【完結】私、ジャブローのモグラ志望って言いましたよね??? 作:むにゃ枕
05 強化人間だけど愛さえあれば関係ないよねっ
一年戦争が終わっても私たちグレイファントム隊は、ジオン残党をチマチマ潰し続けていた。
無限湧きすることで有名なジオン残党だが、こうなってしまった理由には幾つかの背景がある。
まず大きい理由が、連邦軍が地球上で支配を確立していないことだろう。
地球は広いので制圧するのに時間が掛かり、制圧が後回しにされたのだ。
また、不法移民だったり貧民が多く住む地域に軍隊を派遣することを連邦政府が嫌がった結果でもある。ラッサールの唱えた夜警国家であっても、国民に対して軍隊を提供することは当然と考えられている。しかし、連邦政府はそんな必要最低限のことすらしない。控えめに言ってカスである。もう終わりだよこの国。
また、連邦政府は地球上だけでなく宇宙空間でも支配を確立していない。そのため、軌道監視を振り切って地球に降下したり、宇宙に上がったりするジオン残党がチラホラいる。
連邦政府も馬鹿ではないので、地球軌道艦隊を再建しジオン残党の動きを地球軌道で遮断しようとはしている。けれど、リソースが足りないので動きが悪い。
それに一年戦争で、多額の戦費を費やしたため軍縮が生じてしまった。ジオン残党はいるが、連邦軍は軍縮している。はっきり言って連邦政府は愚かである。
無い袖は振れないのでどうしようもないのだ。突然、連邦政府の国庫にお金が湧いたりしないかなぁ……
結局のところ、地球連邦政府の資金源であったコロニーに毒ガスを注入し、コロニー落としにより地球の自転軸を歪ませ、海抜を上げたジオンの作戦勝ちなのだ。
そもそも地球連邦政府という形態が、かなりの無理をして成り立っている。コロニーという植民地を作り、地球から支配するという歪んだ構造でなんとか支えてきたのだ。
罅が入ってボロボロだったシステムをジオンに壊されたので、長い目で見れば連邦政府は衰退し崩壊するだろう。
「結局のところ金だ」
「金? お小遣いくれるの?」
「やらん」
「ケチ、貧乳、まな板」
生意気な強化人間め……リベとスカーはなんやかんやで壊れない。最近は、情緒もマトモになってきたようで公共の福祉に反するようなことはしなくなった。
「メランはリベにお小遣いをあげていた。しかし、ボクにはお小遣いをくれない。ボクはこれを不公平だと考える。ボクにもお小遣いをくれるべきだよ」
「リベは良い子だ。最近はジオン兵をたくさん殺して満足しているようだし、命令にも従う。だがスカー、お前は捕虜虐待をしすぎなんだよ。揉み消すにしても限度がある。多少は許すが半死半生にまで追い込みやがって…!」
スカーは傷だらけの手で、傷だらけの頬を掻いた。バツの悪い表情を浮かべている。
「楽しいから良いじゃん…! リベだって降伏するって言ったヤツを殺しているじゃん」
戦後すぐに降伏しなかった奴の降伏するは嘘だから、それは殺して良いやつなのだ。変に捕虜にする方が厄介である。
しかし捕虜にしたヤツを切り刻んだりするのはNGだ。引き取りにきた友軍がドン引いちゃうし、文句なしの南極条約違反である。
南極条約は建前だが、建前を守らないと戦場にルールがなくなってしまう。私は自分が捕虜になった時に拷問されたくないから、なるべく捕虜への拷問はしない主義なのだ。
あくまでなるべくであって、絶対にしないわけではない。民族浄化していたカスとかは、降伏を認めずに殺すし、そういう奴は捕虜になった時に拷問して良いと思っている。
各地のジオン残党を撃退していたのだが、全然仕事が終わらない。多すぎる。雨後の筍のように湧いてくる……
「マシケ中佐、今度のオーガスタ基地への呼び出しはなんです?」
「ワシにも分からん。上には上の考えが有るのだろう。オルト・メラーラ少将は、娘であるメラン少佐の活躍を嬉しがっているようではある」
「あんなの親じゃありませんよ」
「手厳しいな」
「愛人と浮気しておいて父親面だけはしたがる。仕事の上での能力だけは認めますが、プライベートでは最悪の父親ですよ」
「少将は不器用な方なのだろう」
「この話題は、私が嫌なので終わりにしましょう」
嫌な話はしない。父親は仕事人間、母親は病んで死んだ。良いとは言えない家庭環境だ。家庭環境が足を引っ張らなければ、私はもっと真人間だったはずなのに……
オーガスタ基地にグレイファントムは降り立った。これからドック入りだ。地球を飛び回り地球と宇宙を往還できるペガサス級は、従来艦よりも整備に手間が掛かる上に高コストだ。
金持ち部隊にしか持つことが許されていないフネである。
「どうもマシケ中佐、メラン少佐。ア・バオア・クー以来ですね」
「これはこれはハイマン少佐。少佐が来られたというと、特殊任務ですか?」
「ええ。メラン少佐に今後設立されるファントムスイープ隊を探って頂きたいのです」
厄介事に巻き込まれた気がする……原作知識は、ほぼ消えているが、ファントムスイープ隊の名前はなんとなく引っ掛かるのだ。
イケオジであるハイマン少佐だが、厄介事はごめんだ。
「ファントムスイープ隊ですか? 確か我々グレイファントム隊と同じようにジオン残党を狩ることになる部隊ですよね? 探るとは、どういうことでしょう?」
「エコーズとしては、候補者の中にジオンに通じる者がいると考えています。我々はシェリー・アリスン中尉こそが内通者ではないかと疑っています」
「なるほど。しかし、それはファントムスイープ隊の問題でしょう。私には関係がないです」
「何をおっしゃる。メラン少佐はニュータイプであるとまことしやかに噂されています。アムロ・レイ准尉のように、ヒトの内面を覗き込むことが出来るのでは?」
これは良くない。下手したら研究材料コースだ。私は強化人間を利用する側であって利用される側ではない。
「まさか。プロパガンダでそうなっているだけです。私はオールドタイプですよ」
「では、そういうことにしておきましょう」
顔は笑っているが目が笑っていない。そもそもハイマン少佐が、私に絡むのはなぜだろうか?
