100話到達しました。やったぜ。
原作の巻数でもちょうど折り返しあたり。完結まで気長にお付き合いいただけると幸いです。
Q.麗日の抱き着きイベントスキップされた?
A.心操の判断が早かったせいでスキップされました。なんてことをしてくれたんだ心操。
Q.尾白の【尾空旋舞】ってどのくらいの威力?
A.【硬化】した切島がちょっと痛がるくらい。
Q.小大の顎と庄田の骨は無事ですか?
A.森岸が【ベホマ】を使ったのでセーフです。
第一試合……4-0
第二試合……4-0
第三試合……4-0
第四試合……4-0
そして第五試合……5-0
たった一人も取りこぼすことなく、A組の完全勝利。いっそ哀れみすら覚える程の大差を付けられたB組は悔し涙すら流しており、対照的にA組は沸き立っていた。
片や凱旋、片や敗走。戻ってきた者達もまるで正反対。中でも物間と心操は悔しそうにしながらも苦笑いを浮かべていた。
諦めたわけではない。ただ超えるべき壁の高さを再確認して笑いが込み上げてきただけだ。そしてそれを超えた時の自分がどうなっているのか、今では想像もつかない。
さておき、戻ってきたのならば講評の時間だ。第五試合で語るべき内容と言えばやはり緑谷の暴走が真っ先に挙げられた。
相澤ですら注意や説教よりも先に困惑を滲ませながら緑谷に尋ねている。
「とりあえず緑谷……アレは何だ?」
「えっ……とぉ……」
当然バカ正直に言えるはずもない。というか正直に話したところで信じてもらえるはずがない。
アレというのは緑谷から噴き出した黒い何か……歴代継承者の一人によると【黒鞭】と言われていた力。
流石にこれまでの超パワーから逸脱している事もあり、相澤だけでなく他の生徒達もどこか懐疑的な目で緑谷を見つめていた。
どう話せば……と緑谷が頭を悩ませていると、不意に森岸がこう切り出した。
「俺と似たようなのじゃないのか?」
「森岸と?」
「A組には前話したと思うけど、俺の個性も最初は【ホイミ】しか使えなかったぞ。で、色々弄ってたら色んな【魔法】が使えるようになった」
【ワン・フォー・オール】の存在を知らない森岸の推測はこうだ。
自分の【魔法】がそうであるように、緑谷の超パワー自体は個性の副産物ではないかと。緑谷の個性の本来の在り方は【魔法】の魔力のようなエネルギー的な何かを別の効果に変換できるのでは? と。
普通なら『いやそれは流石に……』と荒唐無稽扱いされて終わる乱暴な推測だが、当の森岸本人がそうした個性である為か妙な説得力を持っていた。
人知れずハラハラしている耳郎とオールマイトを他所に相澤は視線だけで『で? 実際のところはどうなんだ?』と緑谷に問いかけた。
「僕にも……まだ、はっきり分からないです」
「……そうか」
幸いにも周囲の視線から疑うような感情は晴れていた。
それもそのはず、傍から見れば隠していた新技をここぞという場面で使ったのかと思ったら本人も『知らん……何それ……怖……』という態度だったのだ。
これでただ隠していただけだったのなら酷く叱責されていただろうが、緑谷の意思で引き起こされたことではないと分かると途端に同情の目を向けられた。
誰にだって覚えがある話だ。ある日突然自分の個性が知らない力を持っていると知って驚いた……などと珍しくもない。
【ワン・フォー・オール】の事はかなり遅れて発現した個性として説明してある。ならばこうした事象も起こりうるだろうと相澤はそれ以上追求はしなかった。
で、その暴走を止めた立役者が心操。素早く判断し行動に移した点は素直に賞賛すべきものだった。
惜しむらくはその後の動き。仕方がないと言えばそれまでだが、未知の現象を前にして動揺から抜け出すのが遅れてしまった。
もしあの時もっと的確に動けていたら、と本人ですら自覚している。
「あまり自惚れるなよ。ここにいる皆、誰かを救えるヒーローになる為の訓練を日々積んでるんだ。いきなり何もかもできるような奴がいるとしたら、それこそオールマイト級の天才だ」
「…………はい」
