その悪魔は嘘か真実か?   作:神剣狩刃

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第37話 多勢に無勢

「公安対魔特異5課、作戦開始────」

 

 マキマさんの声をかき消すように、僕の銀の拳とチェンソーマンと化したレイエルの顔がゴングの代わりになって戦いが始まる。バギャアンと激しい金属音と共に彼が吹っ飛び、ビルの壁面にめり込んだ。

 

「オイオイ……変身しなくてもそんなに強いのかよ?」

「これは心強い味方ですね」

「同時に手強いライバルでもあるがな」

「マキマさんに興味ないのが幸いかなあ?」

「……何でだ? 急に股間が痛くなってきたような……」

 

 5人がいつの間にか武器人間になっている。頭や両手の武器から察するに、長剣、槍、鞭 火炎放射器、刀の悪魔と言った所か。何であれ余裕がありそうだから僕から警告を促す。

 

「あれぐらいで決着が付いたら僕は呼ばれていない。奴はとんでもない方法で────」

 

 彼がめり込んだビルにチェーンが巻き付いていき、メキメキと音を立てて折れて地面と水平になった。いくら何でもそれを武器にするのは想定していなかった。僕は槍の悪魔に手を差し出て槍を譲り受け、彼がいるであろう地点に向けて投げた。ピュンと甲高い音が遅れて聞こえ、軌道上の建物の窓ガラスが割れる程の速度で投げた。それでも奴に届く前にビルで薙ぎ払われた。

 

「君も彼も並の悪魔ではないね」

「僕は一応人間……いや、この体の変化から考えるに魔人なのかも」

 

 恐らく僕は何かの魔人のはずだ。最近の外見の急な変化の原因は、悪魔の肉を食べ続けて魔人として強くなりすぎたからだろう。それに地獄に行った時とパワーちゃんの血を飲んだ時という、2つの脳内に映像が流れたタイミングも理解できる。ただ、その辺りを理解できたとしても全ては納得はできていなかった。

 

 

「鎖鎌ならぬ鎖ビルだぜえええ!」

 

 その考えを吹き飛ばすように彼がビルを振り下ろしながら僕達に迫っていた。彼は協力者の家ごと僕達を潰すつもりらしい。こいつらの中で一番範囲攻撃ができそうなのは────長剣と刀の2人に目線を送り、ビルを賽の目切りにしてもらう。

 

「いい判断力だな」

「敵に回ったらと思うとぞっとするぜ……」

「これで安心しているようなお前達じゃ話にならないね」

 

 僕が脚に力を籠めると同時に視界が暗くなる。咄嗟に見上げると再びビルが上から迫っていた。根元の方には足からチェーンを伸ばして空中で前転している彼がいた。

 

「知ってっかお前ら? 脚は腕の3から4倍の力があるんだぜ」

 

 理論上だと先に比べて3から4倍の速度でビルを振り下ろしていることになる。運動エネルギーは速度の二乗に比例するから、威力は9から16倍になるはずだ。それを迎え撃つために僕も足を振り上げる。あまりの速度にズボンが千切れ飛び、屋上がガラガラと崩壊して地上に戦いの場が移った。2棟のビルによる奇襲が失敗に終わった彼はとても嬉しそうに笑って僕達の前に立った。

 

「……王ちゃんなら知ってるか」

「君に散々教え込まれたからね。ところで6対1だけど勝てるの?」

「いや、7対1だ」

 

 彼が全身をチェーンで覆うと同時にゴッと衝撃波が当たって遥か彼方に吹き飛んだ。

 

「私も戦うよ」

 

 僕の背後から指を拳銃のように構えたマキマさんが嬉しそうに笑っていた。彼女は領収書の処理しかできないと思っていたが、結構な力を持っているらしい。そういえばかなり強い悪魔と契約しているという噂もあったような気がする。

 

「皆が頑張っているのに私だけ見ているなんてできないからね」

 

 現場に現れるいい上司っぽいムーブに、僕を除いた奴らのモチベーションが上がっていく。

 

「流石マキマさんだぜ!」

「だから私達はマキマさんのために戦えるんです!」

「マキマさんに言われたらやるしかねえよなあ!」

「ますます好きになっちゃうなあ!」

「なんだ……俺はアイツに何をされたんだ……!?」

 

 先の発言も含めて考えると、モミアゲマンは僕の事を忘れているらしい。その上、他の魔人達が異様にマキマさんを好いていることから、マキマさんから何かしらの教育か洗脳を受けている可能性もありそうだ。だとしたら僕の記憶喪失もマキマさん由来か? 何にせよこの混戦の状況では知る由もないので、僕はマキマさんにの肩を叩いてアドバイスをする。

