その悪魔は嘘か真実か?   作:神剣狩刃

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第41話 『二枚舌』の悪魔達

 宣戦布告と同時に刀の悪魔の懐に飛び込んで股間を蹴り上げて潰す。ごちゅりと生々しい音共に奴がガクガクと震えだした。

 

「やっ……お、まえ、は……」

「今更痛みで思い出した?」

 

 そのまま空中で右手で首を引っこ抜き、後頭部から生えている柄を握って武器としての性能を確かめる。頭余計なものが付いている分扱いづらく、天使くんのナイフに比べたら竹光のようなものだ。

 

「よそ見してる暇ねえぞ!」

 

 僕の首元に長剣が迫りそのまま振り抜かれる────はずだったのだろうがバキンと情けなく刃が折れた。

 

「……は?」

「僕の体も切れないの?」

 

 空いている左手で首を引っこ抜き、刀と同じように武器としての性能を確かめる。コイツは柄が側頭部に張り付いて非常に持ちづらく、しかも後頭部に向けて2本も生えているから見栄えがあまり良くない。

 

「銀なら融かせるぜ~」

 

 着地と同時に僕の体が炎に包まれるが、ちょっと熱いぐらいで大したダメージにはならない。発生源を見極め長剣の悪魔の頭を投擲する。するとたちまち炎が止み、両肩に長剣が刺さって戸惑っている火炎放射器の悪魔が見えた。

 

「……マジかよ」

「僕は銀の悪魔じゃないからね」

 

 止めに刀の悪魔の頭を投げて噴出孔と切先、次いで口と口のキスをさせてやった。刀×火炎放射器というカップリングができ無事大爆発した。

 

「知ってっか鞭女ぁ! サディズムの語源であるマルキ・ド・サドのマルキはフランス語で侯爵って意味で、本名はドナスイェン・アルフォーンス・フランソワ・ド・サドなんだぜ!」

 

 爆発に負けないほど嬉しそうな兄貴の声が響く。振り返ると兄貴が鞭の悪魔の両腕を引きちぎっていて、動かなくなっている彼女を鞭打ちにしていた。

 

「やっぱり女はいたぶって啼かせるに限るなぁ!」

 

 兄貴は言うまでもなく超ドSだ。鬼に金棒を持たせるよりも酷いことになるだろう。そんな熱中している兄貴が突如横を向いてカキンと何かを蹴り上げた。棒状の何かがクルクルと空中で円を作っている。アレは槍の悪魔が投げた槍だ。

 

「だから邪魔すんじゃねえよ槍チン野郎」

 

 そして落ちてきた槍の持つ方の先端を蹴って槍の悪魔に返品した。ドゥッと衝撃波が出る速度で蹴ったが、槍の悪魔は体を横に逸らして回避した。あの速度では当然なのでフォローに回る。

 

「アレにどうやって勝ちましょうかね────」

「お前じゃ勝てねえよ。俺しか見えてねえ内はな」

 

 兄貴が本気を出せば音を置き去りにする速度で蹴れる。兄貴の意図に気付いた僕は先回りして奴の背後に回っていた。パスされた槍を両手で掴み、そのまま奴の背中から突き刺して心臓をブチ抜く。

 

「僕達は『二枚舌の悪魔』としてそれなりに恐れられていたんだ。力だけじゃなくてその仲の良さもね」

「自慢の妹だぜ。もっとも、妹の方が人間から恐れられている現状に複雑な心境だけどな」

 

 兄貴が槍の悪魔の首をもぎ取って決着がついた。支配の悪魔が奴らはチェンソーマンに食べられても消えなかった特別な存在だと言ったが、僕達からしてみたらアルコール度数が片手ぐらいしかない安酒のような雑魚でしかなかった。

 

 

 後はゾンビを片付けようと思ったら兄貴が増援を呼んで来ると言い残してどこかに跳んで行った。もはや過剰戦力になるだろうと思ったが、支配の悪魔に覆せない負けを認めさせるのも悪くないだろうと見送った。僕もゾンビと戦っているパワーちゃんの下に駆け出す。

 

「がははははははははは!!」

 

 そこではヒールのような足で、そこから大腿部までが血の様に赤黒く、臀部から赤黒くて細長い尻尾を生やし、肋骨がバッカリと開いて内臓のようなもので胸から首を作り、両肩からそれぞれ2本の赤黒い腕を生やし、4本の角と美しい金髪で保健所の地図記号のような目をした赤黒い顔の、悪魔本来の姿をしたパワーちゃんがゾンビたちに血の武器の雨を降らせていた。

 

「サウザンドテラブラッドレイン!!」

 

 本当に1000兆個の武器があるようかの様な記録的豪雨だ。爆弾の悪魔となったレゼちゃんも爆発で頑張っているが、パワーちゃんの活躍に比べたら大したことない。やっぱりパワーちゃんは最高だ。感動していると僕の肩にゾンビの一体が噛みついてきたので、アッパーカットで首から上を消し飛ばす。

 

「僕達の邪魔をしたら死ねって言ったよね」

「恋する乙女って怖いなあ……私が言えた事じゃないけど」

「やっと来おったかレイエル! こっちはもうほとんど終わっておるぞ!」

 

 彼女が楽しそうに右上腕を振って僕を歓迎している。それに応じてゾンビを蹴散らしながら駆け寄ってハグをする。

 

