その悪魔は嘘か真実か?   作:神剣狩刃

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第3話 二枚舌の本性

 この状況では歓迎会の続行は不可能だと判断され、デンジくんを除いた特異4課の皆は帰ることになった。

 

「俺はゲロ女を送り届けてくる。道で吐くのは自由だが俺にかけたら殺すからな?」

「レイレイレイエル~に……お持ち帰りされる~……」

「俺はお前のせいで女の上の口にキスできなくなったんだ。詫びとして下の口にキスさせろ」

 

 後で姫野さんに牛タンを送って詫びるとしよう。レイエルと皆を見送って僕とデンジくんで店の掃除を始め────デンジくんが血まみれの牛タンを頬張っていた。酒には手を付けていないあたり最低限の良識はあるらしい。

 

「牛タンって血がついててもうめぇんだな……」

「……廃棄するつもりだったけど、君が良いなら好きなだけ食べて。僕は掃除してるから」

 

 血の付いた畳や座布団やを店前に出し、テーブルについた血は布巾で拭いて、壁に付いた血は適当な手描きポップで隠す。後はレイエルの能力で良い感じに仕上げるとしよう。

 

「……キスしたかったなぁ……」

 

 彼の心はここにあらずという感じだ。この調子のまま返したら彼女が被害を受けるかもしれないから、ここは僕が一肌脱ぐとしよう。彼に近づいて耳元で囁く。

 

「そんなにしたいなら────僕とする?」

「うえぇ!? な、なんで!?」

 

 こういう初心い反応する奴をからかって僕と同じように恋愛観をぐちゃぐちゃにしたいからだ。

 

「僕が君とキスをしたいから、じゃだめかな?」

「いいにきまってんだろぉ!」

 

 見事に引っかかった彼を『特別個室』と書かれた部屋に連れ込む。そこは浴室と寝室が一緒になったような、言ってしまえば特殊浴場のような部屋だ。

 

「す、すげえ……風呂入ったらすぐ寝られんじゃん……!」

「驚くのそこなんだ。まあとりあえず……隣に座りなよ」

 

 レイエルが女と寝るなら最高のベッドが良いだろ言って、僕も賛同したふっかふかのベットに腰を掛ける。彼がぎこちなく僕の隣に座り膝に手を置いた。これが僕を誘うための演技だったらレイエル以上の女たらしだ。その手の上に僕の手をそっと置いて、彼の顔を見て妖しく微笑む。

 

「……僕からする? それとも君からする?」

「しめっ、示札さんからお願いし────」

 

 言葉を遮るように唇を唇で塞ぎ舌をねじ込む。さっき濃度を確かめるために飲んだレモンサワーの風味が彼の口に広がっているはずだ。彼は目をパチクリさせながら僕という濁流に身を委ねていた。折角だからもっと彼をからかってやるとしよう。唇を離してわざとらしくベッドの上に転がり、右手の人差し指をあざとく咥えて内股になる。

 

「……しちゃう?」

「し……しちゃうって……って……」

「……デンジくんがしたいこと」

「そ……それって……セッ、クス、でも……?」

 

 これだから新人歓迎会は最高だ。世間知らずの箱入り娘はレイエルに、エロ本やAVの知識しかないような雄猿は僕に弄ばれる。それで後で適当にポイ捨てすれば二度とまともな異性交際は出来なくなる。このためだけにこの飲み屋をやっていると言っても過言ではない。にやけるのを何とか我慢しながらあからさまに誘う。

 

「……でも、いきなりは怖いから……おっぱい揉んで欲しい、かな……デンジくん、おっぱい揉める?」

「ま、任せろ! 俺は女の胸を揉んだことあるからな! パワー……はノーカウントにして、あのマキマさんの胸を揉んだからな!」

「ねえ今なんて言った?」

 

 頭が何か思う前に彼の胸ぐらを掴んで言葉が出ていた。記憶を遡った限りでは、コイツは彼女の胸を揉んだって言ったはずだ。

 

「ぱ、パワーはノーカウントにしてマキマさんの胸を────」

「ふざけるなよお前」

 

 僕は彼をベッドから突き飛ばして壁に叩きつけた。ピクピクしながらうつ伏せになり、壁に大の字の跡ができたがどうだっていい。そのまま彼の頭を右足で踏みつけながら唾を吐きかける。

 

「他の女の名前を出したのは別にいいけど、彼女の名前を出したのが本気で許せない」

「か、かのじょ……? も、もしかしてマキマさん────」

 

 床か頭蓋骨からみしりと音がする程強く踏みつけ不快な言葉を遮る。このまま踏みつぶしてやりたいところだが、万が一にも彼女が悲しんだら困るので足を離す。

 

「……彼女が君の蛮行を許したように今回だけは許そう。ただし次に同じことを言ってみろ、その時は君を牛タンにしてやる」

「も、もしかしてあの牛タンって……人から作ってんのか……!?」

「人からは作っていない、とだけ言っておくよ。ほら、早く帰りな」

 

 彼を引っ張って店の外の血まみれの畳の上に放り投げた。事情を知らない人間が見たら殺人現場のように見えるかもしれないが、万死に値する人間なので現実になってくれるとありがたい。

 

 

 翌早朝、レイエルが滅茶苦茶スッキリした顔で帰ってきた。恐らく姫野さんとしっぽりやってきたのだろう。僕の姿でやってきたのなら下手な責任を考えなくていいからありがたい。

 

「トラウマ克服したわ」

「それは良かった。こっちは最悪だったよ。デンジくん、彼女の胸揉んでやがった」

「その彼なんだがよ……ちっと話したいことがあるんだ」

 

 いつになく神妙な顔で言っているからかなり重要な話だろう。僕はお冷を二つ用意して話の準備をした。

 

「昨日デンジくんはチェーンソーの武器人間に変身しただろ? 多分、"チェンソーの悪魔"と関りがあるはずだ」

「……()()()()()()の悪魔じゃなくて?」

「どっちでも同じだろ。俺のダチの悪魔が地獄にいるんだけどよ、最近チェンソーの悪魔の姿を見なくなったって言ってたんだ。もしかしたら人間界にいるんじゃないかって予想してたが……デンジくんが知っている可能性がある」

 

 すごい話なのかもしれないが、僕にとっては重要な話じゃない気もしてきた。必要以上に知ると面倒なので本題をとっとと聞こう。

 

「何がしたいの?」

「しばらくデンジくんに付きまとうからしばらくこの店を離れたい」

「どうぞ勝手に。どうせ畳や座布団を新調するまでこの店は閉店だから」

 

 お冷をくっと飲み干して特別個室のベッドに沈み込む。この壁も直さないといけないが全くその気になれない。無駄にムーディーな赤い天井に向けて両手を伸ばす。

 

「……僕も彼女のおっぱい揉みたいなあ」

 

 レイエルに頼めば変身して揉むことは出来るだろうが、本人の生のおっぱいを揉みたい。出来ることなら舐めて吸って、何だったら彼女から産まれ直して彼女の母乳で育ちたい。僕はこれだけ願ってなお叶っていないのに、彼は欲望のままに生きているだけで叶えやがった。絶対に許せない。レイエルの考えにもよるが、いつの日か二度と彼女に近づけないようにしてやる。

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