魔法少女達と霊視少年   作:紡縁永遠

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父が全ての少女

 夜が明ける。ようやく落ち着ける。頭痛が酷くてそもそも眠れないのに、意識して起きないといけない。ただでさえあるストレスがさらに重くなった。

 

 「ふぁ……ん?美国?」

 

 巴さんがつけていたテレビニュースには、美国久臣の汚職による自殺が報道されていた。仕方ない、今日はサボりますか、

 用意された朝食を食べずに、僕は玄関へと向かう。服はいつものサイズのあってないやつだ。もちろんそれに巴さんが気づかないわけがない。

 

 「何処行くの?」

 「頼まれごと、なるべく早くしないとね、頼ることになるかもしれないから」

 「…そう、気をつけてね」

 「うん、何かあったら頼るから」

 「そうして」

 

 外に出て、見滝原内のとある家に向かう。もういない美国久臣の家、現在どうなっているかは分からないけど、それでも行かなければならない、ただの一方的な約束ならまだしも、遺書に似た願いならば断ることはしない。

 

 「昨日の今日でこれか……」

 

 白い塀に囲まれた大きな屋敷、窓ガラスは割れ、塀には落書き、悪口に悪戯、別にこれだけで引き下がるつもりも、引き下がれるだけの理由にはならない。

 インターホンを幾度か押しても反応はなかった。やはり外敵がいるならバカ正直に出てはこないか。

 さて、どうしたものか、僕にできることは美国久臣の手紙を貰ってここに来たということくらいしかない。これで中の人が信じてくれるわけでも、納得してくれるわけでもはい。

 そのまま門の前に立っていると、

 

 「この家に何かご用ですか?」

 

 声をかけられる。振り返ると、そこには白く長い髪をサイドテールに纏めた少女が一人、ここは正直に話し他方がいいかもね。

 

 「僕の名前は重兵衛つばさ、七年か前に交流がありました、今回は遺書に近い物を受け取ったので来た次第です」

 「七年前……重兵衛は知らないけど、もしかして【榊 (さかき)】つばさくん?」

 「はい、まぁあれから二回ほど苗字がかわり、重兵衛になりましたけど……」

 「?!そう…あまり変わらないわね、あの時と同じ身長差ね」

 「そうですね、全然伸びないです、美国さんは随分かわりましたね、」

 

 確か初めて会ったのは葬儀の時だったはずだ、交流がなくなったのはその七ヶ月後、(二人目)が亡くなった時だから覚えてくれていたとは。あの時から大人っぽかったけど、それは今も変わらない。

 

 「家に入って、かなり汚れてるかもしれないけど……」

 「はい」

 

 家に案内される、中には何が良いかは分からない高価そうなもの、見栄というやつだろうか、そんなモノ持っていたとしても見えないのに。

 外から見たとおり、窓が割れている。大半の窓は掃除されているけど、何枚かそのままだった、たぶん、出かけていたからその時に割られていたものだろう。

 

 「私は紅茶を淹れてくるからちょっと待って」

 「流石にそれは……」

 「それくらいしかもてなすものがないのよ、」

 「水でいいんですよ?」

 「私が飲みたいの」

 

 そう言って別の部屋に出ていった。紅茶か、そう言えば巴さんの家に行った時も入れてくれたな。緑茶のほうが好きなんだけどな、流石に客として来ているので図々しいことはしない。

 戻って来た美国さんは手慣れたように紅茶をポットからカップへと注ぐ。互いに一口飲んで落ち着いたところで本題へはいる。

 

 「それで、遺書って?」

 「これです、自分が汚職するのを知っていたみたいでしたよ、誰がそう手引きしたかはわかりませんけど……美国さんどういう状況ですか?」

 「……お姉ちゃんとは、言ってくれないのね」

 「話をそらさないでください、大丈夫なわけがない、どういう状況ですか?」

 

 こういう時大丈夫ですか?とは言わない、大丈夫です、と反射的に答えられるからだ。塀の落書き、割れた窓に、おそらくマスコミも来ているはずだ、精神的疲労が無いわけがない。それに、美国さんの指にはまった指輪は魔法少女特有のもの。

 四本の足が生えたドレス姿の女性、魔女を表すには一番それらしい。

 

 「魔法少女」

 「?!」

 「やっぱりですか……この眼はそういうのも視えます、隠す必要はないですよ」

 「やっぱり視えるのね、もしかしてキュゥべぇも?」

 「はい、何で成ったんですか?僕の眼を知っている貴方が」

 

 理由は簡単だった。尊敬していた父の自殺。その理由が汚職であったこと。ただでさえ精神が参っていたところに通っているお嬢様中学校から電話で、品位を落としかねないからという理由で自主的に転校をするよう言われ、知り合いの連絡先もすべてぶろっく、

 親に尊敬していること以外は納得できる。人は一人で生きているわけじゃない。社会の中で生きている、その中から追い出されたとなれば、それも【議員の娘】でしかなかったという事実を突きつけることにも繋がったのなら、願いにすがるのもわかる。

 

 「そうですか……尊敬できる父親を持てたんですね」

 「そう言えば、特殊な家系だったわね」

 「父親(三に目)母親(二人目)ですからね、」

 「見滝原に住んでいて魔法少女を知っているのよね、私は別に魔法少女になった事を後悔なんてしてないわ。むしろ、多くの人を救えるかもしれないんだもの。

 「でも、それだけじゃない。魔法少女は最終的に魔女になる、これは知っているかしら」

 「知っているよ、それに、言い得て妙だったのは最初からだしね」

 

 言葉遊び、それにしては日本の文化に近いけど、それは日本にいるからかな、どっちにしろ、僕は一目で気づくべきだったことだ。実際に視えているのにたどり着くのにかなりの時間がかかっているのだから。

 

 「私は最悪の未来を見たわ。一人の少女が魔法少女となり……そして魔女と化して世界を滅ぼす未来を……

 「だから殺さないといけない……」

 「!」

 

 殺すか、僕の眼には日常だけど、隠世に近づいたとは言え、それはして欲しくはないな。

 

 「ピンクを基調としたツインテールの魔法少女は知っているかしら?」

 「そんな()()()()は知らないですね、でも、無関係な普通の()()は巻き込まないでくださいね、それは僕が許しません。あんな異常、人が背負う必要はないんですから」

 「分かったわ、無関係な人は傷つけない。じゃあ今度は何で知っているの?」

 「解離性同一性障害、それが今僕が持っている異常です」

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