「悪魔の姿になっても魅力的だよパワーちゃん」

 

 彼女が応えるようにガハハと高笑いしながら左右の下の腕で僕を抱きしめ、余った左上腕をブンと振り上げて残りのゾンビを全て串刺しにした。

 

「そうじゃろうそうじゃろう! ワシは最強じゃからのう!」

「動きを止めてくれるのは嬉しいけど、頭を破壊しないと完全に止まらないから私が止めを刺さないといけないんだよね」

 

 レゼちゃんがダイナマイトを撒き散らしドドドと連続爆発でゾンビたちを粉砕し、こちらも決着がついた。皆で埃を払って支配の悪魔を拘束しているデンジくんがいる方を見る。

 

「それじゃデンジ君の所に行こうか。あの魔女を1人で押さえつけるの大変だろうからね」

「デンジはワシと違って頭が悪いからの~……何かやらかしているかもしれん」

「やらかしていたらまた金玉を潰そうかな。2人ともやってみると良いよ。意外と楽しいから」

 

 わざとらしく蹴り上げる動作を見てレゼちゃんが何かが腑に落ちたような笑いを浮かべた。

 

「本当にやっていたんだね。デンジ君から聞いた時は冗談だと思っていたけど」

「そんなこともあったのう……あの時のワシは抱きしめられて骨を折られたのう」

「……前から思っていたけど、君って終わってる性格しているね」

「まともな性格をしている悪魔なんて数えるほどいればいい方だよ」

 

 ガールズトークも程々にして、僕達は彼の下に向かった。

 

 

 僕達の一抹の不安に反して彼はヴァンヴァン笑いながら支配の悪魔を捕らえ続けていた。僕達に気付いた彼は相変わらずバカそうに叫んだ。

 

「意外と早かったなあ! オレはまだまだ余裕だぜ! このまますり潰してマキマさんジュースを作ってやってもいいぜ!」

「兄貴は僕を思って殺すなって言ったんだ。もしソイツを下手に殺して先生を巻き込んだら……君をエッチができない身体にしてやるからな」

 

 支配の悪魔の身代わりは全日本国民からランダムに選ばれるだろうから、先生だって例外ではないはずだ。僕とパワーちゃんの邪魔をするなら殺すが、それ以外で不必要に命を奪いたくはない。兄貴はそれに何となく気付いたからそう言ったのだ。妹だからなんとなくわかる。

 

「また示札さんに金玉潰されるのも、レゼとエッチできなくなるのもヤだなぁ!」

 

 相変わらずの品も学もない発言に思わず吹き出してしまう。

 

「そうだぞデンジくーん。私だってエッチできないのはヤだからねー」

「そう言えばウヌらは交尾していないのか?」

「どうだろう? 僕はとっくにしているけどね」

「妹の前で言ったわけじゃねえから真偽は定かじゃねえが……マキマさん曰く、関監視していた限りじゃしてねえらしいぜ」

 

 いつの間にか兄貴が戻っていて、その両手には鮮やかな藍色のチャイナドレスを着たクァンクァンちゃんことクァンシさんとハロハロちゃんことコスモちゃんの2輪の花があった。

 

「急に店に来て手伝ってほしいと言われてな……お前達といいパワーといいあの店にマトモなヤツはいないな」

「ハ……ハロウィン……」

 

 呆れているクァンシさんはともかく、コスモちゃんの目と脳がテレビ裏のコードの様に絡まっているので解いてあげる。

 

「マキマさんに俺の計画の全てを聞かせるのに必要なんだ。お望みの物を可能な限り揃えてあげるから許してくれ」

「私の女達に人権と義務教育を」

 

 思ったよりもとんでもないものを要求された兄貴は困ったように頭をギャリギャリ掻いてパワーちゃんをちらりと見た。

 

「……未来の日本大統領様、お願いできますか?」

「当たり前じゃ! 人権でも義務教育でもパスポートでも何でもくれてやるわ!」

 

 流石日本の未来を担うパワーちゃんだ。素晴らしいマニフェストを聞いて思わず感涙を禁じ得ない。

 

「これは数年以内に日本が世界のトップに立つか滅びるかのどっちかだね」

「何でもいいけどよぉ! 早く話を始めてくれよぉ! 退屈で死んじまいそうだぜ!」

 

 彼に死なれては困るので兄貴に早くしろと目線を送り、受け取った兄貴が良い加減始めるかと首をギャリギャリ鳴らす。

 

「デンジィ! マキマさんの顔だけ出してくれ! 首を切って顔だけ取り出せって意味じゃねえからな!」

「そんなの分かってるぜ! よっと!」

 

 ヴヴンとチェーンが動いで顔中をズタズタにされた支配の悪魔の顔だけが露になった。策の全てが無駄になったはずなのに、彼女はまだ余裕そうに笑っていた。

 

「いい顔になったじゃねえかマキマさんよ?」

「……おかげでいい経験になりました」

「んじゃ、冥途の土産に俺の計画の全てを話してやるよ。まずは地獄で妹と企てた所からだな。頼むぜ妹よ」

 

 ついに明らかになる僕と兄貴の『二枚舌の悪魔』の計画。それはこの場にいる全員を欺いた、正に悪魔の所業と言える最高のシナリオだった。

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