弾倉に祈りを込めます   作:覚め

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Q.シスターがどうして猟銃の衝撃に耐えれてるの?
A.耐えれてねえ。でも感情の濁流で痛みが消えてる。


迎え撃ち

真っ赤な建物の中を案内する。私の世界がガラリと変わった日から早くも七回は夜が過ぎたはず。逃したシスター達はどうなっただろうか。どうにもなっていないだろうか。台所や洗濯場、トイレなどを覚えてもらうまで何度も案内をする。目の前にいる吸血鬼…名前をレミリアと言うらしい。レミリアは私を警戒することなく進む。今日の案内が終わり、いつもならさよならと言って解放するのだが、今日は引き止められた。が、無視して行こうとしたところ、後ろから妙なことを語られた。

 

「何故わざわざシスターを逃したか、わかる?」

 

「…」

 

「猟銃、直しておいたから。私の身を守って頂戴ね」

 

「…はい?」

 

瞬間、短く乾いた音が響いた。咄嗟に姿勢を低くする。七日ほど前に何回も聞いた音と酷似した、よく響く音。そうだ。吸血鬼がいるのだから、その場に討伐隊が送られるのはごく自然なことだ。シスター達から話を聞いたのだろうか。ふと気がつく。今日はまだ、紅い髪の美鈴と言う妖怪を見ていない。外からの悲鳴。先ほどレミリアから渡された猟銃を手に取り、建物の窓を割って妖怪を狙う。十字架を添わせ、祈りを捧げながら放つ。乾いた音が、先ほどとは打って変わって耳に響く。

 

「ぁ」

 

討伐隊の銃が私を狙う。遠くから響く乾いた音と共に私の腕に激痛が走る。そう、吸血鬼の住む館から自分たちの周りを狙われた。彼ら討伐隊の認識としてはそのようなもの。激痛を抑えて、私はまた猟銃を構える。外すつもりはない。と、何故か紅い妖怪が顔を歪めて倒れた。腹部に剣が刺さっている。来る。討伐隊が吸血鬼の館に入る。ようやく、吸血鬼を。レミリアを討てる。希望が見えてきた。建物の中を走り、討伐隊と出くわす。

 

「何者だ!」

 

「はぁ…し、シスターです…」

 

「シスター…?教会に吸血鬼を招き、神父を撃ったシスターというのはお前か!!」

 

意味がわからなかった。その後も、私の身に覚えにない罪状が並べられる。意識が朦朧としている爺に契約書を書かせ、遺産を教会に流れるように仕向けた。教会の金を一部私的に利用した。免罪符を許可もなく偽造し、販売した。一部の神父を唆し、妻帯者とした。一人の青年に淫らな手段を用いて堕落させた。…事実ではない。しかし、そのどれも話に聞いたことはあった。脳裏を過ぎる。親戚が死んでから妙に教会を毛嫌いする家族、たまに教会を訪れる方が持っていた謎の紙、女性の村民と奇妙な程に親しい神父。シスターのみを嫌う部屋に閉じこもった子供を持つ親。何故。

 

「もはやお前はシスターではない!!」

 

「違う」

 

「村民を騙し、皆を死なせたお前は!」

 

「違います」

 

「もはや悪魔の一派だ!!」

 

乾いた音が響く。その後、腹部に鈍い感触。十字架を握る力もない。私が常に信じていた十字架が、とっくの昔に腐り果てていた。私だけ?いや、違う。私も人を殺している。私も同じ穴の狢という訳だ。悪魔の一派。そう言われること自体否定できない。他者を誑かすシスターだらけだった教会はもう存在しない。…レバーを引く。腹部に剣が刺さっている。腕に穴が開いている。脚部に鋭い痛みが走る。だと言うのに体は軽かった。両州を構える。乾いた音が、二つ。

 

「ふぅー…!」

 

「良くやったわ、シスター。もう一息よ」

 

何も聞こえない中、その声だけははっきりと聞こえた。神のお告げのように感じられた。レバーを引く。息を吐きながら、引く。こちらに近い人間から頭を撃つ。レバーを引く。撃つ。レバーを引く。撃つ。レバーを引く。撃つ。レバーを…レバーが下がり切らない。と、弾はどうしていただろうかと疑問に陥る。そんな疑問を投げ捨てなければならない状況なのに、捨てられない。今まで撃ってきた数では、どう考えても弾数が足りない。弾は換えていない。

 

「それが貴女の力。シスター、貴女は感情を弾丸に変える力があるの。」

 

「は…?」

 

「分からなくても後から理解すれば良いわ。大事なのは現実を知ること。貴女の素晴らしい門出を祝いましょう!」

 

嬉々と話す吸血鬼は、羽を広げた余波でこちらに迫っていた討伐隊を葬った。感情を弾丸に?何を言っているのか分からない。感情を弾丸にして何になるのか。…何にもならないはず。心の中に満ちる無力感に苛まれながら、じわじわと認識され始めた傷について考える。…助からない。死ぬのか。信じるものが信じられなくなった途端に死ぬ。シスターとしても、人間としても不出来。私はどうやら、そこまでの人間だったようだ。十字架なんてとても握る気にはなれない。

 

「こら、こんなとこで死なない。」

 

「ぇ」

 

「美鈴なら開いた穴ぐらい塞げるのよ。じゃ、よろしく美鈴」

 

「はい。では失礼して…」

 

「っ」

 

剣を抜かれ、傷口に手を置かれる。美鈴が言うには、人間の体には元々数多もの力が存在するとか。その力を治癒に集めることで開いた穴を塞ぐことができるらしい。…なんだかよく分からないが、私はどうやら死ねないようだ。傷口に置かれた手から、温かい感覚を受け取る。心が安らぎ、どこか眠くなるような。眠りそうになるたびに吸血鬼に頬を叩かれる。レミリアはいつまで私を生かしておくのか。最早訳がわからない。気がつけば腹部の痛みは治っていた。…ちゃんとそこにお腹がある。…本当に、訳がわからない。

 

「…良し、終わりましたよ。大事を取って二日は様子を見ましょう」

 

「助かるわ、美鈴」

 

「…お嬢様は!?私が抜けると警備が出来ませんよ!?」

 

「あのね。貴女に負ける相手に対して私が本気を出すと思う?」

 

「確かに…」




クソ教会って無垢なシスターからしたらどう思うんやろね。
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