魔法少女達と霊視少年   作:紡縁永遠

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刃翼の儂

 「なんでついてくるの?」

 

 気配からして、人間、それも美樹さんと鹿目さん。まぁ普通を生きる僕は何も言わなかったけど、まさか尾行と言う手段に出るとは思わなかった。

 

 「はぁ…」

 

 声をかけても出てこない……あれ?一人多い、誰だ?考えても仕方ない、だって僕は君達の居場所が分かるから、なら自分から声をかけたほうがいい。

 

 「何か用ですか?」

 「なんで?」

 「視線には敏感なもので、それで何の用ですか?」

 「昨日のことよ」

 

 しつこいな。僕は君達と話したのは今日だし、あまり人の領域に土足で踏み込むのもどうかと思うけど。

 

 「知らないと言ったはずですが、あと、そちらの方は?顔は見たことがあるんですが名前は分からなくて」

 「志筑仁美です、昨日さやかさん達お世話になったみたいで」

 「そうですか、では志筑さん、お引き取りをお願いします。勘違いですので、僕は貴方達とは今日初めて会話しました」

 

 これでいい、人から隠れるために路地にいたのは問題だったな。こういった場所は異形が多くいる。逢魔が刻ならばなおさらだ。

 僕は貴方達とは話さない、案内人として話すなら、儂に任せよう。ソッチのほうがいい、見鬼は下がるけど、異形に対する防衛は儂のほうが向いているから。

 

 「じゃああの化け者、は―――」

 「タイミングが悪いのう……さて、昨日ぶりじゃな、僕に何か言っても意味は無い、昨日うぬ等が逢ったのは儂じゃからな」

 「どういうことでしょうか?」

 「解離性同一性障害、後は知らん、死にたくなければついてこい、」

 

 逢ったのは僕じゃが、まぁいい。なにせ逃げる事を最優先した場合は僕のほうが向いている。じゃが戦闘を異形との戦闘をするのならば儂が出張ろう。

 数十年、それが儂の重いであり、狂気、誰に止められるものでもない、これは自身の問題、自身で解決するしかないのじゃから。

 

 「遅い」

 「ごめんなさい!魔女の口付けの被害があって」

 「なんでふた、三人がいるの!」

 「知らん、僕についてきた奴らじゃ」

 「そう……」

 

 はぁ……今回は被害者か、なら責められんのう。じゃが此奴等が魔法少女になろうとするならば止めねばな。

 

 「先に行く」

 「なるべく早くね、アイツが来る前に」

 「うむ」

 

 頷きとともに、背中に黒と白の一対の翼を生やす。異形の翼、重兵衛つばさの最初の異形。異形を近づけさせない。異形を穿つ翼、儂の役目は異形に対する防衛。ならば異形である魔女を穿つことも容易。それでは行こうか。

 薔薇、穿つならば火が有効か、じゃがこの場にはそれができる存在はいない、となれば切断か、しかし……

 

 「いつ見ても異質な形じゃ、魔女とは到底思えん」

 「貴方、何を知ってるの?」

 「何でもは知らん、知っていることだけじゃ、じゃが異形においては何でも知っている。

 例えば―――

 

 薔薇園の魔女。

 性質は不信。

 なによりも薔薇が大事。

 その力の全ては美しい薔薇のために。

 結界に迷い込んだ人間の生命力を奪い薔薇に分け与えているが、人間に結界内を踏み荒らされることは大嫌い。

 名をGertrud(ゲルトルート)

 由来は古高ドイツ語のger、投げ槍の意とtrud、強さ・力の意、を合わせたもので、強力な投げ槍、という意味を持つ。

 

 ―――と言うふうにの」

 「気持ち悪い……」

 「なんですの?アレは……」

 「異常、隠世に住む存在じゃな、言い得て妙じゃが魔女と言う、そこにいるんじゃな、邪魔になる、虚刀……雛罌粟から沈丁花まで打撃技混成接続」

 

 打撃総数272回……流石にこれだけでは殺せんか……あの二人は護衛に回したからの……ならば、八つ裂きにするのがよいか。

 

 「七花八裂・改」

 

 グリーフシードも手に入ったか、さて、どちらに渡そうかのう。それにしても、こういう時にこそあの交渉に来ると思ったのじゃが、杞憂だったか?

