイロゥじゃ…??

 

「私が止めれば良いだけだ」

「はは。やってみせろよメラーラ!!」

 

 シロッコのオーヴェロンが高速で迫る。

 

「行けファンネルたち!」

「ふ、甘いな」

 

 制御が甘かったのか2機のファンネルは、オーヴェロンに掠り傷すら与えることは出来なかった。それどころかシロッコの驚くべき射撃能力により、いとも容易く落とされていく。

 

「口ほどにもない。それだけか? もっと私を楽しませろ!」

「ぐぅ……だから、近接戦はやめろって言っているだろうが!」

 

 オーヴェロンのサーベルを、隠し腕も駆使して防ぐ。あのハイロゥのせいか、私のニュータイプ能力の制御が甘くなっている。

 

「メラン、お前の内側を私は見たい。そうでなければ、死ぬに死ねん」

「自分の心の内を晒して、他人の心を盗み見したがる変態め……」

 

 心というものは最もプライベートな場所だ。内心の自由を踏み躙り、他人の心を漁り、自分の心を、秘めるべき場所を露出するなんてとんでもない。

 全裸露出で世界が平和になるなら、人間は服なんて着ていない。

 

「ふふっ、乱れているな。私には分かる。さあ、見せてみろ! お前の心を! メラン・メラーラ!」

「やめろッ! 見るな! 私を見るな!」

 

 ニュータイプの音がして、シロッコと精神が繋がる。パプテマス・シロッコの過去が、人生が、悲哀が伝わってくる。自分を承認して欲しい気持ちも、愛されたかったことも。全部が伝わってくる。

 

――伝わってしまう。

 

 私のせいで犠牲が増えたことも。

 正義を貫けずに折れたことも。

 私がもっと上手くやれば、人が死ななくて済んだことも。 

 自分が嫌いで心を誰にも曝け出したくなかったこと。

 この世界が嫌いで、それでも諦めきれなかったことも。

 

「素晴らしい。君は、私が予想していたよりも人間だった。メラン・メラーラ! それでこそ、私と歩むに相応しい!」

「やめろ! 私は…!」

 

 感応の霧が晴れる。刻が煌めく空間が漆黒の宇宙へと戻っていく。

 

「シロッコぉぉ!!」

「メラン!!」

 

――サーベルを構えた機体が擦れ違う。

 

 漆黒に染まったコクピットの中で、私は自身の敗北を悟った。

 

「ハイロゥが全てを飲み込む。メラン、私と全てを変えよう」

「嫌だ! 誰がお前なんかに折れるか!」

「ここからどうすると言うんだ?」

 

 タイタニアに火が灯る。

 

「再起動しただと?」

「私はハイロゥにファンネルを差し向けた。私が死んだとて、ハイロゥを破壊すれば我々の勝ちだ!」

 

 全てのファンネルをはじめからシロッコに向かわせたわけではない。これで、ハイロゥを破壊すれば…!

 

「ふふふ。はははははは」

「何がおかしい」

「その程度でハイロゥを破壊できるはずがないだろう? それに、こんなことも出来る」

「ファンネルの制御が…?? 奪われた」

 

 ファンネルが自壊していく。そして、タイタニアを戦闘不能にしたオーヴェロンが、ハイロゥのコアへ向かった。

 

「プロト・ハイロゥ起動。ぐっ、これが…! だが、私は死なん!」

「プロト・ハイロゥ起動確認。発射シークエンスに入りました。発射まで一分!」

 

 ドレスを引き千切り、備え付けられていたノーマルスーツを着る。それからコクピットハッチを開放し周囲を眺める。

 

 アムロはシロッコのクローン部隊に苦戦しているようで、ハイロゥを止められるようには見えない。何をやっているんだテンパめ! 何のためのニュータイプだよ!

 

「メラン! パプテマス様を止めるわよ!」

「サラ!?」

「パプテマス様がアレに入ったら死んじゃうって! そんなのダメよ! 引きずり出すわ!」

 

 サラをコクピットから引きずり出しモビルスーツを奪う。ボロボロだが、これで突っ込める! 

 

「シロッコ!!! クソ! 間に合えぇ!!」

「メラン、お前はバカな女だよ」

 

 蒼く光り、今にも世界を塗り替えそうなハイロゥのコアに、私は突っ込んだ。

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