魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.森岸は遺体に回復魔法を使った事があるの?
 A.人間の遺体に使ったことはない。虫や動物ならある。

 Q.壊理√について詳しく!
 A.前回の前書きがほぼ全て。誰ともくっつかないままでいると「じゃあ私が貰ってもいいよね?」となった壊理ちゃんが『ガンガンいこうぜ(意味深)』する。最終的に【巻き戻し】まで使って年齢差を消しにくる。

 Q.ハーレム√はないんですか!?
 A.なくはない。その場合は壊理ちゃんの個性で全員の年齢が揃えられる。ついでに公安委員会が死ぬ程喜ぶ。





114.元敵

 

 

 

 結論から言うと、白雲朧という人間が生き返ることはなかった。

 

 拘束されたまま眠っていた黒霧を起こし、相澤とプレゼントマイクの二人が会話を担当。黒霧の後ろには森岸が待機し、様子を見ながら回復魔法を使うようにと指示があった。

 

 開始と同時に相澤が【抹消】を発動。しかし黒霧の肉体に変化はなく、定まった形のない黒いモヤが揺らめくばかり。個性云々ではなく、身体のつくりそのものが変化していた。

 

 懺悔でもするように、かつての記憶を静かに語る相澤。苛立ちと困惑を隠せないマイク。それをなるべく耳に入れないようにと意識しながら回復魔法を使う森岸。

 

 相澤の慟哭のような呼び掛けに動揺したのか、黒霧の脳波に異常が見られた瞬間……森岸は【ベホマ】を使用した。

 

 

 その結果がこれだ。

 

 

 

「…………お前は、白雲朧か?」

「……わから、ない」

 

 

 夏の空と混ざった雲のような水色はなく、今にも雨が落ちてきそうな空の鉛色。希望と自信に満ち溢れていたはずの目に光はなく、何も映さないような黒い瞳があるだけ。

 

 そこにいたのは白雲朧とも黒霧とも言えない、灰色の無名だった。

 

 揺れた精神と弄られた肉体の齟齬が原因だったのか、森岸の【ベホマ】を持ってしても白雲朧が戻ってくることはなかった。

 

 黒いモヤは収束し、形をなして人の姿へと変わった。しかし現れたのは相澤とマイクの記憶とは丸っきり正反対の雰囲気を纏う顔だったのだ。

 

 呆然とする相澤とマイクの前で、誰よりも困惑していた灰色は忘れていた事を思い出しながら話すように、辿々しい口調で語った。

 

 

「頭の、中に……二人、い、る?」

「二人……?」

「違、う……これは……記憶……?」

「まさか、混ざったのか?」

 

 

 曰く、二つの記憶があると言う。

 

 目の前の男達と過ごした記憶と、培養液の中で目覚めた記憶。正しく白と黒が混ざりあっていた。

 

 ヒーローを目指して勉強や訓練に励んでいた者の記憶も、将来魔王の後継者となるべく育てられる子を育てた記憶も。どちらも正しくて、自分のものだと。そう言った。

 

 

「森岸君……これは?」

「……正直俺もよくわかんないです。昔、その辺の虫とか野良猫でやった事はあるんですけど……人間の遺体に【魔法】使うのは初めてなんで」

「そうか……」

 

 

 森岸も何が起こったのかは把握していない。肉体を治療した事で記憶も正常に回復し、黒霧の記憶と白雲朧の記憶によるコリジョンを引き起こしたのでは……と仮説を立てるのが限界だった。

 

 少なくとも白雲朧という人間が生き返ったわけではないということだけは断言できた。逆に言えばそれ以外の可能性は何も否定できない。

 

 何が起こったのか分からないけれど、元の目的を忘れてはいない。塚内は相澤とマイクに胸の内で謝罪しながら、スピーカー越しに灰色の誰かへと問いかけた。

 

 

『……質問だ。オール・フォー・ワンの残党はどこに潜んでいる』

「あ…………病、院?」

「「「!!」」」

 

 

 意識は鮮明。ブツリと電源が切れたように黙る事はなく、動揺から抜け出せないままオドオドと答えた。

 