 

 「ふむ、全員無事じゃな」

 「あ、アンタ、何者?!」

 「異形に対する防衛者じゃな。さて、今日のことは忘れろ。学業に勤しむ僕はこの件を覚えてないからのう」

 「二重人格ということでしょうか」

 「それで良い。関わることももうないがな」

 「少しいいかな、」

 「儂の前で姿を現すとはいい度胸じゃな、」

 

 油断も隙もない、まさか、助けた後に姿を現すとは。じゃが儂らが離れてから接触しなかったのは問題と言えよう。

 インキュベータ、地球とは異なる惑星で高度な文明を発達させた知的地球外生命体。早い話が宇宙人と言うわけか。付随する物語、目的は、エントロピーの増大と、そこから来る避けられないはずの宇宙の熱力学的な死を回避する事か。

 複数の個体に1つの精神が宿る集合精神体かならば殺しても意味は無いどころかこちらの手札が知られるだけか、まぁ一つの技で殺し続ければ意味は無い。

 知ったことではないな、その程度の理由で、儂らに関わるとは、儂らも家畜を育てる殺し、その肉を食らう。じゃがな、インキュベータ、孵卵器よ、人間がそれに納得するわけではなかろう。

 

 「鏡花水月」

 「ちょっと!」

 「ひどいよ……」

 「問題はない、此奴らは集団としての個、此奴一匹を殺したとて、意味は無い」

 「そうだね、でも勿体ないからやめてくれないかな」

 「―――なら、勧誘をやめてくれるかな、普通を生きる彼女達を巻き込むな」

 「なんでだい?魔女というのは身勝手に人を襲い続ける、彼女達も襲われた身だ。ならボクと契約して魔法少女になったほうが自衛の術を手に入れられると思うんだけど」

 

 儂とは相性が悪い……けど、僕だけじゃ此奴を止められない、でも、何年異形を見てきたと思っている、交渉なら、言葉なら、僕達の中で一番秀でてる。

 

 「それは、異形に襲われた最終手段だ。普通から逸脱させる必要はない。それに、君達は一つ勘違いをしている。僕だけじゃない、人間はエゴにまみれている、己の保身にたを切り捨てる。君達程度で人間を測れると思わないでほしい」

 「そうか、なら君ではなく、他の子に聞こう。僕と契約して魔法少女になってよ」

 

 僕だけじゃ駄目か…でも、やっぱり勘違いしている。僕だけじゃない、君を嫌う存在はもう一人いるんだよ、暁美さん、お願いします。

 乾いた音が響いて、インキュベータに無数の穴がく、暁美さんが持っている銃の弾だ、僕ができることは説明をした上で引いてもらうこと、巴さんと一緒に、できる限りの説明をしよう。

 

 「あの…」

 「君は、さっきから何も言わなかったね、悪いけど、ここから離れるよ、巴さん」

 「ええ、説明するから私の家に来て」

 

 志筑さんは、何も喋らない。この中じゃ誰よりも大人だと思う。多分魔法少女には向いていない。

 

 「―――つまり、どんな願いでも叶うかわりにあの魔女と戦わされるということですね」

 「うん、お勧めはしないよ。そんな異常は本来逢ってはいけないことだから」

 「それは理解したけどさ、アンタは結局なんなのさ」

 「重兵衛つばさ、解離性同一性障害にて人格を二人切り離した一応人間だね。本来なら、関わるべきじゃない。だから昼の時は知らないふりをしたし、わざわざ儂が嘘をついた。なんとなくでしか分からないけど、ある程度の連携は取れるからね」

 

 出てきていた人格が何をしたかったか、これくらいなら直ぐに分かる。そうしないと不便だし、何より防衛が出来ない。あくまでこれは僕と儂の間にあるもので、儂から私には繋がらないし、僕と私だと、回線が違う。

 それでも、君達は引くべきなんだ。

 

 「分かりました。なら私は拒否をさせていただきます。叶えたい願いはありませんし、叶えられない願いならば、分不相応ということでしょう」

 「私も今はいいかな、」

 「私も、急に言われてもって感じだし……」

 「分かったわ、キュゥべぇには伝えておくわ。でもね、まだ戻れらことを自覚してね」

 「片足だけでも突っ込んだら戻れないから……それとインキュベータが関わってきたら教えてくれると嬉しい、対策も取りやすくなるからね」

 

 よかった、志筑さんは心配なさそうだね。分不相応か、確かにそうだ、でもだからこそ命を賭けて地獄を歩むことになるんだろうね。

 命を懸ける価値がそこにあるのなら、僕達は止められない、止められるものでもない

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