その悪魔は嘘か真実か?   作:神剣狩刃

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第40話 鏡狼の真実

 何故かこの激闘の地にパワーちゃんがいる。いや、それどころかデンジくんやレゼちゃんもいる。あまりにも何も理解できなくて何も分からなかった。何が起きているんだ。

 

「大丈夫か王!? ワシが分かるか!?」

 

 とりあえず分かるのは彼女が僕を抱いているということだ。それだけ分かれば十分なので返答をする。

 

「パ、パワーちゃん……だよね……」

「なら大丈夫そうじゃの! 爆弾の悪魔から伝言があったんじゃが……何じゃったかのう……?」

 

 レゼちゃんが僕に?

 

「示札さんの正体だよ! レイエルに関わってねえパワ子じゃねえと解けねえっつっただろうが!」

「おお! そうじゃった! ウヌは噓の悪魔なんじゃろ?」

 

 何で彼女がそれを────ギンという音とともに僕の体が地面に落ちる。

 

「おお!? 王から銀の狼男が出てきおったぞ!?」

 

 彼女の驚きの声に目を向けると彼女が黒い髪になった僕を抱えていた。

 

「すげえ! レゼの言う通りだ!」

「やっぱりレイエルじゃなくて示札さんが嘘の悪魔だったんだ」

 

 何故レゼちゃんがそれを知っているのだろうか。ただ、それぐらいでこのヤバい状況が変わるとは────いや、僕が示札王から噓の悪魔に戻らないとどうにもならなかった。レイエルの、いや兄貴の計画の凄さに驚き、そしてその企みを理解してギリギリと笑い声をあげる。

 

「やっぱり兄貴は凄いね……どこまで計算していたんだ」

「ッ……"嘘の悪魔を食べて"」

 

 マキマさんの命令でチェンソーマンになった兄貴が大きく口を開いて僕に向かってくる。僕は微塵も動じることなく兄貴の正体を宣言する。

 

「"兄貴は真実の悪魔でしょ"?」

 

 

 兄貴の動きがピタリと止まる。そして黒い体にピシピシとひびが入っていき────

 

「流石だぜ、我が妹よ」

 

 バリンと割れて鏡の狼男がギャリギャリと笑いながら出てきた。

 

「なんだぁ!? ちぇ、チェンソーマンからレイエルが出てきたぁ!?」

「ど、どうなっておるんじゃ!? チェンソーマンの正体はレイエルじゃったのかあ!?」

「本当に2人とも分かってなかったんだね……でも、レイエルが何の悪魔かまでは私も分からなかったなあ」

 

 完璧に事態を把握できていない2人と程々に分かっている1人に向けて、僕は僕ら兄妹の紹介を始める。

 

「僕の名前はレイエル。本当の嘘の悪魔だよ。能力は"認識している会話の中で嘘を吐くと舌が爆発する"っていうものだよ。示札王の時と変わらないから安心してね。こっちは僕の兄貴の真実の悪魔」

「どーも。名前はアヴダイムーンだぜ。アヴでもダイちゃんでもムーンくんでもいいぜ。能力は"対象を宣言した状態に変える"っていうものだ。妹のふりをしていた時と同じだから説明は省略するぜ」

 

 唖然とする3人を尻目に僕達はマキマさんもとい支配の悪魔に向かって指を差す。

 

「「これが『二枚舌の悪魔』の真の姿だ」」

 

 銀狼に写る鏡狼と鏡狼に写る銀狼による歪んだ永久回廊を見せびらかす。それでも彼女は顔色一つ変えずに髪を靡かせて余裕を見せた。

 

「嘘の悪魔と真実の悪魔の兄妹……初めて見ましたが大したことありませんね」

「当然だよ。僕達の真骨頂は腕力や能力じゃなくてその力を最大限に活用する狡猾さにあるからね」

「例えばこんな風にな……」

 

 兄貴がギャリリと体を捻ってデンジくんを視界に捉え、計画の真骨頂を唱える。

 

「"デンジはチェンソーマンだ"」

 

 公安のシャツを着た見慣れた姿のチェンソーマンから、先まで戦っていた黒いチェンソーマンに変わった。

 

「うおお!? なんじゃこりゃあ!?」

「それがお前の真の姿だぜデンジ」

 

 兄貴が示札王の体をむしゃむしゃ食べながら満足そうに笑っている。もう必要なくなったとはいえ、元僕が食べられているのを見るのは気持ちが良いものではない。それを見て支配の悪魔は呆れたように溜息をついた。

 

「何をするかと思えばその程度の事ですか……"君はデンジ君でしょ"?」

 

 兄貴の変化は元の正体を宣言すると解ける。だから彼女の発言と共に変化が解けるはずだ。

 

「マキマさんを捕らえろデンジ」

「おうよ!」

「え?」

 

 しかし現実は違った。瞬く間に黒いチェーンが彼女を縛り上げる。彼女は何が起きたのか分からずにただ目をパチクリさせていた。

 

「……今、私は正体を宣言したはず。なのに何故」

「それは俺の変化が真実と異なる場合の話だ。俺の能力で真実と同じ状態に変化させると、俺以外の誰にも解けなくなるんだよ」

 

