「すぅ…すぅ…すぅ…」
「大丈夫なんですか?そろそろお昼休みも終わりますけど」
「大丈夫よ、儂、えっと…翼、これだと被るわね……後で呼び方は聞くとして、昨日あなた達が会話した人格が出てきたときにはこうなるのよ。寝れなくなるみたいでね、そろそろ目を覚ます筈だから……」
「ん……」
「おはよう、」
「おはようございます、膝ありがとうございました、」
「どういたしまして、」
僕は、巴さんの膝を借りて昼寝をしていた。別に他意は無い。儂は異形に対しての防衛だ。異形は夜を闊歩する、故に夜にほど近い時間に出れば、その効果から僕は眠ることなく、異形を怪異を相手取らなければならない。
寝たら余計に怪異しか映らなくなる。だから目を空けて、夜明けを現世の人の時間の到来を待ち続ける。
精神的な疲れが強く寝不足になりやすいから儂はあまり使いたくはないけど、私じゃ、魔女を対処できない。その特性から、僕にストレスがたまっていく。存在意義が否定されるため、相性が悪い、だから儂でしか対処ができない。
まぁ、魔法少女が持つ浄化アイテムのグリーフシードを使えばストレス軽減にはなるみたいだけど、少し加減を間違えれば魔女が再発してしまう。
僕はとことん無料だ。
ちなみに、今日から鹿目さん、美樹さん、志筑さん、が昼食に加わった。
「確実に跳ね除けられるのなら関わらないほうが良いんだけどね」
「ですが、学校にいる間は普通なのですよね?」
「そうとも限らないよ、現にさっきまで引きずっていたから、僕のこれも代償があるんだよ」
代償と言っても、憑いている怪異の特性が僕の時にも残るってだけだけど、基本的に悪影響だから、代償と言っている。
「まぁ、今日はおさらいだから、もう一度聞くよ、魔法少女になる気は?」
「無いかな…」
「私も…」
「それが確実になるように祈ってるよ……あっ、何しに来たんだろ、事務室に行ってくる」
「気をつけてね」
「うん、」
お母さん、と言っていいのか分からない人が来た。何で来たんだろう。どちらにせよ、良いことではないのは確かだ、僕にできることはそんなに無い、そもそも、あの人達も僕がいないほうがいいと思っている、そりゃそうだ、僕を重兵衛つばさをみてくれたのは、後にも先にも、一人だけだったから。
儂が生まれる前に、僕は母親を失った。父親は再婚した相手で母が死んだ後に過労で死んだ。実父は何処にいるか知らない。最初の義父も再婚しているから、義母がいて、その人も再婚してるから、二人目の義父が里親である。思えば僕を見てくれた大人は誰もいなかったな。再婚相手に引き取られて、たらい回しにされて、事実上、父親は三人目で、母親は二人目だ。
確か、一人目の義父の知り合いは政治家とか言っていた。まぁ仕事人だったから、そういった人間が知り合いにいても不思議ではないけど、あの人も、僕には何もくれなかった。
「何?」
「アンタ宛に手紙が来たのよ、」
「それだけ?」
手紙だけ置かれて帰っていった。相手は美国、宛先は重兵衛つばさ様になってる、確かに僕宛の手紙だ、わざわざこっちに送りつけなくてもいいのに、
まぁあの家に僕の居場所はないから、妥当ではあるけど。帰ったら気おつけないとな、確実に拳が跳んでくる、避けてもいいけど、そうすればもっと酷くなるから、素直に受けたほうがいい。
拝啓
つばさ様においては、穏やかな日々をお過ごしと存じます
七年前にお会いした限りで、覚えていないことかもしれませんが、この度お願いしたいことがありました次第、手紙をかかせていただきました。
ニュースにて、私の悲報が出された場合、私の娘を頼みたいのです。あの子は誰よりも大人です。大丈夫であるとは思いますが、何卒よろしくお願いいたします。
重兵衛つばさ様
美国久臣……政治家だったはずだ。そして、この人の娘こそが僕をつばさを見てくれた唯一の人間だ。ニュースにて悲報、まるで自分の運命が分かっているみたいに言う、大人か、そんな簡単になれるわけでもないのに。
大人であろうとしたんだろうな、僕みたいに、大人になる必要があったわけじゃない、多分、大人になりたかったんだろう。志筑さんは無意識だ、生活する過程で大人になっている。
名前は覚えていないけど、巴さん達に頼めば何とかしてれるかな。僕じゃ、多分何もできない。
「ふぅ……行かないと」
授業はまだあるし、僕は、僕だけは何もできない。普通を演じるだけで精一杯だ。どれだけ頑張っても、僕は何も持っていない。どんな成績を持とうが、僕には、僕の視界には何の意味もない。
「つばさくん、」
「何ですか?」
「伝言です……最近帰ってくるのが遅い、」
「そうですか、門限は守ってるんですけどね、ギリギリなのが問題ですかね」
解離性同一性障害と親との血縁関係、どっちも問題だけど、後者のほうがきつい、教師の方達も気にしてはくれるけど、僕はそれよりも今日のカウンセリングのほうが問題だ。
今日は魔法少女とは関わらないようにしてもらったけど、それでも、学校外では会いたくない。そう言えば、同じ学校の人が入院してるんだっけ?
