弾倉に祈りを込めます 作:覚め
「ふぅー…」
「何を斬るのやら。斬ったフリが貴方の得意なことで?」
「なっ」
驚いたが、さして難しいことでもない。速いし見えなかったが、飛んだら避けることが出来た。しかしあの剣は奇妙な形をしている。吸血鬼を刺す時に用いられた剣とは違う。曲がっている。本当に斬れるのか?緑と白の服も分かりやすい。見えやすいのだ。…分からない。目的も、何もかも。猟銃を構えてうってみる。剣を振るうだけに終わった。斬ったのか、払ったのか。分からないが、まあ良いのではないか。ナイフを構える。猟銃が意味を成し得ないのが分かったからである。
「そのような短い刃物で私を斬れると?」
「妙なことを。用途は斬ることだけにあらず、ですよ」
「…なるほど。確かにみょんなことを聞きました」
「みょん?」
始まった。感情をナイフに載せて待つ。どうやら目の前の少女も同じ腹積りのようだ。構えて動かない。…みょん?みょんって、何ですか?相手の思考を別のことに割かせるための言葉?それでみょん?…もしかして、噛んだ?なるほどそれならば納得。私がみょんと言う言葉そのものに思考を割いていたところに斬撃。距離は離れていたはずなのに、よく届いた。やはりみょんとは思考のノイズと言うわけか。…しかしなぜみょんと?訳がわからないな。意味はないのだろうか。
「っ」
「避けてばかりですね」
「弾幕ごっこ、でしょう。当たらなければ勝ちと聞きましたが」
「…違います。当てれば勝ちです。」
「えっ…そうなんですか」
親切に教えてもらう。とはいえ私の猟銃は防がれる。普通は切れないと咲夜から言われていたのだが、さてそれは何故か。面倒なので、霧雨魔理沙が来るまでここで待機することにした。目の前の少女を避け続けるのは難しいことではない。しかし当てることは難しい。慣れている魔理沙を待つ。至極当然な思考だ。勿論別に当たっても良い。それに、当てられるのなら当てた方が良い。桜を見たい。見れなくしている原因は。その原因に辿り着けない原因は。目の前にいる少女だろう。引き金を引く。
「っ、無駄ですよ」
「ばん」
「っ」
「ばん」
「聞いてますか?」
「ええ」
ある程度撃って頭を冷やす。連想から怒り、冷静を失うのはとても簡単だ。冷静を取り戻すために引き金を引くのは当然、避け続けることには必須だろう。…もっともらしいことを唱えて自分の行動を正当化させるのは、あのシスター達と何が変わらないのか。そんな考えがふと頭を過ぎる。引き金を引く。全て少女に防がれたが、雑念は振り払えた。後はただ待つだけ。魔理沙は弾幕ごっこに関しては慣れっこだろうから、このような場面も楽々だろう。…どこに消えたのかがわからないが。
「待たせた!」
「おや、魔理沙」
「新手…」
「じゃ、爆速で!」
閃光、巨大な光の柱が横向きに建つ。先ほどの少女はその光に巻き込まれたようだ。疲れた。ここで休むことにする。実際この少女が魔理沙を追いかけると言うこともあり得るだろう。一人ここにいて様子を見続けるのも必要と思える。…後、咲夜とか霊夢が来ることを考えればやはりここに人は必要だろう。少女を踏みしめるように腰を下ろす。やはりそのままの意味で疲れた。怒りのままに妖怪を刺していたこともあり、かなり精神的にも疲れている。
「…咲夜。遅かったですね」
「申し訳ありません」
「帰ったら久しぶりに何かしますか。ご飯でもお茶でも。」
「…楽しみにしています」
少しの沈黙の後、咲夜は消えた。その少し後に霊夢が来た。多少の焦りを感じているのか、少し息が荒い。こちらに目を配っても一瞬で頭の外に追いやる程度には周りに目を配る気がないらしい。不思議〜。次からは焚き付けるために魔理沙を動かすのが最適解だろうか。それとも何か実害を出した方が良いのかもしれない。そう思いながら眺めていたところ、爆風、のちにけたたましい音。少しの光が見えたかと思えば、かなりの速さで息を切らしたのだろう霊夢が出てきた。圧倒的だなぁ。
「ったく…」
「神に仕えている気はなさそうですね」
「博麗の巫女よ。神がいてもいなくても変わりはないわ」
「羨ましい…ところで、これで桜は見れるように?」
「さあね。異変じゃなくて気候変動なら私にもわからないし。…下のやつ、呻いてるけど」
「あっ」
「ぅ…」
まるで私が重いかのように扱われるのは少し納得しないが、まあそもそも人体は重いか。紅魔館に帰ると、先に咲夜が茶を用意して戻っていた。時間を止めると言うのは本当に羨ましい。まあ、それ相応の不満はあるだろうけど。かなり前の話だが、夜中に来て眠くないなどと言っていた時とか。寝ながら時でも止めたのだろう、と今なら理解はできるが当時は訳がわからなかった。そんな話を持ち出したところ、咲夜は何も記憶にないと言いたげな顔を示した。残念、私も朧げだから確証はない。
「…マレンさん、今度人里に行きませんか?」
「そうですね。春が訪れたら。」
「…」
「春が訪れなかったらもうひと暴れしますか。」
「やめてください。今回の騒動で辺の妖怪から苦言が…」
「私が刺した妖怪から?随分と口の早いことで」
「お嬢様からも釘を刺されると思いますよ。」
妖怪目線では普通に咲夜がやったと思われていた