その悪魔は嘘か真実か?   作:神剣狩刃

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第8話 満天の万魔殿

 パワーちゃんとデンジの指導を始めてそれなりに日が経ち、僕の口元に先生とお揃いの傷ができる程2人の動きが良くなった。ご褒美に全身の骨を砕いて動けなくしてあげ、僕が先生からもらった言葉を2人にも送る。

 

「ハイな時でもクールに脳みそを動かせ。常に自分の持っている武器と状況を頭に入れとけ……でしたっけ?」

「お前がそれをやれているかは怪しいがな。それよりも明日に実戦だ。この間襲撃してきた奴らを俺たち全員で捕まえに行く……新4課のお披露目式だ」

 

 僕は先生と一緒に4課の悪魔が逃げた時の抑え役として参加する手筈になっている。久々に本気で戦うかもしれないと思うと、少し面倒臭さが顔に出てしまう。

 

「ただ……レイエルも参加することになった。お前達の実力をお披露目できるといいな」

 

 僕が知っている中で三本指に入る面倒な悪魔が参加することが決まり、もはや目を瞑って溜息を吐きだすしかなかった。そんな僕を見かねてか、血を飲んで復活したデンジが不思議そうな顔で尋ねてきた。

 

「レイエルってそんなにヤベー奴なのか?」

「何を言っておるんじゃデンジ? ワシより強い悪魔などいる訳ないじゃろう?」

 

 彼女の血を操る力も大概だが、井の中の蛙のパワーちゃんに真実を教える。

 

「魔人の状態でも僕と互角以上で、悪魔の姿になると先生と僕が本気を出さないと止められなくなる」

「ないと思いたいが、アイツが敵対したら今回の作戦はアイツの殺害になるだろうな」

 

 制圧や鎮圧ではなく殺害でないと止めることができない程、悪魔の姿のレイエルは強い。

 

「確かにアイツ、蛇の悪魔の口を止めてたしなあ……」

 

 こんな感じと両手両足を広げて立っているデンジは本当の事を言っているようだが、僕には不思議でしかなかった。もしもレイエルが本気を出したなら────その蛇の悪魔とやらは顔が無くなっているはずだ。

 

 

 今日は新4課のお披露目会兼、俺が久々に本気で戦っていい日だ。沢渡の上下の口から垂れ流してもらい、拠点のビルに襲撃返しを行う。市場に行く気分で二つのクーラーボックス一杯にタッパーを詰め込んできたほどだ。それではイカれたメンバーを紹介していくぜ。

 

「ゾンビ! ゾンビ! キャキャキャ、食い放題~!!」

 

 壁からにゅっと前頭部からサメの頭部が生えているアホはサメの魔人ことビーム。コイツはどんな場所でも泳ぐことができ、短時間なら悪魔の姿にもなれる。言っている傍から目が六つのサメの頭部に変わりゾンビを食っている。

 

「今日はやけに嬉しそうじゃんレイエル! またあの姿になるのか!?」

 

 こちらのゾンビの頭を蹴り飛ばしているペストマスクの陽キャは暴力の魔人。魔人は悪魔の時よりも弱くなるのに、コイツは魔人でも強すぎるから毒の出るマスクを着けさせられている。素顔は目が四つで結構イケメンだったはず。

 

「……」

 

 黒髪ロングでタレ目で顔にジッパーがついている彼女は蜘蛛の悪魔。いつもは人間のような姿だが、獲物を殺す際はその八本のおみ足が唸る。どんな下着を穿いて、アソコがどんな風になっているのかが気になってしょうがない。

 

「うええ……靴汚れた……コイツ最悪……」

 

 足元に飛んできたゾンビの頭部を齧っている中性的な天使の彼は天使の悪魔。王ちゃんよりも酷い面倒臭がり屋で、触れると寿命が吸い取られる。いつの日かコイツを女にして滅茶苦茶にしてやりたいものだ。

 

「これなら未来を見るまでもないな」

 

 刀でゾンビを切り伏せているのは丁髷の悪魔こと早川アキ。復讐に囚われている悪鬼だからある意味悪魔だろう。そんな彼に向けて敵の構成員の1人が拳銃を構える。引き金が引かれる直前、奴の手元に右手が現れてぐるりと捻りあげ、敵は自滅させられた。

 

