魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.病院組にも強化かけてる?
 A.移動前に会えた一部のヒーローにはかけてる。会えなかったヒーロー達にはかけてない。

 Q.【スピオキルト】二回もかけて大丈夫そ?
 A.全体化してると効果が薄まるので問題ない。慣れてる人には別個で一人ずつかけてる。

 Q.敵側に勝ち目はありませんか?
 A.そこになかったらないですね。





118.人は彼らを噛ませ犬と呼ぶ

 

 

 

 ミルコが研究室に辿り着いてから数秒。遅れとも言えぬ程の差でエンデヴァー達もまた研究室内へと到着していた。

 

 ミルコがすれ違いざまに倒していた脳無が立ち上がってこないよう、同じく移動のついでに死体を焼きながら来ていたのだが、既に戦いは始まっている。

 

 まず目に入ったのはこちらを見てギョッとしている男、ウォルフラム。そして異質な雰囲気を纏う複数体の脳無達。

 

 

「あ゙!? 次はエンデヴァーかよ! とんだ貧乏くじじゃねえかクソが!」

「貴様がウォルフラムだな!?」

「エンデヴァー! 脳無は俺が消します(・・・・)!」

「任せた!」

 

 

 判断は早かった。複数の個性搭載が当たり前な脳無をイレイザーヘッド達に任せ、個性が割れているウォルフラムをエンデヴァーが火力で押し切る。そう決めた。

 

 ウォルフラムからすればミルコの次にエンデヴァーと、ヒーロー相手にボスラッシュでもやらされている気分だ。ただでさえオールマイトという化け物がいつ来るかヒヤヒヤしているというのに。

 

 【ポケット】から大量の金属を解放。出し惜しみすること無く、その全てをエンデヴァーへと殺到させる。

 

 

「無駄だ!【赫灼熱拳:プロミネンスバーン】!!」

「っ、はあ!? どんな火力してんだテメェ!」

 

 

 しかし、届かない。全身から放たれた地獄の業火が金属を押し返し、挙句その膨大な熱量でもって真っ直ぐに貫いた。

 

 確かに金属は高温になれば融けもする。だからといってこの一瞬でタングステン合金をぶち抜くような火力を出せるなどと誰が思うのか。最低でも3000℃からじゃないと融けないというのに。

 

 ウォルフラムの大質量攻撃はエンデヴァーの【ヘルフレイム】の前に敗れ去った……が、ウォルフラムは笑みを消さない。

 

 

「だが……連発はできねえだろ!?」

「!!」

 

 

 その理由は許容限界。あれだけの超火力だ、オールマイトのような規格外の怪物でもなければポンポン連発はできるはずがない。

 

 確かにウォルフラムが出した金属は融解している。しかし操れなくなったわけではない。それどころかエンデヴァーの炎を受けて高温となり、余計に危険度を増している。

 

 赤熱した金属が波打ち、再び隆起しながらエンデヴァー達へと向けられ──

 

 

 

「残念だったな」

「───は?」

 

 

 まるで堪えた様子のないエンデヴァーからもう一度、極限まで高められた地獄の業火が解き放たれた。

 

 ウォルフラムは知らない。本来の【魔法】の使い方を。オリジナルの【魔法】が個性による反動をほとんど無効化してしまう【デメキエル】というぶっ飛んだチートみたいな【魔法】を有していた事を。そしてそれが予めエンデヴァーに使われていた事も。

 

 文字通りの焼き直し。迫る金属を前にして微塵も怯むことなく、ただ真っ直ぐに灼熱の奔流が貫いていった。

 

 それは金属の波を貫き、その先にいたウォルフラムをも飲み込んだ。

 

 

「っ───!?」

「安心しろ、どんなに高熱の炎であっても一瞬ならば死ぬことはない」

「っ、か……ぁ……!?」

 

 

 炎がウォルフラムへと吹き付けられたのはほんの一瞬。しかしその一瞬が彼からゴッソリと酸素を奪い取っていた。

 

 如何に強大な力を与えられていようとも、それを駆使するのは生きた人間の身体。呼吸という弱点を突かれてしまえば【金属操作】や【ポケット】等の個性ではどうしようもない。

 

