魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.森岸から耳郎にプレゼントとかしてないの?
 A.書くの忘れてました。エンデヴァーから押し付けられた金を使って欲しがっていたちょっといいヘッドホンをプレゼントしてます。

 Q.耳郎からは?
 A.手編みのマフラー。思ったよりクオリティが高くて店売りと勘違いされかけた。

 Q.峰田生きてる?
 A.(無言で十字を切る)





108.第二次インターン

 

 

 

 新年。肌を刺すような冷たい風が吹く朝。

 

 白む息を吐きながら街を歩くシルエットが五つ。雄英高校の制服に身を包み、その手には番号が記載されたケース……ヒーローコスチュームが。

 

 他愛もない話をしながら、僅かに緊張感を滲ませて。ピタリと足を止めた先に待っていたのは──

 

 

 

「ようこそ、エンデヴァーの下へ」

「うす、おはようございます」

 

 

 

 ──デフォルトが無愛想な顔で固定されきっている現No.1ヒーロー・エンデヴァーその人だった。

 

 

 

 

 

「許可して頂きありがとうございます!」

「よ、よろしくお願いします……」

「…………ああ」

 

 

 彼の下を訪ねたのは五人。エンデヴァーの実子である轟焦凍と、彼に誘われた緑谷出久に爆豪勝己。そしてエンデヴァーの方からスカウトをかけていた森岸詠士と耳郎響香。

 

 他のヒーローからすれば有望株根こそぎいくつもりかと嫉妬すら覚えるメンバーを前にしてエンデヴァーの表情はいつも通り。彼の普段の姿を知らぬ者であれば不機嫌なのかと思ってしまう真顔っぷりだ。

 

 尚、その実態は当初の予定より人数が増えたことによる焦りがあったりする。轟と森岸と耳郎だけの予定だったのだが、轟が緑谷と爆豪を誘ったものだからこんな事になっている。

 

 断ることもできたのだがそこは子供の前のお父さん。少しでもいい所を見せたいエンデヴァーとしては我が子からの頼みを無下にするわけにもいかず渋々受け入れている様子。

 

 予定外だった二人を見る目はどこか冷めているが、無責任に放り出すつもりもないエンデヴァー。まずは一度事務所に向かおうと彼らに背を向け、言外に『着いてこい』と示しながら歩き出す。

 

 

「学ばせてもらいます!」

「…………"焦凍は俺じゃない"だったな」

「!」

 

 

 食い下がる緑谷に対し、エンデヴァーの言葉は穏やかだった。かつて体育祭で轟と緑谷の試合が始まる前にした会話……轟家の歪みを知った緑谷がエンデヴァーに向けて吐いた言葉。

 

 何を、という緑谷の声は喉元まで出かかって止められた。

 

 

「響香!」

「わかってる! ちょっとだけ聞こえた(・・・・)!」

 

 

 エンデヴァーが道路脇のフェンスを飛び越えたとほぼ同時に森岸と耳郎が動き出した。ケースからコスチュームを展開しつつ、即座にエンデヴァーへと追い縋る二人。

 

 それを見た三人の反応も早い。何が起こっているのかも分からないが、足を止めてはならないと学んだ彼らもエンデヴァー達に続くようにコスチュームの装備部分を展開する。

 

 

「気づいたのか、レックス」

「ヒント貰ったんで、頑張ってます!」

「ウチは個性柄耳がいいんで!」

「そうか……学びたければ食らいついてみろ! お前達(・・・)もな!」

 

 

 それから一秒後、遠く離れたビルの向こう側からようやく衝撃音が聞こえてくる。そこでようやく緑谷達も事件の存在を認識した。

 

 エンデヴァーの視線は森岸達から一歩分後ろ。出遅れとも言えぬほどの反応速度で動き出した緑谷達を見て微かに口の端を吊り上げていた。

 

 

「指示、お願いします!」

「───着いてきてみろ!」

 

 

 緑谷の言葉が着火剤になったのか、それとも既定路線だったのかエンデヴァーのギアが一段上がる。圧縮され解き放たれた赫灼が森岸と耳郎すら置き去りにするように加速する。

 

