【完結】私、ジャブローのモグラ志望って言いましたよね???   作:むにゃ枕

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06 パフェパーティーですわ!

 尋問しにいったシェリー・アリスン中尉はこの世の終わりみたいな顔をしていた。

 エコーズのハイマン少佐とその部下。自分のところのボスであるゴドウィン・ダレル准将とマオ・リャン少佐。他所の部隊のマシケ中佐とメラーラ少佐()、それから強化人間を自称するメスガキ2人と、それを観察しに来たオーガスタ研究所の研究員。

 

 これだけの人数に囲まれれば、プレッシャーも凄かったのだろう。強化人間の2人の感応によりパニックに陥って泣きながら素直に全てを自白した。

 決め手になったのはニュータイプとか強化人間の感応じゃなくて、物理的な人数による圧だと思う。

 

 ハイマン少佐は、なんとなく納得していた。何に納得したのだろうか? 数の利かな? ニュータイプであろうとなかろうと、囲んで棒で叩けば勝てるからなぁ。

 

 お通夜状態のファントムスイープ隊の候補者と一緒にシェリー中尉がゲロった内容をもとに今後についてのブリーフィングを行うこととなった。

 自分たちの所属することになる部隊にジオンのスパイがいたら嫌だもんね。仕方ない。

 

「ガンダム7号機のテストパイロットがスパイだったとは、オーガスタ基地の防諜は機能していないように見える」

「情報畑の人間として、非は認めます。情報部だけでは手が足りないのです」

 

 連邦軍はデカすぎてスカスカだから仕方がない。人員もスカスカだし、質もスカスカだ。各方面軍が青息吐息でジオン残党とやり合っている現状である。

 むしろ、やり合っている方が珍しい。なんとなくジオン残党と休戦ラインを引いたりしてなあなあにしているケースもある。さらに悪いと、物資を融通したりして見返りを貰っていることもある。

 

 連邦正規軍は腐っているが、連邦軍も連邦政府も巨体であるため、その毒が全身には廻らないのだ。

 一部の勤勉な臓器が、連邦軍という腐りはじめている巨体を動かしている現状だ。

 

 我々グレイファントム隊と関係のある統合参謀本部も、オーガスタ基地やオーガスタ研究所も全体から見たら頑張っている方である。

 クソ親父こと、オルト・メラーラ少将はゴップ大将が抜けた統合参謀本部の中で第四局の局長になった。その地位でグレイファントム隊のバックアップをしてくれている。その他にも連邦軍の暗部である強化人間やニュータイプ研究所にも関わっている。人間としては大嫌いだが、組織人としては尊敬できるところもあると思っている。

 

 今回、企画されたファントムスイープ隊も遊撃部隊であり各方面軍とは直接的な関わりがない。

 

 連邦軍の派閥はグッチャグチャである。レビル将軍を失った旧レビル派。

 ゴップ大将とその取り巻きは、ゴップ大将が政界に進出したために弱体化しつつある。統合参謀本部もゴップ派であり、ジャブローのモグラの一員だが、一枚岩ではない。

 

 統合参謀本部第四局は、オーガスタと仲良しで強化人間の開発にも積極的だ。クソ親父は、連邦のエリートの例に漏れずスペースノイドが嫌いだ

 うーん。これは、ティターンズの香りがプンプンする。

 

 私もスペースノイドは、コロニーを落としてきたので好きじゃない。ティターンズルートでも良いとは思う。バスク・オムの首根っこを押さえ、私が権力を掌握すれば良いだけだ。

 

「マシケ中佐、我々は連邦軍の同志です。ジオン残党と違い仲良く出来る相手ですよ」

「それはそうだが、防諜の面で不安が残るのはな……」 

「案ずるより産むが易しと言います。行動するべきです」

 

 水天の涙作戦を阻止するべきなのだ。うかうかしているとデラーズの考えた星の屑作戦と合体してしまう。

 最悪の場合、核攻撃、コロニー落とし、マスドライバー攻撃の3つを阻止する事態が起こる。三方面作戦だ。対処するのが無理ゲーになってしまう。

 