 酸素を求めて口をパクパクとさせながらその場に崩れ落ちるウォルフラム。酸素を補充し終えたと同時にエンデヴァーの拳が彼の頭を打ち抜いた。

 

 

「寝ていろ。次に起きた時には全て終わっている」

 

 

 そうして意識を手放したウォルフラムを雑に縛り上げ、エンデヴァーはイレイザーヘッド達の援護へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 蛇腔総合病院でエンデヴァーが突入した頃。山奥の館……群訝山荘でもヒーロー達は動き出していた。

 

 名だたるトッププロ達に紛れて走る森岸達。そして先頭を走るのはセメントス。

 

 セメントスに与えられた役割はシンプル。一つは現代社会では切っても切り離せないコンクリートを操って解放軍を逃がさない事。

 

 そしてもう一つ。目の前の館のコンクリートに干渉し──

 

 

 

開けます(・・・・)!」

 

 

 

 ──館の中身を丸裸にすること。

 

 

 地面に手を触れたセメントスの個性が伝い、まるでできの悪い工作のように館前面の壁を左右へと割った。

 

 

「やられたなMr.スケプティック……!」

「クソクソクソ……! やはり信じるべきではなかった! あれもこれも全部あのガキのせいだ!!」

 

 

 困惑、恐怖、憤怒……感情に揺れ動く解放軍だが、たった一つだけは揺らがない。先手を取られたという痛手はあるがやることは変わらない。

 

 雷造は煙草を咥えたまま不敵に笑い、解放軍を鼓舞するように叫んだ。

 

 

「今ここより解放(かくめい)を!!」

「「「おおおおおおおおっ!!」」」

 

 

 そして先陣を切るようにスタンガンを起動。バチチチチ、と耳障りな音を立てて電流が生じ、雷造の手に触れた瞬間更に膨大なものへと膨れ上がった。

 

 

「数は無意味……!【制圧放電・雷網】───!?」

 

 

 並大抵のヒーローであれば防御すら不可能。一筋の電流から作られたとは思えぬ電力が放たれ──全てがたった一人に吸い込まれていく。

 

 その一人とは上鳴電気。体に電気を纏うことができる【帯電】の個性を持つ者。

 

 

「貴様っ……!」

「う、おらあああああっ!!」

「ぬぐっ!?」

 

 

 ヒーローに向けて放たれた電流を全て受け止めながら、飛び出した勢いのままに雷造の顔を思い切り殴りつけた。

 

 徒手空拳は未だ不慣れであれど、助走をつけてジャンプしながら思い切り振り抜かれた拳。防御も叶わぬまま叩きつけられたそれは、体格差を無視して一撃で雷造の意識を刈り取った。

 

 

「な……副隊長!?」

「【ハートビートキャノン】!!」

「しまっ──ぎゃあああ!?」

 

 

 幹部がアッサリと無力化されたのを見て動揺した解放戦士。足を止めたのが運の尽きだった。

 

 万が一のフォローの為に構えていた耳郎の【ハートビートキャノン】がそのまま解放戦士達へと向けられ、増幅した音の衝撃波が解放戦士達を紙屑のように吹き飛ばした。

 

 また、雷造が倒された事に動揺しなかった者も同じ。自身に【スピオキルト】を重ねがけし、ほぼオールマイトと同等となった森岸が目にも止まらぬ速度で近辺にいた者達を殴り倒している。

 

 

「お、俺やったぞ! 幹部取ったどー!!」

「ナイス! 後で相澤先生に報告しようぜ!」

「取るな取るな。生け捕りだって」

「このっ……舐めやがって!?」

「はーいこれで19人目ね」

「ぐえっ!?」

 

 

 まさかのジャイアントキリングに歓喜の声を上げる上鳴。それを見た森岸はサムズアップしながら賞賛し、その様を見ていた耳郎は呆れたように笑っていた。

 

 まるでピクニックにでも来ているかのような調子の彼らに苛立ちを覚えたのか、解放戦士が無謀にも突貫し片手間に捩じ伏せられる。哀れ。

 

 

 周囲でもエッジショットやミッドナイトらが次々と解放戦士を鎮圧しており、幹部格であった者もトッププロを前に倒れていく。

 

 それもそのはず、この場にいるヒーローのほぼ全員に森岸から【魔法】をかけられている。

 

