その悪魔は嘘か真実か?   作:神剣狩刃

38 / 43
第38話 二枚舌VS偽りの鎖刃

 殴り飛ばしたレイエルに一跳びで追い付き、内臓マフラーを掴んで頭の上で振り回す。ビルがガラガラと崩れ瓦礫の豪雨が降り注ぐが、振り回すレイエル傘によって僕はノーダメージだ。しかし、ちらりと見えた彼はチェーンで全身を覆っており、あちらもノーダメージのようだ。並の攻撃ではチェーンに防がれてしまうというのなら、並ではない攻撃をアレの上から叩き込むしかない。瓦礫の雨が止んだのを見計らって内臓を思い切り手繰り寄せ、防御に徹している彼に蹴りを叩き込む。

 

「オゴォ……!」

 

 わざとらしいが呻き声と共にチェーンの防御が緩み、これまた演技っぽく見える苦しそうな顔が見えた。アレが嘘であれ真実であれ距離を取られたら面倒なので、彼の体を覆っていた足から出ているチェーンを全てまとめて右手で握りしめる。このままエンジンを起動されたら銀の体であっても削られかねないが、それぐらいのリスクを背負わなければ彼には勝てない。チェーンを引っ張り彼を地面に叩きつけ、右足を大きく振り上げる。

 

「君に倣って脚を使わせてもらうよ」

 

 振り下ろした足が彼の腹部を介して残っていたビルの下の階層を吹き飛ばす。そのまま彼との距離を離さず落下し、重力を味方につけた左拳を顔に叩き込む。しかし、彼は着地寸前で内側の両手で僕の腕を掴み拳の対象を地面に変えた。ドゴオンと隕石でも落下したかのような土煙が上がり、地面に数十㎝のクレーターができる。僕に馬乗りされている彼がヴァッと笑う。

 

「喰らってたら顔が歪んじまう所だったぜ……そしてチャンス到来だ。"生きてる"状態解除」

 

 彼の唐突な宣言と共に外側の2つのチェーンソーが唸りを上げて首元に迫る。まともに喰らえばいくら銀狼の体でも無傷では済まないだろう。しかし、とっくに対策は考えている。僕は右手のチェーンを首にキツク巻き付けた。刃がザクザクと刺さり気道が締まって痛苦しいが、首を撥ねられるのに比べたらマシだ。

 

「この距離なら数秒あれば十分」

 

 チェーンを巻いた右手を振り上げると同時に首でギインとチェーン同士がかち合う凄まじい音が響く。そのまま右手を────右側面から何かに吹き飛ばされ、そのまま振り下ろされた拳が再び地面を捕らえる。その威力ででチェーンが千切れ、首の拘束が解けると同時に彼から離れてしまった。

 

「……そういえばアイツには協力者がいたか」

 

 彼との戦いに集中するあまりに頭から抜けていた。であれば真っ先に潰すべきは協力者ことマキマさんだ。衝撃波が飛んできた方向に向けて弾丸のように飛び出す。

 

 

 瓦礫の上に立っていた彼女は先ほどと同じように右手を銃のように構えていた。違う点があるとすればその銃口が僕を向いていた事だろうか。

 

「ばん」

 

 再び放たれた衝撃波を右拳で軽く相殺し、飛び出した勢いそのまま彼女の首を掴んで地面に押し倒す。

 

「……ちょっと勝てる気がしない────」

 

 今度は遠慮なく喉を握りつぶし首の骨を折る。ボキリと鈍い音が聞こえて彼女の体から力が抜ける。それでも彼女はうっすらと笑いを浮かべていた。あまりにも不愉快だったのでそのまま気道を握り潰す。それでも彼女はうっすらと笑っていた。

 

「何がおかしい────」

 

 彼女の喉を持ちながら振り返る。起き上がった彼が目前に迫っていたので、彼女を盾に────二重のチェンソーが彼女の背中を貫いたうえで僕の腹を貫いた。今までにない痛みと死の予感がよぎったので、咄嗟にマキマさんの左肩を齧って傷を癒しながらチェーンソーを引き抜く。傷は治っても全く痛みが引かないが、目の前の彼女の状態を見てそれがどうでもよくなった。

 

「……何で治っているんですか?」

 

 彼女の腹部と左肩の出血は収まっており、首が折れて動かなくなった体は何事もなかったように僕の首を絞めようとしている。

 

「私の力かな。それでも示札ちゃんの足元には及ばないみたいだね」

 