「エドウィン・ダレル准将。ファントムスイープ隊とグレイファントム隊の合同部隊を組織することを提案します」

 

 この発言をした私に、ハイマン少佐がアイコンタクトを送ってきた。この人、さっき数の暴力に納得してたんだ。確かに人が多くなれば子供を消費しているオーガスタの現状を変えられるかもしれないが……

 

 統合参謀本部第四局が、ファントムスイープ隊を飲み込めばかなり有力な部隊が出来上がる。オーガスタ閥を強くすることが出来そうだ。

 

「エコーズとしても賛成します。グレイファントム隊は、歴戦の部隊です。間違いなく戦力の強化に繋がるでしょう」

「ふむエコーズまでも賛成するとは意外だな。オーガスタ基地には准将としての私のツテでペガサス級サラブレッドが用意してある。可能性としては考えていた。我々にはスパイを招いたという弱みもあることだし、参謀本部が協力してくれるようなら喜んで私としては受け入れよう」

 

 おや、すんなり行ってしまった。いきなりスパイ疑惑を掛けて主導権を奪ったのが良かったのだろうか? もしくはクソ親父の派閥パワーかもしれない。

 

「ありがとうございます。部隊名はプロミネンスとするのはどうでしょう? ペガサス級2隻だけでは有りますが、連邦政府を守護する炎になれればと、私は願っています」

「よかろう。プロミネンス。良い名だ」

 

 というわけで、特務部隊プロミネンスが誕生した。

 

 ファントムスイープ隊の名前は剥がされ、サラブレッド隊と呼ばれるようになった。こっちはグレイファントム隊だ。艦名+隊というシンプルな区分は良い。

 

 

 グレイファントムとサラブレッドが空中を巡航している。ミノフスキークラフトで浮いていることに、いつまで経っても慣れない。

 ちなみにグレイファントム内の窓は必要最低限しかない。けれど、浮いている感覚があまり好きではないのだ。

 

 勤務時間ではないので、私は食堂にいた。グレイファントムの食堂のメニューには、パフェが存在する。元々はリベが調理員にねだって作ってもらっていたものが、正式なメニューとなったものである。

 

 私は、それをつつきながら部下であるジャス君の話に付き合っていた。部下のメンタルケアだ。

 

「で、サラブレッド隊の教練のために北米のジオン残党を掃討すると。ジオン残党からしたらたまったものじゃないですね。くだらねえ」

「ジャス中尉、いや、昇進したから大尉か……君らしくないな。どういう風の吹き回しだ?」

 

 真面目だった彼がこんなことを言うのは珍しい。疲れているのだろうか?

 

「本来なら、北米大陸は北アメリカ方面軍の管轄です。我々がジオン残党を掃討する必要は有りません。それに、各方面軍に警告が発せられているはずです。どうして我々が表に立つ必要があるのですか!?」

「軍縮の煽りだよ。正規軍のジムの充足率がどれくらいか知っているか? モビルスーツの訓練にも金が掛かるし、部品の調達にも金が掛かる。うちみたいな特務部隊が動けるのは、汚い金が流れているからなんだ」

 

 汚い金の流入元は主にアナハイムとかアナハイムとかアナハイムとかだ。あとは、クソ親父と私の月面で運用されている株や、各種献金が部隊運用の原資となっている。

 

「…………じゃあ、なんすか。俺たちはアナハイムの金で奴らのために戦ってるんですか??」

「違う」

「どう違うんです!?」

「正確にはアナハイムのためにじゃない。アナハイム・エレクトロニクス社。またそれと結託して利益を得ている連邦政府高官のためだよ。ジオン残党のザクが使っている薬莢は、元を辿れば全部アナハイム社製なのさ」

 

 ジャス君が闇堕ちしそうな顔になってる。戦場にいたら疲れるもんね。仕方ない。

 

