弾倉に祈りを込めます 作:覚め
建物の中には様々な死体があった。吸血鬼に入るよう言われ、妖怪?に促されながら入る。うつ伏せの、恐らくシスターの死体をひっくり返す。死体の顔に見覚えがある。別の死体。ある。別の死体。ある。村民の格好をした、よく話してくれていた村民によく似た死体をひっくり返す。ある。ひっくり返す。手に握っていた猟銃を見る。先端だけ折れている猟銃。申し訳なさで胸が一杯になる
「…そこまで死体に拘るの?埋めたら?」
「お嬢様、妹様はどこに?」
「そう言えばいないか…まあ、どうせ逃げ遅れた人間でも追いかけているんでしょ。」
「…!」
まだ村民がいる。猟銃を構えて立ち上がる。同時に、扉の開く音がした。そちらを見ると、紅い色の服を着た、歪な羽の吸血鬼。後光によって神々しくも見えるその吸血鬼は、両手に頭を抱えていた。…これで、外の村民は居なくなった。そう妖怪?が呟くと同時に、私も猟銃を構えて引き金を引く。乾いた音が建物に響く。私が狙った紅い吸血鬼は体を反らせる。…当たった…?紅い吸血鬼がそのまま倒れる。レバーを引いて驚いた顔をしている妖怪?に一回。もう一人の吸血鬼にも━━
「はい、パキッと」
「え」
「招かれないと入れないのは本当。私を招いた男がいるんだもの。」
「それ言っちゃうんですか?」
「私は初耳だけど。」
招いた男?何故。吸血鬼が指で示した先には、一人の男。あり得ないのに、生きていることが証拠になる。神父だった。そこに居たのは神父一人だった。他にも何人かシスターがいた。その神父と親しかった数人だ。嫌な想像が頭をよぎる。あの神父は以前から見られないように行動している節はあった。ただもし、あの神父が招いたのなら。あの数人のシスターは…
「何故…」
「よほど愛人と自分の命が欲しかったのでしょうね。自分達以外を犠牲にって」
「何故…!」
「ま、全員殺した後よ。招かれたお礼はした。あとは好きにどうぞ。」
猟銃を持つ手が震える。息も荒くなる。目の前にいるのは神父。私が今どういう顔をしているのかは知らないけれど、神父やその周りのシスター達の顔を見るに凄惨な顔なのだろう。息を吐く。猟師の村民から聞いた震えを落ち着かせる方法。構えようとして思い直す。私は何をしているんだ。シスターが人を殺せば魔女裁判によって裁かれる。怨むべきは後ろの吸血鬼のはずだ。深呼吸を繰り返す。何度も。猟銃を握り直して振り返ろうとした瞬間、吸血鬼が囁いた。
「そもそも、私をこの村自体に招いたのはその男なのよ」
「はっ…」
「『村の近くに吸血鬼の住処がある。もしかしたら襲われるかもしれない。襲われた場合はどうしようもない。だから先手を打って助けてもらおう』って考えたのよ。小さな頭で」
「…どういう…ことですか…」
「ま、待て!私は━━」
乾いた音が響いた。頬に着く生暖かい感触に吐きそうになる。レバーを引いて、引き金を引く。三回繰り返して、腰の力が抜ける。他のシスターは知らない。逃げるように伝える。心臓が止まらない。レバーを握っていた手の震えが再び始まる。目の前には神父だった死体が一つ。信じていたものが崩れて行く。吸血鬼が笑っている。耳障りな声。吐く息も吸う息も止まらない。神父を殺した事実が胸中を支配し始める。猟銃を顎の下に置いてレバーを引く。引き金に置いた親指を押す手が怯える。猟銃を握り直して十字架を添える。祈りを捧げながら。
「辞めなさい」
「あぅ」
「お前みたいな覚悟のある人間は嫌いじゃないのよ。飼うわ」
「…どうぞ。また飽きて捨てるのはなしよ」
「困ったものですねぇ。」
ガラリと変わった今日が、いつまでも私の心に付いて離れない。気持ちが悪い。そんな中、紅い吸血鬼は私を飼うと言った。猟銃を取り上げた吸血鬼が。訳がわからなかった。私は一体どうなるのか。私はどのように生きて行くのか。頭に響く神父の短い悲鳴と、吸血鬼の笑い声が頭を掻き混ぜる。手元に猟銃はない。
「…?」
「私に奉仕でもしてもらおうかしら。まずは…身体でも拭いてもらおうかな」
「フラン、まずはシスターの身なりから。従者が汚れていては、主人の程度が知れるのよ」
「…チッ」
短いけどキリが良いからね。