その悪魔は嘘か真実か?   作:神剣狩刃

22 / 45
第22話 二枚舌・血・デート

 まずは公安のスーツなどとお堅い服を着ていては何も楽しめないので、近くのファッションセンターに行って色んな服を着てみる。血を訪仏させる赤いワンピース、スポーティーなシャツとデニムジーンズ、ゴシックな白いカーディガンと黒いセミロングスカート、ちょっと芋っぽい赤紫のジャージ、パワーちゃんは可愛いから何着ても似合う。

 

「費用は公安が持つし全部買っちゃおうか」

「そうじゃな! ひとまずはコレがいいのう!」

 

 彼女は嬉しそうに最初の赤いワンピースを選んだ。今度は僕の服を選ぶ番になったので、彼女に見繕ってもらうことにした。

 

「王もこれが良いじゃろ!」

 

 ウキウキの彼女が持ってきたのはお揃いの赤いワンピースだ。この服は僕の新しい一張羅にして家宝になるだろう。多くなった荷物を置くために一度『二枚舌』に戻る。ニャーコちゃんもニャンニャンと褒めてくれているので、最高のカップルということだろう。

 

「それじゃあ何食べに────」

「度々邪魔しちゃってごめんね。レイエルから頼まれてた物を届けに来たよ」

 

 マキマさんは何回僕と彼女の付き合いを邪魔すれば気が済むのだろうか。露骨なしかめっ面をして外に出ると、これまた趣味の悪い真っ黒なベンツが停まっていた。

 

「トランクと後部座席と助手席に凄い量の牛タンがあるの。搬入手伝うね」

 

 在庫問題がすぐ解決すると言ってもこんなすぐに解決されても困る。とりあえずマキマさんと協力して店の業務用冷凍庫に牛タンを入れていく。人一人分ぐらいあったが、アイツはどんな悪魔を殺したのだろうか。しかし何の悪魔が牛タンになっていようと、アイツと契約している僕では状態変化を解くことができない。気にしたって仕方がないので頬を叩いて気持ちを切り替える。ニャーコちゃんに晩御飯をあげて、晩御飯を食べに行く準備をする。

 

「改めて……何食べに行こうか?」

「肉じゃ! 今日も腹一杯肉を食うぞ!」

「オッケー、昨日食べてないすき焼きでも食べに行こうか」

 

 彼女を助手席に乗せて夜の街に躍り出す。サイドミラーに誰かに電話しているマキマさんが見えたがどうでもいい。ここからは誰にも邪魔させない。僕達のお楽しみの時間なのだから。

 

「…………本当にパワーちゃんが大切なんだね、何も見えなくなっちゃうぐらい。もしもし? 車が無くなっちゃったから迎えに来てほしいの」

 

 

 彼女は好き嫌いが激しい。とりわけ野菜は絶対に食べないので肉は自動的に彼女の物になる。僕は最近の食生活で体形がふっくらしてきたので野菜だけで十分だ。割り下が染みた肉を鮮やかな黄色の卵にくぐらせて彼女の口に運ぶ。

 

「はい、パワーちゃん、あーん……」

「ムグムグ……ウマい! 王はデンジたちと違ってワシの言うことを聞いてくれるからいいのう!」

「言うことを聞かない方がおかしいからね。パワーちゃんは世界で一番かわいいんだから、言ったことは絶対だよ」

「そうじゃそうじゃ! ワシが世界で一番偉いんじゃあ! 日本初代大統領になるんじゃ!」

「なったら同性婚の法律も作ってくれる?」

「もちろんじゃ! どんな法でも作ってやるわ! 手始めに消費税100%じゃ!」

 

 守ってもらえるとは微塵も思ていないが、今この場だけでも言ってくれるのはとても嬉しい。日本の未来を担う彼女にはどんどん食べて勢力をつけてもらい、この日本をより良い国にしていってもらいたい。支持率なんて反パワーちゃん派の奴らを黙らせればすぐに100%になるし────

 

「そう言えばなぜ王はワシの事を好きになったんじゃ?」

 

 これでつまずいていたら話にならないので、僕は受験生が解の公式を唱えるようにスラスラと答える。

 

「見た目と性格と強さが最高だから。パワーちゃんは僕の事好き?」

 

 彼女はもぐもぐしながらあっけらかんと答えた。

 

「好きじゃぞ。ワシの言う事をなんでも聞いてくれるからの」

 

 何となくloveではなくlikeな気がしたが、それでも彼女から好かれているなら何も問題ない。likeにもなれない奴がloveになれるわけがない。彼女の好意を受けながら食べる野菜は格別だ。周りの人間はあの人可哀そうみたいな目で見ているが、彼女の食べ残しを頂ける幸福が分からないバカばかりで向こうの方が可哀そうだ。

