【完結】私、ジャブローのモグラ志望って言いましたよね???   作:むにゃ枕

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07 ガンダムヌキザントウマシマシ

 ジオン残党のスパイであったシェリー・アリスン中尉が自白した水天の涙作戦。その根本にあるところは、月面から地球にマスドライバー攻撃を行い連邦軍の基地や重要施設に打撃を与えることである。

 

 統合参謀本部第四局が中心となり各方面軍や宇宙軍、軌道艦隊などと連携し対処をしているところだ。

 とは言え、プロミネンスの他に目立った動きをしている部隊はいない。サボタージュを行っているわけではないだろう。単純に部隊を動かす金が無いのだ。

 

 予算を付けて部隊を動かせば良いのだが、軍縮の真っ最中である連邦政府は頑なにそうしなかった。

 完全に後手に回っているわけではない。水天の涙作戦の全容を把握しているため、こちらは有利に立てている。

 

 北アメリカのジオン残党を掃討した後、地上と宇宙の往還を阻止するために、アデン基地を制圧しHLVを破壊した。

 北アメリカからジオン残党を掃討することで、オーガスタ基地への攻撃は未然に防げたはずだ。

 そして、アデン基地のHLVや打ち上げ施設を破壊したため、ジオン残党が宇宙に上がることは出来なくなる。

 

 月方面軍によりマスドライバーが一時撤去されているため、水天の涙作戦を骨抜きに出来た。

 

 そのはずだった。

 

「メラーラ少佐……全世界にジオン残党の演説が行われています」

「なんだと!? すぐに映せ!」

 

 グレイファントムのモニタに映し出されたのは、禿頭の男と脇を固める2人の青年将校だ。言うまでもなくエギーユ・デラーズ、そしてアナベル・ガトー。あと一人はインビジブルナイツのエリク・ブランケだ。

 

「地球連邦軍並びにジオン公国の戦士諸君に告げる。我々はデラーズフリート。ジオン公国の意思を継ぐものである」

 

 馬鹿な早すぎる。まだ時間は……

 正史で星の屑作戦が起きるまで少なく見積もってもあと2年はある。起こるはずがない。しかし、現実には起きている。

 

 デラーズは自らの正当性と、地球連邦政府の体制が欺瞞に満ちていることを滔々と説いた。そして、連邦政府に対し宣戦布告を言い渡した。

 

「ジャス大尉。連中はなぜこのタイミングで仕掛けてきたんだ?」

「プロミネンスが残党潰しを目立つようにしているからですよ。ジオン星人は危機感を抱いたのでしょう。体力が残っているうちに動くのは正しいと思います。あとは、インビジブル・ナイツの連中がデラーズを頼ったと考えられます。

自分たちの作戦が潰されたので、他の残党を頼るというのは自然ですし」

 

 なぜ私は、予定調和のように星の屑作戦が0083に起こると思っていた。終戦から年数が経っていないほど、ジオン残党の練度も装備の質も高い。反面、戦後の軍縮で連邦軍はボロボロだ。

 エギーユ・デラーズにとってはこのタイミングこそ都合が良かったのだろう。

 

「シェリー・アリスンの逮捕も、敵には筒抜けだったかもしれないな。情報部がジオン残党が核を持っているという可能性も仄めかしていた記憶がある。これはかなりマズイんじゃないか?」

 

 ジオン残党の戦力は0083当時よりも、連邦軍の治安戦で削られていない分多い。そして、このタイミングで決行したのなら、核くらいは持っているだろう。無いのは盗まれたガンダムくらいだ。

 連邦軍の状況は明確に現在の方が悪い。戦時に大量動員した兵士を家に返してしまったため軍はスカスカ。兵員だけでなく軍縮のため、装備も充足していない。

 

 この宣戦布告は、ジオン残党にとっては最高のタイミングで、連邦軍にとっては最悪のタイミングだ。

 

「ジャス大尉、君がジオン残党のテロリストだったらどこを狙う?」

「最小の犠牲で最大の戦果を狙える場所ですね。連中は地球連邦の弱体化を目的としているはずです。具体的には、防備の薄い月面都市でしょうか?」

「月面都市を狙う……アナハイムが有るのにか?」

「アナハイム社が天国でもスポンサーを続けてくれるなら狙わないとは思いますが、テロリストに理性を求めるのが間違いかと」

 

