魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.【デメキエル】ヤバくね?
 A.ヤバい。なんなら【デメキエル】と【ベホマ】だけでもあらゆる事務所、組織から引っ張りだこになる代物。本作三大チートの一つ。

 Q.残り二個は?
 A.【ベホマ】と【インテ】と【デメキエル】で三大チート。無条件全回復とラーニング速度上昇とデメリット踏み倒しを全部同じ人間が持ってる。何やこの厨パ(一人)。

 Q.【デメキエル】は【魔法】のデメリットも対象?
 A.対象。消費MP軽減と過剰なバフの反動を大幅軽減し、効果時間を僅かに伸ばしてくれる。

 Q.サポーターTire:S過ぎない?
 A.殿堂入り。比較すること自体馬鹿らしくなる。





110.ワープ進化してねえかお前ら

 

 

 

「……こりゃエンデヴァーさんが匙を投げるわけだ」

「何か駄目でした?」

「いやその逆。君本当にただの学生? 実はご両親がトッププロだったりする?」

「どっちもヒーローですらないですけど」

 

 

 それがどうかしました? と不思議そうにこちらを見つめる森岸を前に、バーニンが適当に選んだサイドキックの一人は苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

 

 

 

 

 森岸に与えられたタスクはとてもアバウト。エンデヴァー事務所のサイドキックを連れて自分の判断でヒーロー活動をしてこいというもの。

 

 当然事務所を出発した直後は大いに混乱していた。説明不足なのに責任は大いに乗っかって来るのだから無理もない。この状況下ですら平然とされてしまったらサイドキック達の方が困っていた。

 

 しかしこのまま何の説明もなく、では流石にどうしようもない。なのでサイドキック達は大まかな方針を伝えた。

 

 

「半日程とはいえ前にもインターンに来てただろう? あの時と同じさ。違うのは君がエンデヴァーさんの立場になるというだけ」

「……貴方達は勝手に着いてくると?」

「そういう事。俺達はエンデヴァーさんにしているように、勝手に君をサポートする」

 

 

 今回エンデヴァーがサイドキック達に伝えたタスク。それは森岸に『サイドキックにサポートされる側の立場を経験してもらう』というもの。

 

 先のインターンで森岸の飲み込みの速さを理解したエンデヴァーは、森岸に対しては下手に言葉を捏ねくり回すよりも現場で体験させた方が早いと考えたらしい。

 

 そこで思いついたのがサイドキック達によるサポート。今までサポートする側にいた森岸にサポートされる側を体験させる事で、どんなサポートがあれば嬉しいか、効率的になるかを自分自身で知ってもらおうとの事。

 

 逆も然り。サポートされる側がどう動けばサポートする側が楽になるのかを知ってもらう。何も伝えず好き勝手に動けばサポートどころか着いてくる事さえ難しい。

 

 サポートをする側にもされる側にもなれる森岸用の課題。本人もそれを理解したのか納得したような顔で頷いていた。

 

 

「分かりました。それじゃあ早速……」

「ん?」

 

 

 かと思えば次の瞬間、彼の顔つきが引き締まったものへと変わった。

 

 

「向こうの通りで騒ぎが起きてます! 対応を!」

「っ、了解!」

 

 

 指示を出した直後、【スピオキルト】と唱えたレックスの身体がブレる。まるでオールマイトを思わせるような圧倒的な領域まで強化された身体能力によるたんなる跳躍だ。

 

 しかしサイドキック達も負けていない。学生相手と侮ることもなく、森岸の指示を受けて一斉に動き出す。

 

 各々の個性を発動し加速。道路を越えて路地を抜け、騒ぎの中心地の方に目を向けてみれば──

 

 

「後処理お願いします」

「あ、ああ……」

 

 

 ──強盗らしき男を捩じ伏せているレックスの姿があった。

 

 

 少し離れた所ではバーニンがニンマリと笑っており、口も動いていないはずなのに『な? 有望株だろ?』と言われているような気がした。

 

 違法アイテムと思われる装備は砕かれ、意識はあれどあまりの痛みに動けなくなってるらしい強盗はブツブツと『こんな奴がいるなんて聞いてない』と繰り返し呟いていた。

 

 

「主要道路沿いに回ります。敵や強盗などの場合は逃走経路潰しを優先してください」

「了解!」

「それと怪我人がいたら連絡を。俺なら治せるんで」

「ああ……了解!」

 

 

 元々学生だからと侮ってはいなかった。いなかったが、過小評価だった。

 