 二人との間に距離が生まれるがそれも一瞬。【スピオキルト】を重ねがけした森岸と耳郎もまた更に一つギアを上げてエンデヴァーに並ぶ。

 

 

「! 速い!」

「今の……【赫灼熱拳】を……」

「抜け駆けしやがってクソが!」

 

 

 それを黙って見ているはずもない。出遅れた分を取り返すように三人もまた加速する。

 

 

 

 

 

「私は宇宙からの啓示を得た!」

 

「逃げよ逃げよ国民達よ! 冥王の口角が孤を描いておる!」

 

 

 陽射しを受けてギラギラと輝くビル群の中、およそ正気とは思えぬ目の老人は仰々しく何かを喚き散らす。

 

 空で胡座をかいたまま飛び回る彼の周囲には大小入り交じった複数のガラス玉が。彼自身もガラス玉の上に構えており、重力など知らぬとでもいう顔で叫び出した。

 

 

「終焉の時は近い! この地は闇に覆われようとしている!!」

 

「あれ二丁目の『星のしもべ』じゃん」

「朝っぱらからうるせ……」

 

 

 ビルの中では始業時間となった会社員達が事情を把握しておらず、いつも騒がしい老人がまた何かやっている程度に見ていた。

 

 だが、次の瞬間には己も当事者となった事を理解させられる。一切の予兆なくオフィスビルの窓ガラスが老人へと吸い込まれた(・・・・・・)

 

 

「マジかあのジジイ!」

「ヒーロー待ってらんねェぞこれ!」

 

「逃げよ国民!! 私は闇の元凶を討ち滅ぼす者なり!」

 

 

 自分を支えるガラス玉すら最低限に、掻き集めたガラス全てが一つに纏められていく。やがてガラス玉は人の背丈を遥かに超えるサイズとなる。

 

 制御限界ギリギリの量を操っているのか、或いは何かしらのドラッグ故か。汗を流し鼻血すら落としながら【光明堕王】と名付けたただのガラス玉をどこかへと投げつけ───

 

 

 

「ガラス操作かご老人」

「な───」

 

 

 

 ──荒れ狂う炎を前に全てが無為に帰す。

 

 ガラス玉へと突貫したエンデヴァーの【赫灼熱拳】が内側から爆ぜ、キラキラと瞬く残骸を散らす。

 

 凄まじい熱と闘志を前に『星のしもべ』の顔が歪み、しかし勝ち目がないことを悟り動き出す。動揺こそあったもののその動きに迷いはなく、ビルとビルの間の細い路地へと逃げ込んで行った。

 

 

 が。

 

 

 

「通行止めだぜ爺さん」

「グガッ!?」

 

 

 細い路地を抜けた先。『星のしもべ』の仲間が待ち伏せしていたはずの場所に回り込んでいたレックスによって叩き落とされた。

 

 見ればイヤホン=ジャックの足元には奇襲を仕掛ける予定だった男達が倒れており、完全に読まれきっていた事を突きつけられた。

 

 後を追っていたエンデヴァーも僅かに驚きを滲ませ、滾らせていた赫灼を収めながら尋ねる。

 

 

「……読んでいたのか?」

「響香……じゃなかった、イヤホン=ジャックがコレとは別の所で構えてる奴がいると」

「何か物騒な独り言してる人がいたんでまさかと思ったら……はい」

 

 

 彼女の言葉に今度こそエンデヴァーは目を見開いた。

 

 元々耳郎にインターンの誘いをかけた理由はそう複雑なものではなかった。

 

 ただ己の息子を助けてくれた森岸の幼馴染で、恋人だと聞いていたから気を回した。その程度でしかない。

 

 しかし蓋を開けてみればこれだ。ただでさえプロの領域に片足どころか肩までじっくり浸かってそうな森岸について行くどころか完璧なアシストを成していた。

 

 

「……遅かったな」

「チッ、もう終わってんのかよ」

「……速ぇな」

「完全に置いてかれた……!」

 

 

 それだけではない、緑谷達もそうだ。

 

 本人達はそう悔やんでいるが、突然動き出したエンデヴァーと森岸達に置いていかれず即座に動き出した時点でインターン生としては十分及第点と言える。

 

 三人と二人の違いはシンプル。顔を合わせたあの時から気を張っていたかどうかでしかない。

 

