皆さん感想ありがとうございます。
感想欄が一番ヤバイ【魔法】の予想だらけになっていて笑いました。パルプンテ率高くて草。
雄英体育祭。
かつて個性の無い時代、スポーツという枠組みの中で人間は競い合っていた。
だが個性が生まれてからは一転。公平の基準が曖昧となってしまった世界では既存のルールで対応できなくなっていった。
やがて世界規模のスポーツの祭典さえ衰退し、今となっては形骸化している始末。
今の日本人にとって、雄英体育祭とはそうした祭典に取って代わるコンテンツとなった。
「クソ学校っぽいの来たあああ……!!」
「でも、ヴィランに侵入されたばっかりなのに大丈夫なんですか!?」
「だからこそだ。逆に開催することで雄英の危機管理体制が磐石だと示す……って考えらしい。警備は例年の五倍に強化するそうだ」
当然生徒からは不安の声もある。あんな事件があったというのにそんな事をしていて大丈夫なのか、と。
100%問題ない、と言い切れる根拠はどこにもない。生徒の為という以上に大人の事情による部分もある。しかしそれ以上に雄英体育祭を開催しない事による損失の方が大きい。
何せ観客の規模は日本という国全体。市民は勿論のこと、プロヒーロー達もスカウト目的という理由から目を光らせているのだ。
雄英生としても卒業後、どこかのプロヒーロー事務所にてサイドキックとしてデビューするのが定石となっている。
将来を見据えて雄英に来るような生徒であれば、尚のこと影響力の高いこのイベントを中止されては困る。
「年に一回、計三回しかないチャンス。ヒーローを志すなら絶対に外せないイベントだ」
「……!」
「時間は有限……体育祭までの二週間、無駄にするなよ」
相澤はそこまで言い切るとホームルームを終わらせた。残された生徒達の顔は皆一様にギラつきを見せていた。
◇
「頑張ろうね体育祭……!!」
「顔がアレだよ麗日さん!?」
昼休みー……なんだけど、何か麗日さんが麗らかじゃない。一体どうしたと言うんだ。
妙な圧を放っている麗日さんを宥めつつ、緑谷達と一緒に食堂へ。緑谷と飯田と麗日さんの三人と行動すること多いな。響香はもうデフォルトで着いてくるものだけど。
道中の話題は麗日さんが何故ヒーローを目指しているのか。珍しく緑谷から踏み込んだ質問をしたかと思うと、麗日さんは少し面映ゆそうに顔を逸らしながら答えた。
その理由は──お金。ある意味最も一般的といえる動機だった。
「究極的に言えばなんやけど……何かごめんね不純で……! 飯田くんとか立派な動機なのに、私恥ずかしい……」
「何故!? 生活の為に目標を掲げる事の何が立派じゃないんだ?」
「そうそう。それで言ったら俺なんか初めの動機は『意地張ってるだけ』だからな」
「意地……?」
そんな恥ずかしがるものじゃないと思うけどな。そりゃあ飯田みたいな立派な奴と比べるとくだらなく思えるかもしれないけど。
何でも麗日さんのご両親は建設会社を営んでいるらしく、あまり仕事がなくて上手くいっていない状況にあるという。
だが麗日さんの個性【
実際それをお父さんにも話したそうだが、頭を撫でられながら断られたらしい。
「……『親としては娘が夢を叶えてくれる方が何倍も嬉しい』って、だから私は絶対ヒーローになって、お金を稼いで……父ちゃんと母ちゃんに楽させたげるんだ」
「麗日……全然いい事じゃん。そこまで謙遜することでもないんじゃない?」
「そ、そうかな?」
なんというか、地に足着いた夢というか……現実を正しく認識した上で自分にできる事を探した結果見えてきた夢って感じだな。ちょっと意外だった。
本人はお金の為なんて恥ずかしいってってるけど、辿っていくと『親に楽させてあげたい』という純粋な願いからきている夢だし。飯田じゃないけどそこまで謙遜しなくてもいいと思う。
……じゃあ俺が一番アカンヤツやんけ!
