その悪魔は嘘か真実か?   作:神剣狩刃

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第31話 充填作業

 本日は本部で銃の悪魔討伐作戦の参加者に対して、銃の悪魔に関する機密事項を話をすることになった。ついにこの時が来たとギャリギャリ口角が上がるのが抑えられない。

 

「やっぱり君はロクな悪魔じゃない」

 

 横にいる王ちゃんが左目尻をピクつかせながら脇腹を小突いてきた。最近色々あってお疲れでイライラが溜まっているのだろう。俺は笑って許す。

 

「悪魔にロクな奴は……暴力は比較的マシか」

「俺をよく言ってくれるのはいいけどよ~、王ちゃんをあんまり困らせるなよ?」

「そうじゃそうじゃ! 王はワシのモノじゃ!」

 

 悪魔達からは酷い言われようだが、人間達からはどうだろうか。

 

「マキマさんから聞いたぞ。お前、天使とサメを殺ったんだってな?」

「幾ら悪魔の事情があるからって……仲間を殺すなんてひどいよ」

 

 中々悪くない評価だ。俺の計画はかなりいい所まで進んでおり、今更俺を嫌う人間風情に止められることはないだろう。

 

「それらの件に関してのレイエルの処分は銃の悪魔を倒してから考えてもいいかな? 彼の力がないと銃の悪魔を倒すのは難しいからね」

 

 マキマさんがこういえば4課の人魔は何も言えなくなる。それに今は銃の悪魔の話をする場であって俺を糾弾する場ではない。ボディーソープで洗髪したようにギシギシした雰囲気で話が始まる。

 

「現在、銃の悪魔はすでに倒され拘束されているの」

 

 マキマさんの一言は俺と王ちゃんを除いて全員の度肝をブチ抜いた。そのまま彼女が抜いた肝を握りつぶす様な発言をした。

 

「今……銃の悪魔の本体はアメリカが20%、ソ連が28%、中国が11%、そのほかの国が4%を所持していて、そこりの37%が肉片として世界中のあちこちの悪魔が持っている」

 

 肉片だけでもあれだけ強力なのに、本体を持っているとなれば外交でかなり強く出られるだろう。悪魔に頼った外交などロクな物にならなそうだが、力を持つ者が世界の主導権を持てる昨今なら文字通り悪魔にでも魂を売るのだろう。

 

「だったら……前の襲撃事件で使われた銃は……!」

「ありゃ人間の悪魔ヒーちゃんがバラ撒いたヤツだな。銃への恐怖は銃の悪魔への恐怖でもあり、銃を持った人間への恐怖でもあるからな」

 

 面白い事をやると言ってた割には随分と小さなことだが、それでも十分人間達から恐怖を得られているようだった。もっとも、恐怖だけではなく消えぬ復讐すらも生み出しているが。

 

「それじゃあ……銃の悪魔を倒しに行くというのは……」

「……そうだね、戦争のようなものになるだろうね」

 

 今回の作戦でどこかの国が崩壊してもおかしくないだろう。そうなったら何人の人間の人生が滅茶苦茶になるか。それを考えただけで涎が止まらない。

 

 

 落ち込んだ雰囲気ではどんな作戦もうまくいかないだろうから、『二枚舌』で前祝いをすることにした。

 

「「「「お帰りなさいませご主人様! お嬢様!」」」」

「ハロウィン!」

 

 新人チャイナメイド5人衆が俺たちを出迎え気分が上がる。因みに彼女達は銃の悪魔討伐には参加しない。他国に銃の悪魔を渡さない兼、王ちゃんに店の事を考えないで働いてもらうためだ。

 

「早く牛タンを持ってんか! あとレモンサワーもじゃ!」

「カワイ娘ちゃんたちが出迎えてくれるのは嬉しいけどよ~……」

「こ、この人達って……中国からの刺客、だよね……?」

「ど、どういうことだレイエル……? 流石にマキマさんからも聞いてねえぞ……」

「僕は説明したくないし、そもそも君が勝手にやった事だから君が説明するべきだよ」

 

 ということで事情を知らない3人のために説明をする。

 

「この度『二枚舌』に新人を雇うことにしたんだ。まずは飛び出る脳とお目目のハロハロちゃん、物静かでツギハギなヌイヌイちゃん、角の生えたロンロンちゃん、丸ポニテのピンピンちゃん、そして眼帯メイド長のクァンクァンちゃん」

 

 3人ともぽかんと口を開けて、事態を咀嚼している真っ最中のようだ。

 

「……舌が爆発しないってことはそういう体裁で契約したってことか。3人とも特に考えなくていいと思うよ。日本での安全を保障する代わりにこの店で働いていると思うから」

 

 他にも思惑があるのだが、大筋が合っているから特に否定することなく頷く。俺と王ちゃんを見て3人は考えるのを止めて、皆で仲良く席に着いた。

 

「ハ~ロ~ウィ~ン!」

 

