魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.ナインのMPどんなもん?
 A.森岸には遠く及ばないが現状では森岸を除けば最も多い。あまり長引かなければ魔力切れを起こさない程度にはある。

 Q.全部の個性と【魔法】結びつけてるの?
 A.敢えて一部は結びつけてない。八個ある内の二つは据え置き。それ以外は全部結びつけてる。

 Q.なんかデメリットとかないの?
 A.一応ある。後で本編で出す。






104.硬度試験

 

 

 

 なるほど、と思わず口にしていた。

 

 

「どうしました?」

「そう大した話ではない。随分前に……な」

 

 

 リ・デストロは一人、合点がいった様な顔でモニターを見つめていた。

 

 スケプティックと呼ばれた黒い長髪の男は不思議そうに首を傾げているがそれ以上の答えは返ってこない。ならば気にすることもないかと再び視線をモニターへと戻す。

 

 

 ウォルフラム、そしてナイン。たった二人と万単位の異能解放軍。どちらが有利であるかなど聞くまでもない。一人に一つの個性が当たり前の現代、数というのはそれだけで相手を押しつぶせる力だ。

 

 加えて解放戦士達はいつか来るその時に備えて個性を鍛えている。名も無き一市民でさえ下手なヒーローと同等の個性出力を誇っている。

 

 それをたった二人に蹂躙されている。

 

 

「ナイン……彼の異能は凄まじいな。複数持ちまでは想定していたがまさかここまでとは……」

「風に爆発……おそらくまだ力を隠していてこれか」

 

 

 やはり目を引くのはナイン。どれ程の数の、力の異能を宿しているのか何か一つ行う度に解放戦士達が紙くずのように吹き飛ばされていく。

 

 竜巻や爆発を自在に操り、誰一人として彼の元へ近寄れない。だと言うのに当の本人はつまらなさそうにカメラを睨みつけているばかり。

 

 

「こっちはウォルフラム……電話の主だったな」

「コイツはナインよりも戦い慣れてるな。やってる事はナインに比べれば地味だが判断が上手い。無駄なく確実に返り討ちにしている」

 

 

 一方ウォルフラム。こちらは傭兵らしく戦い方はスマートなもの。

 

 ナインのように派手に暴れたりはしていないが、消耗を最小限に抑えつつ【金属操作】と【筋力増強】と【ポケット】の三つの異能を巧みに使いこなしている。

 

 ナインにもウォルフラムにも傷一つついちゃいない。幹部は出していないとはいえまさかここまで差があるとは思いもしなかった。

 

 

「どうします。このまま続けます?」

「ふむ……外典雷造を出そう」

「……あの二人を?」

「彼らが強いのはよく分かった。だがほんの少し抜きん出た程度ではどうしようもない。君も分かっているだろう?」

 

 

 故に、試すことにした。彼らが異能解放軍の幹部と戦ったらどうなるのか。誰もが解放の日を夢見て異能を鍛えている中、更に頭ひとつ抜けた実力を持つ彼らと比べてみよう、と。

 

 現行のヒーロー社会を破壊する際、立ちはだかってくるのは当然ヒーロー。つまりエンデヴァーやミルコといった超がつく程の強者とぶつかる。そこに生半可な戦力では太刀打ちできない。

 

 無論ウォルフラムとナインの背後に何者かがいることは分かっている。ひょっとすれば異能解放軍と同等以上の戦力を有している可能性すらある。

 

 それでも解放という思想の為に戦ってきたリ・デストロは妥協しない。未だに底を見せない二人の実力を正しく把握しておきたかった。

 

 

 スケプティックが二人に連絡を取ると、既に待機しているという。ならば話が早いとスケプティックは他の解放戦士達を退かせ、二人に出るように伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

「あん? 何だそりゃ?」

 

 

 潰しても潰しても次から次へと湧いてくる解放戦士を前にウォルフラムは楽しんでいた。

 

 殺しが趣味という訳でもないが、大っぴらに個性を使える機会もそうそうない彼にとって今回はいいストレス発散程度にしか見えていない。

 

 折角だからと与えられた個性を大盤振る舞いに解放戦士を殺して回った。【筋力増強】で得た力で殴り殺したり【金属操作】で押し潰したり、生命の価値を嘲笑うように一人一人殺していた。

 

 

 しかし様子がおかしい。あれだけ向かってきていた解放戦士の数が急激に減っている。気の所為などではなく、視界に入っていた者があからさまに引き下がっていくのが見えていた。

 

 まさかこの程度で人員が尽きたなどということはないだろう。だとすれば何故引き下がらせたのか。

 

