予約投稿を失敗していた事につい先程気がつきました。大遅刻をやらかしてしまい申し訳ありません。
Q.耳郎魔改造し過ぎでは?
A.森岸の【魔法】を使ってアホみたいなトレーニングを繰り返した結果、ほぼ覚醒に近い成長を遂げたせい。
Q.実際今の耳郎ってどんな感じなの?
A.爆豪みたいな立体機動をしながら目に見えない音速の衝撃波を放ってくる状態。近づいたら近づいたで直接【イヤホンジャック】をぶち込まれる。
Q.A組だと何番目くらいに強い?
A.上から順番に森岸、爆豪、轟、緑谷、耳郎……という感じ。ぶっちゃけ現状だと同率四位くらい。
エンデヴァー事務所でのインターン開始から一週間が経過。
事務所には宿泊設備が完備されており、インターン生五名は炎のサイドキッカーズと寝食を共にしていた。
体を休めて目を覚ましたらトッププロの事務所。ドア一つ潜った先が極上の経験値を得られる最高の環境。プロヒーローですら羨ましがるような生活をしているインターン生の五名はというと。
「……森岸君ってありがたい存在だったんだね」
「どうした急に」
「今ウチらは詠士の【魔法】禁止されてるじゃん? いつも訓練終わりに回復魔法貰ってたから、その有難みを痛感してる」
「
「はっ、この程度でへばるたァ雑魚だな」
森岸以外の四名はそろそろ疲れを滲ませつつあった。起きろ轟。
経験値の質を高める為にとエンデヴァーから出された指示の一つ。それは『インターン中は森岸の【魔法】を貰わない』というもの。
活動中の強化は勿論のこと、パトロールやトレーニングを終えた後の回復魔法は禁止。怪我をした場合は怪我が治る必要最低限の回復のみ許可をする、と。
結果はご覧の通り。自ら超ハードワークに突っ込んでいく四人は一週間かけて疲労を蓄積させている。
普段は下校前に全員に【ベホマラー】を使っていてくれたのだが、それに慣れきっていた緑谷達は段々と消化しきれない疲労を積み重ね、一週間目にしてとうとう誤魔化しきれないほどのものになった。
緑谷は僅かに重さを感じる身体を何とか起こし、轟は眠たそうな目を擦りながら出てくる。爆豪も強がってはいるものの、やはり初日と比べると若干覇気がない。
耳郎に至ってはヒーローを目指してトレーニングを始めた頃から森岸の回復魔法の世話になっていたものだから、一番落差が大きい。パッと見一番ダメそう。
しかしその分これまでの積み立ても多かったからか、見た目ほど疲れてはいない様子。
「いやあ、アレ本当に効くね! このままうちに来て欲しいくらいだ!」
「朝からデケー声出すな!」
「おはようございますバーニン。元気そうですね」
「そりゃもう! 私達は回復魔法貰ったからね! 元気いっぱいだよ!」
対照的にバーニン……というか炎のサイドキッカーズは元気いっぱい。軽くなった肩や曲がっていた背筋を伸ばしながらヒャッホイ! と奇声を上げてはしゃいでいる。うるさい。
何がおかしいのか満面の笑みを浮かべたバーニンは進捗の程を尋ねた。何がしたいのか、どうなりたいかを問われ出された課題について。
森岸以外の四名に出された課題はシンプル。『エンデヴァーよりも速く撃退』すること。
「で、実際どうなの?」
「あー……ウチが一回成功しました」
「………………マジで?」
「マジです」
ぶっちゃけ酷い難易度の課題を出すなあと、どこか他人事のように思っていたバーニンが耳郎の一言に凍りついた。
仮にも、いや仮にもって言うのもアレだけども。お零れのような形とはいえエンデヴァーは紛れもなくオールマイトに次ぐ実力者。なんなら事件解決数はオールマイトすら上回っている。
片や反動も消耗もあったものではない脳筋、片や使い過ぎれば熱が溜まって動けなくなる超火力。なのに事件解決数で脳筋に勝っているのだ、どれ程優れたヒーローであるかなど言うまでもない。
そのエンデヴァーから一回だけとはいえ、この短期間で事件解決を先んじて見せるとは思ってもみなかった。バーニンは信じられないといった様子で耳郎を見つめていた。
