使い魔なら儂が出る必要もないな。
「巴マミ、相手は使い魔じゃ、つばさに戻すぞ」
「分かったわ」
「っと…走ってる時に戻すなよ……こっち」
「そう、」
「感知能力はあるのね」
「いや、戦えないわけじゃないよ、リスクを減らしているだけだ。異翼も障猫も僕の体を使っていることにはかわりないんだ、だから……見つけた」
使い魔なら、虚刀で倒せるはずだ。
一の構え鈴蘭
「鏡花水月…?!っ!」
「おいおい、せっかく育てた使い魔を狩らないでくれよ」
「育てた?」
「佐倉さん……」
「久しぶりだなマミ、それに死で面倒くさいな、何人いるんだよ」
巴さんの知り合いかな、二人とも面識があるようだけど、関係性は良くなさそうだ。それよりも、育てたってどういうことだ?使い魔をわざわざ育てる必要なんてあるのか?
「……なんでここにいるのかしら、ここ見滝原は私の管轄のはずよ」
「マミも知ってるだろ?ここはほかの街より魔女が多いことを」
「そうね、でも私を含めても三人、それに私の考えに賛同できなくなって避ったのは貴方でしょう」
「当たり前だろ、力は自分のために使うべきだ。誰かのためにやっても何も返ってこないんだよ」
!確かに、誰かに何かをしても返ってこない。返ってきたとしてもそれは狂気だ。受け取る必要はないでも、それでも、育てたという方法に人がはいるのなら、僕は絶対に許さない。
「なら、育てた。これについてはどういうことかしら」
「簡単だよ、使い魔を倒してもグリーフシードは出てこない、なら使い魔に人間を二、三人喰わせて魔女にしたほうが効率がいいってことだ」
「貴方!」
「所詮この世は弱「ふざけるな!」?そういや、お前はマミ派か、そう怒るようなことでもないだろ」
なんで、そんな普通にしていられる。アンタは人を殺しているんだぞ、いや、直接的じゃないから、その実感は少ないかもしれない。でもそれでも、
「普通を生きる人間を、異常に住まう僕達のエゴで巻き込むんじゃねぇ!」
「は?」
「お前っ、魔法少女じゃないのかよ!」
「僕は人間で、そして、隠世に住む化物だ!」
背中が痛い、頭も痛い、残っていた黒髪も今はすべて白になっているはずだ。あとは右翼だけだけど生えた翼。それもただの白い羽根じゃない、羽一枚一枚が猫の爪のように、鋭い刃物のようになっている。
怪異の同時憑依、考えはあった。実現に至らなかったのは誰が体を扱うかということだった。儂でも私でもない、この体は僕のものだから、僕が同時に二人の力を使えばいい。
「
右手だけ爪を伸ばして、相手が使う槍を捌く。槍が中距離を相手とする武器ならば、僕の場合は拳を使った超近接の戦い方。詰めた距離は、その分有利に働く。
「離れろ!」
「ぐ…」
けど、槍の長さは薙ぎ払いに有用だ。少しでも遅れると吹き飛ばされて、突きが迫ってくる。
タイミングを間違うな、できるはずだ。猫の動体視力は人間の四倍、怪異の憑依に置いて、一番効果があるのは眼だ。絶対につかめる!
槍先だろうと、血がでようが関係ない、動きを止めろ!
