Q.爆豪【クラスター】習得したの?
A.まだ完全ではないものの習得。原作最終決戦での覚醒前くらい。本作ではイカれた自主トレのせいで原作より身体能力、パワー、スピード、タフネス、判断力の全てが上回ってる。
Q.轟は【赫灼熱拳】とアレ習得した?
A.習得したけど不安定。こちらは原作最終決戦時点とほぼ同じ。ついでにイカれた自主トレのせいで(ry
Q.今のA組って原作のA組と比べるとどのくらい違う?
A.全体的に原作の最終決戦と同じかその手前くらいの強さになってる。そこにイカれ(ry
専ら彼ら専用になりつつある仮眠室。ソファには爆豪と耳郎と緑谷が腰掛け、机を挟んだ向こう側には背もたれのない椅子に腰掛けたオールマイト。
つい最近このメンバーに加わった耳郎はまだ二度目だが、最早恒例となった【ワン・フォー・オール】について話し合うお時間である。
まずオールマイト。開口一番に【黒鞭】の制御を身につけつつある事を賞賛。いきなり発露した未知の能力を短期間であそこまでものにしてみせるとは思わず、本当に驚かされたよとニコニコと笑っている。
それから爆豪と耳郎へも同じく賞賛を送った。頭の片隅を『あれ? もしかしなくても指導力エンデヴァーに滅茶苦茶負けてる?』という不安が過ぎったが一旦無視。ぶっちゃけヒーロー業以外がポンコツな事は今に始まったことじゃないし。
賞賛を受けた緑谷と耳郎は素直に喜びつつ頭を下げ、しかし爆豪だけは不機嫌さを隠そうともせずこう切り出した。
「わざわざそんなこと言う為に呼び出したわけじゃねェんだろ。さっさと話せ」
「ああ……結局全ては分からなかったが、それでも進めなければならない」
そう言ってオールマイトが取り出したのは、どこにでもあるありふれた一冊のノート。
その表紙に書かれているのは『歴代継承者個性』と『緑谷少年ノート』……それからデカデカと『FIGHT!』の文字が並んでいた。
「【ワン・フォー・オール】歴代継承者の詳細を可能な範囲で纏めておいた」
「これが……」
「……残念ながら2、3代目に関しては個性の名前くらいしか手がかりしか見つからなかった。時代と【ワン・フォー・オール】の性質が相俟って記録から探るのは不可能だった」
当時……どころか緑谷が【黒鞭】を暴走させたあの日まで、オールマイトやグラントリノすらも【ワン・フォー・オール】の真価を把握していなかった。
それ故歴代継承者達も自身の個性についての記録を残すようなことはしておらず、オールマイトでは過去の記録を漁って少しずつ情報をかき集めるのが限界だった。
「あれ以来歴代との接触は?」
「その……時々夢枕に立たれてお説教される事が」
「お説教? 何故……って、放課後の自主トレの件なら当然だからね? オジサン見てるだけでゾッとしちゃったよ」
「…………」
「一応言っておくけど耳郎少女もだからね!?」
尚、その歴代継承者達の意志は【ワン・フォー・オール】に宿っている為、聞こうと思えば聞けはする。
しかし彼等が緑谷の前に姿を現す時は決まって森岸の回復を前提とした狂気的ハードワークをした日であり、いくら【ワン・フォー・オール】の完遂の為とはいえ『あるはずのない心臓に悪い!』と怒られている模様。
身に覚えのある耳郎はそっと顔を逸らし、緑谷は言い訳もできず口をモニョモニョさせている。
そんな二人を他所にノートを開いた爆豪がポツリと零した。
「……第五代継承者【ラリアット】……コイツが【黒鞭】の持ち主か」
「! 五代目……」
本名を万縄大悟郎。【黒鞭】という身体から放出するヒモ状のエネルギーで捕縛と空中機動を得意とした。
緑谷が彼の名に驚いている間も爆豪の目はスラスラと文をなぞる。それから続けて素直な感想を述べた。
「……強ェ個性ばっかかと思ったがそうでもねェんだな。聞いた事もねェ奴らばっかだしよ」
「え……滅茶苦茶凄い個性だらけじゃない?」
「いやウチは爆豪に同感だわ。何というか……詳細が分からないからアレだけど、単体だとそんなにかなあ」
歴代継承者は八名。その中から【ワン・フォー・オール】の始まりである初代と無個性であったオールマイトを除いた六名の個性は、そのうちの半分が直接攻撃力に直結しないものだった。
無論これに【ワン・フォー・オール】の超パワーが加わると思えばそう悪くはない。しかしこのヒーロー飽和社会と比較してみると、もう少し強い個性を持った人間を選んでもよかったのではと爆豪は思っていた。
「爆豪少年の言うことも間違いじゃない。オール・フォー・ワンは【ワン・フォー・オール】に固執していた」
「固執?」
「ああ……今では考えられない程に悪が力を持っていた時代、オール・フォー・ワンは強い者を徹底的に潰していった」