「人の為に……その思いばかり先行しても人は救えない。自分一人どうにかする力が無ければ他人なんて守れない……その点で言えばお前の動きは充分及第点だったよ」
だがそれは自惚れと同じだ。
心操は普通科。日常のカリキュラムに訓練が組み込まれているヒーロー科と異なり、彼の実力は全て放課後の僅かな時間に行われるトレーニングによるもの。
ヒーロー科よりも短い時間でここまでヒーロー科に張り合って見せただけでも充分賞賛すべき事だ。
事実第五試合での心操は緑谷達にとって正しく脅威となっていた。
「これから改めて審査に入るが恐らく……いや、十中八九! 心操は2年からヒーロー科に入ってくる! お前ら中途に張り合われてんじゃないぞ!」
「おお!! どっち!? A!? B!?」
「その辺はおいおいだ」
暗い雰囲気だったB組もこの発表には驚かされる。ついでにブラドキングからも言外に『落ち込んでる暇なんてないぞ』と発破をかけられたのも理由なのかもしれない。
特に最も食い下がった最後の組。物間を筆頭に目に輝きを取り戻した彼らはいつか必ずリベンジを果たしてやると意気込み、対抗戦の授業は終了となった。
「ああ、そうだ。話のついでで悪いが物間」
「はい?」
「ちょっと明日エリちゃんのとこ来い」
◇
いつもの、と言っても伝わる程度には利用している雄英の一部屋。
いつもならオールマイトと緑谷が向かい合って座っているはずのその部屋には四名。怒りを通り越して呆れ返った爆豪と冷や汗ダラッダラの緑谷とオールマイト。そして──
「受け継がれてきた個性……【ワン・フォー・オール】……なるほどねえ……」
──不幸にも彼らの秘密を知ってしまった耳郎響香がそこにいた。
対抗戦が終わりコスチュームから着替えた直後、耳郎は爆豪と緑谷を捕まえて内緒話の件についてを問い質した。
これには爆豪もご立腹。緑谷へと『だから言ったじゃねえか』と言わんばかりに鋭い視線を向けており、対する緑谷は顔を真っ青にして震え上がっていた。
それもそのはず、目の前の少女は誰がどう見ても怒っている。次の瞬間にはビンタの一発くらい飛んできても不思議ではなかった。
これは緑谷の一存で話していいことではないと爆豪がストップをかけ、オールマイトを召喚。爆豪に連れてこられたオールマイトもまた耳郎を見るなり顔を青くさせていた。変なところでよく似た師弟である。
そうしていつもの部屋に来て耳郎にも【ワン・フォー・オール】の事を話していたのだが……
「そんな極秘事項を皆いる場所で話すな!?」
「ごめんなさい!!!」
……まあこればかりは誰も庇えない。情報管理とかどうなってんだオールマイト。ここにサー・ナイトアイがいたら泣いてるだろ。
こう言っては何だが、オールマイトとてただの人間と言われてしまえばそれまでなのだが。No.1ヒーローが一皮剥いたら色々な方面でポンコツなオジサンだとは誰も思うまいて。
今回は耳郎だけで済んだからよかった……いや良くはないけれども。下手をすればもっと多くの人間に聞かれていた可能性だってあるというのに。
「しかし話すタイミングが無くて……あの時くらいしか……」
「そもそも知ってること全部先に話しておけば良いでしょう!? 元はオールマイトの個性でもあったのなら尚更!」
「それが……私も知らなかったんだ」
「………………はい?」
もう何度目かの想定外の言葉に耳郎はキョトンと立ち止まった。
今回緑谷が見せた【黒鞭】……歴代継承者の個性が【ワン・フォー・オール】に宿っていたことをオールマイトも把握していなかったという。
もっと言えばその前。オールマイトの更に前の継承者も知らなかった。オールマイトまで伝わっている情報の中にそんな話は一つもなかった。
「じゃあ現状はテメェが初ってことか」
「何かキッカケらしいキッカケとかなかったの?」
「ううん全く……」
あ、でも……と緑谷は恐る恐る続ける。
「『本当は20%あたりで発現するはずだった』って……森岸君の【魔法】でタイミングが狂ったって言ってた」
