【完結】私、ジャブローのモグラ志望って言いましたよね??? 作:むにゃ枕
ララァ・スンは、なんやかんやでアムロ・レイが倒したらしい。シャアは、私のララァが大事ならしまっておけば良いのにという忠告を聞かなかったようだ。
私に直接的に関係のないことを考えてしまうのは、これからアムロ・レイをはじめとしたホワイトベース隊と会うからである。
私みたいな感応も出来ないパチモンニュータイプと、アムロさんを一緒にしてはいけない。会いたくないよ〜
そもそも、私は前世では陰キャ童貞ガノタだった。なので感応バッチコイというよりもATフィールド持ちだ。つまり私はコミュ障ということである。
ニュータイプの感応とか普通に考えてキショい。やだなあ、という思いを持っているため、感応現象が起きたためしがない。
私はガチなニュータイプとかじゃなくて、単なる勘の良い近距離クソザコ芋砂ウーマンだ。バトル漫画の狙撃手枠である。
そもそも、前線にいるのは出世のためのポイント稼ぎであり、将来の夢はジャブローのモグラである。
つまり、めちゃくちゃ後ろめたい。アムロさん、カスみたいな女です。ダシに使ってすいません。というのが正直な思いだ。
「ブライト・ノア中尉であります」
「メラン・メラーラ大尉です。ノア中尉をはじめとしたホワイトベース隊の活躍は聞いています。グレイファントム隊としても見習うところは多いです」
「ご謙遜を。グレイファントム隊の活躍はよく聞いています」
「こちらがガンダムNT-1、アムロ・レイ准尉専用に拵えたガンダムです。オーガスタからグレイファントムに依頼があり、我々が直接運んできました」
「なるほど……これが、アムロ専用のガンダム」
ブライトが感心している。ガンダムNT-1はサイド6を経由することなく、グレイファントムにより直送され、コンペイトウ要塞に運び込まれた。
私たちはコンペイトウでの引き渡しに立ち会っているのだ。これもプロパガンダの一環である。参謀本部が調理するのであろう。
「アムロくんには期待しています。彼ならこの戦争を終わらせられるかもしれません」
というわけで、めっちゃ褒めちぎってこの場をなんとかやり過ごした。後ろめたい。ブライト中尉もめっちゃ若いし、アムロとか子供だもん。
命の安い少年兵は頑張ってねwww 参謀本部直属の俺らは楽な仕事すっからwww みたいなカスのメンタルは持てない。
寒い時代だ。嘆いていても仕方ない。適材適所だ。しゃあねえ切り替えていこう。
「あの、パイロットの方ですか?」
「違います」
げっ、アムロ。
食い気味で否定してしまった。彼は明らかに困惑している。でも、ニュータイプとは関わりたくないんだ。ごめんね。
「メラーラ大尉。待ってください。ララァ・スンはあなたのことを話していた。シャアもそうでした。あなたもニュータイプなんですか!?」
うげっ、バレてる。嫌だなぁ。
「私がニュータイプ? まさか。そんなことはない」
「でも! あなたには特別なものを」
「……そもそもね。私はニュータイプ論が好きじゃないんだ。ジオン・ズム・ダイクンは大した思想家だけど、彼のニュータイプ論はザビ家に利用され、無残な戦争を引き起こした。宇宙で人類が進化するなんてことは世迷言だよ。君がニュータイプだと自惚れているなら大間違いさ。君も私も単なるエースにすぎない。アムロくんには負けるけどね」
ニュータイプって言葉が嫌いなんだよね。人の心にズカズカ立ち入らないでね。ってことをオブラートに包んで言う。他人は他人。自分は自分だ。私は自他の境界線を引くタイプだ。
それに、心の境界をなくしたいほど愛したい相手や好きな相手はいない。愛など粘膜が作り出した幻想に過ぎないと言ったギニアス・サハリンには同意してしまう。
「……メラーラ大尉」
「君には君の、私には私の価値観がある。それで終わりだ。私は傍観者であって卑怯者だ」
「怖いんですか? 他人に自分を知ってもらうことを恐れているんですか? 自分の殻に閉じ籠もって…!」
「君に何が分かる!?」
ニューロンネットワークが稲妻のような幻覚を生み出す。ニュータイプの感応現象が私とアムロの間に生じているのである。
「……アムロくん。これやめない?? 別に私は君に対して特にポジティブな感情もないし、かと言ってネガティブな感情もないんだ」
