弾倉に祈りを込めます 作:覚め
「マレンさん」
「どうしました?」
「美鈴がまた寝てるんです」
「殺してしまいなさい」
軽口を叩いてもあははで済ませられる頃まで咲夜が成長した。が、それとともに私の体につきまとう違和感が確信に変わった。老いていない。子供の成長は早い、などと言われるがそれでも私の体が老いていない。何かをした記憶はない。日の下でも動けることから吸血鬼やそれに類するものにはなっていない。しかしそうなると老いていない理由がわからない。何か理由があるわけでも無さそうに思える。特に何かをしているわけでもないから、見当もつかない。
「…そうですね。こう構えて、こう」
「ぃだっ」
「あ、起きた」
「ちょっと。起こすならもっと丁寧にやってくださいよ。マレンさんもかなり関わってくれるようにはなりましたけど、それでもこれはないですよ!」
「寝てる方が悪い」
「えっ」
そういって教会の中に帰る。私がどうこうするものでもないが、咲夜に対する教育だ。美鈴は元々の頑丈さに加えて傷に慣れてるからなのか、痛みに鈍い。だから強い刺激でなければ基本起きない。咲夜にはその強い刺激を与えることができないため、私がわざわざここにきて起こしている。本人が言うには、侵入者が現れたら起きるなどと言っていた。私の村民を食う時もそのような気分だったのだろうか。妖にとっては普通の出来事なら救われない。村民が。尤も、一番救えないのは中途半端な教会なのだが。
「…何よ。私は貴女に関わってないでしょ」
「パチュリー様、この方は?」
「マレンと申します。今は職なしですね」
「へぇ…随分と長生きな…人間なんですか?」
「私の認識では。」
「???」
「用件は?」
「こちらの猟銃、魔法で保護などが出来ますか?」
「…は?」
猟銃。私が長いこと愛用している、と言っても使う時期など来ないが。その猟銃を魔法で保護したり、強化したり。できないだろうか。そう言う相談をしにきた。返ってきた言葉は、魔法で銃を作った方が早い、だった。なるほど確かに。使わなければ点検するだけで終わるはずだ。劣化しても変える。使っている途中で壊れることもないのだろう。しかし私が魔法を覚えたらそれはただの魔女では?…どうするか。一回この魔女を火炙りにしてその結果を…とも行かない。やはり、魔法を覚えるのは辞めておこう。面倒な出来事が増える。…まあ、老いないことを言われたら今更と言う話ではあるが。
「マレンの体に魔法は掛けてないわ。…まあ」
「そうですか。自分の正体なんてどうでも良いことですが、とにかく誰の仕業でもないことが確認できました」
「…本当に良いの?」
「まあ、そうですね。」
「お茶です」
「ありがとう」
「…そうですね。ちょうど喉が渇きましたから」
そう言うと満足そうに咲夜はどこかへ行った。恐らくはレミリアのところだろう。私が教育するようなことはほとんどなくなったから、関わるのもせいぜい食事程度でしかない。あと美鈴に対する仕置きとか。それも彼女の身長が伸びれば必要なくなる。私の解放まで近い。紅茶を口に含む。…やはり、味がしない。暖かい。口の中が元からこのような味になっているような感じがする。が、気のせいだろう。味が薄いことはないだろうから、多分私の感覚が疎いのだろう。紅茶を飲み込んで思考を終わらせる。…どうやらその様子はパチュリーには筒抜けだったようだ。
「その顔はどうにかならないの?せめて私の前くらいでは真顔を保ってくれる?」
「同じ席に座るのをやめれば良いのでは」
「次からは座らせないことにするわ。」
「えと、仲、悪いんですか?」
「悪い」
「いえ、普通に加害者被害者の関係ですから。」
「…教会は直したでしょ」
「壊したものは直す。かつてこの村の子供がよくやっていましたよ。」
そう返すと今度は顔を歪めた。横で小悪魔があたふたしている。オロオロしているとも言える。私のやりたいことは終わったからここは失礼するべきか。紅茶を飲み干し、カップと皿を持って図書館を出る。さて、食器棚はどこだろうか?私の記憶では台所と同じような場所だったはず。この建物もかなり様変わりをしているため、私では把握しきれないと言うのが本音。ふらつき目に映る部屋を全て覗き、大広間を通ってようやく台所へ。棚はあった。が、洗い物だろう、置いておくのが一番。
「…舌の根も乾かぬ内、ですか」
「お、難しい言葉を知っていますね。ご自身に当てはめれないことを除けば優秀でしょう」
「あの、私のこと恨んでます?」
「逆に私の親しい友人を食い殺した妖に恨みがないと?」
「我々も生きるためですから…」
「ならば牧場でも作れば宜しい。」
「人間牧場ですかぁ…いや、勝手に育ってくれるのが良いので」
頭にナイフの刺さった美鈴は軽く笑うように言って前を見据えた。どうやら討伐隊らしい。吸血鬼討伐隊。そういえばここに討伐隊を仕掛けた数人のシスターは今どうなっているだろうか。自らの犯した罪に震えているだろうか。忘れて新しくしスタートしているだろうか。それとも、もう死んでいるだろうか。私としても気になるが、まあそこまで考える必要はない。私は建物の中に入る。咲夜が来てからは初めての討伐隊だろうか。咲夜に見せておいた方が良いかと考えていると、足音。レミリアと咲夜がいた。
「安心なさい。私がやるから」
「…血に慣れさせた方が良いでしょう。散らかさなければ。」
「主人の力を見せる方が先よ」
シスター達は他所の教会でも同じことをやって追放喰らってるよ