 

「アイツを視界から消したのはミスですね」

「オイ、マキマさんが間違っているって言いてえのか?」

 

 無知な鞭の悪魔が文字通り絡んできたので盛大にため息をついて本音を吐露する。

 

「アイツは公安の中で最も厄介な悪魔だ。僕らの思う最悪の2倍は酷い事を考えておかないと対処できない」

「ああ? アイツが何だろうと所詮悪魔の1人────」

 

 足元から黒いチェーンが生えてきて鞭の悪魔に巻き付き、一瞬でバラバラにした。やはりアイツから目を離すとロクなことにならない。僕は咄嗟にマキマさんをお姫様抱っこして跳び上がった。

 

「アイツがどこにいるか分かります?」

「地中にいるのは分かるけど……正確な位置までは分からないかな」

「じゃあ上から僕がアイツを引き摺りだすので援護射撃お願いします」

 

 彼女を遥か上空へ放り投げから着地し、再び地面から生えてきたチェーンを掴む。

 

「芋づる式に掘り出してやる」

 

 チェーンを掴んだまま回転し体にチェーンを巻き付けていく。ザクザクと全身に刃が刺さっていくが、刺さった分だけ手繰り寄せているのだから止めない。ついにピンとチェーンが張り地面がボコりと膨れ上がり────チェーンソーが生えた左脚を掘り当てた。

 

「そんだけチェーン巻いてたら数秒は動けねえだろ? 他の雑魚共は王ちゃんとマキマさんの妨害が無きゃ瞬殺できるんでな」

 

 してやられたと思った時にはもう遅かった。脚を掘り当ててできた穴から彼が飛び出し、4本の腕からチェーンを飛ばして、長剣と火炎放射器と槍と刀の悪魔が捕らえた。

 

「これで2対1だ」

 

 僕がチェーンの拘束を弾き飛ばすと同時に4体の悪魔がバラバラになり、僕の両腕に彼女が落ちてきて彼の宣言通りになった。

 

 

 指示を出したのに何もしなかった彼女に苛立ちの目線を送る。

 

「スカイダイビング楽しかったですか?」

「あれだけ高く投げられたら流石の私も何もできないよ」

 

 今後、彼女は僕の領収書だけを処理しておけばいいと心底思った。それを見た彼はヴァヴァヴァとうるさく笑っていた。

 

「仲良くて羨ましいぜ。さ、デモンストレーションはこれぐらいにして……こっからが本番だぜ王ちゃん。コイツ等5人の肉を食ってさらに強くなりな王ちゃん。毒見はしてやるからよ」

「君をぶちのめすことができるなら毒でも喜んで食べるよ」

 

 彼と一緒に元5課だった残骸を食べる。彼の脚は元に戻り、僕の体はより一層銀色が強くなった。自分が徐々に人間でなくなっていくのを実感したが、パワーちゃんと結ばれるためなら人間という属性は端から捨てるつもりだったから問題ない。心置きなく戦うために明らかにしたい疑問を問う。

 

「僕の記憶喪失ってマキマさんが関係してる?」

「いや、俺が施した」

「それも計画ってヤツかい?」

「よく分かってるじゃな────」

 

 堪えきれず先と同じように彼の顔面を思い切り殴り、鼓膜が弾けそうになるほどの暴力的な金属音を轟かせるながらぶち飛ばす。そして首をギリギリ鳴らして警告する。

 

「何度も言うけど、僕は散々君に振り回されたんだ。家族を殺される、公安のデビルハンターにさせられる、趣味の悪い高級車に乗せられる、バディを殺される、デンジくんを勝手に連れ去られる……もう我慢の限界なんだよ」

 

 今までの彼の横暴の数々が遂に僕の堪忍袋の緒をぶった切る。体から銀色の毛が逆立つように生え、僕の姿が銀で出来た狼女に変わる。これすらも奴の計画なのかと思うとさらに苛立ちが募り、ギリギリと金属が擦り合わさって鳴る不快な音のような雄叫びを上げるしかなくなった。

 

「僕の邪魔をするなら死ね!」

 

 アイツの体をチャペルの鐘にして鳴らして、首をウェディングケーキにしてファーストバイトをやってやる。硬くてマズそうだが、パワーちゃんと一緒なら美味しく食べれるだろうから問題ない。

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