その意見をオールマイトは肯定。当の本人も肯定されるとは思っていなかったらしく、ノートから顔を上げた所へオールマイトの説明が追加された。
曰く、オール・フォー・ワンはあれだけの力を有していながら、その実とても慎重で確実に事を進めたがるのだとか。
己の脅威になり得る存在があれば早いうちにその芽を摘み取り、或いは気分次第で洗脳、屈服させて支配してきた。
「彼らは"選ばれた者"ではない。繰り返される戦いの中で"託された者"であり……"託した者"だった」
「…………道理で、どいつも早死にだ」
終わるかどうかの瀬戸際で選り好みできる余裕などなく、ただ希望の灯火が消えぬようにと託し、託されてきた。
ある日突然神様から選ばれた人間に与えられるわけではない。消えかけた灯火を誰でもいいから受け取ってくれと、希望を絶やさないでくれと人から人へと渡ってきた力。それが【ワン・フォー・オール】だ。
なればこそ、足踏みしている時間など許されない。一つずつでも着実に歴代継承者の個性を習得しなければならない。
「で? 次は何習得さすんだ」
「うむ……それは──」
「ちょ、ちょっと待って?」
爆豪の質問に答えようとしたオールマイトを遮って、困惑した様子の耳郎から待ったがかかった。
突然のストップにオールマイトも爆豪も驚き、緑谷は目をパチクリとさせている中耳郎は心底不思議でならないといった様子でこう尋ねた。
「……何で習得の順番をオールマイトが決めてるんです?」
「………………えっ?」
まさかそんな事を言われると思わなかったオールマイトは目を丸くし、情けない声を漏らした。
しかし耳郎の疑問は消えないし、引き下がらない。
「だって……使うのは緑谷じゃん? じゃあ、今の緑谷が欲しいヤツから習得してったらいいんじゃないの?」
「…………確かに!?」
「え、いや、それは……そうだが……」
言われてみればその通りである。
オールマイトが使っていたのは【ワン・フォー・オール】の超パワーのみ。歴代継承者の個性など七代目のものしか把握しておらず、それも自分が使えていたわけではない。
じゃあ何でオールマイトに習得する個性を委ねる必要があるのか。あまりにも真っ当な意見にオールマイトはしどろもどろになった。
「ちなみにウチは四代目の人の【危機感知】に一票」
「二代目の【変速】だろ。名前からしてスピードが関係してんだから最優先だ」
「僕はこっちの【発勁】も気になるけど……オールマイトはどれを?」
「え、私は【浮遊】を……」
「それ一番優先度低くありません?」
「【黒鞭】で空中機動できんだから後回しでいいだろ」
挙句の果てに自分が提案した意見をズンバラリンと切り捨てられる始末。【ワン・フォー・オール】の中で七代目泣いちゃってるって。
ついでに「それ自分の師匠の個性だからって贔屓してねえか」と爆豪からの追撃を頂いた。治ったはずなのに吐血しそうになった。だって否定できなかったんだもの。
緑谷は気まずそうにしているが同じ意見だったらしく、尚更【ワン・フォー・オール】の中にいる七代目はいじけている。オールマイトが見たら目を剥いて驚いていたかもしれない。
物の見事に全否定されたオールマイトを他所に次に習得する個性の議論が行われ、その結果選ばれたのは【危機感知】だった。防御大事。マジ大事。
◇
やあ。始業一発目から別行動になってちょっとだけ疎外感を覚えて寂しい森岸だ。仕方ないことではあるんだけども。
まあ夕飯で鍋パしたしB組も合流してインターンの意見交換会もしたからそこまで気にしちゃいないけどね。
今はその意見交換会が終わった後。俺の部屋で響香と共にくつろぎ中だ。俺はベッドで、響香は人をダメにするビーズクッションに体を預けてダラりとしている。
年が明けてから初めて全員が揃った日ということもあってか、皆随分と長く話をしていた。普段なら既に部屋に戻っているであろう人も共有スペースに残ったりしていた。
その意見交換会では俺だけインターンの成果を見せられてないから、B組だけでなくA組からも色々質問された。
つっても新技開発しましたとかわかりやすい変化は見られないから何とも言えない。目に見えない地味な部分の変化だし。
「いやアレは地味とは言えないから」
「そうか?」
でも響香には『んなわけあるか』と言われた。何でや。ちょっと動きから無駄が削がれて視野が広がって反応速度が上がっただけだぞ。
あ、ちなみに響香達はエンデヴァーからの課題を何とかクリアできたらしい。らしいというのは後からバーニンに聞かされたから。
エンデヴァーより早く事件を解決してみせろという課題だったのだが、響香からコツを聞いた事で他の三人もすぐに追いついたのだとか。聞いたからってそんな早くできるもんだっけ?
