Q.異能解放軍は森岸の意見を聞いてどう思った?
A.発狂するくらいキレてた。特にスケプティックと外典がリ・デストロから窘められるくらいにはうるさかった。
Q.異能解放軍から見た森岸はどんな感じ?
A.絶対相容れない敵。解放思想を鼻で笑われたので時が来たら何としても殺してやると思ってる。
Q.ホークスさん何してんすか。
A.あそこまでボロクソに貶されると思ってなかったし、そもそも森岸がこんなもん読んでると思ってなかった。
「ようこそエンデヴァー事務所へ!」
「「「俺ら炎のサイドキッカーズ!!」」」
「お久しぶりですバーニン」
「お久!」
相変わらずの熱血漢っぷりだなあここのサイドキックの皆さんは。それも手が空いてる人全員集めて挨拶って、分かりにくいけど結構歓迎されてんだな。
あの後ホークスは逃げるように飛び去って行った。ついでに俺達全員に『異能解放戦線』という本を押し付けていった。
自己啓発本として見るにはカスだが、超常黎明期の敵の記録としてはそれなりに面白くはある。オススメと言った本を目の前で扱き下ろしたのはちょっと悪い事をしたかもしれない。
星のしもべとかいう敵の後始末も終わり、今はエンデヴァー事務所に来ているのだが……エンデヴァーはあの本を持って引っ込んでしまい、バーニンを筆頭とした炎のサイドキッカーズにお出迎えされたところだ。
「今日から早速我々と同じように働いてもらうわけだけど! 見ての通りここは大手! サイドキックは30人以上!」
「つまァり! アンタらの活躍する場はない!!」
「面白ぇ、プロのお株を奪えってことか」
「そゆこと! あ、レックスは別ね。絶対エンデヴァーと回ってもらうから」
「あ゙!? 何でだ!」
やめてバーニン。爆豪の前で変なこと言うと対抗心が全部こっちに向いて面倒くさいから。いや何で轟も驚いた顔してこっち見てんだよ。
響香も『説明してください』な顔でこっちを見てくるし……分かったから。ちゃんと説明するから。
「まず、俺は一回ここにインターンに来てるの知ってるよな?」
「ああうん。すぐ終わっちゃったって……」
「その時に俺が使える【魔法】のリストを渡しておいたんだけど、その中のある【魔法】がな?」
元はホークスが燈矢の訓練をしていた時の懸念事項を解消したくて開発を続けていたとある【魔法】……個性伸ばしの中で【ベホマ】を完成させた事できっかけを掴めたソレ。
エンデヴァーが滅茶苦茶食いついてきたから驚かされたが、今思えば当然の反応だったな。燈矢でアレならエンデヴァーも相当悩まされているだろうし。
「【デメキエル】……個性による反動や消耗を大幅に軽減する【魔法】だ」
「! それって……!」
「…………」
まあ、そういう事だ。エンデヴァーが家族を苦しめてまで手を伸ばした力……自身に溜まる熱故に限られた時間しか使えなかった全力全開の【ヘルフレイム】のデメリットをほぼ帳消しにできてしまう効果。
効果時間は10分。10分間は【赫灼熱拳】をどれだけ乱発しようとも熱の蓄積は微々たるものとなり、たとえ熱が溜まりきってしまっても【ベホマ】一つでアッサリと万全の状態に戻せた。
【デメキエル】と【ベホマ】によって【ヘルフレイム】の弱点を解消し、俺自身は【バーハ】を使うことで【ヘルフレイム】に巻き込まれない。皮肉なことに俺は誰よりもエンデヴァーのサイドキック適性が高い事が判明したのだ。
「そのせいで死ぬ程口説かれたよ。何ならバーニンよりも給料を出すとまで言われた」
「何だそれ聞いてないぞー!」
「文句はエンデヴァーに言ってくださ痛てててて!? 俺悪くないでしょ!?」
やめて! あなたの【燃髪】普通に痛いから! あとついでにご立派なものがあたってるかうおっでっか。
バーニンを振り払った頃には響香達も理解できたのか眉をひそめてはいるものの納得した表情を浮かべていた。