「いや運が良かっただけですって。たまたまエンデヴァーが飛び立ったタイミングで出てきた敵がいただけなんで」
「俺達を狙ってきたって言ってたな。確か名前は……」
「『エンディング』だっけ?」
「ああ、あの厄介ファンみたいな……」
ネームド敵『エンディング』。その名を聞いたバーニンは心当たりがあったのか納得したような声を上げた。
何でも過去にエンデヴァーに倒されたことがある敵らしく、どこぞのヒーロー殺しのように『俺を終わらせるならエンデヴァーがいい!』と思っていたとの事。
ただ下見をするつもりで物陰からエンデヴァーを見ていたが、本人を見て理性のタガが外れたのか我慢しきれず人質に取ろうとしていたらしい。
しかしその異質な気配はとっくに耳郎に悟られており、飛び出した瞬間に【イヤホンジャック】直刺しで爆音をぶち込まれノックアウト。
ほぼ反射的に動いていた事もあり緑谷達が気づいた時には明らかに違法な薬物が入っていたであろう空の注射器と共に転がるエンディングの姿があった。
「『俺が気づかなかった敵を撃退したのは事実だ』とひとまず及第点を頂きました」
「そっかあ……」
その顔は苦虫を噛み潰したようだったと耳郎は語った。ついでに『お前もか』とも言われた。森岸は無関係だぞエンデヴァー。
耳郎本人は納得がいっていないようだが、他の三人からすれば先を越されたのは事実。対抗心や闘争心を剥き出しに張り切っていた。
「レックスもだけど……今時の子供凄いね!」
「それで済ませていいのかこれ」
カラカラと笑うバーニンに他のサイドキックが苦笑いを浮かべながらツッコミをいれた。
◇
今日も今日とてやることは同じ。バーニン達を連れて街中をパトロール。東に引ったくり犯がいれば追いついて叩きのめし、西に暴走車両があれば立ち塞がって受け止める。
その過程でサポートする側とされる側の感覚を学習しつつ、動線を更に効率化させて……と、まあまあ超特急なレベリングをしていたのだけれど。
「何でだ!!!」
「姉さんが飯食べにこいって」
「何でだ!!」
「友達を紹介して欲しいって」
「今からでも言ってこいやっぱ友達じゃなかったってよ!!」
「かっちゃん……!」
「それは流石にないわー……」
……何故か再び轟家を訪れる事になった。
まあ、大体想像通りだろうけども。冬美さんが張り切っちゃったんだろうなあ。前に来た時もやたら感謝されたし。
エンデヴァーが微妙な顔をしてるのもそのせいか? いやあれは……今までスパルタ方式でやってたのに、急に馴れ馴れしくするような行動をしている自覚があって困ってる……って感じか?
しかし家の前でいつまでも立ち止まっているわけにもいかず、とうとうエンデヴァーが意を決したように玄関の引き戸に手をかけた。
「初めまして。焦凍がいつもお世話になって……あら、貴方が森岸君?」
「は、初めまして……」
違った。冬美さんもだろうけどもう一人いた。
前に来た時には入院していた女性、轟冷さんがニコニコと笑ってお出迎えをしてくださった。
……うん、ニコニコ笑ってらっしゃるんだよ。冬美さんや轟によく似た整った顔立ちの綺麗な女性が。
なのに何か滅茶苦茶怖い。具体的には気温が2℃ほど下がったような気がする。心做しかエンデヴァーが小刻みに震えているようにも見える。
「突然ごめんなさいね。今日は私のわがままを聞いてもらって……ね? あなた」
「う、うむ……」
あー、これアレだ。冷さん吹っ切れちゃったのか。色んな情報を聞かされて自分も強くならなくちゃって決意しちゃってる。
エンデヴァーも負い目があるからか強く出られない……というよりはどう接したらいいか分からない様子。響香達もその事を察したのか『今何を見せられているんだ?』という顔である。
そんな事より、と冷さんに上がるように促されて廊下を進むと、待っていたのは大量の料理とニコニコと微笑んでいる冬美さん、何とも言えない表情をした夏雄さんだった。
すると冬美さんとパチリと視線があった瞬間、ギュン! と顔を逸らされた。えっ?