 死を覚悟しているならスポンサーであっても吹き飛ばすか。確かに理にかなっている。フォン・ブラウンを吹き飛ばされれば、連邦政府は経済的に破綻するだろう。

 アナハイム社はグラナダ支社とフォン・ブラウン本社に分かれているが、フォン・ブラウン本社が吹き飛ばされたら立ち直れないはずだ。

 

「コロニーを奪いジャブローに落とすという手も考えられるぞ。ジオン公国軍の作戦構想を受け継いでいるならそうするはずだ」

 

 かなり不味いな。現在のデラーズ・フリートの狙いが分からない。観艦式も行われないし、エギーユ・デラーズは何を考えているんだ?

 

「今、何とおっしゃいました??」

「好きにしろだ。好きにしろ、と君のお父上から伝えられている。ニュータイプのカンというものを信じているそうだ」

 

 プロミネンス隊の行動について、准将に尋ねるとそんな答えを返された。だから、私はニュータイプじゃないって何度言ったら分かるんだ……

 

 グレイファントム隊にはジムスナイパーⅡが、サラブレッド隊にはジーラインが積まれている。

 言わば精鋭部隊なわけだ。それを私の一存で動かせると言うのだから驚きだ。

 

「マシケ中佐、どうします?」

「少将から権限を任されたの君だよメラン少佐。ニュータイプのカンで迷える子羊を導いてくれ」

 

 この人、私が嫌な顔をするのが分かっているのにわざとニュータイプという言葉を使ってくる。古狸め。

 

「宇宙を目指します。敵の目的は、連邦政府の弱体化です。コロニー落としの再現にしろ、月面都市への攻撃にしろ、宇宙に上がらなければなんの意味もありません」

「分かった。少将には私から伝えておく。地球を守ってくれ」

 

 デラーズ・フリートがどこで暴れようとも、一対一であれば連邦軍の勝利は揺るがない。

 問題はデラーズ・フリートが分散し各地でテロを行った場合だ。本命が分からない以上、連邦軍はそれぞれに戦力を割かざるを得ない。

 その場合、デラーズ・フリートの本体が、連邦軍を突破できる可能性が有るのだ。

 

 手持ちのコマはペガサス級2隻と艦載モビルスーツ隊だけだ。これでなんとかしろと言われるとしんどい。

 

「マシケ中佐、我々と協働できる部隊は居ますか?」

「第四局は正規軍からは嫌われている。マトモな軍人に協力者はいないよ」

 

 研究所で強化人間を作っているオーガスタ閥は嫌われていて当然だ。むしろ好かれている方がおかしい。だから影響力を持つためにプロミネンスのような実働部隊を必要としたのだろう。

 

「裏を返せば、マトモでなければいるということですか?」

「……いるにはいる。バスク・オムという極端な反ジオン思想を持つ男だ。彼は地球軌道艦隊所属の大佐だから、ある程度の艦隊なら動かせるだろう」

 

 ここで来るか……バスク・オム。しかし、ペガサス級2隻ではどうにもならないのは事実だ。バスクだろうが猫の手だろうが、使えるものは使わなければならない。

 ここで、コロニー落としによりジャブロー消滅とかになってしまうと、お先真っ暗だ。我々の立場が連邦残党とかになってしまうかもしれない。

 

「バスク大佐と組みましょう。清濁併せ呑むしかありません。我々とて清くはありませんが」

「こんな時代だ。清廉潔白で居られた者はよっぽどの善人か、引き篭もりくらいだろう。良かろう。バスク・オムにコンタクトを取ろう」

 

 グレイファントムとサラブレッド。2隻のペガサス級が宇宙へと上がっていく。

 

 無事に成層圏を突き抜け、どんどんと地球から遠ざかっていく。眼下にある青い星は、どんな宝石にも負けずとも劣らない美しさだ。

 この美しさを知っていても、人間は争うのだから、愚かとしか思えない。愚かだから人間なのか、人間だから愚かなのか。少し感傷的になってしまう。

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