Q.エンディングさん何してんの?
A.子供なら勝てると思った。子供だと思ったら並のプロヒーロー以上にヤバい何かだった。
Q.ここから冬美さんルートはありますか!?
A.(本作は耳郎ルートなのでここからの派生は)ないです。彼女持ちと聞いて理性が勝ったので優しい人くらいの認識止まり。いなかったら? ハハッ。
Q.冷さんから見た森岸ってどんな感じ?
A.轟焦凍が轟家のヒーローなら森岸は轟家の救世主。多分求められたら葛藤しつつも自分でよければ……となるかもしれない。尚、その場合はエンデヴァーが全力で阻止する。
デカい家だとは思っていた。しかし使っていない部屋とやらが実在するとは思ってもみなかった。
「ごめんなさいね、急に……」
「いえ、どこかで話した方が良いとは思ってたので」
部屋には俺と冷さんだけ……なんだけど、多分部屋の外にエンデヴァーとかいそうだなこれ。それっぽい気配がする。
俺の視線で冷さんも大体察したのか、口元に手を当ててクスクスと笑っていた。分かっても咎めるつもりはないらしく、首を緩く横に振った。
それから冷さんは少し寂しそうな顔をして、こう言った。
「ここはね……燈矢のお仏壇があったの」
「……!」
燈矢の……ああ、そうか。死んだと思われていたのだ、どれ程受け入れ難い事であっても、我が子が死んだとなればせめて丁重に弔おうと考えるのは当然だ。
部屋の片隅にポツンとある青々とした畳。十年前から取り残されたであろう、轟家の悲劇を語る不自然なソレ。
「本当は……戒めの為にも残しておくべきか悩んでたの」
「…………」
「でも、その燈矢から言われちゃった。『俺生きてたんだから捨ててくれよ』って」
「……アイツらしいなあ」
その通りっちゃその通りなんだけど……身も蓋もないというかなんというか。そんな軽々しく言えるもんかね普通。
まあ確かに生きてる人間の仏壇を置いておくのも変な話ではある。元遺影だった写真と遺骨として扱われていた骨壷を別の所へとしまい込み、仏壇本体は事情を説明してお寺で預かってもらっているそうだ。
また、この部屋には燈矢の物も遺してあったらしく、帰ってきた時に自分で片付けているものといらないものをわけてさっさと処分してしまったとか。
そうしてこの部屋は……かつて目を背けてはいけない、話題にするべきではないとされていた轟家の過ちの象徴は、何も無い空っぽの部屋となった。
「お礼を言わせてほしいの。あの子を救けてくれて、本当にありがとう」
そう言って冷さんは深々と、それこそ畳に頭を擦り付けそうな程に頭を下げた。土下座はできれば止めたいんだけど……事情が事情だから止めるのも憚られる。曖昧な相槌を返すのが精一杯だ。
俺が困っていることは伝わったのか、すぐに顔を上げてくれた。
「俺としては……たまたまその場に居合わせて、ホークスから頼まれたからやった事です。それに……」
「…………」
「それに、ヒーロー志望ですから。人を助けるのは当然です」
「!」
要はすんごい遠回しに『これ以上お礼をされてもこっちが恐縮しちゃうだけなんで……』と言いたいだけなんだが、伝わっただろうか。
既にエンデヴァーと冬美さんという例があるから怖いんだよ本当に。一番冷静っぽい夏雄さんですら贈り物しようとして轟に色々聞いてたっぽいし。
「ふふ……これ以上は貴方の方が困ってしまうかしら」
「や、本当に……身に余る金額を頂いただけでもアレなので」
「その事に関しては本当にごめんなさいね。後で炎司さんにもちゃんと言っておくから」
わあ怖い。さてはこの人儚い見た目に反して中身つよつよオカンだな? 多分近い未来、冷さんの尻に敷かれるNo.1ヒーローとかいう面白い光景が見られそうだ。
安易に物を送ったり金を出したりしないようブレーキ役をやってくれるらしい。ありがてえ、これで銀行口座を見る度に怯えなくて済む。
それにしても、と冷さんは続けて。
「貴方みたいに優しい人だったら冬美を任せられたのに……」
「それほじくり返すと冬美さんが羞恥心で爆発しませんかね?」
「あら、私の方が良かった?」
「それに頷くと今度はエンデヴァーが敵に回るんで勘弁してくださいマジで」
「うふふ、冗談です」
やめてくれませんかね。というかあんまり言うからか冬美さんの方から若干熱っぽい視線を感じる時があるんですが。外堀埋めようとしたりしてませんよね?