「あなたがニュータイプなら、分かるはずなんです! ララァの苦しみも悲しみも…!」
分かんねぇよ〜! 他人だし知りたいとも思わんわ! アムロはララァ・スンを殺した後なので荒れているらしい。
「やめよう。ね。マジで。ニュータイプ能力なんてこっちが効率的に使うだけのチカラなんだから。死んだ女に引き込まれるべきじゃないって」
「そんなことを言って大人ぶって…! あんたたちみたいな大人がこの戦争を始めたのに!! 僕だってララァを殺したくなかった!! 他の出会いが僕らに有れば!!」
ニュータイプ空間の中で、アムロの頭を掴んで抱き締める。ほれ、サービスしてやろう。私の胸は平坦だが。
現実世界で優しくしてあげるから、これ終わりにしよう。ね。
感応が終わる。泣き腫らした目のアムロが、私の手を握っていた。
「よしよし、お姉さんが優しくしてやろう。大変だったなぁ。ほれほれ」
というわけでメンタルがヘラヘラしているアムロを、自室に連れ込んで抱っこして膝枕してあげた。
「そこのコソコソしている強化人間2人」
「はい」
「なんでしょ〜?」
「アムロくんは色々と溜まっているらしい。慰めてやれ。面倒だから孕むな。孕んだらオーガスタに戻すからな」
2人が目を見合わせる。別に性的なことをしろとは言っていない。
「ほれパス」
「は〜い」
「男の子かー。嫌いじゃないけど今はな〜」
「別に性行為をしろとは言ってない。私の膝が限界だから暇そうなお前たちに任せるんだ。戦場で会った女の子を殺してしまってそれが忘れられないんだと。優しくしてやれ」
というわけでアムロを放り出す。頑張ってくれ英雄くん。
ブライト中尉とグレイファントムの艦長であるマシケ少佐が真面目くさった顔で話をしている。私も混ぜてもらおう。
「ご両人、私も混ぜてもらって構わないかい?」
「ええ、当然です」
「もちろん構わない」
やんわりとブライトにアムロが疲れていること、絡まれたことを伝える。ブライトは恐縮していた。ブライトも大変だ。
マシケ少佐とブライト中尉は世間話をしているだけだったようだ。艦長同士のテクニカルな話とかをしていたなら私は素直に引き下がった。
「メラーラ大尉、ニュータイプについてどう考えています?」
「アムロくんに続いてノア中尉も私にそれを聞くのか……ノーコメントだよ」
「そうですか」
「ちなみにだが、どうして私にそんなことを聞いたんだ? 私は自分をニュータイプだと喧伝したことはないんだけれど」
ブライトは少し躊躇してから、口を開いた。
「参謀本部からニュータイプ部隊だという話がされています。色々とニュース映像も出ていますし、グレイファントム隊のニュータイプと言えばメラン・メラーラ大尉だと言われています」
「あのなあ、それはプロパガンダだぞ。新型戦艦に新型モビルスーツという下駄を履かせられて、お膳立てされた上で簡単な任務を幾つかこなしただけだ。誰だって出来る」
マシケ少佐が頭を掻いている。呆れた表情だ。
「メラーラ大尉、君は優秀なんだ。誰でもと言ってしまえば友軍に顔向けが出来ない」
「しかし、グレイファントム隊は教育を受けた人員で構成されています。指揮官が誰であれ、私と同程度の戦果は挙げられたでしょう」
呆れたと言わんばかりのジェスチャーをするマシケ少佐。彼はブライトに視線を飛ばした。
「ブライトくん、メラーラ大尉の発言をどう思う?」
「少し謙遜のしすぎだと思います。グレイファントムは明確な戦果を齎しています。それは紛れもなく隊長である大尉の能力によるものです」
褒められても困惑しか出ない。ジオンのHLVを虐めたり、輸送任務をしたり、撤退仕損なった残党をしばいたりしただけなのに。
もしかして、私が思うよりも連邦軍のレベルは低いのだろうか?? 私また何かやっちゃいました? って慢心して良い感じなの??? いや、騙されんぞ!!
油断した奴から死んでいく。それが宇宙世紀だ。私の盾となる部下のレベルを上げに上げて、死亡リスクを下げなければ。それから前線指揮官を退いてジャブローの参謀本部入りを果たす。
そうすれば権力にどっぷり浸かることができる。贅沢三昧酒池肉林だ。早く戦争が終わってほしい。それから出世してデスクワークがしたい。