弾倉に祈りを込めます 作:覚め
ええっ!?組織の腐敗も分からずにいた小娘が幻想郷に!?
咲夜が私の身長を越した頃、レミリアが引っ越しすると言った。私はここに残ると言ったが、どうやらレミリアにその気はないらしい。この建物毎持っていくそうだ。訳がわからない。村の方に顔を出すだけにしろと言われた。美鈴が着いてくるので家ではできないらしい。何にこだわっているのか。村に行っても、もはや家も崩れかかっているものばかり。もはや村民の顔も思い出せないと言うのに。レミリアの気遣いに対し、私はいらないと答えた。猟銃とナイフ。私にはこの二つの家族しか思い出せないからだ。
「…良いの?」
「ええ。もう思い出せませんから。」
「…そう。じゃ、パチェ」
「三日三晩って言ったはずよ。まだ二日目。集めやがって」
「でも出来てるでしょ?」
「…はぁ。」
「楽しみですねぇ、新天地。」
「東洋…何があるのかしら」
凄まじい揺れ。今気がついたが、フランは一体どこに消えたのだろうか。ある時から一切見ていない気がする。激しい揺れの中、咲夜が転ぶ。当然だ。踵だけが上がる靴ではこの揺れには耐えられない。美鈴が支えるのを横目に、私も猟銃でバランスをとる。パチュリーが地面にしがみつき、小悪魔がその上に覆い被さっている。邪魔だと思う。レミリアはこの中で唯一何の手助けもなく立っている。この揺れ自体を楽しんでいるのではないかと思う程に口角を上げながら。
「ありがと、美鈴」
「いえいえ!」
「…もう終わったの?パチェ」
「あいつ殺したいわね」
「私も同じ気持ちですよ。手伝いましょうか?」
「後ろから撃たれるのは御免よ」
らしい。言われてしまっては仕方がない。私はなくなった村の風景を噛み締めながら窓を見た。そこには延々と続く平原。奥には山。…村がないだけでここまで。それを見た後でレミリアに呼ばれる。引っ越し先の説明がしたいらしい。…ここは幻想郷。何事も受け入れる場所。妖怪と人間、神、妖精。様々な種族が暮らしている。ここでは吸血鬼ハンターなんてものは現れず、討伐隊ももちろんない。らしい。何やら訳がわからないが、まあ生きやすいところに行ったと言う話だ。特に不思議ではない。
「…じゃ、役職は一緒。今までと同じようにしてなさい。何かやるってなったら言うわね」
「まるで何かをするような話ですね」
「マレンにはあまり関係がないことよ。」
「そうですか。」
咲夜に見送られながら部屋に戻る。…そういえば、ここは夜なのか。最近レミリアの起きる時間が逆転しかかっていたのはその為だろうか。私の知る大地が丸いと言うのは、私の認識であれば割と最近の話。話を聞けば、私のいる場所が昼とした時に、大地の反対側は夜か明け方だと聞く。つまりここは…恐らくその反対側なのだろう。東洋に来たということだろうか?私の疑問は尽きないが、尽きたところでどうすることもない。部屋で位置関係を探っていると美鈴が扉を開いてきた。
「あの…大丈夫ですか?」
「…何がですか」
「いえ、あのぉ…村から離れて、ですかね」
「そっちは大丈夫です。」
「そっち?は分かりませんが、まあそれならよかったです。」
特に意味もなく話しかけて来たようだ。私も特に意味のない返事をする。背筋を伸ばし、少し残る眠気を振り払ってナイフを取り出す。咲夜の扱うナイフよりも大きいナイフはホルスターなんてものに入る訳がなく、今思えばこれはナイフではないのかもと思うほどに大きい。もしや包丁?いやそれよりは小さい。私もナイフなんてものは見たことがないからなんとも。咲夜のナイフを見て疑問に思うほどにはナイフに見慣れていない。咲夜のナイフに合わせたホルスターがないだけかもしれないが。
「いやぁ、それで刺されてたら私も危なかったですねぇ」
「死ねば良かったのに。なぜ死んでないのでしょうか」
「いやいや、流石に私が死んだらお嬢様が動きますからね」
「…あの吸血鬼がそんなことで動くと思いますか」
「え、いや流石に動きますよ?…あれ、でもどうだろ…」
疑心暗鬼になったところで、悩みを無視するために門へと向かっていった。普通、一人の時間があると頭を過ぎると思うのだが、妖怪は違うのだろうか。このような妖怪に囲まれて育ったせいか、咲夜の感性も少し歪んだ気がする。まあ、歪まずに育つ方が無理だろうが。そこからはレミリアに集められることなく部屋の中でただジッとするだけの時間が続いた。私は基本、一日の大半を部屋の中で過ごす。誰かに呼びかけられない限りは話もしない。咲夜が来てからはそれも少なくなったが、最近では話さない日が増えている。
「…」
「久しぶりに話でもしようかと思ったんだけど。」
「そうですか。」
「フランもいつのまにか出て来なくなったし…一体全体どうなっているのか。訳がわからないわ。」
「理解の浅い姉ですか」
「何?同じような状況でもあった?」
「ええ。売春をしていたシスターを何度か見ていますから」
「…今更だけど、マレンのいた教会も中々に腐ってるわね」
「元からですよ」
そのシスターの経緯を知れば、まあ納得できないことではない。遊び過ぎたから教会に入れられ、その教会は遊ぶ金すら寄越さない。遊び人にとっては苦痛そのものだろう。金と娯楽を満たせる売春に走ること自体は、もしかしたら教会に来ずともやっていたかも知れない。同じ立場に置かれた時、遊びを諦める人間が何人いるのかと言う話ですれば、私はまだ納得できる部類ではあると思う。神父が侍らせたり無断で免罪符を売ったりは納得できるものではないが。
「…まあ、それはそれとして。色々とやりたいことがあるのよ。先ずは久しぶりにフランを見たいわね」
「それは私ではなく魔女に」
「マレンにも協力してもらうのよ。前準備も、道中も。」
よくよく考えなくてもフランは引き篭もっても苦じゃないと言う時点で割と安定した精神をお持ちでは?