何べん時を繰り返しても、禪院家が滅びよるんやが!?   作:ドブとカス

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最初はvs真希との戦闘中から始まります。


第一話

 身体が軽い。次の動きが自然と打ち出される。

 感じる。感じるで。

 やっぱこの女は偽物。あっち側に行くに資格があるんは、俺や!!

 

「....!?」

 

 突然、眼の前のクソ女が両手を広げ、相撲取りみたいな構えを取りおった。

 意図が分からん。なんやこいつ、血ィ出し過ぎて頭おかしなったんか?

 

 ――それとも

 

(真っ向勝負っちゅう訳かい!!)

 

 あっちは既に連戦。対して俺は時が過ぎれば過ぎる程無制限に速度も増していく。

 戦闘を速く終わらせに行くっちゅうのは確かに悪くない判断や。けどな、それは余りにも遅すぎ....ってあん?

 

「抱いてやるよ」

「ッ!!」

 

 こいつっ!! 煽りおった!! 煽りおった!! 

 女の癖に!! 偶々強くなれただけの半人前の分際で!!

 いつからそんなに偉くなりおったんや!? お前は俺の下で一生惨めったらしくミジンコみたいに生きとったらええねんボケが!!

 

(....っ。ムカつく、ムカつくけど落ち着けや。こんなん見え見えの煽りや。あっちはアバラ砕けてでも俺の動きを受け止める構えなんやろ。ほんなら逆に利用したったらええねん)

 

 そう整理して、俺は動きをすぐに組み立てる。

 そこで待ち構えるってんなら、その女の肩を叩いて、動きを止めてから後ろに回ってトドメの一撃や。俺のスピードならもうとうに亜音速を超えとる、そこから繰り出される一撃なら、死にはせんくても、動かれへんくらいの致命傷になるやろ。

 

 ――パンッ

 

「.....!?」

 

(よし、成功や!)

 

 予定通り、俺は真希ちゃんの肩を強く叩き、後ろに回り込んだ。

 この動きならカウンターも絶対に喰らわへん。万に一つも負けは無い。

 

 ....はッ、真希ちゃんの顔、めっちゃ間抜けな面しとるわ。

 挑発が失敗して驚いとるんか? アホやなぁ、敵が自分の思い通りに動いてくれるとか、三流漫画の世界だけやねん。後の先、その更に先まで見えて立派な術師やねん。それが出来ん時点で、お前はやっぱ脳無しの愚図のままや。

 

 ――偽物や。お前は間違いなく偽物や。お前を甚爾くんと同じやって見た奴らは一人漏れなく節穴や。地獄で目ん玉繰りぬかれとけボケ。

 

 そう、お前は偽も――

 

 

(.....あ”?)

 

 なんや、この拳は。

 

「24回だろ」

 

 .....は?

 

「ジジイもお前も速いだけじゃねぇ。違和感があった」

 

 .....待てや、待て待て待て。

 

「一秒に24回、動きを刻んでた。この身体になってようやく見えたよ」

 

 ....ざっけんなや、動きはもう確定して――

 

「――このっ....偽も”っ」

 

 ゴンッ

 

 

 

♢♢♢♢

 

 

「ははっ....はははっ...」

 

 あの後、俺は地面を這いずり、なんとか禪院家の屋敷まで辿り着いた。

 顔の痛みがエグイ。確実に頬骨は折れとる。本来なら今すぐ病院行かなあかん傷やな。

 けど命はある。歩けんとはいえ腕も動くし喋れる気力もある。

 

「詰めが甘いんじゃクソ女ぁ....!!」

 

 無機質な畳の上を這いずり、なんとか前進を続けていく。

 ここまで来たら惨めったらしいけど、高専に電話でもかけて状況を教えるしかあらへん。

 そしたらあのクソ女は即処刑や。今頃どうでもええけど、まぁ禪院家当主って肩書きも一応俺のもんになる。

 

「カカッ....カカカッ...」

 

 自分でも分かるくらい乾いた笑いを零し、血反吐をまき散らしながら畳の上を動く。

 そしてようやく屋敷の真ん中くらいまで辿り着いた所で

 

(....あ?)