 ハロハロちゃんがメニューを置いて、一つしかないオススメメニューを指差してくれた。

 

「『牛タン盛り合わせ~悪魔風~』……何がどう悪魔風なのかは聞かない方が良いよね」

「飲み物をどうするかしか悩まないですね。とりあえずレモンサワーにでもしますか」

「辞めなかったらコベニちゃんもコレを見れたのかあ……惜しいなあ……」

「暴力さんって意外と俗物的な所ありますよね。まあ、僕が言えた話じゃないですけど」

「王~、今日もワシと居られて嬉しいじゃろ~? ん~?」

 

 パワーちゃんの露骨な媚び売りが凄まじく、体を押し付け腰に手まで回している。アレは自分の魅力をとことん理解した上で、ああしていれば王ちゃんが自分を守ってくれると思っている悪い顔だ。王ちゃんはパワーちゃんに触れるとIQが一桁台になるので大正解だが、あまりやり過ぎるとまたベッドを買い替えるような事態になるから程々にして欲しい。睦まじい2人を見かねてか、クァンクァンちゃんが頼んでもいない皿をゴッと乱雑に置いた。

 

「お待たせしました。『牛タン盛り合わせ~悪魔風~』です。それとお嬢様方、よろしければ特別個室がありますが」

「食後に使うから準備して」

「おっ、王!?」

 

 王ちゃんの扱い方が分かってきているようで何よりだ。ちらりと早姫暴を横目で見ると、見て見ぬ振りをして牛タンを食べ始めていた。

 

「いつかこうなるだろうなって思ってはいたけど……」

「人目は憚ってくれるなら文句はないんだけどな~……」

「パワー関連になると示札さんは途端におかしくなるからな……」

 

 パワーちゃんの何が王ちゃんを狂わせるのだろう。そんな答えの見つからない疑問はやって来たレモンサワーと一緒に流し込むとしよう。ゴリジュワの特上牛タンにバチバチキンキンのレモンサワーが脳をぶん殴る。因みに今回振舞っている牛タンは元ビームで、悪魔及び魔人は強くなる。

 

「ゲホゲホ! 炭酸も濃度も強くない!?」

「メ、メニューよく見たら薄め弱めってのがありますね……ゲホッ」

「コレがデフォなのか? レイエルらしいけどよ、普通は濃いめや強めがオプションじゃねえか?」

「薄め弱めでそれぞれ20円引きだそうです。小賢しい商売してますね」

「ワシはこれぐらい濃い方がいいがのう」

 

 個性的なメイドさん達に強烈なメニュー、これを知ったらもう他の店には行けなくなるはずだ。後は新規の客を呼び込む手段を考えれば『二枚舌』も安泰だ。銃の悪魔討伐者もご愛用、みたいなポップでも作れば来るだろうか。あるいはパワーちゃんにもチャイナ服を着せてキャッチーでもしてもらおうか。その辺りは銃の悪魔を倒してから考えるとしよう。

 

 

 王ちゃんとパワーちゃんが特別個室に消えた所で楽しい前祝いがお開きになる。

 

「うへへ~……私も誰かとキスする~……」

 

 ゲロ女が出来上がっていたので介抱を買って出た。俺らしからぬ行動に早暴が驚いている。

 

「お前……姫野さんに何をするつもりだ?」

「暴力的な意味で手を出したら承知しねえぞ?」

「お前がそれ言うか? どんな意味でも手は出さねえよ。コイツとサシで話したいことがあるだけだ」

 

 王ちゃんの前で話を進めると舌の爆発を考えて中々話がスムーズに進まないというのもあるが、アキくんの前で話す訳にはいかない話をするからでもある。飲酒運転は良くないので背負ってマンションまで送る。

 

「狼に食べられる~……私、アキくんの事が好きなのに~……」

「そのアキくんの事を話すんだよ。着いたから鍵だせ」

 

 何度か入ったことがあるので家具の位置は覚えている。スムーズにベッドに転がし氷水を飲ませる。

 

「ん~……はあ……ちょっと酔い覚めたかも」

「結構重要な話をするからまともな判断ができると思うまで寝てろ。俺も寝るからもっと壁に寄れ。布団はやるよ」

「乱暴なんだか優しいんだか……どうせならアキくんに介抱されたかったなあ……」

「幾ら先輩といえど流石にゲロキスしたらコンされると思うぜ」

 

 こんな下らない話が出来るのも今回が最後になるかもしれない。なにせ今回の作戦で俺とゲロ女は俺の計画によって俺の共謀者の駒になるのだから。




「俺とゲロ女の関係はお口の関係止まりだ。セックスはしてねえ」
「好きなヤツがいるなら口までで止めてやるって言っていたからね。変な所で優しいよね君」
「ただし下の口の関係はある。王ちゃんの姿の時に一発ヤったが……女の快楽は男の快楽に勝てねえな」
「思い出させないでよ……」
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