 ほんの数秒の間に理解させられた。目の前にいる子供は自分達が仕えているヒーローと同じ領域に立とうとしているのだと。

 

 思わず漏れたニヤリとした笑みを堪えながら、面白いものでも見つけたようにサイドキックは胸の内を昂らせていた。

 

 

 

 

 そして現在、活動開始から三時間が経過した。

 

 

「森岸君、そろそろ昼休憩しようか」

「あ、了解です。もうそんな時間か……」

「あれだけ駆け回ってたらそりゃ気づかないよ! いつもと大して変わんねー!」

「それな」

 

 

 現時点での感想を述べると、バーニンと然程変わらない。エンデヴァーからレックスに変わっただけで、やっている事は普段と何一つ変わらない。

 

 強いていえばエンデヴァーと違い消耗が少ない為、こうして誰かが止めるまで休む気配すら見せなかったことくらいだろうか。気を利かせたサイドキックの一人が近くのバーガーショップで適当に買ってきたものを配っていた。

 

 

 最初の強盗から始まり居眠り運転のトラック、強風で落下した看板に道路に飛び出した子供まで全てを一切の被害なく食い止めて見せた。

 

 前のインターンからそう経っていないはずなのに、どうしてそこまで見違えたのか。サイドキックの一人が興味深そうに森岸へと尋ねた。

 

 

「随分と呑み込みが早いね。一体どんな訓練をしたらそうなるんだい?」

「訓練ではそこまで変わりませんでしたね。普段から意識して視野を広く持つようにしてました」

「視野を?」

 

 

 森岸が変えたのは訓練内容ではなく、普段の意識だと言う。

 

 人間の視野角は一般的に水平方向で180~200度、垂直方向で120~130度ほどと言われている。勿論異形系や個性によってはその限りではない。

 

 しかし実際に見ている部分は視線を中心とした極わずかな領域のみ。それ以外は情報量を減らす為にぼんやりとした映り方になる。

 

 

「じゃあ『本来の視野角全部見えてたらいいんじゃね?』ってことで【インテ】で情報処理の許容量を引き上げてました」

「……それ頭痛くなんない?」

「最初はなりましたね。頭ガンガンするし吐き気するしでさんざんでした」

 

 

 慣れるまでが大変でしたよ、と何でもないように森岸は語る。

 

 それもそのはず、普通の人間の有効視野は70度くらいしかなく、更に言えば中心視野……細かい形状や文字、色彩を最も高解像度で認識できる範囲はせいぜい2~3度しかないのだ。

 

 それを森岸は視野角全て、即ち180~200度の範囲を中心視野と同じように見ている。本来であれば処理しきれないはずの情報量を全て受け取り、正しく認識している。

 

 

「今はもう慣れました。感覚が掴めて【インテ】無しでもいけるようになりましたし」

「ふーん? 今の君の視界ってどうなってんの?」

「目に映るもの全部くっきりハッキリ見えてます。目を動かさなくてもバーニンがピースしたり親指立てたりしてるのも見えてます」

「うわマジか。凄いな」

 

 

 そうして得たのがこれだ。顔どころか目すら動かすことなく、少し離れた真横のベンチにいるバーニンが試しにとやってみたハンドサインをスラスラと答えた。

 

 ついでというか副産物としてかなり視力が上がったらしく、現在の視力は雄英で測ったところ7.0程になっていたとか。

 

 

「まああんまり長くやると目も頭も疲れるんで休憩はいるんですけどね。オンオフ簡単に切り替えられるんで適宜休めてます」

「いや十分すごいし。午後からも頑張ろうね」

「うっす、お願いします」

 

 

 残りのバーガーやポテトを口の中に放り込むと森岸達は再びパトロールを再開する。オマケに森岸の【ベホマラー】もあって腹も体力も万全。

 

 およそ学生とは思えぬ貫禄でサイドキックを引き連れる森岸を見たバーニンは面白そうに笑いながら、その後ろ姿を報告用にと写真に収めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 一方エンデヴァーの直接指導を受けている四人。緑谷達はというと。

 

 

「ちっ……あと一歩分遅ェ……!」

「イメージはある……『完成系』のイメージは……!」

「これでもまだ追いつけないのか……!」

 

 

「あの、ウチの事睨まないでくれない? ライバルでもあるけど、今は味方だからね?」

「……思ったよりも早かったな」

 

 

 まさかまさかの番狂わせ。最も早く成長の糸口を掴んだ耳郎に追い抜かれて悔しそうに睨みつけていた。

 

 

 