 

 外の廊下からカタッカタッカタッと誰かの足音が聞こえて来た。

 

(....なんや、俺以外全員死んだんとちゃうんかい)

 

 この屋敷まで来る途中、台所で女中が死んどる光景も見た。

 あの女の目的はほぼ間違いなく禪院家皆殺しや。やないと自分と同じ女まで殺す意味無いやろ。

 

 ――そんなことを頭で考えていた時

 

 グサッ

 

 

「....は?」

 

 背中に熾烈な熱みを感じた。

 その熱さはすぐに痛みへと変換され、ヒンヤリとした冷たさから身体から血が次々と流れ出ていく事を頭で察する。

 

(....は? は? は? は? は?)

 

 ごたつく頭を上げながら、チラリと横目で後ろを見た。

 女やった。またしても女やった。

 

「ガ...ガガッ...」

 

 このババア....あのクソ女の母やんけ....。

 親子揃って、どこまでも俺の邪魔を.......

 

 

 ってあっ、あかん!! これ、ほんまにっ、死っ!!

 

 ――グサリ

 

 ナイフが更に深く突き刺した。

 

「ざっけんなや....呪力が練れん....ドブ...カス...が...」

 

 

 

♢♢♢♢

 

 

 

 ....ここは、どこや? 

 おれは確か死んだはずやろ....

 

「....おい、クソ兄貴」

 

「....あ”?」

 

 パっと視界を開き、眼の前の存在に焦点を向ける。

 .....なんやこれ。なんでこのクソ女が眼の前におんねん。しかもまだ燃える前の姿やんけこれ。

 

「おい、クソ兄貴。寝ぼけてんのか。さっさとそこをどけっつってんだろ」

 

 ....走馬灯ってやつか? いやにしてもタイミングおかしいやろ。なんで死んだ後に来るねん。

 

「なぁおい!! いい加減にしろ!! どこまで嫌がらせすりゃあ気が済むんだテメェは!!」

 

....ん? よう見たら俺、片方の脚を壁にくっつけて行き道塞いでたわ。なんか記憶にあるなぁこれ。

 

「.....なぁ真希ちゃん」

「....あァ?」

 

 なんとなくうろ覚えやったけど、とにかく真希ちゃんに今の状況を聞いてみる事にした。

 

「お前今から何の用なんやったっけ」

「....はぁ?」

 

 そうすると真希ちゃんは眼つきをとがらせ、必死な形相で俺の襟首を掴んできおった。

 

「テメェおちょくってんのか!? 爺が私に用があるって言って、それで今私が奥間に向かってんだろうが!! テメェもそれを分かっててここで私をおちょくりに来てんだろ!? アァ?」

「......」

 

 あー思い出したわ。確かこん時、父が真希ちゃんの高専入学の手続きを済ましたとか言うて、真希ちゃんを呼び出しとったんや。そんで俺が最後の挨拶って言うてここに来て、真希ちゃんにちょっかいかけに来たったんや。

 こん時は久しぶりにボコボコにしたったんやっけ。当たり前やろ。女は自分の身分と役割を弁えて細く小さくそこで幸せに過ごしたらええねん。それを何の勘違いか自分も強くなろうとしとる勘違い女が真希ちゃんや。顔面ブタになるくらい歪むまで殴らんだけマシやと思えカス。

 

「.....おい、いい加減シカトを....」

「.....」

 

 真希ちゃんが喋ってる間、俺は真希ちゃんを凝視し続けてた。

 考えれば考える程むかつくわ。女の分際で、力も弁えず生意気な事しか言わん。あげくは夢の中かそれとも今見てるのが死ぬ間際の夢なんか知らんけど、セコ技で強くなってそれで甚爾君と同じになったと勘違いしてる馬鹿女。

 お前になんの資格があるねん。卑しい女の身分で俺を差し置いてあっち側にいく資格がどこにあるねん。

 

 あぁ許さん。絶対に許さん。

 

 ――ドスッ

 

「――ッッッ!! ぅぐっ……ぷッ……!!」

 

 術式で動きを作り出し、高速でこのクソ女のみぞおちめがけてパンチを繰り出したった。

 

「制裁やクソ女。禪院に逆った罰や」

 

 奴の和服を掴み、思いっきり庭の草むらへ放り投げ、そこから飛び膝蹴りを加える。

 

「お前のクソみたいな逆恨みで一家滅ぼすとか!! 人の心とか無いんか!? あ”ぁ”!?」

 

 蹴り、拳撃、肘撃ちに膝蹴り。あらゆる暴力をあらゆる部位に叩きつける。

 

 この時点での俺は確か顔は流石に控えるようにしてたけど、そんなん知らんわ!!

