その悪魔は嘘か真実か?   作:神剣狩刃

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第26話 地獄でまた会ったなベイビー

 車を振り回して人形たちを轢き殺しながら階を昇っていくと、暴力さんと東山さんが人形を倒している現場に遭遇した。誰かが公安のデビルハンターがあちらこちらのビルにいると言っていたから、どこかのビルから応援に来てくれたのだろう。ボオンと車を振って存在感をアピールすると東山さんが膝から崩れ落ちた。

 

「しめ、しめすふださん……それ、わ、わた、わた……わ……私の車……」

「コレ東山さんのだったんだ。ゴメン。レイエルが戻ってきたら黒ベンツで弁償するよ」

「随分ご機嫌だな、良いことあったのかい王ちゃん?」

 

 パワーちゃんに血を吸われたからだろうか、今日はやけに調子が良い。しかし、彼らがいるのにNo.1である先生がいないというのはおかしい。同じ4課の繋がりで何か知らないだろうか。

 

「先生がどこにいるか知らない?」

「岸辺さんか? 俺達に人形を始末しろって言っていたけど……そういやどうしたんだろ?」

 

 クァンシさんがこのビルにいると知ったら必ずここに来るだろう。ただ、彼女と戦って先生が無事でいられるかは分からない。死ぬことはないだろうが────窓の外に落ちていく先生の姿が見えた。恐らくクァンシさんと会ってひと悶着あり、なんやかんやありましてああなったという感じだろう。窓辺に立って確認した所、道路を砕きながら綺麗に受け身を取って立ち上がったので心配する必要はないだろう。

 

「先生って人間辞めてるよね」

「示札さんが言う事じゃないと思います……」

 

 後でコイツをレイエルの玩具にしてやろうなんて考えていると、辺りが急に真っ暗になった。

 

「なんだこりゃ……!」

「え……? え……?」

「2人とも周囲の警戒を怠らないで」

 

 3人で構えていると、足元に草原が広がり天井に無数の扉がある不思議な空間にいた────認識とほぼ同時に頭が痛みだす。苦しい。吐きそうだ。

 

 

 頭の中に無理矢理ビデオテープを差し込まれたように映像が流れ始める。日乃門仁と鏡狼姿のレイエルが先の天井が扉草原に立っている。何やら面白そうに笑って会話をしている。

 

「君たちは中々面白い事を考えるね」

「だろ? ヒーちゃんもなんか面白い事やろうぜ?」

「そうだねえ……僕は人間達の裏社会に銃を配ろうかな」

 

 そう言って彼の手に小型の拳銃が現れる。

 

「流石────の悪魔だ、やることがえげつないぜ」

 

 映像にノイズが走って聞こえない。彼は悪魔だったのか?

 

「君たちが何をするか……僕もちょくちょく現世に行って楽しませてもらうよ」

 

 この映像はレイエルと一緒にいる誰かの記憶なのか? 分からないことが多すぎる────

 

「だからお前は誰だって聞いているんだよ!!!」

 

 早川くんの怒声で意識がはっきりする。何故か早川くんが半端に頭からチェーンソーの刃が出てるデンジくんの胸ぐらを掴んでいた。デンジくんもやけに気分が悪そうで顔が青ざめている。

 

「んなの後回しだ……ここは地獄で、銃の悪魔よりもヤベエ根源的恐怖の名前を持つ悪魔がうじゃうじゃいる……もしアイツらに敵対したら俺たち全員死ぬぞ……」

 

 何故彼がそんなことを知っているのだろうか。それに俺たちって他に誰が────周りを見渡すとビルにいたはずの皆がいた。パワーちゃんが冷や汗をかきながら蹲っていたのが見えたから、駆け寄って背中を擦ってあげた。

 

「だ、大丈夫……パワーちゃん……」

「お、王か……大丈夫な訳ないじゃろう……」

 

 あのパワーちゃんがこうなるなんて。また頭が一杯になって吐きそうになる。

 

「……あ! ああ~!! 終わっちゃった! 終わった! 終わった! きた! 来ちゃった! あ……来る……闇の悪魔……」

 

 丸ポニテの女魔人が叫ぶと同時に天井の扉の一つが開き、黒い何かが地面にべちゃと落ちた。そこから何かが生え、その前に通り道のように祈る宇宙飛行士の上半身と下半身が現れた。そしてカエルの鳴き声がゲコと響き────全員の両腕が飛んでいた。何が起きたのか全く分からなかった。見上げるとそこには、両脚が1つの首から2つの体が生えた人間で、胴体は脚の顔含め4つの顔と胴体で、一番上の腕からマントが生え、顔は髑髏が恐ろしい鳥の仮面を被ったような、この世のものではない何かがいた。皆が困惑してる中、先日どこかで見たような金髪碧眼の青年が闇の悪魔の前に跪いて話を始めた。

 

「私は人形の悪魔です。契約通りチェンソーの心臓を持ってきました。私にどうか……マキマを殺せる力を下さい」

 