 使ったのは【スピオキルト】を二回と【スクルト】を一回。感覚としてはパワーとスピードが約三倍、防御力が約五倍だ。

 

 つまりこの場にいるヒーローは強くて速くて滅茶苦茶打たれ強い。

 

 具体的に言うと【シュガードープ】発動中の砂藤並のパワーと【兎】の脚力のミルコ並のスピード、そして【硬化】した切島くらいの強度を持っている。何だこのバグみてぇな軍団。

 

 そりゃあいくら解放戦士が訓練を積んでいたとはいえ、プロヒーロー達に勝てるはずもない。異能を解放するどころか真正面からねじ伏せられている。

 

 

 だからこそ森岸は首を傾げた。

 

 

「……妙だな」

「どしたの?」

「幹部っぽい奴の数が少ない。ミッナイ先生に聞いてたより少ない」

 

 

 確かに森岸の強化があったからこそ、この戦いはヒーロー側が有利な状態で始められた。

 

 だが、それにしたって順調過ぎる。上鳴が倒した雷造はともかく、異能解放を謳う組織としてはあまりにもパッとしない。それこそ自分達学生であっても首を傾げてしまうくらいに。

 

 何より脅威にならない。先の雷造が放った雷撃と同じかそれ以上のものが見えない。まさかアレが最高戦力でもないだろうに、と森岸は訝しんでいた。

 

 

 

 果たしてその疑問は正しかった。

 

 

 

「っ、下がれ!」

「!」

 

 

 森岸の言葉に弾かれたように、耳郎達はその場から飛び退いた。疑問を挟む余地などない、何故なら彼女達にもはっきりと聞こえていた。

 

 

 

 【イオナズン】と。

 

 

 

 次の瞬間、何も無い空間が爆ぜた。

 

 

「うわああああ!?」

「これは……!」

「まさか詠士の……!?」

 

 

 森岸達を狙ったわけではない、ただ人が多くいる場所に適当に放たれたであろう爆発。その規模は凄まじく、セメントスが干渉した館のコンクリートすら容易く吹き飛ばしていたであろう程。

 

 避けきれなかったヒーロー達はいっそコミカルに見えてしまうくらいアッサリと散らされ、致命傷にこそならなかったものの少なくないダメージを負っている。

 

 爆煙の向こう側で不機嫌そうな声が森岸へと差し向けられる。

 

 

「貴様……何故私の攻撃が分かった?」

「……なるほど、テメェが植え付けられた(・・・・・・・)って奴だな?」

「何……?」

 

 

 どこかオール・フォー・ワンの生命維持装置に似たマスクを着けた男。忌々しそうに森岸を睨みつける、個性の簒奪者。

 

 ナインがそこに立っていた。

 

 

「同じ【魔法】だからだろうな。テメェが何かしようとすると魔力のうねりで何となく予兆がわかるんだよ」

「……そうか。貴様がオリジナルか」

「哀れだな。そんなクソみてぇなデッドコピー掴まされちまってよ」

「そうでもない。これは──」

 

 

 再びナインの身体から魔力がうねり出す。何が来る。警戒する森岸を嘲笑うように、敢えてナインは目の前でその言葉(トリガー)を告げた。

 

 

【ギガデイン】

「ぐ、うっ!?」

「……このように、オリジナルを凌駕して余りある力となった」

 

 

 極大の雷撃が森岸へと落ちる。先の雷造など目ではない、自然災害の力そのものが雷光の速度で森岸の身体へと到達した。

 

 本来であれば他人数に向けて放つソレを、たった一人へと集約させた一撃。如何に打たれ強い者であろうとも無事では済まない。ナインは既に興味を失くしたように別の誰かへと目線を移し──

 

 

 

 

「……? え、この程度?」

「……………………は?」

 

 

 

 ──全くダメージを受けていない森岸の声に足を止めた。

 

 

 

 






森岸「じゃあエンデヴァーにはこれとこれと……」
エンデヴァー「相変わらず無法が過ぎるな貴様」
森岸「使えるもんは全部使うべきでしょ」
相澤「おいこっちにもくれ」
森岸「はいよろこんでー」
マイク「居酒屋の店員かな?」


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