 

「喋れるのか……!?」

「……森岸が治したから喋れたんだろ。つまり……そういう事だ」

「っ……! 何でそんな事ができんだよ……っ!?」

 

 

 静かに涙を流しながら呟く相澤。その意味を理解したマイクは悔しそうに、怒りを滲ませながら拳をミシミシと鳴る程に握り締めていた。

 

 黒霧は喋らなかった(・・・・・・)のではなく、喋れなかった(・・・・・・)のだ。自分達の情報が漏れぬよう、そうした情報を尋ねられた時には自動的に電源が落ちるように調整されていた。

 

 何をすればここまで人の尊厳を踏み躙れるのか。何故自分達の友人がこんな目に遭わなくてはならないのか。マグマのように煮え滾った怒りが腹の奥底から湧き上がるような感覚に苛まれている。

 

 その間にも塚内やグラントリノからの質問は行われていた。脳無は何体作られているのか、他に協力者はいないか、オール・フォー・ワンは何をしようとしていたのか……等。

 

 灰色の返答は不足していたパズルのピースを埋めるように、次々と情報を齎していた。そして

 

 

「……オール、フォー……ワンは……死柄木、弔を……乗っ取、る、つもりだ……」

「…………何?」

「オール、マイトに……やられ、た、傷を、治せない……【ワン・フォー・オール】が、奪、えないから……」

「【ワン・フォー・オール】?」

 

 

 オール・フォー・ワンがタルタロスにいて、死柄木弔が大人しく捕まっている今、それが絶対に叶わないことも判明した。

 

 

 そして【ワン・フォー・オール】という何かがあることも。

 

 

『……ひとまずはここまでにしておこう。森岸君も下がってくれ』

「はい……」

 

 

 おそらくこの黒とも白ともつかぬ誰かは未だ不安定。回復魔法を途切れさせたところで元に戻るような事はないけれど、逆に言えば黒霧にも白雲朧にもなれない何者かが残っている。

 

 それを憐れむように見つめながら、森岸は部屋を退出した。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 ……まあ、当たり前だけど帰りの車内は空気が死んでた。

 

 全体的に鉛のような重さがあって、呼吸音すらなるべく静かにしておこうと意識していたほど。

 

 相澤先生もマイク先生も終始無言。だけど雰囲気というかちょっとした身動ぎからすら怒りが滲んでいて、ここで二人に何かを尋ねる勇気は俺にはなかった。

 

 

 それに俺も少し思うところはある。

 

 俺が来ていると知ったらしいもう一人……死柄木弔と面会をして来た。

 

 念の為相澤先生も同行させるべきだと職員さん達は言っていたが、死柄木弔が嫌がっていたので俺の方から止めてもらい、監視カメラ越しに見守ってもらう事に。

 

 そうして現れたのは両手の薬指の第一関節から先を失った死柄木弔だった。何でも【崩壊】を使わせないようにするための措置だとか。

 

 久しぶりに見た死柄木弔の顔はどこか晴れやかで、USJやショッピングモールで見た時とは別人のような雰囲気になっていた。

 

 

 ──目が覚めたみてぇな気分だ。

 

 

 そう語る死柄木弔の目はどこか自嘲を含んでいて、それでも敵連合の時のような澱みはなかった。

 

 

 タルタロスの職員に聞いた話によると、死柄木弔はそのうち釈放されるらしい。

 

 というのも彼の生い立ちを調べたところ、彼の本名は志村転孤。一夜にして瓦礫の山となった一家の生き残りだということが判明した。

 

 

『古い記録故に推測でしかないが、彼の【崩壊】が何らかの形で暴走した結果だったのではというのが我々の見解だが……あっているか?』

『あってるよ……一つだけ違うのは、父親に関しては俺自身の意思で殺した』

『何……?』

 

 

 そこからは死柄木と塚内さんの情報の擦り合わせが行われた。

 

 曰く、家庭内でヒーローの話をすると怒られ、時には暴力すら振るわれた。特にヒーローだったというおばあちゃんの写真を見た時には庭に放り出された程に、と。

 

