魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 見切り発車ほど楽しい書き方はないZOY☆





本編
1.プロローグ


 

 

 

 俺は【魔法】が使える。

 

 

 この超人社会と言えどお前何を言ってるんだと笑われてしまいそうな話ではあるが、事実だ。

 

 確かにこの超人社会。世界総人口の約八割──現在で約80億人程なのでだいたい64億人──が個性を持っている。

 しかしその64億人が持っているのはあくまでも個性。決してゲームやアニメのような魔法を使えるわけではない。

 

 じゃあ何で俺は【魔法】を使えるなんて言ったのかって? そりゃあ、俺の個性が【魔法】という個性だからだ。

 

 うん、つまらない冗談でもなければ騙す気皆無の雑な嘘でもない。3歳か4歳の頃に貰った診断書を見せたっていい。俺の個性は【魔法】なんだ。

 

 呪文を唱えて特定の現象を引き起こしたり、魔法陣やら触媒やらを用意して大規模な事象を操ったりする……的なものをイメージしたただろう。

 

 実際俺も同じようなものだと思っていた。なんかこう、テレビの中にいる架空のキャラクターみたいにかっこいい事ができると思っていた。

 

 

 思って、いたんだけどなぁ…………。

 

 

 

「攻撃魔法ねェのかよ!」

 

 

 

 森岸詠士(もりがんえいじ)10歳の頃。彼は大人の階段を登りました。泣きそう。

 

 

 

 

 

 

 

 今から100年くらい前、中国で発光する赤子が生まれたのが始まりだったという。

 

 それをきっかけとするように世界各地で超常をその身に宿した人間が確認されるようになり、いつしかし超常は日常へと落とし込まれた。

 

 時が経つに連れて個性を持つ人間の割合は増えていき、今じゃどこをみても何らかの個性を持った人間ばかり。

 

 

「……俺も必殺技とか欲しかったなあ」

 

 

 そんな世界じゃ善も悪も何らかの個性を持っているわけで。かつての地味な逮捕劇は今じゃヒーローショーそのものだ。

 

 液晶の向こう側では超パワーのパンチや高火力の炎が放たれているというのに、中学生となった俺の【魔法】でもどれも手が届かない代物ばかり。クソわよ。

 

 これでもヒーローを目指すと決めてからトレーニングをしてきたのに。やはり【魔法】込みのトレーニングをいくら積み重ねてもトップヒーローのような派手な一撃には程遠い。

 

 それでも何もしないよりはマシか、なんて前向きなんだか後ろ向きなんだか分からない思考のままクソデカダンベルに手を伸ばした。

 

 

「いや詠士も十分凄いでしょ……というかウチが来てるのに筋トレすんの?」

「う、やっぱダメ?」

「ダメ。てか今日休める日なんじゃなかったっけ?」

「……はい」

 

 

 しかしその手を横から止められる。流石に友達が来てる時に筋トレはダメか。

 

 

 アシンメトリー前髪のボブカットにジト目気味の三白眼。何より目を引くのは耳たぶから伸びたコードのようなものとプラグらしき先端部。

 

 音楽好きの幼馴染系女子、耳郎響香だ。

 

 

「まあ分からなくもないけどね。ビルボードチャートのヒーローって、皆何かしら凄い必殺技持ってるし」

「響香はまだいいじゃんか。俺なんか個性使おうが使うまいが見た目何一つ変わらないんだぞ」

「見た目は変わんないけどさあ、プロデビューしたら引っ張りだこでしょ。多分」

 

 

 くそう、言いたいことは分かってるんだよ。確かに俺の個性自体はちゃんと強いよ。自慢できる代物だよ。

 

 でも大体それらの褒め言葉の後に『サイドキックに滅茶苦茶欲しくなる個性だね!』ってついてくるの知ってるんだからな。俺をメインに据えろ。勝手にサイドにするな。

 

 

「ま、それも雄英受かってからか」

「……受かるといいな」

「何とかなるでしょ……多分」

「そこは励ますか言い切るかしてよ」

 

 

 無茶言うな。俺も不安なんじゃい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『本日は俺のライヴにようこそー! エヴィバディセイヘイ!!』

 

「っ……っ……!」

「やめとこうね? フリじゃないからね? コーレスしたいの分かるけどやめようね??」

 

 

 やべえ。受験当日一番の難所ここか?

