その悪魔は嘘か真実か?   作:神剣狩刃

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第12話 レイエル被害者の会

 キキッと半分ドリフト気味に車を停め現場に到着する。そこでは姫野さんと早川くんが話していたので、車から降りて会話の輪に入る。

 

「あっ、王ちゃんに天使くん! 待ってたよー!」

「とりあえず奴の姿を見て、いやセクハラになるか……?」

「デビルハンターに悪魔の姿を見せて訴えられたら話にならないでしょ。アイツだよ王ちゃん」

 

 姫野さんが指さした曲がり角の先を身を乗り出して変態の悪魔の姿を見る。人型なのだが、足は前を向いた臀部から生えていて、上半身はたぷんたぷん揺れる乳房で、そこから普通の人間の腕が生えていて、顔はビラッと開いた女性器に無数の男性器がついていた。その姿を見て僕は一つの事しか思えなかった。

 

「セクハラで訴えますよ姫野さん」

「私が悪いの!? あの悪魔が悪くない!?」

「悪魔が悪いのは当たり前じゃないかな」

 

 冗談はさておき、あの悪魔の攻略法を話し合う。体液や排泄物による攻撃がメインかもしれない、美男美女を見ると興奮して強くなるかもしれない、狐の悪魔に食わせたら二度と使わせてもらえないかもしれない、あれやこれや話して結論が出た。

 

「一撃で決めればいいね。天使くん、いい感じの武器作れる?」

「えー……あんなのに武器作りたくないなあ……」

「アイス好きなだけ奢るよ」

 

 僕の誘いに天使くんの天使の輪がぴくりと動き、ふーっと僕手元にやって来た。

 

「……一年使用」

 

 彼の呟きと共に刃渡り15㎝程の銀の果物ナイフが現れた。僕はそれを手に取ってひゅんひゅんと軽く振って使い心地を確認する。同じサイズのペットボトルぐらいの軽さで扱いやすい。でも、明確に欠点があるので文句をつける。

 

「絶対何かしらの返り液を浴びそうなんだけど」

「僕を物で釣ろうとしたらそれが限界ってことだよ」

 

 体で釣ることもできないから現状の彼からの協力はここまでだろう。溜息をついて諦め、一つ息を吸って意を決して曲がり角を曲がる。背を向けている奴に不意打ちを────

 

「ンオオ……? オンナ……?」

 

 奴が僕に気付いて振り返ったので、ナイフを振り抜きながら横を走り抜ける。

 

「オンナ! オオンナアア!」

「話しかけるな動くなそのまま死ね」

 

 振り返ってみると奴がブッシャアと大中小の様々な物をまき散らし、ズベチャリとヤバイ液の上に斃れた。先のマフィンを戻しそうになる臭いがしてきたので、大げさに死体を飛び越えて皆の下に戻る。

 

「良い武器をありがとう。壊れない武器なんて初めて使ったよ」

「何も浴びてないじゃん。まあ、何事も無くてよかったね」

「相変わらずだね王ちゃん……私には何も見えなかったよ」

「大丈夫です姫野先輩、俺も見えませんでした」

 

 あの死体処理をやれる気がしないので後は公安に任せるとしよう。

 

 

 黒いベンツを飛ばし近場のアイスクリーム屋さんに河岸を移す。色々な味があったのでとりあえず全部頼んでテーブルに並べる。都会に文字通りの甘美な花畑が咲く。

 

「好きなの食べていいよ。僕は余った奴全部食べるから」

「好きなだけ奢るとは言ってたけど、これは想定外だったなあ。僕は……まずはバニラかな」

「じゃあ私ストロベリー!」

「俺は……あずきで」

 

 僕は確実に余るであろうチョコミントを真っ先に片付けることにした。チョコの濃厚な甘さがミントの清涼感で台無しになる、何故あるのかよく分からない味だ。何かを話しながら適当に流そう。

 

「最近はどうですか? うまくやってますか?」

 

 早川くんと姫野さんがお互いに目を合わせ、特に言葉もなく同時に頷いて好調を表現した。

 

「銃の悪魔討伐遠征に参加するためにあちこちの悪魔倒しています」

「今週だけで5体ぐらい倒したかなあ? ちょっと疲れ気味かも」

 

 のらりくらりやっていこうと思っている僕達とは大違いのようだ。

 

「示札さんは遠征に参加するんですか?」

「参加させられるだろうね」

 

 復讐に燃える早川くんに対し、特に思いがない僕は進んで参加しようとは思っていない。でも、実力的にお呼びがかかるのは間違いないだろう。

 

「そうなるとレイエルも参加するだろうなあ……アイツ変な所でやる気出すからヤなんだよねえ……」

「そう言えばレイエルはどうしたんですか?」

「いつもだったらアイスにまつわる雑学言ってる頃だよね」

 

 事情を知らない2人にデンジくんと契約して彼の中にいることを説明する。

 

