魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.最終的にOFAの優先度はどうなったの?
 A.【黒鞭】を除くと上から順に【危機感知→変速→発勁→浮遊→煙幕】になった。尚、歴代継承者から話を聞いた後で変化したりする。

 Q.もし森岸ならどの順番を推奨する?
 A.【危機感知→浮遊→煙幕→変速→発勁】の順。【危機感知】は同じだが既に【黒鞭】があるなら【浮遊】と組み合わせて更に機動力を上げられるのではと考える。【変速】と【発勁】に関してはOFAがある以上は持て余しそう……との事。

 Q.これ本編中に歴代継承者の個性全部出番ある?
 A.ははっ。





決戦編
117.開戦


 

 

 

 殻木球大。蛇腔総合病院創設者にして現理事長。

 

 彼は『個性に根ざした地域医療』を掲げ、設立後すぐ慈善事業に精を出し始めた。

 

 全国各地に児童養護施設や介護施設を開設し、個人病院との提携を進めた。

 

 

 

「……何故その男だと?」

 

 

 一所に集められた名だたるヒーロー達の中から一人、ロックロックが訝しむように塚内へと尋ねた。

 

 

「公安からの情報を受け、部下を潜入させた。この病院には関係者も用途を知らない立ち入り禁止の空間がある」

 

 

 曰く、霊安室からのみ通行可能な空間。出入りするのは殻木のみ。潜入を続けた部下が掴んだ証拠となる写真を見せながら塚内は話す。

 

 ドアのガラス越しに撮ったであろう一枚。そこにはカメラに背を向けながらドアの向こう側へと歩いている殻木と──バスケットボール大の小さな脳無が写っていた。

 

 

「ちっちゃい脳無!!」

「なるほど……こりゃ真っ黒だな」

 

 

 丸い身体に無理やり生やしたような二本の短い足、尻尾のように後頭部から伸びている背骨。何より剥き出しとなってきる脳がその正体を如実に表している。

 

 そしてその横で当たり前のように振舞っている殻木。言い訳のしようもなく黒だ。

 

 ならば今すぐにでも殻木を逮捕すべきだろうと。そうした意見は出なかった。

 

 何故ならヒーロー達は覚えている。これで終わらせると臨んだ敵連合の一件を。神野に現れた魔王のようなイレギュラーを。

 

 

「殻木球大の逮捕自体は難しくない! しかし、先走れば"解放軍"の人間達に勘づかれる」

「解放軍……まだそんなもんがいたとはなあ」

「一度諸々を洗い直すべきだなこりゃ」

 

 

 加えて異能解放軍。日々更新される超常の中に埋もれたと思われていた思想が現代にまで続いていたなどと誰も思っていなかった。

 

 ホークスが潜入していなければ11万人にも上る解放軍の存在に気づけなかったと思うとゾッとさせられる。

 

 

「殻木、脳無……そして異能解放軍の一斉掃討が我々の命題だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タルタロス襲撃の為の会議……敵軍隊長共が今、あの館に集まっている」

 

 

 都市部から離れた山奥。別荘と呼ぶには何もなく、周辺の自然から浮き出たような不自然。ポツンと立つ巨大な館を前にヒーロー達は集まっていた。

 

 筆頭はエッジショット。それに続くようにギャングオルカやMt.レディにミッドナイト、シンリンカムイ……そして。

 

 

「……お前何食ってんの?」

「追加の朝飯。出る前に相澤先生に言ったらくれた」

「いいなー。ウチも貰っとけばよかった」

「呑気か!」

「お前は変わらんな……」

 

 

 最前線となる部隊に森岸、上鳴、耳郎、常闇はいた。

 

 それだけではない。少し下がった所にはA組の半数が待機している。

 

 また最前線に立つ彼らの隣にはミッドナイトやセメントスといった雄英の教員もいる。

 

 決戦前の待機時間に気が抜けるようなやり取りをする四人を見ながら、ミッドナイトはクスクスと笑いながら会話へと加わった。

 

 

「あら、道理で見覚えのあるゼリー飲料だと思ったわ」

「ちゃんと冷えてるやつくれました」

「もー! 共感が欲しい! 俺緊張やらなんやらで心臓バックバクなんですけど!」

「や、ウチも緊張はしてるから……」

 