「そういえば森岸くんは『意地を張ってるだけ』って……」
「おお! 緑谷少年がいた!」
「うわっ!?」
「お、オールマイト!?」
「ご飯……一緒に食べよ?」
「乙女や!」
「んふっ……」
あ、響香が変なツボに入った。
にしてもオールマイト、何か緑谷のこと気にかけてるな。前に治療した怪我のことを黙ってくれてたからっていうのもあるんだろうけど、ちょっと露骨に扱いが違う気がする。
大方似たような個性だから、って理由だろうけど。同じような超パワーの個性で上手く扱えてないのが気になるのかもな。
飯田達も少し気になってはいたのか、俺と同じ意見らしい。傍から見てるとアイツ痛々しいからなあ……大怪我する前に調節できるようになって欲しい、ってのが本音だろう。
「それで、森岸君は何故ヒーローを?」
「ああ……緑谷いねぇけどまあいいか。本当に何となく……何か気に入らなかったからヒーローを目指してる」
「気に入らなかった……?」
「小学生くらいの時だっけ? あれ」
そう、そんくらい。響香もよく覚えてるな。
小学三年生くらいの頃、将来の夢についての発表的な授業があった。
その時の子供なんてみーんなヒーローになりたいとしか言わない。響香も俺も他の奴らも皆ヒーローを将来の夢として掲げていた。
けど、俺の発表が終わった後にだけ、先生がこう言っていた。
──森岸くんなら優秀なサイドキックになれるよ!
……これ今思うと結構酷いな? 当時の俺は『は? サイドキックじゃなくて事務所構えてやるが?』って反抗的だったけど、普通に酷いわ。だって『お前に独立は無理だよバーカwww』とも取れるし。
多分その時の先生は深く考えてなかったんだと思う。周囲もバカにしてるわけじゃなく、褒め言葉として同じことを言っていた。
「でも小学生ってクソガキだからさ。どうせやるなら主役をやりたがるし、とりあえず一番がいいと考える生き物なんだよ」
「……確かに俺にもそんな頃はあったな」
「だろ? だからその時の森岸少年はこう考えちゃったんだよ」
何でサイドキックなんだ、って。サイドキックじゃなくて自分の力でヒーローをやりたい、って。態度には出さなかったけどずっと不満を抱えていた。
だから、誰にも文句を言わせないヒーローになればいいと思った。誰もがひと目でわかるくらい強くてカッコイイヒーローになればいいんだと。
「だから要はあれだな。昔の『サイドキックなんて嫌だ』って拗ねてからずーっと意地張ってきてるだけ……ってことだ」
「なる……ほど……?」
「あんまり深く考えなくていいよ。詠士いつもそんなだったし」
「あっ酷い! 遠回しにガキって言われた!」
自覚があるだけに言い返せない。ちくせう。
お前がその気ならこっちにも考えがあるんだぞ。親にヒーローになりたいって言いたいのに、勇気が出ないって俺に泣きついて来たことバラしてやろうか。
って、考えてたらプラグ刺された。痛い! 何故わかった。
「見れば分かるから」
「そこは耳で察知しろよ」
「……もしかして二人って、中学から同じ?」
「「いや小学校から」」
あ、ハモった。
「幼馴染というわけか」
「小一からだから……10年近い付き合いになるね」
「小中同じ学校で、高校でも雄英……同じ所に来てるからな」
「なんか……その、いいね!」
麗日さん、具体的に何がいいんだ。
この後滅茶苦茶質問責めされた。何で幼馴染だと明かすといつも質問責めにあうんだ。
◇
その頃、オールマイトと緑谷。
四人と分かれて仮眠室まで連れられた緑谷は既に昼食を食べ終え、向かい合った状態で話を聞いていた。
「……つまり、活動限界が消えた……?」
「そうなるね。後は残り火次第、って感じかな」
今までのオールマイトであれば人目がないこの仮眠室でも筋骨隆々の姿を取り続けることはなかっただろう。
しかし、森岸によって全ての傷が癒された今。あの死にかけの骸骨のような姿になることはなくなった。健康的でむさ苦しい筋肉モリモリマッチョマンのままでいられるのだ。
「……先に言っておくけど【ワン・フォー・オール】を返そう、なんて考えないでくれよ」
「うっ……」
「それはもう君の力だ。それに、今更無個性に戻る訳にもいかないだろう?」
「……はい」
そしてオールマイトの身体に問題がないのであれば、本来はオールマイトのものであった個性【ワン・フォー・オール】を返却すべきでは……と思っていた緑谷をスッパリと切り捨てた。
【ワン・フォー・オール】とは、聖火の如く受け継がれてきた