 

 

 

 えー、本日は国立雄英高等学校ヒーロー科入試の日。定員40名に対して毎年倍率300超……つまり大体12,000人のライバルがいるわけだ。

 

 筆記試験はついさっき終わってこれから実技試験の説明会が始まるところ……なんだけど、その担当が寄りにも寄ってプレゼントマイク。音楽ライブでコーレスに慣れてる響香がうっかり乗りそうになったから止めてる最中です。

 

 

「……ふぅ、耐えた」

「無事で何より」

 

 

『コイツはシヴィー! 受験生のリスナー! 実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ! アーユーレディ!?』

 

 

「っ……!」

「2度目……だと……!?」

 

 

 波状攻撃やめてもろて。そろそろ響香ちゃん爆発しますよ。

 

 

 と、茶番はさておき。

 

 実技試験の内容は模擬市街地演習。AからGまでの七つの会場に分かれ、そこで仮想ヴィランである3種(・・)のロボット達と戦闘。各々の個性で破壊……じゃなくて行動不能にすると種類に応じたポイントがもらえる、と。

 

 付け加えて持ち込み自由。他人への攻撃や妨害といったアンチヒーローな行為はNGだそうだ。

 

 

 というか3種? プリントは「質問よろしいでしょうか!」……同じ疑問を抱いた人が質問してくれた。

 

 えっと、プリントに記載された4種類目。コイツは倒してもポイントが入らないお邪魔虫、言うなればステージギミックのようなものらしい。各会場に一体ずつしかいないそうだ。

 

 

 

『最後にリスナーへ我が校校訓をプレゼントしよう!』

 

『かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!「真の英雄とは人生の不幸を乗り越える者」と!』

 

 

Plus ultra(更に向こうへ)!!』

 

 

「それでは皆良い受難を!」

 

 

 ……良い受難を、か。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやひっろ」

 

 

 

 確かに模擬市街地とは言ってたけどさぁ……市街地そのまま作られてるとは思わないじゃん。

 

 何これ? あの辺のビルとか普通に中で仕事してる人いたりしない? いきなりあそこの交差点で横からトラックに轢かれたりしない?

 

 

「そこんとこどう思うよ?」

「む? 僕か!?」

「あ、すまん。間違えた」

「そうか!」

 

 

 やっべ。いつも響香といたからナチュラルに響香に話しかけるつもりで知らん人に話しかけてしまった。しかもあの人、さっき質問した後に他の受験生名指しで注意した人じゃん。怖。

 

 幸い俺は彼の怒りのツボに触れなかったのか、特に怒られることなく会話は終了。その代わりさっき注意していた他の受験生の所に行ってまたなんか注意してる。よく周りが見えるなあ……俺緊張で視野狭まってるかもしんないのに。

 

 

 

『ハイ、スタートー』

 

 

 

 ………………おん?

 

 

 

 

 

『どうしたどうしたァ!? 実戦にゃカウントダウンなんざねェんだよ! 走れ走れェ! 賽はとうに投げられてんぞォ!?』

 

 

 

 …………意地悪だな!? ああもう!

 

 

「くっそ……【ピオラ】!」

 

 

 やられたもんはしょうがない。これ多分響香もどっかで皆と同じように硬直してんだろ。せめて出遅れることだけは避けたい!

 

 個性の【魔法】を使う。一言を唱えた瞬間、体が羽根のように軽くなる。よし、今日も俺の【魔法】は問題なし!

 

 

「うわっ、アイツ速ェ!?」

「何の個性だ!?」

 

 

 あっという間にライバル達の人混みから抜け出せる。その間にも【バイキルト】【スカラ】をかけておく。ロボット相手ならこれで十分だろう。

 

 今の俺はスピード、パワー、そして肉体強度が強化された状態。この状態ならとりあえず何も出来ずに終わるなんてことはない……はず。

 

 

『標的発見! ブッ殺ス!』

「お、いた! ……けどなんか物騒だなおい」

 

 

 少し走っているとすぐに仮想ヴィランと遭遇した。まずは一発試してみるか。

 

 デカイけどそんなに速くはない。特に遠距離攻撃の手段もなさそうだし、正面から殴って……あ、壊れた。

 

 

「さては意外と脆いか?」

『ンダトコラ!』

 

 

 お、もう1匹。咄嗟に回し蹴りを放ってみたが、うん倒せる。これでパワー不足だったら割と絶望的だったな。

 

 それじゃ諸々のバフが切れるまでひたすらサーチアンドデストロイしてりゃ何とかなるかな。10分間駆け抜けてやる。

 

 

 

 

 

 

 さて試験開始から結構経ったか。現時点でカウントが間違ってなければ40ちょっとは獲ってるはずなんだが……ロボットのデザインが紛らわしくて数え間違えてる可能性を捨てきれない。

 

 それに想定よりも数が少ない。配置が良くない所ばかり進んでいたのか、遭遇する時と遭遇しない時の波が生まれてしまっていた。

 