……それとは別に燈矢の件もあるんだろうけども。
響香のインターンも見てもらえないかと打診した時、エンデヴァーは『それくらいなら別に構わない』と言っていた。
俺の深読みでなければあれは頭に『燈矢を助けてくれたんだから』がついていたんだと思う。実際さっきの星のしもべの部下らしき人間を無力化していたのを知ったエンデヴァーは驚いたような顔をしていたし。
俺としてはエンデヴァーならどんな事情であれ、自身のヒーロー業に関する話にはそういう私情を持ち込まないと思っていただけにちょっと意外だ。
「ま、そもそもレックスは一度うちに来てたってのもあるよ! 実力も分かってるからアンタらより扱いがいいだけ!」
「基本的にはパトロールと待機で回してます! 一日百件以上の依頼を我々は捌いている!」
「そんじゃあ早く仕事に取り掛かりましょうや……! 魔法野郎より俺のが強えってこと証明したらァ……!」
話聞いてたか爆豪。俺に関しては実力もだがそれ以上に【デメキエル】と【ベホマ】の存在が大きいんだって。そもそもこの事務所は戦力不足とは一番縁遠いんだから。
それで言うと響香も別扱いになるかもしれない。サイドキックの中にも索敵能力持ちの人は何人かいるけど、索敵能力なんていくらいても困らないし。
しかし爆豪としては納得がいかないのかバーニンに食ってかかる。No.1の仕事を直接見れると聞いて来たのに、と。いやだからまだ何の指示も出てないから。というかエンデヴァーは何してんだ?
「……あ、出てきた」
「あ゙!?」
「……何を騒いでいるんだ」
「俺ァトップの仕事を直接見れるっつーから来たんだが!」
「それなら心配いらん」
「レックス以外の四人は俺が見る」
……え? 俺の方が除け者ですか?
◇
爆豪程ではないが、それなりに張り切っていた森岸に伝えられたのは最早恒例行事となりつつある別行動。森岸はまたかとガックリと肩を落としていた。
流石に可哀想だと思ったのか、耳郎は小さく手を挙げてエンデヴァーへと尋ねた。
「あのー……何で詠士だけ……?」
「レックスには俺から教えられることはもうほとんどないからだ」
「何?」
「あ゙?」
エンデヴァーの返答に轟と爆豪が眉をひそめた。No.1ヒーローが教えられることがないとはどういうことか。
納得がいかない様子の二人に視線だけを向け、どこか言葉を選んでいる様子で語り出した。
「……前のインターンで要点は伝えた。後はレックス次第……そこに俺がいようがいまいが変わらん」
エンデヴァー曰く、森岸はきっかけさえ与えてやれば勝手に育つタイプだと判断したらしい。
先程の『星のしもべ』でもそうだった。一度目のインターンでは半日未満の活動だったはずなのに、既にあの時の課題を克服しつつある。
ならばエンデヴァーが見るべきは未熟な四名。むしろその四名に同行させて経験値が森岸に割かれてしまう方が非効率的だと言う。
「じゃあ俺は何を? 事務処理の方ですか?」
「違う。お前にはうちのサイドキックを何名か預ける」
「…………はい!?」
だからもう一つ。森岸が掲げている理想像に近づけるような試練を与える事にした。
サイドキックやチームアップとの連携力、思考力の強化。エンデヴァーについて行くだけでは足りない経験値。
ならばいっそ別行動……それもサイドキックをつかせて自分と同じ立場に立たせてやった方が早いとエンデヴァーは考えた。
「バーニン。レックスの方は任せた」
「了解! んじゃ行こっか!」
「あのちょっ……どういうこと!?」
当の森岸本人は未だ飲み込めていないようだが、サイドキック達にはしっかり伝わっていた様子。エンデヴァーの指示を受けたバーニンは森岸を連れて何人かのサイドキックと共に事務所を後にした。
静寂。騒がしくも賑やかにしてくれていたバーニンがいなくなった途端、エンデヴァー達の周りは一気に静かになった。