彼はオーガスタ研究所などと関係を持っていたはずだ。
「メラン少佐、私を警戒していますね?」
「……警戒していないと言えば嘘になります」
「私は単にニュータイプの可能性を見たいだけです。オーガスタ基地で未来を消費される幼子たちが、無駄ではないということをあなたに証明してほしい。私はメラン・メラーラ少佐がニュータイプであると信じていますよ」
一瞬浮かんだ心を晒したような真剣な表情が霧散し、親しみやすい壮年の男の顔に戻る。ハイマン少佐は、オーガスタ研究所での非道な実験に心を痛めているようだ。
非道な実験に晒される子供たちや消費された子供たちの犠牲に、意味がなかったとは思いたくないのだろう。ニュータイプ能力というものは、犠牲を払ってでも得る価値のある素晴らしいチカラであると信じたいに違いない。
私は全くそんなふうに思わない。ハイマン少佐も子供の命よりも尊いチカラだとは思えないのだろう。だが理不尽をなんとか自分の中で飲み込みたい。そんな風に見えた。
「ハイマン少佐の息子さんや娘さんは……いえ、そうだったんですね」
彼の2人の息子と娘、そして妻は、コロニー落としにより生じた津波で死んでいる。
ニュータイプ能力というのは忌々しい。私は別に誰かの想いを背負いたいなんて思っていないのに伝わってきてしまうのだから。
「ええ。2人の息子も娘も亡くなっています。だからこそ、オーガスタ研究所の子供たちに、2人の面影が重なってしまうのです。あなたがニュータイプなら、彼らに希望を示していただきたい」
あ〜〜〜逃げたい。ニュータイプの責任から逃げたい。私はニュータイプじゃありません。人の想いなんて背負いませんって言えれば良いんだが、そうはいかない。
困った時は報連相だ。目を瞬かせているマシケ中佐に、責任を投げよう。
「ハイマン少佐、私はそういうニュータイプの責任とかそういうものが嫌いなんです。オーガスタ研究所の子供たちには同情しますが、私は軍人なので上官であるマシケ中佐に任せます」
「ええ?? ここで投げてくるとは……」
何を困っているのですマシケ中佐? 私たちには頼れる仲間がいるじゃないですか。こういう時のための強化人間だ!!
「小遣いくれ」
「成功報酬としてなら払う。リベと分けろ」
「前払いを要求する」
生意気なガキめ。強化人間というよりもメスガキだ。コイツらの正確な年齢は知らないがティーンエイジャーなのは間違いない。ロリババア説はおそらく無いだろう。
「まあまあ、スカーちゃん落ち着いて。お金がなくても必要なものは手に入るし食べ物にも困らないじゃない」
「リベ、お前……いつも小遣いでパフェ食ってるくせに、よくもそんなことが言えたものだな!!」
リベちゃんは黒髪のお嬢様タイプで、スカーは傷だらけの茶髪っ娘だ。見た目は良いが中身が腐っている。
「ハイマン少佐が、ニュータイプの可能性を見たいとおっしゃっている。ファントムスイープ隊の候補者であるシェリー・アリスン中尉がジオンの内通者である可能性が高い。2人で自白を引き出してもらう」
「シェリーってやつ他所の部隊の人間ですよね? 拷問してはいけないと思います。友軍にはやっちゃいけないんじゃ?」
「スカーちゃんの言う通りです。殺して良いのはジオン残党とそのシンパだけです。疑わしきは罰せずでは??」
強化人間に正論を言われている。どうするんだよ、この空気……
「問題ありません。エコーズの権限は強力ですから」
ハイマン少佐がそう言い切った。良いのか、それで……いくらエコーズの権限が強いと言ってもこんな横車が通るのだろうか。
このあとめちゃくちゃ尋問した。