 これが兄貴(真実の悪魔)の能力の恐ろしさだ。その存在が持つ真実の状態で固定し、秘匿されていた物を白日の下に暴き出す。時に人は真実を知られることを恐れる。故に兄貴が生まれたのだ。

 

「得意気になって俺をチェンソーマンにしたのはミステイクだったな? おかげで完璧なチェンソーマンを再現することができた」

「すっげえ~……これが本来のオレの力なのかあ~……」

私達(ソ連)どころか各国が手に入れようとしたのも納得だね」

「そんなことよりもマキマを殺すのはワシじゃあ! そうすればワシが大統領になれるんじゃあ!」

 

 パワーちゃんが血のハンマーを作って支配の悪魔の頭を叩き潰した。しかし、すぐに元通りになってパワーちゃんを一睨みした。

 

「……私を助けたら大統領にしてあげるよ?」

「ほ、本当か……?」

「私は内閣総理大臣と契約しているから────」

 

 話と同時に支配の悪魔の頭をサッカーボールのように蹴り飛ばす。首が戻ったのを確認して、頭をミシミシと音が鳴るほどに踏みつけながら事態を分からせる。

 

「何か勘違いしているようだから教えてあげるよ。今の君は僕達に話を持ち掛けられる立場じゃない。僕達の要求をただ黙って受け入れるしかないんだよ」

「本当にそうでしょうか?」

「じゃあ舌を噛み切り続けて自殺してもいいよ。君曰く、3年はかかるらしいけどね」

「特異5課の他に切り札があるとしてもですか?」

「切り札を抱えたままゲームオーバーするのはもったいないから早く切りなよ」

「ゾンビ」

 

 

 彼女の声と同時に腐臭を纏った死人達が地面から出てくる。こちらは5人でその内1人は彼女の拘束に宣戦しているから実質4人だ。対し相手はざっと数えただけでも数十人はいる。

 

「やっぱりこうなっちまったか」

「もう一度勝負しましょうか? 今度は彼らを一番多く殺した人が勝ちでどうです?」

「それだとデートだけじゃ釣り合わねえな……2泊3日の温泉旅行は付けてもらうぜ?」

「いくらマキマさんのためとはいえ、流石に面倒くささが勝るかもなあ」

「だが俺達はマキマさんのためならどんな相手でも立ち向かえるぜ」

 

 それに加えて特異5課の魔人達もやって来た。これは戦力を上手く割り振らないと逆転されてもおかしくなさそうだ。兄貴もそれを悟ったらしく、早速とんでもない行動をとった。

 

「"これは嘘の悪魔の肉だ"」

 

 持っていた元僕の体から腕を引きちぎって銀狼の腕に変えた。

 

「パワーちゃんとレゼちゃん、これ食いな。めっちゃ力になるぜ」

 

 僕を悪魔として強くしていけば、その肉を食わせるだけで身近にいる魔人を簡単に強くできる。相変わらず兄貴の頭の良さと機転の利かせ方は恐ろしい。

 

「うーん……硬くて美味しくはないなあ……」

「野菜よりはマシなぐらいじゃの……」

 

 文句を言いながら2人は僕の腕を胃に収めた。

 

「オレの分はねえの!?」

「今のお前じゃ妹の肉を食ったぐらいじゃ強くなれねえよ。それよりマキマさんが死なないように拘束し続けろ。この作戦が終わったら……酒池肉林の大宴会を開くからな」

「特上牛タン食えるか!?」

「レゼちゃんと2人で寝られる極上のベットもつけてやるよ」

「じゃあやるしかねえなァ!」

 

 ヴヴンとエンジンが唸って支配の悪魔がチェーンに覆われる。やっぱりデンジくんはデンジくんだ。

 

「知ってっかレゼちゃん? アイツの女性経験はキスまでなんだぜ?」

「だろうね。じゃなきゃあんなハニートラップに引っかからないよ」

「引っかかったのはアイツだけかな?」

「……分かってるくせに」

 

 あのバカとも言い換えられる純粋な素直さは彼の魅力だ。彼を好きになったレゼちゃんの気持ちがよく分かる。今の内に僕もパワーちゃんから愛を摂取しよう。

 

「パワーちゃん、この戦いが終わったら君にプロポーズするよ」

「そんなことせんでも王……じゃなくてレイエルじゃったか? レイエルはワシのじゃぞ?」

「……そうだったね。それじゃあ言わせて欲しい。僕の全てはパワーちゃんのためにあるんだ」

「そうかそうか! あの強さを持つレイエルがこうなるとは……やはりワシは最強じゃの~!」

 

 ありきたりな言葉だが愛は最強だ。愛以上に人魔を動かすものは存在しない。僕は彼女の為だったらどんな人魔だろうと殺せるだろう。だから僕は支配の悪魔及びその配下たちに指を差して宣言できる。

 

「僕達の邪魔をするなら死ね!」




「ところでよォ~オレ達が来た事に関してはまだ説明しねェのか?」
「それについては(アヴダイムーン)やデンジ……要はそれなりの人物の目線から説明しなきゃいけねえからな」
「だとしたら、そんな長話をしている余裕はないね」
「作者曰く、支配の悪魔軍との戦いが終わったら説明するって」
「投稿頻度もまばらで説明も後回し……ロクな作者じゃないのう」
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