 

「ふー……流石に腹一杯じゃ。今度は和菓子が食いたいのう」

 

 満足そうな彼女の手を引いて会計を済まし、給料半月分の領収書を切ってもらう。美味しかったですとマキマさんに写メを送っておけば後は良い感じにしてくれるので、『二枚舌』に帰って和菓子の準備を始める。

 

「何食べたい?」

「羊羹が良いのう」

「今から作ると明日の朝御飯になっちゃうなあ……買った奴でもいい?」

「今すぐ食えるなら構わんぞ」

 

 便利な店(コンビニエンスストア)で大量の羊羹を買って彼女の前に広げる。バリバリと開けて美味しそうに食べている間に明日の朝ご飯用の羊羹を作る。水、寒天粉、砂糖を鍋に入れて煮詰め、こしあんを何度かに分けながら加えて混ぜる。適当なタッパーに入れたら常温になるまでパワーちゃんと遊び、冷蔵庫にぶち込んで明日まで冷やす。

 

「明日から忙しそうだし僕達も寝ようか。それじゃあお休み────」

「王、今日は一緒に寝ないか?」

「寝る」

 

 反射的に答えてしまった。これで寝なかったら僕の舌が爆発してしまうが、寝てしまったらパワーちゃんの身が危ない。

 

「……僕、寝相に自信がないんだけど大丈夫?」

「デンジよりはマシじゃろ。それにワシは強い。多少王に殴られたり蹴らりたししても蚊に刺されたようなもんじゃ」

 

 彼女の血を吸って生きていける蚊が羨ましい。僕だって彼女の血を由来とするあらゆる体液を吸って生きていきたいのに。ともかく寝間着に着替えて彼女と一緒にベッドに入る。

 

「うっ、お、おお……!」

 

 ヤバい彼女の顔が目の前にある近すぎる可愛すぎるヤバいヤバいこれキスしちゃうんじゃないかキスしちゃったらそのままエッチしちゃうんじゃないかいくら何でも早すぎるけど嬉しすぎる死んでしま────

 

「んあ」

 

 彼女の口が開いたかと思えば僕の首元にサクリと痛みが走る。そして吸い上げられる感覚が走る。

 

「んー……? 意外とウマくないのう……」

 

 彼女が僕の血を吸っている。何をされたのかを理解すると同時に言語野が機能を停止した。

 

「パっ、パワっ、パっ……ち、ち、ち……!!!」

 

 わああああああ──────

 

 

 目が覚めると目の前には涎を垂らしながら眠っている彼女がいた。寝惚けた頭では何も理性の枷をつけることができず、なにも躊躇いなく唇を重ねていた。餡子の味がして美味しかった。彼女の口から糖分を補給できたおかげで段々頭が働いてくる。そういえば昨日の夜に歯磨きをしていなかった気がする。ムクリと起き上がって彼女の寝姿を視界に収める。眠っていても可愛────

彼女の呼吸に合わせて二つの禁断の果実が揺れる。その瞬間、僕の邪心がムクムクと大きくなっていった。

 

「今ならバレないんじゃないか……?」

 

 手を伸ばすだけならまだセーフだが、手にしたらもう後には引けなくなる。まして口にしたら、彼女がいる公安(エデン)から追放されるかもしれない。ここはギリギリ理性を働かせて、彼女の許可を得ることにした。心の底から申し訳ないと思いながら、彼女の体を揺らす。

 

「パっ、パワーちゃん……ちょっといいかな……?」

「んあ……? なんじゃ……?」

「パワーちゃんのおっぱい、揉んでもいい?」

「デンジみたいなことを言うのう……ウマい飯の礼として1揉みならよいぞ……」

 

 許可をもらったので手に全神経を集中させる。そして夢にまで見た彼女おっぱいで掌を満たす。

 

「おっ、おおっ……!」

 

 服越しだというのにその柔らかさがよく分かる。そこまで大きい訳ではないが、僕の小さな掌には丁度いいサイズだ。ずっとこうしていたいが約束を破る訳にはいかないので手を離す。

 

「……ありがとうパワーちゃん……最高だった……」

「そうかそうか……ワシはもう一眠りするから飯の準備ができたら起こしてくれ……」

 

 そう言って彼女は再び眠りに着いた。そんな自由気ままな彼女を見ながら、僕は今日が最高の一日になる事を確信した。




「流石に生おっぱいは揉んでいないよ。服越しだよ」
「ワシの胸は需要があるのう……『二枚舌』の看板メニューにどうじゃ?」
「そうすると営業形態を変えなきゃいけなくなるから。色々終わったら考えるよ」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。