「未来が見えてよかったあ……」

 

 ふうと一息ついている眼帯の女はゲロの魔人。姫野という女の体を借りて、酒を飲んではゲロを吐くという悪行を重ねている。何故公安のデビルハンターはあの悪魔を殺さないのだろうか。

 

「悪魔扱いしないでよー。あの時は悪かったって言ったじゃん」

「つーかお前は働かないのか?」

 

 人の皮を被った悪魔2人が俺を責め立てる。俺は右手に持っていたクーラーボックスでゾンビの頭を殴って破裂させて反論をする。

 

「一応悪魔たちの見張り役を頼まれてんだ。ある程度抑えなきゃいけないんだが、本気でやって良いなら2人の責任にするぜ?」

「それでいいから本気でやれ」

「レイエルのカッコいところ見て見たいなー?」

「そうだぜレイエル! せっかくの晴れ舞台なんだからさ!」

「早く仕事を終わらせて欲しいな」

「早くチェンソー様に会いたい!」

「……」

 

 一部催促とは思えない反応の奴もいたがここまで期待されては仕方がない。俺はクーラーボックスを足元に置いて、スゥと一息吸って覚悟を決める。

 

「現世に集いし悪鬼羅刹(あっきらせつ)達よ、地獄への(はなむけ)代わりに俺の真の姿を刻め」

 

 そして思い切り舌を噛み切る。口の中を血が満たし、全身から毛が逆立つように生える。わずかに緑色だった毛は一瞬で辺りの景色を反射する鏡色に変わり、次第に鏡で出来た狼男のような姿になる。

 

「……趣味の悪い姿だな」

「本来のレイエルって意外と背が高いんだね。180ぐらい?」

「ウヒョー! 相変わらずキマってんなレイエル!」

「チェンソー様の方がカッコいい!」

「目に優しくないから早く終わらせてよ」

「……」

 

 いまいち反応が芳しくないのでとっとと終わらせるとしよう。拳を握ったり開いたりしてギャリギャリを金属的な警告音を出す。

 

「お前ら全員姿勢を低くしろ。今日のディナーになるぞ」

 

 メンバーが伏せたのを確認し、人差指と中指で横にピースを作り、一回転しながら振り抜く。するとゾンビたちの首と上半身と下半身がスッパリと切り分けられ、壁面にかなり深く切ったような痕ができ、やっとズシャリドゴンと攻撃の音が響いた。

 

「……見えなかった」

「わ、私も……」

「流石レイエルだぜ! マスクを外した俺と互角に渡り合っただけのことはあるぜ!」

「レイエル……? こんな匂いだった……?」

「死人と血の匂いで鼻がおかしくなってるんじゃないかな」

「……?」

 

 ようやくこのパーティー会場にいる皆様に俺の実力が分かってもらえたようだ。満足したのでクーラーボックスから空のタッパーをありったけ取り出す。

 

「何してんだレイエル? 今食ってけばいいだろ」

「お持ち帰りするほどの物じゃないと思うけど?」

 

 どうやら人間二人は分かっていないらしい。俺はお得意のアレを宣言する。

 

「"これは牛タンだ"」

 

 さっきまで動いていた腐肉の山が瞬く間に───1本1本先から元まである原形ママの新鮮なタンの山に変わる。

「牛タン詰め放題の開催だあ! 野郎共、詰め込めい!」

 

 俺の号令と共に4課の悪魔達が牛タンをタッパーに詰めていく。

 

「レイエルと王ちゃんが焼く牛タンは最ッ高だからなあ!」

「チェンソー様と牛タン! チェンソー様に牛タン食べさせる!」

「ドリップで手が汚れるなあ……」

「……」

 

 実に楽しい光景を見て、人間二人はカタカタ震えだした。

 

「もしかしてこないだ食った牛タンって……」

「あ、悪魔の肉が元だったの……?」

「この間どころか『二枚舌』で提供されている牛タンは全部悪魔の肉が元だけど? あ、成分は完全に牛タンに変わってるから健康被害とかは心配しなくていいぜ」

 

 俺の言葉を聞いて2人がほぼ同時にゲロを吐き、ゲロ女とゲロ男によるゲロゲロコンビがここに結成された。岸辺のオッサンは安く牛タンが食えるなら別にいいと平気だったのに。

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