「何故!?」
「いや、あの、ちょっと……そのう……」
「……姉ちゃん、前にあんなことしたから恥ずかしいらしくてさ」
「やめて! 言わないで夏雄!」
ああ……そういう……まあお礼と称して身体で払うってのを高校生相手にやろうとしてたからな。思い出したらそりゃあ恥ずかしくもなる。
勿論そんなもの受け取れるはずもないし受け取るつもりもない。だから何も無かったからその【イヤホンジャック】でつつくのをやめてくれ響香。痛いというかくすぐったいから。
「私と冬美で作ったの。食べられないものがあったら無理をしなくていいからね」
「あ、はい」
とりあえずご相伴にあずかる事にした。テーブルいっぱいに並んだ料理に手をつけないのも失礼だし、腹が減ってるのも確かなので遠慮なく頂こうか。
「焦凍は学校ではどう? 皆と仲良くできてる?」
食べ進めていると冷さんからそんな質問が飛び出した。轟本人と俺達にも尋ねている様子。
轟は口の中にあるものを飲み込んだ後、少し考えて「……多分」と自信が無さそうに答えた。おいやめろ気まずいだろ。
同じことを思ったのか緑谷が慌ててフォローに入った。
「と、轟くんは頑張ってます! いつも訓練でも頼られてて……」
「そうか?」
「いやお前が疑問に感じたらダメだから」
「緑谷のフォローが台無しじゃん」
「ふふ、仲良くしてるみたいね」
ああ、この感じ間違いなく轟のお母さんだわ。どこか緩くて天然な部分が見える気がする。爆豪とか舌打ちしてましたよ。あれで仲良くしてるように見えます?
「……私は、私達は子供達に酷いことをしてしまったから。どうしてあげたらいいのか分からなかったの」
「母さん……」
「でも、焦凍にもこんなに素敵なお友達ができてた。私の心配なんていらなかったのかもね」
ね? と冷さんはこちらに視線を向けながらそう言った。同意しにくいです冷さん。
それはそれとしてエンデヴァーや冬美さんがお礼として何をしようとしていたのか、何をしたのかを知っているらしく二人は気まずそうに顔を背けた。
「まさか炎司さんどころか冬美までそんな事をするなんて……ねえ?」
「うぐっ……」
「冬美……まさか歳下が……?」
「違うから!? そんなわけないから!?」
「いくら貴様でも冬美はやらんぞ!」
「お父さんもやめてよ!? 余計に恥ずかしいから!」
……本当に何を見せられているんだろう。困惑しっぱなしのまま食事は進み、いつの間にか粗方食べ終えてしまっていた。
招かれてもてなされるだけもてなされ、何もしないままというのも座りが悪い。何か手伝うことはありませんかと尋ねてみると、それじゃあと食器を持っていってくれと頼まれた。
轟家五人と同級生四人。九人分の料理に使われていた食器も中々のもの。落とさないよう気をつけてキッチンと往復していると、冷さんから呼び止められた。
「貴方と少し話してみたいの。いいかしら?」
「分かりました。食器持っていったら戻ってきますね」
「ええ、お願いね」
さて……また冬美さんみたいな事をされなきゃいいんだが……。
冷「あらあらまあまあ!」
冬美「忘れてぇ……お願いだから……」
夏雄「草」
炎司「娘はやらんぞ!」
焦凍「親父うるせえ」
森岸「愉快な家族だなあ」
耳郎「現実逃避やめなよ」
燈矢「冬美ちゃん綺麗だぞ! いいだろ!」
ホークス「どうした急に」