「だからデンジの奴が頭抱えてたのか」

「いつもの王ちゃんよりもレイエルと接することになるよね? 私だったら絶対にヤだなあ……」

「僕もイヤだね。アイツ僕を女だと思って言い寄って来て、男だと判明したらいつか女にしてやる、って言うんだもん。女にされる前に死にたいね」

「俺と姫野先輩はあの店の牛タンが悪魔の肉だってことを知らされて吐きましたからね」

「それに加えて私はレイエルにエッチな事されたしなあ……キスの時に吐いちゃったぐらいでそこまでするかなあ?」

「僕もレイエルに家族を殺されてるからなあ。アイツホントにロクでもない悪魔だね」

 

 

 僕の一言に場がドライアイスよりも冷たくなる。そんなヤバい事を言っただろうか? とっくにみんな知っている物だと思っていたから驚きだ。

 

「……王ちゃん、レイエルに家族殺されてたの?」

「言ってなかったっけ?」

「昨日僕にちょっと話してたね。それと混ざったんじゃない?」

「それでも以前から話してたような気がしてるんだけど……」

「家族を悪魔に殺されたっていうのは何度か話していましたが、レイエルに殺されたっていうのは初耳です」

 

 思い返せばこの話をしたのは昨日の天使くんと先生ぐらいかもしれない。ここでレイエルに聞いてと言ってもレイエルはデンジくんの中だから話せない。後々で掘り返されるのも面倒なのでここで話してしまおうとチョコミントを食べ切る。

 

「折角だから話そうか。と言っても家族を目の前で殺されたショックで記憶喪失になっているから、覚えている所からだけどね」

 

 僕の記憶は家族が鏡の狼男に食われてる所から始まる。何が何だか分からずただ茫然と見ていると、ソイツは口角をギャリギャリと上げて僕に話しかけてきた。

 

「俺と契約しろ。さもなくばお前も殺す」

「何で……何でこんな目に遭わなきゃいけないの……?」

「嘘の悪魔に目を付けられちまったのが運の尽きさ。悪魔ってのは往々にして理不尽なもんなんだよ」

 

 死にたくなかった僕は彼と契約するしかなかった。僕の口からギャリギャリと脳が拒む様な音を立てながら彼が入っていく。

 

「……僕をどうする心算なの……?」

(俺の計画に付き合ってもらうのさ。その対価として俺の力をやるよ)

 

 こうして僕はレイエルの理不尽を受け入れ、大学で日乃門仁に恋愛観を歪まされ、人生を滅茶苦茶にされた八つ当たりをするためにデビルハンターになった。我ながら酷い人生で、人間2人の匙がピタリと止まってしまうほどだ。

 

「僕も記憶喪失だけど……そんなひどい目に遭ったとは思いたくないなあ」

 

 天使くんはそこまで思う所がなかったようなので平然とアイスを食べ進めている。僕が狙っていたパチパチする奴を攫われてしまったので、仕方がなくナッツが入っている奴を口に運ぶ。香ばしいナッツが────僕のケータイが震えて誰かが呼んでいると知らせる。どうせマキマさんの無茶振りだろうとナッツを砕きながら電話に出る。

 

「何ですか? また何か────」

「示札さんか? ちょっと相談したいことがあってよ……今夜時間あるか?」

 

 絶賛レイエルに悩まされているデンジくんからだ。時間なんていくらでもあるが、急な仕事で少々気が乗らない。せめてなんの相談か聞いておこう。

 

「何を相談したいんだい?」

「……恋愛相談だ」

「よし乗った。19時以降ならいつでもできるようにしておくよ」

 

 猿よりもウキウキして電話を切る。この場がお開きにするべくシメの挨拶に入る。

 

「また機会と機嫌の都合がついたら悪魔狩りに行こうね」

「しばらく東北の支部への遠征に行ってきますので、それが終わったらまた一緒に行きましょう」

「返ってきたらまた一緒にアイス食べようね、王ちゃん!」

「それじゃ、残ったアイスは僕と示札さんで食べるね」

「食べ終わったら早速行くよ天使くん。僕達がデンジくんの恋のキューピットになるんだ」

「僕も相談に参加するの? 面倒だなあ……」

「それじゃバーテンダーになって適当に牛タンと飲み物出して」

「それならいいかな」

 

 天使くんと一緒に残っているアイスをかきこんで胃に収める。頭が痛くなってきたがそれを上回る胸の高鳴りがあるから大丈夫だ。




「知ってっか王ちゃん?今回のアイス屋のモチーフになったサーティワンアイスクリームは本場アメリカじゃバスキン・ロビンスの名前で呼ばれてるんだぜ?」
「本編で出番がなかったからってここで言うかい?……B()askin-R()obbinsのBRに隠れてる31からサーティワンってこと?」
「それもあるが1ヵ月、31日毎日違う味を楽しんで欲しいって意味もあるんだぜ」
「僕は1日で全部楽しんじゃうけどね」
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