今日からデンジくんの護衛が始まる。そのメンバーを紹介していこう。
「示札さんがいるとはいえ気を引き締めないといけませんね」
まずは未来の悪魔による数秒先の未来視と狐の悪魔によって範囲攻撃ができる、丁髷のイケメンこと早川くん。
「でも、王ちゃんがいるのに他の人も呼ぶなんて戦力過剰じゃない?」
次に早川くんとお揃いの未来視と幽霊の悪魔による干渉不可の右手による攻撃、レイエルの"生きてる"状態によるって不死身になった、眼帯の美女こと姫野さん。
「噂は聞いていますが……本当にこの人で大丈夫なんですか?」
「何というか……明らかにヤバい奴だが……」
次に宮城公安対魔2課から派遣された金髪のデコ広のくせに偉そうな眼鏡の
「コイツヤヴァイ……チェンソー様殺そうとしてる……」
次に床でヒレだけちゃぷちゃぷ揺蕩っているサメの魔人ことビーム。
「もう殺そうとしてないよ。パワーちゃんに手を出したら殺すけど」
次に不死身のNo.3を名乗ろうか、それとも今まで通り『二枚舌』の女店主でいいか悩んでいる僕。
「バーガー全種とは王も分かっておるのう!」
そして魅力を語ると3日はかかってしまうパワーちゃん。この最強メンバーに加えて京都から3人来るらしい。僕としては人が多すぎると逆に狙われそうだとも思ったが、彼女との結婚式が報酬だから任務への文句は言わないことにした。
聡明な彼女の発言から分かる通り、僕達はハンバーガー屋にいる。恒例の注文をしてやってきたバーガー達から彼女に好きな物を選んでもらい、野菜を取り除く作業を始め────日下部が僕の手に触れて止めた。
「栄養のバランスをととのぉ!?」
僕はその手を捻って日下部を地面に伏せさせ、その顔を踏みにじった。
「パワーちゃんはね……野菜なんて食べないんだよ。パワーちゃんはね、言うことは一貫しないし、トイレもたまにしか流さないし、やること全部がめちゃくちゃでなきゃいけないの。それだから僕はパワーちゃんが好きになったんだよ」
「言うの忘れてたけどよお、示札さんはパワ子の事になるとマトモじゃなくなるからな」
「い、イカレてやがる……」
「それが僕の愛だから」
邪魔者がいなくなったので彼女が食べやすいように改めて野菜を取り除いていく。取り除いた野菜は僕かデンジくんが処理する。
「家でもあんな感じだったな……」
「野菜食べないとお肌に悪いぞパワーちゃん?」
「お肌が悪くなったら僕がパワーちゃんのスキンケアができますね」
「示札さんのパワ子への愛は恐ろし────いってぇなぁ!?」
「きゃっ!?」
突如デンジくんが叫んで、僕達の横を通り過ぎようとした黒髪セミロングの女性に腕を掴んだ。女性はバーガーの乗ったトレイを床に落とし────キインと不自然な金属音が響いた。床を見ると血の付いた釘のような物が落ちていた。
「あ……? あー……なるほどな……ってことは……? ……悪ぃ、オマエのアクセサリーかなんかが俺に当たっちまったみてえだな」
「いえ……こちらも失礼しました……」
彼にしてはやけに大人しい対応でこの場を収め、女性とその隣にいた金髪碧眼の青年が再び注文をしに行った。少し感心した僕はちょっとだけ踏み入った話をしてみることにした。
「レゼちゃんとの恋で少しは大人になったんだね」
「あー……まあ、な……でも、あんまその話はしたくねえな……」
やはりあまりいい結末を迎えなかったようだ。そうなるだろうと思っていたので用意していた謝罪を繰り出す。
「ごめんごめん。僕のシェイクあげるから許して────」
「このシェイクはワシのじゃ!」
「……後でシェイク買うから許してに変えるね」
「シェイク貰えるならなんでもいいぜ」
やっぱり子供なのかもしれない。でも、僕だってパワーちゃんが貰えるなら許してしまうだろう。そう考えると、僕と彼はどこか似たような感性があるのかもしれない。もう少し落ち着いたら彼とまた遊びにでも行こうか、などと考えながら彼女からもらったトマトを口にする。
「そうじゃ王、歩いて疲れたからワシを背負ってくれんか?」
「いいよ」
「それぐらいはさせないと生物としてどうかと思いますけど」
「というか、王ちゃんの背でパワーちゃん背負えるの?」
脊髄反射で承諾してしまったが姫野さんの言う通りで、僕は彼女より15㎝ほど低い。おんぶするとなると彼女の足元を汚してしまうかもしれない。でも、他の奴に彼女を預けるなんてそんな危ない事はできない。彼女の重みを背中に受けながら店を出る。