 要するに下振れを引いてしまった、ということだろう。多分最高効率で動けてたらもう30ポイントは稼げていたはず。

 

 

 それはそれとしてだ。今の俺はちょっと無視できない事態に遭遇してしまっている。

 

 

 

「……いやいやいや、流石にどうかと思うぜ雄英」

 

 

 

 プレゼントマイクが語っていた4種目の仮想ヴィラン。倒しても何の旨みもない、避けて通るべきステージギミック。

 

 確かに見かけないなあ、とは思ってたけども。

 

 

「ビルと同じかそれ以上のサイズって……いくら何でもやり過ぎだろ!?」

 

 

 何がお邪魔虫だ。あれが虫なら俺らは微生物になるだろうが。

 

 当然そんなデカブツの相手をしようだなんて物好き……というか自殺志願者は見当たらない。だってこれ高校入試の実技試験だしね! そりゃそうだろうよ!

 

 つか雄英はこんなのどこでどうやって作って、この模擬市街地のどこに隠してたんだよ。ついさっきまであんなデカブツ影も形もなかっただろうが。

 

 

 クソ、くだらないことに思考のリソースを割く余裕はない。俺だってあんなの相手にしてたら無事では──無事では……無事、で済むなうん。個性の【スカラ】の防御力エグいし。

 

 いやそうじゃねェよ。どの道決定打になりそうなものを持ち合わせていな……いやあるけども。上手くいかない可能性の方が高いしこんなところでそんなクソ確率の博打打ちたかねェし。

 

 うん、俺もスルーだな。ご丁寧に倒しても0ポイントと説明されてるわけだし、皆逃げてるなら俺も逃げたって別に───

 

 

 

「痛ったぁ…………」

 

 

 

 ───前言撤回。負傷者発見。それもデカブツの進行方向で転倒している女子を確認。

 

 流石に雄英も殺す気はないんだろうが、目の前で死にそうな状況になってる人放置して逃げられるほど良心捨ててないんだよこちとら!

 

 

 そうして踵を返し、人の流れに逆らってデカブツの方へと駆け出したその時だった。

 

 

 すぐ真横の地面が陥没する勢いでクレーターへと変化したのは。

 

 

 

「───はぁ!?」

 

 

 何故、なんて言葉は出てこない。そのクレーターを生み出した正体はとっくに視界の中に映り込んでいたのだから。

 

 個性による跳躍、の一言で済ませていいものじゃない。明らかに尋常ならざるパワー。ただの踏み切りだけであそこまで高く速く跳べる個性なんてパッとは思いつかない。

 

 そして弓のように引き絞った右腕。あれはまるで───

 

 

 

 

 

 

 SMASH!!!

 

 

 

「すっっっっげぇ…………!」

 

 

 

 

 

 まるで、オールマイトのような───!

 

 

 

 

「って、落ちてきてんじゃねえか!?」

 

 

 

 感動してる場合じゃねェなこれ。

 

 

 






【元ネタ解説コーナー】


・ピオラ

 "すばやさ"を上昇させる呪文。一度に一人にしか効果がないが、作品によっては『一度で二段階のステータス上昇』となる扱いになるものがある。
 その為一概に同じ系統の呪文である【ピオリム】の下位互換とは言いきれない。ちなみにこちらは『全員のステータスを一段階上昇』である。


・スカラ

 ざっくり言うと"しゅび力"を上昇させる呪文……なのだが作品によって仕様が複雑。本作品では『肉体の強度を上げる』という形で処理することにした。
 こちらも【ピオラ】同様一度で二段階上昇と全体に一段階上昇という仕様になっている場合がある。


・バイキルト

 ウインドウでは"こうげき力"を2倍にすると書かれるヤベー呪文。尚、実際のところは2倍じゃなかったりダメージの処理に影響したりするので大嘘つき。
 しかも途中から【テンション】というシステムが出てきて今ではそちらを優先されることが多い模様。SF版VとⅥでは強かったのにドウシテ……。



 森岸詠士

 身長:181cm
 体重:87kg
 髪色:暗めの青
  目:黒っぽい青
 身体:細マッチョ

 見た目のイメージはドラクエⅢの主人公とⅥの主人公を足して2で割ったような感じ。その見た目で魔法使いかよお前。

 個性:魔法

 呪文を唱えることで魔法を使える。ただし攻撃魔法は一切使用できず、それ以外なら使える(もしくは使えるようになる)。
 一応MPを消費してはいるのだが、カンストしてる上に回復速度がえげつないので実質消耗ゼロに近い。

 現時点では単体効果のものばかりしか使えない。


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