 

「……何か来る」

「は?」

 

 

 答えはすぐに明らかとなった。

 

 

 ナインの言葉に従い警戒し始めた瞬間、上から氷の塊(・・・)が落ちてきた。

 

 それもただの氷の塊ではない。人の腕をそのまま大きくしたような形状で、人間の腕にまとわりついたままの氷だ。

 

 

「ちったァ骨のある奴が来たか!?」

「…………!」

 

 

 次が早かったのはウォルフラム。飛び退いた先で体勢も不十分なまま、顔すら見せない厚手のコートを着た何者かへと向けて【ポケット】から出した金属を放つ。

 

 氷と金属では硬度も質量も別物。腕の形を取った氷で伸びてくる金属を殴りつけるが、わずかに歪むだけで砕くまでは至らない。それどころか氷の方が砕かれてしまう。

 

 

「───ならばこれはどうかね?」

「あ? がっ……!?」

 

 

 押し切れる。そう思った次の瞬間、バチリと鋭い痛みがウォルフラムを焼いた。

 

 

「我が異能【増電】の味はどうかね?」

「ちっ、電気か……面倒くせえ奴が来たな」

 

 

 仕掛けてきたのは氷の異能だけではなかった。姿を見せたのはもう一人の解放戦士。額に傷跡のある重厚な装いの男が不敵に笑いながらウォルフラムへと問いかけていた。

 

 

「無事か?」

「あの程度で死にやしねえよ。ったく……あっちのガキは俺がやる。テメェはあのウザってぇクソジジイをやれ」

「……いいだろう。付け焼き刃の連携よりも単独で戦った方が良かろう」

 

 

 本音を言えばウォルフラムはあの傲慢そうな男……雷造に仕返しをしてやりたい。だが相性がよくないのも事実。

 

 感情に振り回されて本来の任務をしくじるなど三流以下。裏社会の傭兵として長生きできるだけの実力と精神力を有したウォルフラムはこの程度では揺らがない。

 

 これに驚かされたのはナイン。どこかチンピラじみた態度だったウォルフラムが、存外冷静で合理的な思考を持っていた事にわずかに目を見開いていた。

 

 雷造と厚手のコートの青年……外典も同様。粗野で乱暴な言動とは裏腹に冷静な判断を下したウォルフラムを見て口角を吊り上げた。

 

 

「いいだろう……かかってこい。リ・デストロ様に相応しいか試してやる」

「相応しいもクソもねェよガキ。誰がどこで何をしようと自由ってのがテメェらの思想じゃなかったか?」

 

「では、貴様が吾輩の相手という事で良いかな?」

「構わん。せいぜい死なぬ事だな」

 

 

 配役は決まった。ならば後は結果が全て。

 

 外典の【氷操】とウォルフラムの【金属操作】がぶつかり合う。見せつけるように同じ腕の形を取った金属が氷と衝突し、一方的に氷を砕いていく。

 

 

「!」

「ガキのお遊びで少しでも食らいつけると思ったか?」

「図に乗るな!」

 

 

 外典は軋む氷を捨て、後方へと思い切り飛び退く。続けざまに氷が砕ける甲高い音が響き渡った。

 

 力で押し負けるのならば手数を増やせばいい。砕かれた氷をもう一度自分の周囲に引き寄せると、巨大な氷柱を複数生み出しウォルフラムへと差し向ける。

 

 並のヒーローであれば防ぐことも避けることも難しい攻撃。それをウォルフラムは涼しい顔でバリバリと打ち砕いていく。

 

 

「無駄だ。テメェは俺の完全下位互換だぜ」

「……それはどうかな?」

「あ? 何言って───っとぉ!?」

 

 

 ニヤリと互いの笑みが深まる。ウォルフラムはともかく何故外典まで……と思った時には攻撃が来ていた。

 

 僅かな揺れを察知したウォルフラムが転がるようにその場から離れると、コンクリートの地面を氷の塊が引き裂きながら現れた。

 

 

「水道管か……!」

「理解が早いな。その通りだ。僕の異能は来るべき時の為に鍛え、研ぎ澄ませてある」

 

 

 【氷操】……氷を操るだけの異能。自ら氷を生み出すことはできず、氷が存在して初めて効果を発揮する能力。

 

 本来であればリソースは有限。砕かれたり溶かされたりする度に手札も減っていくという無視できない欠点があった。

 

 しかしとある件をキッカケに外典は覚醒した。彼の【氷操】は氷の温度(・・)すら操るようになった。

 

 