 あん時の仕返しや!! 嫁にいけんくなるくらいボコボコにしたる!!

 

「何が『抱いてやるよ』やねん!! 調子乗んなやクソガキ!! 大人の女気取っとるつもりか!? ……てかお前、自分で気付いてへんみたいやから言うたるけどな、燃えた後のお前、めちゃくちゃブッサイクやぞ!! キャバクラ行ったら100パーオーダーなしやブス!! 身の程弁えろやこのボケがあああああ!!」

 

 

 

 ――そして数分後

 

 

 

「.....ガ...ガガ...」

「.....ふぅ」

 

 めっちゃスッキリした俺がおった。

 真希ちゃん骨がボキボキ言うてたし、血まみれやけどまぁええわ。息も絶え絶えやけど頑丈な君なら生きはするやろ。

 これでもう真希ちゃんも禅院に逆らわんくなるやろうし、丁度ええしつけや。

 

 ....にしても真希ちゃんを殴ってた感覚で分かったけど。これ百パー現実やな。

 信じられへんけど、さっきまで俺が居た空間の方が夢やって話。

 脳はまだ納得しきれてへんけど、よう考えたら宿儺復活とか真依ちゃんがしんで真希ちゃんが強くなるとかあほらしすぎるわ。

 そう考えたらやっぱ今俺がおる空間の方が現実って――

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

「――人の心とか無いんか?」

 

 .....なんや今の。今おれ勝手に口が動いたんか?

 

「あぁ、あいつが持って行っちまったからな」

 

 ....!?  は? なんでまたお前がおんねん!!

 

「どういうことやねん!! なんで今度はまた不細工な方で復活してんねん!!」

「.....?」

 

 よく見たら周りの状況もおかしい。倒壊した建物。よく見たらクソ女の後ろで倒れてる炳のクソガキ。

 ....これ不細工な叔父とうっとおしいガキが死んだ直後か?

 

「これ時が巻き戻っとるんか!? にしてもどういう巻き戻り方やねん!! なんで一回戻ってまた飛ばしてここまで来とんねん!!」

「....何言ってんだテメェ?」

 

 そう言って視線の先に居る女は刀を構え、こちらに向ける。

 

「心神喪失による無罪でも狙ってんのか? 無理があるだろ」

 

 狙っとらんはボケ。後司法の話持ち出すなら俺は正当防衛による無罪じゃアホ。

 

 あぁ鬱陶しい。あのクソ女にアタおか扱いされとる。

 もうええ。さっきのでこいつの動きは大体分かった。今回こそあんなヘマはせん。

 最高速度でブチ抜いたる!!!!!

 

「死に晒せやクソ女ぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 そう言って俺はすぐさま動きを投射し、奴にめがけて拳を繰り出した。

 

 

 

♢♢♢♢

 

 

「――ざっけんなや、呪力が練れん....ドブ...カス...が...」

 

 あかん負けた。ふざけんなやせこすぎやろあのクソ女。

 今回はあの女が投射の仕組みを見切ってカウンターする前提で動きを作ったのに、あいつ瞬時に飛び上がって俺の顔面に膝蹴りをぶちかましてきおった。

 いやそりゃ理論上どの方角から来ても上飛んだら避けられるから正解やねんけどな。流儀ってもんがあるやろ流儀が。

 

 後今回あのアタオカ包丁ババアにエンカウントせえへんようにわざわざ違う部屋に向かったのにやな、なんで今回はここ来んねん。俺の事ストーカーしに来とんのか? キショすぎやろマジで。

 

 

 あぁヤバイ死ぬわ。今度こそ――今度こそ――死っ――

 

 

♢♢♢♢

 

 

「――おい、クソ兄貴」

「......」

「おい聞いてんのかクソ兄貴。その足をどけろっつってんだよ」

 

 ....俺は頭を抱えながらこう呟いた。

 

「どういうこっちゃあ....これは...」

「.....はぁ?」

 




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