「……何?」
精神世界らしき場所で歴代継承者の一人から聞かされた話。本来発現するはずだったタイミングを【魔法】によって狂わされた、と。
想定外の言葉にオールマイトですらポカンとしており、爆豪も頭の中で組み立てていた仮説を止めてどういう事だという顔をしている。
思えば森岸の【魔法】は規格外である事に目を奪われがちだが、それ以上に異質な個性でもある。
魔力という未知のエネルギーを変換して望んだ事象を引き起こす……なるほど確かに【魔法】と呼ぶに相応しい能力だろう。
だがその原理は何一つ分からない。どんな効果なら五年前に負って塞がりきってしまった古傷を万全な状態まで回復させられるというのか。
「耳郎少女は何か知っているか?」
「ちょっとした概要くらいなら……全部はウチも……」
「では知っている分だけ話してはくれないだろうか。【ワン・フォー・オール】に何が起きていたのかを知っておきたいんだ」
「えと……少し難しいんですけど……」
そうして耳郎が語ったのは以下の通りだ。
まず森岸の【魔法】は厳密には
科学的な説明はできず、言語化もできない。あるとすれば森岸の感覚で語ることしかできない。
回復したければ回復の概念を、強化したければ強化の概念を使う。それには魔力と呼んでいる未知のエネルギーを消費する。
それにより様々な物理法則や科学的根拠をすっ飛ばし、望んでいた結果を無理やり引っ張り出す。まさに物理法則で成り立っているこの世界に喧嘩を売るような能力だ。
「詠士曰く『魔力は無理を通す為の対価のようなもの』だと……」
「ふむ……では【ワン・フォー・オール】のタイミングを狂わせた件についての心当たりは?」
「それなんですけど……多分、回復魔法が原因かなって」
「回復魔法が?」
恐らく、と頭につけながら耳郎は語る。
回復魔法はただ傷を癒すだけのものではなく、疲れを取る事にも使える。実際に雄英教師の中にはA組の授業が終わった後森岸に【ホイミ】を使ってくれと頼む者もいる。
「というのもあれは厳密に言うと『身体を最適な状態に治す』って効果らしくて……」
「最適な状態……まさか」
「そのまさかかなあ、って」
ざっくりとした説明だが、いやだからこそオールマイト達はすぐに理解した。
回復魔法は身体を最適な状態に治す効果……今回のように個性が暴走する状態を最適だと評する事があるだろうか。
タイミングが狂った、というのはそういう事だろう。本来であればもっと早いタイミングで暴走するはずだった【ワン・フォー・オール】は、暴走寸前のところで回復魔法によって無理やり押し止められていたのだ。
「じゃあエリちゃんの角が短くなったのも……?」
「多分ね。あの子にとっての最適な状態に治したんだと思う」
エリちゃんの【巻き戻し】が落ち着いたのも同じ原理だ。彼女にとって最適な状態まで治した結果、彼女に負担がかからないレベルまで【巻き戻し】のエネルギーを
今回【ワン・フォー・オール】が暴走したのは回復魔法で抑えきれなくなったから、というのが答えだろうと耳郎は話す。
「何にせよ、またああならぬようもっと【黒鞭】について知る必要がある」
「はい!」
「あと五個、別の個性も控えているんだ。頑張ろう」
とはいえ漏れ出てしまったのならどうしようもない。それならば使いこなせるように訓練を積み、暴走しないようにするしかない。
オールマイトの言葉に緑谷は強く意気込み──
「それはそうですけどもっと話す場所考えてください。巻き込まないって言ってた詠士本人に聞こえてたら本末転倒ですよ」
「はい……」
「ごめんなさい……」
「だから言ったろうが」
……しっかり怒られる師弟だった。
ちなみにこの後オールマイトはもう一回根津校長からも怒られた。もっと言ってやってくれ校長。
根津「あのさあ……」
オールマイト「すいませんでした……」
根津「ナイトアイにも話しておくからね」
オールマイト「そっ、それだけは!?」
根津「まあもう既に言ってるんだけどね」
ナイトアイ「私が来た」
オールマイト「」