「僅かでも氷があればそこからいくらでも増やせる。お前の金属より脆くとも手数はこちらの方が圧倒的に上なんだ」

「なるほど……そりゃ否定のしようがねェな。水がありゃ実質無限ってわけか」

 

 

 今しがたウォルフラムに使った攻撃もそれによるもの。地下の配管に氷を侵入させ、氷の温度を極端に低くすることで周囲の水を凍結。増殖した氷を操って地面から氷山の如き一撃を放ってみせた。

 

 質ではウォルフラムに軍配が上がるだろう。しかし量においては外典が勝る。己が乗った氷をも操り、空からウォルフラムを見下ろしながら外典は笑う。

 

 

 そして同時にウォルフラムもまた愉快そうに笑ってみせた。

 

 

「だがなあ……それはテメェの専売特許じゃねェだろう?」

「……?」

「似た者の好だ、教えてやる。俺の個性は【金属操作】……金属であれば細かい指定なんざねェんだ」

「まさか……!」

「そのまさかさ」

 

 

 お前がそう来るのなら、とウォルフラムはゲラゲラと嘲笑う。何故自分にしかできないと思い込んでいたのか、と。

 

 次の瞬間、コンクリートの道路や周辺の家屋に亀裂が走る。ミシリ、バキリ、と嫌な音を立て───無数の金属がウォルフラムの元へと集まっていく。

 

 金属であれば何でもいい。例え刃物だろうが鉄骨だろうがパイプだろうが関係ない。空へと向けて伸ばされたウォルフラムの手にまとわりつくように集まっていく。

 

 

「これで質も量も、俺の勝ちだな?」

「────!」

「大人を舐めるから痛い目にあうんだぜクソガキ!」

 

 

 無数の金属でできた歪で巨大な腕が振り抜かれる。大質量攻撃──ではない。腕を形作っていた金属を乱雑に放ったのだ。

 

 その中には地面を通る配管や家庭で使われていた包丁等、まともにあたれば無事では済まないものが無数に紛れている。

 

 防御を選べば質量と硬度の差で押し切られる。しかし回避するにも数の多さと範囲の広さが牙を剥く。

 

 結局外典が選んだのは中間択。防ぎきれないものを避けつつ氷の盾を作って防御しながらの移動。すぐ真横を貫く包丁にゾッとしながら必死に攻撃を避け続ける。

 

 視界を塞ぐほどの壁を作れば本命の大質量攻撃が来る。かといって中途半端な壁では飛来する金属を受け止めきれない。

 

 舌打ちを漏らしながら飛び回る。無限の手数とは言ったものの、実際に使える数が有限であれば意味は無いと突きつけられたこの状況に苛立ちを隠せない。

 

 感情が揺れた一瞬が命取りになった。

 

 

「この……!」

「テメェ幹部だよな?」

「っ!?」

 

 

 意識の隙間を縫うように、外典の視線が外れたほんの一瞬でウォルフラムが目の前まで迫っていた。

 

 お手本はずっと目の前にあった。氷を操って足場を作り、空中を動いていた。ならば同系統の個性を持つウォルフラムにできない道理はない。

 

 雑に放っていた雑多な金属ではない、彼の【ポケット】から出された超硬合金タングステンがギラリと鈍く光っていた。

 

 

「死なねえ程度に加減してやるが……せいぜい死ぬなよ?」

「ふざけ───」

 

 

 【金属操作】によって生み出された即興の篭手を纏ったウォルフラムの拳が外典の頭を真っ向から殴り飛ばした。

 

 重く鋭く強い一撃は一切の抵抗を許さぬまま叩きつけられ、フードの奥で外典の意識が途絶えているのを見送った。

 

 

「さて……これで最高指導者とやらは出てきてくれんのかね」

 

 

 同じく雷鳴が止んだもうひとつの戦いを笑いながら、ウォルフラムはそう呟いた。

 

 

 

 






 『雷造』は勝手に生やした名前です。調べても増電副隊長としか出てこなかったのでそれっぽいのを勝手につけました。原作で上鳴に無力化されてたあのオッサンです。


解放戦士A「やっべ外典さん来た」
解放戦士B「巻き込まれるぞ逃げろ逃げろ」
解放戦士C「何でうちの近くで出てきちゃうかな……色々ぶっ壊されちまうじゃん」
解放戦士A「今更では?」
解放戦士C「そうだけどさあ……」
解放戦士B「俺ん家はとっくにぶっ壊れてんぞ。ガタガタ吐かしてんじゃねえハゲ」
解放戦士A「……ドンマイ」
解放戦士B「ちくしょう……俺のゲーミングPC……」


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