 

 上鳴からすれば『何で俺がこんな所に配置されてるんだ!?』としか思えない。仕事を任されたのならやってやろうという意気込みはあるが、まさかこんな大仕事だとは思ってもみなかった。

 

 でも隣に同級生がいるし……と落ち着こうとするも、よりにもよってそこにいたのは肝が座っている三人。顔色一つ変えることなくよく冷えたゼリー飲料を飲んでいる森岸にツッコまずにはいられなかった。

 

 ちなみにB組からも小森や骨抜が来ていたりするのだが、二人は二人で森岸を見て呆気に取られている。何でこの空気の中でそんなもん食えるんだお前。

 

 当の本人はさして気にも留めず、空になったゼリー飲料の容器の蓋を閉めて折り畳み、ポケットに突っ込んでいる。

 

 それからミッドナイトへとこう尋ねた。

 

 

「俺らって何したらいいんです?」

「……上鳴君と骨抜君に小森さん、この三人は初動で力を借りたいの」

「え、じゃあウチらは……」

「情けない話だけど……森岸君、常闇君、耳郎さん。貴方達は戦力として(・・・・・)ここにいる」

 

 

 なるべく顔に出さないように努めたのだろう。しかしその声には僅かばかり罪悪感が顔を覗かせていた。

 

 現時点で森岸達はプロヒーローに匹敵するだけの実力が……否、森岸に限ってはこの作戦においての要とすら言える。

 

 その理由は言うまでもなく【魔法】。拷問紛いのような鍛錬と複数回の覚醒を経た森岸の【魔法】はこの場にいるヒーロー達を強化し、本人もまたオールマイトクラスの戦闘力を有するに至っている。

 

 とはいえ仮免許しか持たぬ学生。本来であればヒーロー達に混じって市民の避難誘導に加わらせたかったというのがミッドナイト達教員としての本音だ。

 

 それが子供達を頼るどころか作戦の要に据えるなど。彼らを守るべき立場の者としてはあまりに恥ずべき行為だとミッドナイトは思っている。

 

 

「ごめんなさい……不甲斐ない大人で」

「い、いや! 不甲斐ないとか思ってないっすよ!」

「そうですよミッナイ先生。詠士がヤバいのはいつもの事ですし」

「あっ酷い」

 

 

 だが彼らとてヒーローを志した人間だ。たとえ自分達が守られるべき立場であろうと、自分達を守るべき立場にいる人間からであろうとも。助けを求められたのならば動かずにはいられない。

 

 頭を下げるミッドナイトに対し、三人は気にした様子もなく言葉を返した。

 

 

「気にしないでくださいよミッドナイト先生」

「でも……」

「大丈夫です」

 

 

 そして森岸はただ一言、こう口にした。

 

 

 

 

「俺がいます」

 

 

 傲岸不遜とも取れる、しかしこの場においては何よりも頼りになる言葉を。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻。蛇腔総合病院。

 

 エンデヴァーを筆頭としたヒーロー達が行動を開始していた。

 

 彼らの動きは至ってシンプル。病院入口から突入し、殻木球大と脳無を逮捕する。それだけだ。

 

 

「な、何ですか!?」

「エンデヴァー!? ミルコ!? 一体何が……」

 

『皆さん外へ! ここが戦場になる恐れがあります!』

 

 

 マンダレイの【テレパス】によって無関係の患者や職員達へと避難誘導が伝えられ、その間に潜入していた部下がエンデヴァー達と合流する。

 

 向かう先は霊安室。脳無の製造所にして保管場所である地下を目指してエンデヴァー達は病院内を突き進む。

 

 

「殻木は?」

「ついさっき地下に向かいました!」

「……悟られたか?」

「いえ、そういった様子は見られませんでした!」

「なら、今のうちに避難を進めましょう。間違いなく脳無が出てくる」

 

 

 そうしている間に我慢しきれなくなったのか、我先にとミルコが駆け抜けた。ドアを開ける手間すら惜しんだのか、白い髪の残像だけを残しながら蹴破っていく。

 

 その先にあったのは長く暗い通路。配管や配線が所々剥き出しとなっており、不気味な静けさに満ちていた。

 

 が。

 

 

「エンデヴァー!! 動いてるぞ!!」

 