訝しむような目で見ていたからか「流石に彼女がいる学生さんにそんな事はしない」と言われた。まあ冷さんなら信用してええか……。
それからは他愛もない話が続いた。自分が知らない息子二人の話。焦凍と燈矢の事を尋ねられ、スマホにある写真を見せながら色々な事を話した。
衰えた身体を鍛え直している最中にホークスに脅かされて素っ頓狂な悲鳴を上げた話、無意識にエンデヴァーの技を真似ようとして揶揄われてホークスをミディアムレアくらいまで焼いた話。
入学したばかりの色々吹っ切れていないツンツンしていた頃でも隠せてなかった天然な部分についてや、体育祭で吹っ切れてからも学食で蕎麦ばかり食べている事にまるで自覚がなかった話とか。
「森岸君、これからも二人と仲良くしてあげてね」
「そりゃ勿論。それに冷さん達も」
「あら……いいの?」
「知らないうちにとはいえ轟家の事情に踏み入ったのはこっちなんで。俺なんかでよければこれからもよろしくお願いします」
「……ええ、こちらこそ」
冷さんは柔らかく笑うともう一度深々と頭を下げ、今日のところはお開きとなった。
部屋を出た瞬間に明らさまに『俺達何も聞いてませんが』みたいな顔をしたエンデヴァーがいて笑ってしまった。というか冬美さんもいるし。
「…………貴方?」
「いや待てこれは前の事があったから心配していてだな……」
仕方ないとはいえ盗み聞きは良くないからね。うん冷さんが怒るのも当然だよね。
エンデヴァーをその場で正座させると薄らと冷気を放つ冷さん。ああ、またエンデヴァーが小刻みに震える可哀想なおじさんに……。
「わ、私はー……?」
「あら、あなたもこっちがいい?」
「ごめんなさい!」
あ、冬美さんも自白した。
◇
我が事ながら気持ち悪い、とホークスは自嘲した。
監視用デバイスに塗れた自分の羽を見てため息をつく。これがあるから仕方ないとはいえ、自分の表情で読み取ってもらおうなんて。
(問題は……森岸君かな。まず負けることはないと思うけど、絶対解放軍に目をつけられた)
誤算だったのは森岸の反応。秘密裏にメッセージを送る為に『異能解放戦線』の本を利用していたのだが、あそこまでボロクソに貶されるとは思ってもみなかった。
そもそもこんなものを読んでいるなんて思ってなかったのだ。だって中身はどこぞのガキ大将のような思想に小難しい言葉を並べ立て、遠回しに『強い奴が偉い』と書いてあるだけだし。
しかしそんなものでも解放軍にとっては聖典。それを鼻で笑われたものだから冷静でいられるはずもなく。
デバイスを通じて監視していたスケプティックは発狂したように怒り狂い、戻ってきたホークスに対し『何故その場で殺さなかった!!!!』と捲し立てた。
話を聞いた外典も似たようなもの。大声を出したりこそしなかったものの、命令さえあれば今すぐにでも飛び出して森岸を殺しに行くくらいにはブチ切れていた。
騒ぎを聞きつけたリ・デストロが二人を宥めなければ本当にそのまま森岸を襲いに行っていたかもしれない。
(……まあ、冷静さを失ってくれたお陰で色々と情報が漏れたのはありがたかったけども)
タルタロス襲撃という目的は分かっていたが、実際にどれ程の戦力を有しているのか判明していなかった。
しかし今回の森岸の発言にキレたスケプティックと外典が漏らしてくれた。
『今すぐあのガキを殺せ! 戦力は足りているだろう!』
『いやいや落ち着いてくださいよ……つか本当にあるんです? ヒーロー達に勝てるだけの戦力』