 スタートピストルを聞いた二人と、そもそもスタートピストルを認識していなかった三人。しかし二度と同じ理由で出遅れることはないだろうと、エンデヴァーは目を細めて三人を見つめていた。

 

 ひとまず講評をくれてやろうとエンデヴァーが口を開いたその時、バサリという音と共に影がさした。

 

 

「あらら……余計なお世話だったか」

「ホークス!?」

「何故お前がここにいる……」

 

 

 その発生源は『はやすぎる男』ホークス。どこか残念そうな顔でエンデヴァー達の前に姿を表した。

 

 いち早く反応したのはヒーローオタクの緑谷……ではなく耳郎と森岸。耳郎は音で、森岸は見知った気配に一秒早く顔を上げていた。

 

 

「来る時は連絡を寄越せ」

「いやマジフラッと寄っただけなんで」

「……?」

 

 

 怪訝な顔をする耳郎達をスルーし、ホークスの視線はエンデヴァーにのみ注がれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 無力化された『星のしもべ』と仲間のチンピラ達はすぐに警察によって連行された。片や根拠のない妄言を撒き散らしながら、片や命令されただけだと他責を喚きながら。はいはい話は署で聞くからねとパトカーに放り込まれていく。

 

 後始末をサイドキックに任せている間、緑谷達はホークスと話をしていた。

 

 

「緑谷といいます!」

「ああ、あの指破壊してた子」

「うぐっ……」

 

 

 そして第一印象に苦悶の声を上げた。否定できない。

 

 しかし体育祭の印象とは別に常闇(ツクヨミ)からも聞いていたらしく、ケラケラと笑いながら分かってるから大丈夫と背中を叩いた。

 

 そこでふと、緑谷は常闇の事が気になった。ホークスの事務所にてインターンを行っているはずの同級生の姿は見当たらない。というかサイドキックもいない。

 

 何があったのかを尋ねてみれば地元でもサイドキックと仕事中だとか。ホークス曰く、自分の方が予定が立て込んでいるせいだと言う。

 

 

「で、何用だホークス。燈矢はどうした」

「いやだから地元で……まあいっか。それよりエンデヴァーさん、この本読みました?」

 「『異能解放戦線』……?」

 

 

 そこへエンデヴァーが割り込むように問うと、ホークスは苦笑いを浮かべながらとある本を取り出した。

 

 その表紙は至ってシンプル。タイトルとアイマスクのような黒い模様があるのみでそれ以外の情報は何一つない。

 

 想定外のものが出てきたことに疑問符を浮かべるエンデヴァーに対し、ホークスはベラベラといつものような胡散臭さを滲ませながら話す。あえて不自然な雰囲気を残したまま。

 

 何を、という言葉が出かかった瞬間に横から別の声が割り込んだ。

 

 

「え、ホークスそんなの読んでんの?」

「……そんなのとは酷いなあ。No.2のオススメだぜ?」

 

 

 これに慌てたのはホークス。何せこれはホークスが考えに考え抜いてようやく出せた遠回しな警告だ。

 

 というのも現在、ホークスは念の為にと異能解放軍からガチガチに監視され盗聴されている。耳郎が怪訝な顔をしたのも無数の機器の存在を何となく感じ取っていたからだろう。

 

 そんなホークスの目の前で解放思想について変な事を言えば真っ先に狙われかねない。頼むから余計なことは言わないでくれと祈るように森岸に視線を向け──

 

 

「いや……だってそれ、時代遅れのアホみてェな思想でしょ。よくある『自分がたまたま強者側に生まれたから弱肉強食を肯定してます』的なヤツじゃん?」

「え、これそんな本なの?」

「興味本位で読んだら延々と『俺の方が強いから俺に従え』ってことばっかり書いてあった」

 

 

 アカン。ホークスは頭を抱えそうになった。否定はしないけども。本音を言うと滅茶苦茶同意したいところなんだけども。

 

 このまま会話を続けるとボロが出そうだとホークスは会話を切り上げ、念を押すように「2番目のオススメですからね!」と告げてその場を後にした。

 

 

 






森岸「は? 解放思想とかカスやんけ」
ホークス「わァ……! ァ……!」

解放軍「は?」


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