 

 心底楽しそうに、そして獰猛にミルコが笑う。

 

 闇の奥から這い出てきた脳無達を前に臆することなく、ドアを蹴破った勢いのまま突貫した。

 

 

面白(おンもしれ)ェ!!」

「速いな……!」

 

 

 エンデヴァー達が通路に突入した時にはミルコの攻撃が終わった後。スピードを殺さぬまま全ての脳無を蹴り砕き、真っ直ぐに突き進んで行っていた。

 

 

 

 

 

 

 一方その頃。ヒーロー達から狙われている殻木球大はというと。

 

 

「ぐぬぅ……! 何故ここが……!?」

 

 

 監視カメラのモニターを見つめながら、忌々しそうに顔を歪めていた。

 

 彼の視線が動いた先にあるのは無数の培養カプセル、そして棚に並べられた数え切れない程の個性因子。

 

 その全てが外道の所業の果てに手にしたもの。長きに渡り命の尊厳を踏み躙り、オール・フォー・ワンと共に積み上げた血生臭い成果。

 

 それらを棚に上げて殻木は身勝手に怒る。

 

 

「個性一つ複製、培養するのにどれ程の設備とどれだけの時間が必要だと思っておる!?」

「喧しいぞさっきから。どうしたよ?」

「ヒーローが来ておる!」

「は? マジか」

 

 

 あまりの騒がしさにウォルフラムが苦言を呈するが、それどころでは無いと殻木が一蹴。緊急事態であることをようやく知ったウォルフラムはギョッとしながらも即座に行動に移った。

 

 が、遅かった。

 

 

 

 

「いたぞォ!! エンデヴァー!!」

 

「な───チィッ!」

 

 

 分厚い扉をもぶち抜いたのは幸運の象徴ともされるラビット・フット。しかし彼ら敵にとっては不幸でしかない。

 

 殻木とウォルフラムを認識した瞬間、ミルコが加速する。

 

 薄暗い地下空間内を縦横無尽に駆け回り、加速して得たスピード全てを乗せた飛び蹴りを放った。

 

 

「……あ゙?」

「おいおいおい! とんだキラーラビットじゃねえか! 恐ろしくて堪んねえよ!」

 

 

 ウォルフラムの【金属操作】によって作られた壁紙に阻まれる。しかし完全に防ぎきれたわけではなく、ミルコの蹴りの痕跡がベッコリと刻まれていた。

 

 スピードは向こうが上。そう判断したウォルフラムは【ポケット】から更に金属を追加。下手に撹乱される前に大質量でもって押し潰す事を選んだ。

 

 さしものミルコと言えど金属による質量攻撃には分が悪い。舌打ちを一つ零した後、自慢の脚力と野生の本能じみた勘にものを言わせその場から飛び退いた。

 

 その隙に脳無を、と殻木を見れば床に伏せながら潰れた肉塊のようなものの前で涙を流していた。

 

 それを見てウォルフラムもまた舌打ちを零す。あの肉塊は殻木が『ジョンちゃん』と呼んでいた汚泥による転送の個性を持っていた脳無だった。それが潰された今、自分達の逃げる術は失われた。

 

 となれば徹底抗戦しかない。メソメソと泣いている殻木へと鋭く声を飛ばした。

 

 

「ああ……ジョンちゃんが……!」

「さっさと脳無を起こせ! 死ぬぞ!」

「くっ……忌々しいヒーロー共。蹂躙せよ!!」

「! テメ──」

 

 

 何か来る。ミルコの本能がそう訴えかけ、殻木へと向かい───

 

 

 

「愛しきハイエンド達!!」

 

 

 

 培養カプセルから黒い怪物が飛び出した。

 

 

 

 

「ひっ、お、えこっ」

「ひ……ロ……」

「うん……久……ぶり……」

「ヒ……ロ……」

「暴れらレル……」

「ヒーロー……!」

 

 

「全部……コロして暴れましょ」

 

 

 






森岸「とりあえず全体に【スピオキルト】二回しとくか」
耳郎「この時点でだいぶ無法」
森岸「それから念の為【スクルト】一回」
常闇「相手が可哀想になってきた」
森岸「最後に俺に【スピオキルト】三回」
上鳴「おいおいおい。死ぬわ敵」



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