「結構大変だったんだから……特に緑谷と張り合う爆豪」
「想像が容易過ぎる」
「そんで無意識に爆豪を煽る轟」
「いつもの事過ぎる」
あの三人相性が良いんだか悪いんだか。放っておくと無限に張り合って勝手に強くなっていくんじゃないだろうか。
そこに放り込まれた響香としては堪ったものではないだろう。実際インターン中二人で話す時はまあまあ三人の愚痴が出てきていた。
「あー……このまま寝そう」
「寝落ちやめなさい。せめてベッドで寝てくれ」
「でもこのソファが丁度良くってェ……もう動けなくってェ……」
「何だその微妙に人を苛立たせそうな言い方」
と思ったら響香が寝落ち寸前になってた。自己申告できて偉い。それはそれとしてそこで寝ると明日に響くからやめなさい。
それでも言葉通り動くには気力やら体力やらがないのか腕をこちらに突き出して「ん」とだけ言う。運んでくれって? まあいいけど。よっこいせ。
「相変わらず軽いなあ」
「そお? 筋肉もけっこうついたし、普通くらいの脂肪もあるつもりだけど」
「ちなみに比較対象はトレーニング用のバーベル」
「三桁キロと比べたらそりゃそうでしょ」
安心して身体を預けてくれてるってのもあるんだろう。横抱きにされてこちらの首の後ろに手を回し、身体を縮こまらせる様はどこか猫のような雰囲気がある。
部屋に戻すのとベッドに寝るのとどっちがいい? と聞くと食い気味にベッドを選ばれた。流石にこれを見られるのは恥ずかしいようだ。
「……始業の日からこれはおこられるかなあ」
「多分大丈夫でしょ。ぶっちゃけほぼ相澤先生公認だと思うし」
「だといいんだけど……」
眠いものは仕方ない。そんな今にも寝落ちしそうな状態で共有スペースに戻って女子棟に帰れるとも思えないし。さっきからちょいちょい寝かかっては慌てて目を開いてを繰り返してる。
ベッドにおいて軽く頭を撫でてみれば目を閉じたまま頭を擦り付けるように動かしてくる。本当に猫っぽいな。
それから軽く背中をとんとんと叩いてやると数分もしないうちに寝息を立て始めた。うーん、あまりにも挙動が幼い。眠くなるとそういう所あるんだよな響香。
時間も時間だし精神的なものとはいえ俺も疲れている。やっぱ二人で寝るにはちょっと狭いな。セミダブルじゃなくてダブルにするべきだったか?
「……ん?」
「んぅ……」
すると腕に変な感触があった。何かと思えば響香の【イヤホンジャック】が手首のあたりに緩く絡みついていた。
そういやこんな癖あったなあ。最近見なかったからすっかり忘れてた。
振りほどくのも可哀想なので腕をゆっくりと動かし、ピッタリと抱き留めるような体勢に移行する。こうしておけば寝相で動いて【イヤホンジャック】を引っ張ったりはしないだろう。
……多分、そう遠くないうちに決戦がある。
今回のタルタロスの件といい、手がかりは集まりつつある。
それにエンデヴァーやホークスが何かに備えて動いていた。グラントリノと塚内さんがずっと覚悟をしたような顔をしていた。
「……ずっとこうしてたいもんな」
きっと相澤先生達の悲劇を見たからだろう、腕の中でモゾモゾと身体を擦り付ける響香を見ながら、柄にもなくそんな事を考えていた。
できることを全部やろう。俺も強くなるし、皆も強くする。それが俺の【魔法】の一番強い使い方なのだから。
そう決意しながら、静かに目を閉じた。
──3月下旬。
この日、街からヒーローが消えた。
七代目「いいんだいいんだ……所詮私なんか……」
五代目「拗ねちゃったさー……」
二代目「ほう? アイツ見所があるじゃないか」
三代目「やめろバカ。俺のが一番危ないって」
四代目「選ばれたのは私でした」
二、三代目「「あ゙?」」
六代目「……話題にもならなかったんだけど?」
歴代「「「あっ」」」