『あるに決まってるだろう! 異能解放軍11万人! それだけじゃない、ドクターとやらが言うにはあのナインとウォルフラムだけじゃなく大量の脳無がいる!!』
『え、それオール・フォー・ワンの捕縛と同時に全部失ったんじゃ?』
『ふん、あれはそう思わせる為の見せ札だと言っていた。実際は山奥の病院の地下で製造しているらしいぞ』
……正直、情報管理どうなってんだと敵のことながら少し心配になった。それともそれすら頭からすっぽ抜ける程キレていたのか。
何はともあれ情報は掴めた。山奥の病院。そこにドクターは潜んでいる。
タルタロスを守りながら戦うのは得策ではない。しかし早々と仕掛けて取り逃し、潜伏されても困る。
(仕掛けるなら襲撃の前日……全員が揃ってる状況)
ホークスは目を細めながらそう考えていた。
現在、異能解放軍と残党が仕掛けてこないのは準備が整っていないからだ。
数はある。しかし逆に言えば数しかない。オールマイトやエンデヴァーに匹敵するだけの特記戦力が不足しているのだ。
そこで彼らが辿り着いたのが脳無。一部の解放戦士を素材により高次の脳無を作る、或いは調整中だった脳無の強化にあてている。
加えてほぼ置物と化しているギガントマキア。オール・フォー・ワンの声がなければ動かない怪物を完全に脳無にすることでオール・フォー・ワン以外の指示でも動くようにしているという。
聞くだけでもおぞましい。人間を、生命をなんだと思っているのか。まるで個性を取り出す為の肉袋程度にしか思っていないような所業だ。
そこでホークスは一度思考を打ち切る。これ以上考えていると怒りが顔に出てしまいそうだから。
目の前で楽しそうに今後の展望を語る解放軍を見ながら、笑顔の仮面を一分の隙間もなく貼り付ける。何も悟られぬように、気取られぬように。
「おい、聞いているのか?」
「はいはい、聞いてますよー。まずは兎にも角にもタルタロス……ですよね?」
『そうじゃ! オール・フォー・ワンさえ解放できれば後はどうとでもなる!』
有難い事に異能解放軍も残党の連中も勘違いしてくれている。きっと彼らは一度も見たことがない、知りようもないヒーロー側の本当の戦力を。
彼らのヒーローの基準はオールマイトなのだ。オール・フォー・ワンとの戦いで死にかけた、年々衰えていくたった一人の人間を基準にして、それ以下のヒーローは敵じゃないと思い込んでいる。
『正面突破! ギガントマキアとナイン、ウォルフラムの三人がいればあのような鳥籠なぞ容易く破壊できる!』
「じゃあ俺達の役目はその三人をタルタロスまで守りきるって事です?」
「そうなるだろうな。使い捨ての駒のような扱いは気に食わんが……それで勝てるならどうでもいい」
だからこそオールマイトが
『決起は四ヶ月後! ギガントマキアと脳無達の調整はそれで終わる!』
「随分とかかりますね」
「仕方あるまい……ギガントマキアはデカい。あの巨体を隈なく調整するとなればそれだけ時間もかかる」
笑顔の仮面の下、ホークスの本音もまた笑っていた。
(……実はオールマイトが全然戦えるって知ったらどんな顔するんだろ)
嘲笑ではなく、どこか憐れむように。
炎司「……違うんだ」
冷「何が違うんです? 言ってみてください」
炎司「」
森岸(何これ面白)
スケプティック「これでヒーローも終わりだァ!」
ドクター『ワシらの時代じゃよ!』
ホークス(可哀想に)