 闇の悪魔は果物をもぎ取るように青年の首を取った。日下部が血に染まった袖で陣を描いて石の悪魔で不意打ちを決めようとしたが、石の悪魔が掴まれて砕かれ日下部も同じ末路を辿った。ビームがデンジ君に血を与えながら切り刻まれた。クァンシさんと玉置が蹴りで応戦しようとしたら、何本かの腕を振るわれて微塵切りにされた。パワーちゃんが巻き込まれたから咄嗟に飛び出したが、指を差されて全身の骨が砕けて動けなくなった。仮面を外した暴力さんが踵落としを決めようとしたら、鈴のついた剣に貫かれて爆散した。

 

「……死ぬかも」

 

 "生きてる"状態で死ぬわけがないのに、自然とその言葉が口から出ていた。本当にそう思ったのだ。でも、彼は違った。

 

「手を貸してくれ、ヒーちゃん!!!」

 

 

 有り得るわけの無いデンジくんの叫び声と共に天井の扉が1つ開く。一口齧られた林檎が地面に落ち、そこから芽が出て不自然に十字架を模った人間大の木に育っていく。そしてミシミシとひびが入って砕け────中から190㎝のヒョロガリ坊主で釣り目の裸の男、日乃門仁が現れた。彼は一つ伸びをして周りを見渡して、溜息をつきながら肩をすぼめた。

 

「ダイエット成功したんだ、って喜びを分かち合っているじゃなさそうだね」

「逃げる手段は俺がどうにかするから皆を治してソイツを足止めしてくれねえか!?」

 

 彼はサムズアップして笑顔で答えた。

 

「倒せって言いわれたら無理だったけど、それぐらいならお安い御用だ。"縫合手術"」

 

 彼がオーケストラの指揮者のように腕を振るうと────皆の体がくっついていた。

 

「腕の取り違えはないかな? あと、くっつけただけだから蘇生はそっちで任せるよ」

「そこまでやってくれたら十分だ! お前ら! 一旦ここから離れるぞ! ヒーちゃんの"力"に巻き込まれたらくっつけてもらえねえぞ!」

 

 もう頭が働いてくれないので、デンジくんが言うままに動ける奴で動けない奴を抱えて走る。僕は全身の骨が折れているので姫野さんに抱えてもらった。運ばれている最中、後ろから爆音と後ろからでも眩しい光が炸裂していた。

 

「人間の技術の進歩は恐ろしいな……! 数年後には地球を滅ぼせる兵器でも作るんじゃねえか……!」

 

 この状況でも余裕そうな彼を見て少しずつ頭が動き出す。そして全ての情報が繋がっていき、一つの真実にたどり着いた。

 

「君、レイエルだろ」

「……答え合わせといこうか、解除」

 

 すると僕の想像通りに、たちまち鏡で出来た狼男の姿になった。

 

「なっ……!? お前はレイエル……!?」

「ウソ!? なんで!?」

 

 彼は驚く早川くんと姫野さんを嘲笑いながら立ち止まった。

 

「種明かしは地獄ここを出てからにするからそれまでは何も言うなよ? 特に今から俺がやることに対して、『お前はレイエルだろ』とか言うなよ? 下手すりゃ地獄から出られなくなるからな」

 

 そう言ってレイエルは抱えていた日下部像を鏡像に変え、全身をその瞳に写して宣言をした。

 

「"俺は人間の悪魔だ"」

 

 レイエルが日乃門仁になった。つまり、日乃門仁は人間の悪魔と言うことだ。

 

「人間の悪魔の能力は"人間の技術を再現する"だ。乗物、武器、医療……人間の歴史が続く限りヒーちゃんは永遠に強く成り続ける。だから人間に友好的なのか、それとも生まれつき奇跡的に友好的だったのかは分からねえけどな」

 

 そう言って彼は両手から裸の僕をボロボロと生み出していった。彼は生み出した僕をぐちゃぐちゃ食べながら指示を出す。

 

「悪魔並びに魔人諸君はこれで済ませろ。王ちゃんも俺の力を分けてるから治るはずだ。他の人間は知らねえ」

「「「ウギャアアア!!!」」」

 

 早川くんはビームを、姫野さんは僕を、東山さんは暴力さんを、パワーちゃんはパワーちゃん自身を、レイエルは中国の刺客たちに僕を与えた。自分が食べられる様を見たり自分を食べたりするのはあまりいい気分ではないが、鏡像になった日下部と手遅れだった玉置を除いて全員ある程度動けるようになったので文句は無しにしよう。

 

「さて……こっからがクライマックスだ。解除。そして────俺はマキマさんだ」

 

 今度はレイエルの姿からマキマさんになり、そして一体の僕に触れた。

 

「地獄の悪魔よ、わたしのすべてをささげます。なので、どうか私達をお帰しください」

 

 僕に言わせ終わると視界が白くなり────僕達はビルの屋上にいた。

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