「は?」
「捕まえた!」
「馬鹿なのか?」
右手で槍先を掴み、動きを止める。槍は突きに対して絶対的な効果を得る。横からの掴みなら、血が出る程度、斬り落とされることはない。
そして、掴めたものの突きの勢いで身体がかなり捻れている。捻られた身体は相手に背を向ける形になって、脚は左右に広げる形。つまり柳緑花紅に繋げられる。
「奥義!」
「!封鎖結界」
「七花八裂・改!」
結界ごと破壊しろ!ソウルジェムを避ければ問題ない、弱肉強食というのなら、殺される覚悟はあるはずだ。
防御無視、四『柳緑花紅』
最速一撃、一『鏡花水月』
両の張手、五『飛花落葉』
踵落とし、七『落花狼藉』
膝蹴り、三『百花繚乱』
両の手刀、六『錦上添花』
貫き手、二『花鳥風月』
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
「つばさくん!」
「僕は大丈夫です、それよりそっちの人を……」
怒り任せに攻撃しすぎた。奥義一つで人命にかかわる。結界を壊すのに四、柳緑花紅でほぼ気絶してたのに、さらに二発、気絶してくれたのが救いかな。
でも、同時憑依の代償がでかすぎる。頭痛に、周りの怪異の視線、声。さらに髪が真っ白に色抜けしてから戻らない。せめて、親もどきに連絡を……
「……くん……つば……さ」
「ん……」
「つばさくん!」
「ここは?」
「私の家よ」
意識を落とし、目覚めた場所は巴さんの家だった。どうやらかなり気絶していたらしい。今目を閉じれば別の脅威が振り注ぐ。
周囲を見渡すと、なぎさちゃんはカレーを食べていた。他にも……そう言えば名前聞いてなかったな。
「何で攻撃した本人のほうが気絶してるのさ」
「作りが違うからね……それで名前は?」
「佐倉杏子だ、それでお前はなんなんだ?」
「強いて言うなら、霊感がつよい憑かれた人間だよ。本来人と異形は関わるべきじゃない、いつかこのチカリも手放さないといけない。でも、今じゃない」
「……ふ〜ん、それで怒ってたのか」
「偶然に巻き込まれたならしょうがないと割り切ることもできるけど、意図的に餌とするのなら容赦しないよ」
カレーを食べ終えてなのか、お菓子を食べている佐倉はんをまっすぐ見て自分の意見を伝える。
「それをやって何の意味があるんだ?」
「意味なんてないよ、自己満だ。それでも誰かのために何かできているという妄想が支えになることだってある、馬鹿にできないよ、誰かのためと思えるうちはね」
「私は、そう思っていた。家族の為にできていると思っていた。その結果がこれだ。家族に、親父に、魔女と言われて、家族心中。私は一人になった。
「ささえがなくなった私は、割り切ることにした。すべて自業自得にすれば、痛みも減る」
「……割り切れてないから、ここにいるんじゃないんですか?」
慕える親を持った佐倉さん、僕にその気持ちはわからないけど、自業自得にできなくて、割り切れないから、わざわざ見知った、それも先輩である巴さんがいるここに来たんだと思う。
「悪いとは言いませんよ、切り捨てることにも限度入りますから。それでも、今の貴方は答えのない行き先に迷っているように見える。
「切り捨てる前提で動いているから、努力ができない。頑張るだけの人間は、頑張れなくなった時に挫折する。
「今の貴方が生きる意味は何ですか?何のために努力をするんですか?」
佐倉さんが今、魔法少女について何処まで知っているかわからない。それでも、限界があるからここに来たんですよね。進めないから、来たんですよね。
だって貴方は巴さんと会うことに躊躇しなかった。はじめからそれが目的であるように、巴さんに挨拶をした。逆に、僕達というほかの要因に対して否定的な言葉をとった。
「固有魔法はわかるな」
「ある程度は、だいたい予想はできました。他人を想って願った魔法だから、今の状態じゃ使えないということですね」
「そうだよ、」
「なら、僕ではなく、巴さんと話してみてはどうですか?初対面である僕よりも、見知った仲ならば、使えるかもしれない」
「何でも知ってんだな」
「何でもは知らないよ、知っていることだけ」
さっきから聞き耳を立てていた巴さんに任せるとして、僕はベランダへと足を向ける。すっかり日が沈み真っ暗な空。曇りというわけでも、新月というわけでもないのに、僕の視界には自然の光は一切ない。
夜が僕を迎えに来る。
もういやだ、
僕はそっちには行かない、頭痛程度でそっちに行くわけがない。だってもととなる怪異から生まれた新たな異形をうむ僕は、隠世側でも異質だから。
視界問題、家族問題、次はなんだろな。