その悪魔は嘘か真実か?   作:神剣狩刃

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第15話 持ち物は君と恋心と特上牛タン弁当

 王ちゃんがレゼちゃんとの面談を終えた結果、『二枚舌』にてデンジくんを任せても問題ないとの判断が下された。これを聞いて俺とデンジは心の中でハグし合った。

 

(お幸せになデンジィ!)

「これで安心してレゼと付き合え────ぼはぁ!?」

 

 何で舌が爆発するんだ。もう何も心配するような事なかっただろ。またこの店の掃除をさせられるぞ? 王ちゃんがうんざりだと言わんばかりに溜息をついている。

 

「マキマさんでしょ? 散々エッチしたいと言っていた手前、諦めきれてないって所かな」

 

 デンジがヴウンと返事をするようにスターターを引っ張って事なきを得たが、今日の仕事が『二枚舌』の掃除になりそうだ。

 

「だって……マキマさんは俺を拾ってくれたし……飯と布団もくれたし……」

「そんなの親がいたら当たり前のことだよ。それを好意と結びつけるのは見当違いだね。どれだけよくても仕事で恩を返すぐらいだよ」

「でもさあ……」

(マキマさんの事は諦めろデンジ。マキマさんを狙ってる奴は多い。王ちゃんは当然、俺だって狙ってるからな)

(マジかよお!?)

(俺は最終手段でマキマさんに群がる男共を全員ぶっ殺す事を考えているからな)

「マジかよお!?」

「レイエルに何を言われたのかは知らないけど、レゼちゃんだけ狙った方が良いよ。二兎を追う者は一兎をも得ずって言うけど、一兎を追ったって手に入れられるとは限らないからね」

「マジかよお……」

 

 内外同時のレゼちゃん推しにデンジが頭のチェーンソーを抱えてヴンヴン唸る。折角面白そうになって来たのにここで立ち止まってしまってはつまらない。ここは悪魔らしく背中を押してやるとしよう。

 

(だったら潔くレゼちゃんをデートに誘っちまったらどうだ?)

「で、デートォ!?」

「デートかあ……いいんじゃないかな。予約すれば牛タン弁当ぐらいなら作るよ。しかも特別に無料で」

「し、示札さんの弁当付きデート……だったらレゼも喜んでくれるか……?」

 

 王ちゃんもかなりやる気になっているみたいだ。恋のライバルが一人減るとなれば分からなくもないが、いつもの仕事もこれぐらいやる気を出してもらいたい物でもある。

 

「ただ……君のセンスでデートをしたら百年の恋も冷めかねない。きっちりとデートプランを練るとしよう」

(それならもっとレゼちゃんの好感度を上げておきたいな。今日も『二道』に通うぞ)

「こんなに背中押してもらえるのは初めてだから嬉しいぜ。ありがとよ2人とも」

 

 俺達の真の思惑も知らずに純粋に感謝する彼の素直さは本当に面白い。騙し甲斐があるというものだ。王ちゃんも笑っている。ただ────一切の悪意を感じず、ただ一人の恋する青年を見守るような、らしくない笑顔だった。

 

 

 それから1週間、俺達は『二道』に通いながらデートプランを考えた。デンジの憧れ、王ちゃんの弁当、ムード作りという観点から夜の学校に行くのが良いということになった。早速レゼちゃんに伝えろとデンジを急かす。

 

「な、なあレゼ。今夜、学校行かねえか?」

 

 デンジの飾らない誘いにレゼちゃんは首を傾けて微笑みながらこちらを見てきた。

 

「夜の学校でデートってこと?」

「う、ウマい弁当も予約してるんだぜ?」

「ふーん……じゃ、行こっか」

 

 快諾してもらえたので王ちゃんに場所と時間を伝え弁当の宅配を頼む。そして夜、指定された学校には黒いベンツが停まっており、中から何故かメイド服を着た天使ちゃんが二つのタッパーを抱えて出てきた。

 

「『二枚舌』の宅配サービスです。特上牛タン弁当確かにお届けしました。じゃ」

 

 デンジに弁当を渡して何事もなく車に戻っていったが、はいそうですかと受け入れられるものではなかった。

 

「……デンジくん、どんなお店で予約したの?」

(王ちゃんの名前は出すなよ)

「し、知り合いの店なんだけどよお……アレはオレもよく分からねえ……」

 

 思い返せば前にメイド服で仕事させるとか言っていた気がする。眼福モノだったが、ここでやる必要はなかったと思う。こんな立ち上がりで不安だったが、手を繋ぎながら教室に行けばそれっぽい雰囲気にはなる。彼女が教卓に立ち黒板に1+1と書く。

 

「ではこの問題解ける人!」

「はいハイハイ! 2! 2!」

「正解! 天才! この英語はなんと読むでしょう!」

 

 続いてBig assと書く。流石にデンジでは分からないようで俺にカンニングしてきた。

 

(レイエル、分かるか?)