 耳郎の幼馴染はあの(・・)森岸である。息をするように拷問スレスレのトレーニングをしている森岸である。

 

 そんな森岸と正式にお付き合いするようになり、真っ先に耳郎が抱えた不安。それは森岸との実力差だ。

 

 雄英を卒業した暁には二人で事務所を構え、森岸と耳郎の二人でヒーロー事務所をやっていくだろう。そうなると耳郎としては森岸に頼ってばかりというのは格好がつかない。

 

 ただでさえ開いている差を少しでも縮めたい。その一心で拷問モドキのトレーニングにも参加したし、なんなら一歩間違えれば死んでいたかもしれない強化方法まで試していた。

 

 トドメにエンデヴァー事務所でのインターン。映像越しだけではなく己の目で直接エンデヴァーを見て試行錯誤を重ねた。

 

 

 そうしてできあがったのがコチラ。馬鹿げた心拍音を更に増幅させて自在に操るようになり、サポートアイテム無しでも自分の手足に【イヤホンジャック】のプラグを刺して爆音を扱う耳郎響香である。

 

 何度も何度も己の手足をぶっ壊しては治してもらいを繰り返した果て。自分自身が傷つくことはなくなり、むしろ足裏や手のひらから爆音を出力して加速や攻撃に転用できるように。

 

 要約すると『足でも【爆破】できるようになった爆豪』の音版である。魔改造にも程があるんだが?

 

 

「……俺が言うのもなんだが、そうはならんだろう」

「なっちゃってるんですけど!?」

 

 

 エンデヴァーですらこの反応。そりゃそうだ。

 

 だって爆豪の【爆破】での移動はまだ納得できるものがある。あれは爆発の反動で推進力を得ているのだから、繊細な制御さえできれば立体的な機動も可能だろう。

 

 耳郎の場合は爆音……厳密には爆音を緻密に制御して指向性を与えた事で生じた反動による推進力。なのに近くにいる緑谷や轟からすれば爆豪の【爆破】とそう変わらない音しか出ていないのだ。

 

 【爆破】から得られる推進力と爆音から得られる推進力が同じであるはずがないのだが、むしろ耳郎の方が僅かに速いという理解し難い現象が起こっている。何で?

 

 

「悪ぃ……俺にも溜めて放つって感覚、教えてくれねえか」

「あ、うん。それはもちろん」

「俺にも教えろや……!」

 

 

 とはいえだ。一人成功した者がいれば感覚を共有して他の者達の成長も見込める。エンデヴァーとしては一番乗りが我が子でないことがほんの少し悔やまれるが飲み込むことにした。

 

 

「……改めて言うぞ。最大出力を瞬時に引き出す事、力を点で放出する事。まずはどちらか一つを無意識で行えるようになれ」

「力の凝縮だろ」

「そうだ。溜めて放つ……まずショートは点での放出からだ。バクゴーは最大出力を瞬時に引き出せるようになれ」

 

 

 むしろ轟は同じ課題を抱えた三人の中で最も遅れている。溜めて放つ、まではできているもののその先の制御に難がある。

 

 エンデヴァーからすればその不完全な状態でよくもまあアレを発現させたものだと思うが、それもどうせ森岸のせいだろうと思考を打ち切った。

 

 逆に爆豪は制御においては完璧。精密なコントロールで自由自在に飛び回っている時点で察してはいたのだが、その分全力を出すことに抵抗があるのだろう。

 

 なまじ自分の最大出力を把握できているからこそ、街中での使用に僅かな躊躇を感じる場面がある。

 

 

「恐れるな。個性の全てを把握し、制御しろ。その膨大なエネルギーを思い通りに扱ってみせろ」

「上等だ……! こんなところで躓いてらんねェンだよ……!」

 

 

 元々臆するような人間ではなかろうと思っていたが、ここまで噛みつかれれば笑うしかない。

 

 

「ならば着いてこい。この最高の環境でモノにしてみろ」

 

 

 エンデヴァーは四人に背中を向けると、再び【ヘルフレイム】を滾らせて動き出した。

 

 

 

 






森岸「目視での索敵が滅茶苦茶精度上がったわ。ついでに一対一での読み合いも死ぬ程強くなった」
耳郎「心拍音で飛び回ったり見えない衝撃波に指向性を持たせて放てるようになったよ」
森岸「イエーイ」
耳郎「イエーイ」

エンデヴァー「なんだこの才能の塊共は」
相澤「A組だといつもの事ですよ」
エンデヴァー「うおっ!? どっから現れた!?」



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