名前は知らない、関わらないから。クラスには何人かは友達以下くらいの者べ人はいるけどその程度だ。僕は異常だから、普通を助けられない。
「ありがとうございました」
カウンセリングを終えて、僕は外に出る、さっきから嫌な気配がしている。病院は異形が多くいるが、これは魔女のものだ。寿命とかで絶望でもしてたのかな。
ちなみに、カウンセリングの方は特に問題はない。意図的に変わることができるから、苦労はしていないし、病院側はストレスがもとになっている事を知っているため、あまり関与してこない。
根本の解決はまだ先だし、何よりあの家から離れないと私は消えない。ご家族問題から生まれた私は、家族から離れないと解消はされない。
……世界は狭いと言うけれど、魔女の結界が功も立て続けに起きるのは、問題かな。
目を閉じて、意識を落とす。仕方ないか、学校に母が来ていたから、それが原因かな。
僕は眠り私は目を覚ます。
魔女か、流石に両足ぶんじゃ、勝てないかな。でも、この結界はいるだけでストレスになる。絶望の原因が家族問題だったのかな。儂に変わっても魔女が生まれる前までは読み解けない、魔女以降しか、読み取れない。それで十分だけどね。
私は周囲のストレス環境から、両足どころか腰の位置まで、隠世に沈める。
それじゃぁ急ぐにや。
爪を大きく伸ばす、ソードネイル、早く行かにゃいと文句を言われるにゃ、走ったら間に合う距離にゃ、
見えたにゃ…って、危にゃいにゃ。
「にゃぁぁ!」
「
「随分苦戦してるにゃん、いつもの技はどうしたにゃん?」
「その魔女、回復能力が高いのよ、」
「にゃるほど、確かに相性が悪いにゃん、でも、いつか限界は来るものにゃ、諦めるには早すぎるんじゃぁにゃいのかなにゃ」
回復能力が高いにゃら、私のするべきことは決まったにゃ。触れて、そのヒットポイントをすべて吸い尽くすにゃ。
「エナジードレインにゃ、」
生命力の塊だろうが、私の前では意味をにゃさにゃい、招かれざるモノ、障りじゃにゃくて、触り猫、それが本来の私の力にゃ、ストレスにゃんて、無視し続けて、にゃんににゃる、発散しにゃきゃ意味をにゃさにゃい。でもそれでいいにゃ、お菓子の魔女、お前は私と似てるにゃ。
「お前、にゃにものだにゃ?いや、いいにゃ、詳しいことは、孵卵器から聞くにゃ」
右手を振り抜いて、魔女を切り裂いた。魔力飲みを吸い尽くしてみたがやればできるみたいだ、全身隠世側に沈んでいたら、エナジードレインの力が強すぎて穢れも吸い込んじゃいそうだけど。
でも、いい経験だ、腰辺りまでなら戻れる。この方法なら、私も戦える。
「大丈夫?」
「ええ、ありがとう、」
「そっちも無事みたいだね、はじめまして私は障猫、重兵衛つばさの三人目の人格、私、だよ。
「取り敢えず、私は孵卵器に聞きたいことができたから、先に帰らせてもらうね、」
「待って!」
「なに?鹿目ちゃん」
「すいません、今日、家に来ませんか?」
「……ちょっと待って、うん、いいよ」
まさか、鹿目ちゃんから、お誘いがあるとはね、でもそれでもこれは確認をしなければならない事だから、先に帰ってもらう。
人々の絶望の塊が魔女であるなら、なぜあの場にいる魔女が家族との問題を抱えた魔女なのか、もっと病気に関わる絶望ならわかるけど、私が反応できたということは、家族間問題だ。孵卵器、お前は、何をした。
「久しぶりだよ、しかも辿り着く人間がいるなんてね、」
「御託はいいの、答えなさい。魔女とは何?グリーフシードは何処から来たの?卵が先か、魔女が先か、答えは卵、違う?」
「正解だよ、そしてグリーフシードはソウルジェムだ、」
「そう、彼女達の魂が変な位置にあるのはそのせいなのね。―――なおさら、魔法少女に、隠世側に関わらせるわけには行かぬ、インキュベータ、人の理解及ばぬ偉業よ、即刻立ち去るがよい、」
「君はなぜそれを拒むんだい」
「人が人ならざるものになる。これを否定しない者が何処にいる、うぬが儂等を理解できぬように、違うんじゃよ、価値観が」
人と異形は相容れない、それは、遥か太古から決まっておる。のう、魔法少女が魔女になるのならば。魔法少女が魔女と違われたことはなかったのか?
人の手で、魔法少女が死んだことはなかったのか?
魔女だけが、魔法少女を殺したわけじゃなかろう、うぬに人を家畜とする事はできんよ。
「その差を知らぬうぬは、儂等の領域に入れない、魂の在り処を重要視する意味を知り得ないうぬ等が、人を制御できるわけがない」
「そうかい?ボクとしては理解しているつもりだけど」
「ならば、異形を魔女以外の異形を知らぬうぬに、人の重いを理解できるというのか?無理なはずじゃろう、異形は人とは相容れない」
逃がしたか、まあよい、これで鹿目は魔法少女になることは延長できるかのう。
僕は視ることしかできないけど、その分、聴くこともできる。鹿目さんは何を抱えてるんだろう。