護衛が始まって数日、指定されたルートを皆で歩いていると向こうから陽気な声で暴力さんが声をかけてきた。
「ヘイよ~元気? おっ、王ちゃん、背伸びた?」
「背負っているパワーちゃんを足してくれるならそうなりますね」
その隣には相変わらず薄幸そうで辛気臭い東山さんと、頭に包帯、目の下に傷跡と何かあったであろう公安のスーツを着た男性がいた。あまりにも見慣れない顔なので質問する。
「そちらはどなたですか?」
「彼の護衛に京都から来た3人の1人だよ。ほら、他の2人は途中で悪魔の襲撃にあって殺されたって言ったじゃん?」
「そうでしたっけ? まあ、貴方も死んでも良いから護衛は成功させてくださいね」
「何やと貴様ァ!」
男が僕に詰め寄ってくる。彼女を背負って若干低くなっている僕に顔を合わせている辺り、語気の粗さに反して意外と冷静のようだ。
「こっちはバディと師匠殺されとんや────ぼはあ!?」
男の舌が爆発した。その瞬間、僕の脚は男の股間を蹴り上げていた。
「どの部分が嘘か分からないけど、初対面の人間に嘘を吐くような奴は信用ならないね。パワーちゃん、コイツの血を操って喋れるようにしてくれる?」
「しょうがないのう。ほれ」
彼女のおかげで男に血の舌ができて喋れるようになった。痛みに悶える彼の背中を踏みつけながら質問を始める。
「どこで嘘を吐いたの? バディと師匠が自殺したの? それとも君のバディと師匠は死んでいないの?」
「な……何者だお前……!?」
「……不死身の女店主だよ。君からの質問に答えたから今度は君が答える番だよ。どこで嘘を吐いた?」
「だ、誰が喋る────」
「お願いしてる内に答えた方が身のためだよ」
背中を強く踏んで背骨をボキリと折る。男が叫び声をあげたのを聞いて一つの疑問が浮かんだ。
「君、本当にプロ? 骨の一本が折れたぐらいで叫ぶかなあ?」
「お、俺はプロのデビルハンターで────ぼわあ!?」
そこが嘘なら遠慮する必要は無い。そのまま足を移動させて背中から心臓を踏み潰す。バキボキグチャリと、人が出せる音の中で上位に入る痛々しい音が奏でられる。足を引き上げると公安の黒い靴が魅力的な赤い靴に変わっていた。
「踊りはあんまり得意じゃないなあ……でも、パワーちゃんと社交ダンスしたいから今度習おうかな」
「ワシは超上手いぞ? 初段を持っておるからの」
確か1級より上はブロンズとかだったような気がするが、パワーちゃんの中ではそうなっているのだろう。
「な、な……なにやってるんですか……何やってるんですか、示札さん……」
「その人……護衛に来てくれた人……だよ、ね……」
イケメンが崩れる程驚いている早川くんと、同じぐらい崩れている姫野さんは事情がよく分かっていないらしい。
「なんて事だ……! 2人共見ろ!! 顔が変わった……!」
日下部の言う通りに見てみると、男の顔が変わっていた。玉置曰く、アメリカの殺し屋まがいのデビルハンターで、皮の悪魔と契約している三兄弟の1人らしい。なら、バックフォローのためにこの場に他の2人がいる可能性が高い。僕は咄嗟に叫んで次の一手を打った。
「皆さん動かないでください! 動いたら殺します!」
目の前で人を殺した奴がこう言ったら動かなくなるのが人間の生存本能だ。そして僕は一人一人に質問をしていく。
「さっき僕が殺した奴の兄弟ですか?」
肯定したら殺されるだろうから、どんな奴も否定するはずだ。しかし────
「い、いや、違う────ぶああ!?」
変身しても兄弟であるという所は変えられないから、否定して舌が爆発した奴が兄弟だ。
「兄さん!? あっ!」
出来の悪い弟を持つと兄は大変だろうなと思いながら2人まとめて蹴り倒す。その衝撃でアスファルトにひびが入り、液状のレッドカーペットが敷かれた。まもなく死ぬであろう2人に向けて、僕はパワーちゃんを降ろしながら歓迎した。
「遠路はるばるようこそ日本へ。ここからは美女がもてなしてくれるからゆっくり楽しんでくれよ。パワーちゃん、こいつら食べていいよ」
「護衛の仕事はウマい飯が食えて、いくらでも血が飲めていいのう……」
あまり飲み過ぎるとまた血を抜かれるんじゃないと思ったが、美味しそうに飲食している彼女を見るとそんなことを言う気にはとてもなれなかった。
「吉田ヒロフミ?マキマさんは頼んだらしいけど、都合がつかなかったんだってさ」
「ワシと王がいれば問題ないじゃろ」
「アイツもいれば完全な護衛だったんだがな……」
「先生のお墨付きとはすごいね。僕とどっちが強いんだろ」