「今までの話は全部冗談だよ。そんな顔をするな。ちょっと口付けちゃったけどパフェをあげよう」

 

 ホイップクリームをスプーンで掬い、甘い物が嫌いそうな彼の口元に近づける。

 唇に当てると、迷惑そうな顔をして彼はそれを舐めた。

 

「……少佐は、何のために戦っているんですか?」

「そりゃあもちろん、世界の平和を守るためだよ」

 

 嘘です。権力をもぐもぐするためです。寄生虫志望者としては、寄生先に元気でいてもらわないと困るのだ。そのために、私は働いているに過ぎない。

 安楽椅子からどんどん遠ざかっている気がしないでもないが、それは気のせいということにしておこう。 

 部隊指揮官の方が手駒がある分、安心できるという考え方もある。

 

「おい、邪魔だ。私の膝はベンチじゃないんだぞ」

「アムロ・レイとも寝たんでしょ? 俺ともどうです?」

 

 私の膝の上に割り込んできた。ド直球のセクハラだぞ。そういえば私も過去にセクハラしたことあったな。

 

「ちょっ、俺をどこに連れて行くんですか?」

「医務室に連れて行く。寝れてないだろ。寝ろ。寝るのも仕事だ」

 

 ということで、ドナドナした。その後、特に問題は起こっていない。

 

 

 ジオン残党の根拠地にビームをぶっ放したりミサイルを撃ち込んだりする日々が続く。現地の方面軍の空軍も協力して爆撃してくれるが、最終的にモビルスーツと歩兵が突っ込まなければならない。

 死にたくないので、真面目にやっている。グレイファントム隊に死者は出ていないが、サラブレッド隊はチラホラ死んだり重傷者が出ている。

 

 そんな日々の中で、食事は癒しなのだ。というわけで、私は食堂へと向かった。

 しかし、食堂に入った途端に、私は目を疑った。

 

「うわっ、パフェの山だ……」

 

 グレイファントムの食堂に砂糖と牛乳、それから果物の匂いが漂っている。

 

「これはどういうことなんだ? テルメティア准尉?」

「パフェパーティーですわ! 私とリベちゃんとスカーちゃんでパフェパーティをしようと計画していたのです」

「私、それ聞いていないんだが……」

「反対されそうだったので言ってませんからね。マシケ中佐の了承は得ていますから、問題ありません」

 

 テルメティア准尉は、お嬢様っぽいオーラがある庶民だ。両親は公務員で、お金持ちではない。

 一年戦争からのモビルスーツ隊の一員でもある。彼女は確かにスイーツが好きだと公言しており、スイーツ同好会の会長を自称していた。ちなみにリベとスカーしか他に会員はいない。

 

「そもそも強化人間なんだし、過度な情を持つべきじゃないんだ」

「でも2人ともピンピンしてますわよ。寿命が短いって話してましたけど、本当なんですの?」

 

 知らない……どうなんだろう……?? オーガスタから拾った時に、寿命が短い、投薬も必要、気性が荒いって説明を受けて研究員に持ち帰りに反対された記憶がある。

 でもピンピンしているし、フネの女医は循環機能などが普通の人と違うが、特に問題ないって言ってるからなぁ……

 

「……多分?」

「じゃあどっちにしろ問題ないですわね! いつ戦闘で死ぬかも分からないですから! 寿命が短ろうが何だろうが今を楽しむべきです! MS乗りは刹那的に生きるものです!」

 

 お嬢様っぽいけど脳筋の思考だ。たまにはこういうのも悪くない。

 

「そうだな。これだけの量だ。私もパフェパーティーに参加しても良いかな?」

「良いですけど、参加費は払ってもらいますわ」

 

 この似非お嬢様は宵越しの金は持たない性格であり、必然的に貧乏なのだ。私が居なければ、支払いに困っていたのじゃないだろうか?

 そう尋ねると、彼女はツケで払うと元気よく答えた。ウチの食堂ってツケ払いできるんだ……

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