TCG世界の図書館受付   作:初心者カードゲーマー

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ココロという少年

 

男が去った後、ココロは対戦ディスクをレンへ返却した。

レンは興奮した表情を隠さずに、ココロに問いかける

 

「なぁココロ!さっきのモンスターなんだったんだ!?あんなの見た事ないぞ!」

 

「…あぁ、あのカード?…よくは知らないけどこの世界じゃ、持ってるのは僕だけじゃないかな…」

 

そう言って、ココロはデッキから【機械仕掛けの神】を抜く。

 

カードに映るのは、夥しい数のコードに繋がれ、虚な目のまま脱力する少女の絵だ。

 

「…なんか、悪趣味なカード…だね。フィールドに居たあの姿と思えない…」

 

スイはそう言って苦笑いした。

 

「…まぁ、今回の対戦である程度使えるのは分かったから…自衛用だけど、最低限の役目は果たしてくれるみたいだしね」

 

「いやいやいや…最低限所かフィニッシャークラスだぞソレ」

 

ココロの呟きに、レンは手を振ってツッコミを入れつつ、自身のデッキからカードを一枚抜いてココロへ見せる

 

「これがオレのデッキのエース、【紅蓮王ライガーン】だ」

 

────────────────────────────────

紅蓮王ライガーン

種族:獣

効果

①このカードは自分の場に居るモンスターの数が相手よりも少ない場合、特殊召喚出来る。

②このカードの攻撃力/守備力は自身と相手の墓地に居る種族が獣・獣人の数×500アップする。

③バトルフェイズ時に発動出来る。相手モンスターが自身の場のモンスターと戦闘する場合、そのバトルフェイズ中、このカードしか攻撃対象に選択出来ない

④このカードが戦闘・効果で破壊され、墓地・除外に送られた時に発動出来る。自身の墓地の獣・獣人を三体除外し、このカードを攻撃表示で特殊召喚する。この効果は1ターンに五回まで発動出来る

攻撃力3000/守備力2600

────────────────────────────────

 

「へー…強そう」

 

ココロは読んでも余りピンと来ずにただ生返事を返す。

 

「ふふん、オレのデッキは【紅蓮の覇王】。獣と獣人ならテーマ外でも入れられるデッキだからな!」

 

「ココロくんに分かりやすく説明するなら…獣と獣人の種族なら何でも取り入れられて、フィニッシャーの紅蓮王が倒しても何度でも蘇るから結構手強いデッキなんだよ」

 

そんなココロへ、スイは追加で説明を入れつつも、質問した。

 

「そもそもだけど、ココロくんはなんで『自衛用』でデッキを持ってるの?」

 

「さっきの男みたいに、本を狙う奴が居るからだよ…」

 

そう言って、ココロはため息を吐いた。

 

「それとさ、あの男が言ってた【エレメンツブック】ってなんなんだ?」

 

「あー…黙秘権行使…それよりいいの?そろそろ夕方だよ?」

 

ココロの言う通り、窓から見えるのは夕焼けだ。

 

「えっ!?もうそんな時間なのか!?帰らなきゃ…またな!ココロ!」

 

「またね、ココロくん!」

 

レンとスイはそう言って慌てて帰って行った。

 

そして、二人の姿が見えなくなった頃、ココロは椅子に座り緩く息を吐く。

 

「……目が覚めたら子供の体で、しかもよく知らないカードゲームの世界で図書館受付をやらされるって…どんな因果でそうなるんだか…子供のフリをするのも疲れるし…」

 

そう言う通り、ココロは転生者…というよりも転移者に近い。

 

前世の記憶は殆どない。分かっているのは自分は子供ではない事、この肉体は本来の自分の肉体ではない事

 

…そして、この世界がカードゲームによって人生さえ左右される、ぶっ飛んだ世界であるという認識だけだ。

 

「…春休み明けたら…学校も行かないとな…親に悪い…まぁ、親は何処に居るんだか分からないけど…」

 

はぁ…と溜息を吐くと、後の仕事はいつの間にか出現し直した人影達に任せて、ココロは受付窓口から数歩先にある扉から、自分の部屋へと戻る。

 

部屋の内装は質素だ。ごく普通の勉強机とベッドにタンスとクローゼット。小学生でも届くサイズの小さな冷蔵庫と電子レンジ。備え付けられたキッチンにお風呂場とトイレ。

 

冷蔵庫には、いつ誰が入れているのかも分からないがおかずとご飯が毎日入れられている為、ココロは毎食それをレンチンして食べるという生活をしている。

 

「…先にご飯食べてから、お風呂入ろ…」

 

冷蔵庫を開ければ、今晩のご飯がすぐ目の前にある。

今日の献立はポトフと白米、ほうれん草のお浸しに、ハンバーグだ。

レンチンしてモソモソと食べながら、ココロはシミひとつない天井を見上げる。

 

「図書館の受付は、目が覚めたら書置きにあったからやってるだけ、学校自体は春休みらしいからまだ行かなくてもいいし…というか、僕は何処の学校に通ってて、何年生なんだ…?」

 

真っ先に知るべき事を知らないが故に、ココロは春休み明けの学校生活に不安を覚えるも、まぁ明日考えればいいか、と考える事をやめた。

 

 

 

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