 

 ヒーちゃんが本当の意味で女の子のKiss my ass(俺のケツを舐めろ)をしたいとよく言っていたから分かる。しかし、ここは正当ではなく小洒落た返しを教えよう。

 

(レゼちゃんみたいな女だな)

「レゼみたいな女!」

「むっ……私そんなお尻大きいかな……」

 

 年頃の女の子らしくお尻を気にしながら頬を膨らませている。

 

(俺は胸よりも尻が好きだからいいと思うけどな)

「俺は胸より尻が好きだからいいと思うぜ!」

「……ならいっか」

 

 今のは俺の好みであってアドバイスではない。でもデンジは彼女へのフォローだととらえたようだし、彼女もまんざらでもない様で安心した。

 

「デンジ君って本当に小学校も行ってないの?」

「あ? うん」

 

 今度はカウンセリングが始まった。デンジの体に入って知った事だが、コイツは死んだ親の借金を返すために義務教育すらまともに受けてない。それはおかしいんじゃないかとレゼちゃんに言われる。

 

「今いる公安って言う場所は本当に良い場所なの?」

「まあ凄えいいトコだぜ? 1日3回食えるし布団で寝れるしあの牛タン週1で食えるし」

「……牛タンは違うけど、それって日本人として最低限の……当たり前の事だよ?」

(そうなのかレイエル?)

(日本国憲法第25条にある健康で文化的な最低限度の生活ってヤツだな。まあ、それが享受されない人間がいるは事実だが、その辺の闇をどうこうするのは俺達(デビルハンター)の仕事じゃないんでな)

「う~~ん……よく分かんねえし、考え過ぎて頭熱くなってきた」

 

 彼の頭ではこうなるのも無理はない。それを見かねてレゼちゃんが1つの提案をする。

 

「じゃあ少し冷やしますか」

 

 

 温まった頭を冷やすためにプールに入ることになった。泳げないデンジのためにレゼちゃんがマジで一肌脱いでいく。

 

「オあえ!?」

 

 そしてついに一糸纏わぬ姿になる。俺から見ても上物のスタイルで股座がいきり立つ。

 

(丸見えだよ!! 初めて乳首見た、下! 下! わああああああ)

(チャンスだぜデンジ。お前も裸になって飛び込むんだ)

(でも、マキマさんを裏切っちまう……)

(魔が差したは正当な理由だ)

(ならいいか)「ウらあ!!」

 

 一瞬悩んだようだが悪魔の囁きには抗えず、裸になって飛び込んだ。夏場だというのに染み入るように冷たい水に包まれる。その中でレゼちゃんの手が差し伸べられる。

 

「教えてあげる! デンジ君の知らない事、できない事……私が全部教えてあげる」

 

 デンジはその手を取りひたすら泳いだ。これでプールデートも行けるようになったなと、喜んでいたら雨が降り出してきた。体を拭いて教室に戻る。次第に強くなっていく雨がどこかセンチメンタルな雰囲気を────ぶち壊すようにデンジの腹がぐぐうと叫んだ。

 

「……泳いだら腹減っちまった。弁当食わねえか?」

「……そうだね。食べてる間に雨も止むかもしれないしね」

 

 そう言って2人は『二枚舌』の特上牛タン弁当を開ける。6㎝×12㎝×5の㎝大きめのタッパーには白米と牛タンが1:1に敷き詰められており、どこか運動部っぽさを感じるようなものだった。

 

「わっ、本当に特上牛タン弁当だ」

「ここの牛タンめちゃウマいぜ? いつかレゼも店に連れてってやりてえな……く~! 相変わらずウメえなあ! この柔らかくてゴリゴリした食感が最高なんだよ!」

「デンジ君って本当に美味しそうに食べるよね……ん~! 本当だ! 柔らかいのに噛みごたえがスゴイね! しかもタンなのに脂も乗ってる! でも全然ヤな感じじゃない!」

 

 俺の力で出来立てにした方が美味いだろうが、このままで十分と言わんばかりに2人ともキャッキャしながら弁当を食べていく。これはもうアレをするしかないだろう。

 

(おいデンジ、あーんするんだ)

(任せろ!)「レゼ、あーん」

「あーん……ん~、デンジ君が食べさせてくれたからすっごくおいしいよ! お礼に……デンジ君も、あーん……」

「あーん……レゼが食わせてくれたからすげえウマいな! そういえばよ……」

(マキマさんにあーんしてもらったことがあるってか? デート中に他の女の名前は出すな。誤魔化しのために牛のチンコを使った料理があるって知識披露しておけ)

「……牛ってチンコも食えるらしいぜ」

「あはははははは! 食事中に下品だよ~!」

 

 授業でBig assを教えるようなレゼちゃんだからこれぐらい笑って済ませられる様だ。こうしてこの教室は甘酸っぱい青春と焼肉屋みたいな匂いで満たされていき、2人の腹も心も満たされていった。

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