 そうして泣いていた時に【崩壊】が発現。暴走した【崩壊】は庭を砕き家族さえも壊し、それでも止まらなかった。

 

 そこへ父親が駆けつけたものの、その対応はやはり暴力。枝切り鋏で転孤を叩き、どうにかして止めようとしたそうだ。

 

 ただでさえ何が起こってるかも分からずパニックとなっていた転孤はそこで全ての感情が怒りに変化し、衝動のままに父親を殺害したと語った。

 

 

 その後は前にも聞いた通り。家も家族も失った転孤は誰にも助けてもらえないまま町を彷徨い、どことも知れぬ路地にてへたりこんでいたところをオール・フォー・ワンに拾われた。

 

 オール・フォー・ワンの跡を継ぐ魔王になるべく育てられ、力を与えられていた……と。

 

 完全に超常社会の被害者として始まった死柄木弔としての人生。更に言えば敵になったのもオール・フォー・ワンによる洗脳じみた教育が原因と来た。

 

 今の死柄木を敵と呼べる者は誰もいなかった。

 

 まあ、憐れに思われたのだろう。元々そうした推測は為されていたようだし。

 

 

 今釈放しないのはオール・フォー・ワンの残党が再び死柄木弔を敵に引き戻そうとする可能性がある為。ドクターとやらを捕まえた暁には死柄木弔も晴れて釈放となるそうだ。

 

 また、出頭したトゥワイスも同様。というか彼に関しては普通に前科があって捕まっているだけらしく、服役を終えたら普通に釈放されるらしい。何してたんだあの人。

 

 

「……ついたぞ」

「あ、はい」

 

 

 考え事をしていたらいつの間にか雄英に着いていたらしい。相澤先生に促されて俺も車から降りる。

 

 時間的に授業もとっくに終わってるだろうし、今日は自主トレをやるような気分にもなれない。このまま寮に戻って休むか。

 

 

 ……人を生き返らせる【魔法】か。考えたことがないわけじゃないけど、その一線は超えちゃいけないような気がする。

 

 そりゃ今回、白雲朧って人を生き返らせる事ができたら相澤先生達は喜んだかもしれない。

 

 けど、同時にこれまで積み上げてきた倫理観が『本当にそんなことをしていいと思ってるのか?』とブレーキをかける。

 

 悲しむ人が減るんだからできた方がいいとは思うんだけど、じゃあ死者を蘇らせていいのかと問われると素直に頷けない。

 

 怪我を治すのとは違う。そんな簡単なものじゃない。どうするべきか。

 

 

「…………森岸」

 

 

 と、考えていると相澤先生から呼び止められた。

 

 

「はい? なんでしょう」

「気にしなくていい。死んだ人間は、生き返らない。それが当然だ」

「……はい」

 

 

 ……ああ、なんだ。見透かされてる。それに気を遣わせてしまった。

 

 相澤先生からすれば生き返る可能性があるのならそうして欲しいだろうに。俺に悩ませるくらいなら、と切り捨てさせてしまった。

 

 もしかしたらあれが相澤先生の本音なのかもしれないけれど、死んでしまったのだから休ませてやるべきだと思っているのかもしれないけれど。悪いことをしてしまった。

 

 

「……あんな趣味の悪い人形遊びしてる奴、絶対許さねえ」

 

 

 そんなつもりは元々なかったが、決めた。

 

 オール・フォー・ワンの残党と戦う日が来た時、俺は一切容赦しない。俺が使えるありとあらゆる手段を使って、何としてでも豚箱送りにしてやる。

 

 きっと先生方には及ばない、それでも腸が煮えくり返るような怒りを抱えたままひっそりと寮へと戻った。

 

 

 






トゥワイス「前に強盗とかしてたし……」
死柄木「何してんだお前」
トゥワイス「お前が言う? 俺は言わねえ!」
死柄木「他の奴らはどうしてる?」
トゥワイス「さあ? 知ってるぜ!」
死柄木「そうか」



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