 どうやら彼女は強力な力を持っているようだが、身体能力はそこまで強い訳ではないらしい。対しチェーンソーマンと化したレイエルは圧倒的な身体能力を持っているが、"スターターを引っ張ったら体が治る"と"食べたものの存在を消す"という2つの能力そのものはかなり限定だ。どうやらチェーンソーマンという繋がりだけでなく、お互いの弱点を補うためにも協力していたようだ。

 

「だったら……あなたを利用すれば長期戦ができるわけだ」

 

 恐らく彼女は何らかの原理で再生し続けるはずだ。だから彼女を食べ続けることができれば、血が必要なチェーンソーマンの再生能力の限界がやってくる。それまでは彼女を都合のいい女にさせてもらうとしよう。 再び彼女の首を折って扱いやすくして彼に詰め寄る。

 

「僕は先生から教わっているから色んな武器を上手く扱えるんだ」

「だとしても女の扱いがなっていねえな?」

「パワーちゃん以外の女はどうなってもいい」

「俺はマキマさんを狙っているから丁重に扱ってくれよ!」

 

 彼女を上手く盾として捌いてもらいながらチェーンソーを捌いていく。いくら彼のチェーンソーが強力といってもチェーンソーそのものの性質は変えられず、彼女の肉片が詰まって歯が上手く回らなる。そこに僕の銀の体を噛み合うとどうなるか。

 

「所詮はチェーンソーの悪魔って所か」

 

 バキンと嫌な金属音と共に彼の右手の内側のチェーンソーが折れた。想定外の事態に彼の顔に焦りが見える。

 

「俺の解釈の再現じゃチェーンソーの強度に限界があるか……!」

 

 彼の力で変身する場合、その変身先は彼の知識の範疇の出力になる。"何をされても壊れない"の様な漠然とした目安では再現できず、"銀狼時の示札王の全力を耐えれる"の様にある程度の指標が必要だ。そのせいか、武器人間達の肉を食べて強化された僕の力では耐えきれないようだ。

 

「やっぱり偽物は偽物でしかないか……」

 

 ズタボロにながら彼女も落胆している。待ち望んだ計画の最終到達点がこれでは興ざめもいい所だろう。そのまま腕の残りの刃を一蹴りで叩き折る。

 

「せめて動きだけでも……!」

 

 折れた先から伸ばしてきたチェーンも、彼女をきりもみ回転させながら投げて巻き取り無効化する。

 

「チクショウが……!」

 

 最後のあがきとして繰り出してきた脚の刃も腕と同じように蹴りでぶち折る。

 

「マジか……」

「繰り上がりとはいえ公安No.2デビルハンターなんだ、舐めてもらっちゃ困る」

 

 ついに彼の防御を全てはがしてがら空きになった。右拳に満身の力を込めて正中線上の胸の中心、どんな悪魔でも急所になる心臓を目がけて正拳突きを放つ。ドグシャアと明らかに何かが潰れる音がした。

 

「ご、ぶふぁ……」

 

 彼は口から血を噴き出しながら胸のスターターを引っ張り体を再生させる。しかし、その一手を僕の前でやるのは悪手でしかない。その隙を狙い今度は左手で正拳突きを放ち、その手ごと再び心臓を潰す。

 

「千日手になるね」

「千日どころか一日ももたねえよ……」

 

 彼がもう一度スターターを引っ張ったが、口からの血が止まることはなかった。

 

「い、一回でダメだったか……マキマさんを使うことを前提にしていたっつーのもあるが……そもそも俺の力じゃ本物には遠く及ばないか……か、解除……」

 

 ついに彼の変身が解けて早川くんの姿に戻った。

 

 

 早川くんの姿に戻ったからと言って温情をかける余地はどこにもないので、彼の顔を蹴り抜いて水風船のように破裂させる。レイエルが人を出入する際は必ず舌からになるため、顔を潰せば二度と出てこれなくなる。しかし、それは彼が一番分かっていることでもあり、すでに脱出を済ませて鏡狼の姿で僕の後ろに立っていた。

 

「はあ……はあ……こ、ここまで王ちゃんが強くなるなんて……」

 

 力を使い果たした彼なら数秒もあれば粉々にできるだろう。とっとと遺言を吐いてもらって死んでもらおう。

 

「計画外だった?」

「……ああ、計画外だ」

 

 その言葉を聞いて僕は拳を────振るう前にパリンと鏡が割れる音が聞こえた。それは今まさに殴ろうとしている彼の顔、もっと言えばその口の中の舌が爆発した音だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。