いきなり一人減ったことに四人が動揺していると、エンデヴァーがゆっくりと口を開いた。
「……奴の前では言わなかったがもう一つ、レックスがいるとお前達の為にならないと判断した」
「!」
「奴の【魔法】は確かに凄まじい。だからこそ今のお前達には足枷にしかならない」
森岸の【魔法】はなんでもできる。怪我の治療から攻撃、防御の強化とヒーローならば誰もが求める能力を有している。
故に、苦戦らしい苦戦をしなくなる。森岸がいるだけであらゆる状況に余裕が生まれてしまう。
普段から狂気的なトレーニングこそしているものの、それはどこまで行ってもトレーニングでしかない。何の制限もない実戦の場とは空気が違う。
「レックスのサポートがあっては苦労も何もあったものではない。だから奴を別行動にした」
「……ちっ」
自覚があったのか爆豪は舌打ちを返す。森岸という最上級のサポーターがいる環境では、どこまで行ってもぬるま湯にしかならないと薄々勘づいていたのかもしれない。
だから森岸を別行動にした。最上級のサポーターがいない実戦の場で極上の経験値を得られるように。
「お前達を育ててやる。だからまずはお前達の事を教えろ。今抱えている課題を、できるようになりたいことを言え」
「じゃあ、僕から……」
そうして一人ずつ課題を尋ねていく。かつて森岸に尋ねたように何がしたいのか、どうなりたいのかを。
緑谷の課題は力の制御。最近発現した【黒鞭】を含め、不安定な制御を調整できるようになりたいと告げた。
次に爆豪。彼は不遜にも自分に何ができないのかを知りたいという。
現時点の【爆破】は爆豪自身が思い描いた使い方を全て網羅し切っている。逆に言えば自身の想像力以上の事はできない。
だから自分では辿り着けない発想、気づけない不足に気づく為にここにいると語った。
「次。貴様は?」
「あ、えっと……ウチは戦闘能力を向上させたいです!」
「……具体的にはどう強くなりたい」
「あのー……エンデヴァーの【赫灼熱拳】みたいにしたいんです。溜めて放つ、って感じの」
耳郎が語ったのは自身の出力不足。同じく音を武器とするプレゼントマイクと比較するとどうしても劣る【イヤホンジャック】の出力を上げたいと言う。
そこで参考にしたのがエンデヴァーの【赫灼熱拳】だ。何かを放出して扱うという分野でもエンデヴァーは最上位、ならばこの機会に何かしら技術を掴みたいとの事。
「……いいだろう。では早速」
「俺もいいか」
「焦凍は赫灼の習得だろう」
「それだけじゃねえ、もう一つある」
「何……?」
そして最後。【赫灼熱拳】の習得だと決めつけられていた轟がエンデヴァーを引き留めて話した。
「森岸から聞いてねえのか……俺がインターンに来なかった理由」
「……何か試したい事があったとは聞いている。形になったと?」
「少しな。ただ安定しねえし全然上手くいかねえ……それも完成させたい」
「見せてみろ」
「ああ。これなんだが……」
そうして彼が見せたのは──
「……なるほど。それがお前の答えか」
「まだ全然なっちゃいねぇが……これが
彼が辿り着いた、彼だけの力だった。
【デメキエル】
DQM2イルルカにて初登場。味方のデメリット特性(ポケモンで言うところの『なまけ』的なヤツ)が発動しなくなる。
どちらかと言えば対戦専用という扱いだが、そもそもこれが必要になる様なデメリット特性を持たせたりしないのであんまり使われなかった。
本作では個性使用による反動や消耗を軽減するという効果。A組で言えば上鳴が放電し続けてもアホにならなくなるし、八百万がほぼノーコストで【創造】できるようになる。
耳郎「何で今まで使わなかったの?」
森岸「相澤先生から『しばらく黙っとけ』って言われてたんだよ。緑谷あたりにバレると無限にトレーニングするからって」
緑谷「あ、あはは……」
森岸「そこは否定しろよ」