オールマイトで八代目であり、緑谷出久が九代目。文字通り次世代のヒーローというわけだ。
緑谷が個性の反動で負傷するのも当然だろう。何せ彼は【ワン・フォー・オール】を得てからまだ一ヶ月と少ししか経過していないのだ。
「それより体育祭の話だ。君、まだ【ワン・フォー・オール】の調節できないだろ? どうしよっか」
「っ……はい……」
「譲渡した時みたいに器を鍛える、という方向じゃ時間が足りないし……繰り返し練習するには怪我が怖いな……」
周囲からすれば知る由もない話だ。なので『自分の個性すらろくに扱えていない雄英生』にしか見られないだろう。
それではオールマイトとしても困る。肉体的な問題こそ解決してしまったものの、やはり【ワン・フォー・オール】にはいつか終わりが来てしまう。そうなれば平和の象徴として戦えなくなる。
故に、オールマイトとしてはそうなる前に緑谷に強くなってもらいたい。【ワン・フォー・オール】だけでなく、次代の平和の象徴として立ち上がって欲しい。
だが現状の緑谷はオールマイトの超下位互換。たった一発で使い物にならなくなるコスパの悪い大砲でしかない。
それをどうにかして解決したいのだが、威力や反動を思うと反復練習というわけにもいかず。どうしたものかと頭を悩ませている。
「……あ」
「どうしました?」
「いっそ森岸少年に協力を仰ぐのはどうだい? 彼なら反動の怪我も治してしまうだろう?」
「それは、ちょっと……」
その時ふと思いついたのは、己の怪我を治してくれた少年のこと。彼ならば緑谷の負傷も問題なく治療してしまえることだろう。
だがオールマイトよ。それは緑谷に『手足バッキバキにしても大丈夫! 治るから心配すんな!』って言ってるようなものだぞ。特訓というか自分で自分に拷問してるようなもんだぞ。
さすがの緑谷もこれにはやや引いた模様。どちらかと言えば理論派な彼にはあまりにも脳筋過ぎる提案だものね。
「森岸くんの時間を取るのも憚られますし……」
「そう思うのも当然だけどね、頼れる友人がいるなら頼るべきだよ。特に今の君はまだまだ未熟なんだから」
それに森岸を自分の都合に付き合わせていいものか、という思いもある。
確かに森岸にかかれば緑谷の反動による負傷なんてパパっと治してしまえるだろう。だがその間に彼が得るものがあるかと言われれば何も無い。
この体育祭前の貴重な時間を奪ってしまっていいのか、という思考が頭を過ぎるのだ。
それにオールマイトは少し呆れたように返した。
緑谷の言うことも理解できるが、そんな事を考えていては何もできやしない。それこそ自分というNo.1ヒーローだって緑谷という一人の生徒の為に時間を割いているのに。
しかし緑谷出久が自身を過小評価しているのはどうしようもないとも理解している。無個性としていじめを受けていた過去を思えば賞賛すべきですらある。
なのでここはひとつ、背中を押してやることにした。
「今なら彼、きっと二つ返事で請け負ってくれるよ」
「えっ……?」
「USJの一件で相澤君も思うところがあったみたいでね。放課後に少し時間を取って森岸少年の【魔法】を一つずつ確かめてるらしいんだよ」
本当ならあまり話してはいけない内容。森岸の【魔法】の確認をしているというもの。
あの日、自分自身で森岸の【魔法】を体験した相澤は良くも悪くも強力な個性であると認識を改めた。
しかし当の森岸本人はそうした【魔法】をポンポン使うのでどうにも不安を感じてしまう。
そこで空いた時間に相澤自身の目で確かめることにしたそうだ。ざっくりとした名称と効果だけを知らされていた【魔法】の詳細を把握しておく為に。
「そんな事してたんだ……」
「相澤君も緑谷少年の負傷は気にしていたし、頼めばきっと見てくれるよ」
「っ、はい!」
とりあえずエンジンをかけてやるくらいはできたらしい。オールマイトは少しホッとした様子で緑谷を見守っていた。
【以下相澤先生の奮闘】
相澤「これはなんだ」
森岸「こういうやつです」
▼アイザワは てんじょうに
あたまを ぶつけた !
相澤「っ……!?」
森岸「やっべ忘れてた」
相澤「これはなんだ」
森岸「こういうやつです」
▼モリガンは じぶんのすがたを
アイザワ そっくりに かえた !
相澤「!!!?!?」
相澤「これはなんだ」
森岸「ぶっちゃけ使い道ないです」
▼アイザワの 踊りを 封じ込めた !
相澤「……何が起きた?」
森岸「踊れなくなりました」
相澤「は?」
森岸「相澤先生は踊れなくなりました」
相澤「何の意味があるんだそれ」