魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.【ぺスカトレ】の踊りの判定どうなってんの?
 A.「俺が知りたい」だそうです。

 Q.緑谷が特訓してる間森岸は何してたの?
 A.相澤先生と個性無し組手。フルカウルで動けるようになってからは緑谷とも組手をしていた。

 Q.どうなった?
 A.何回やってもピンピンしてた。緑谷だけ息絶え絶え。





体育祭
12.体育祭のお時間です


 

 

 

 

 ──雄英体育祭、当日。

 

 

 毎年メインとして注目を集めるのは3年生。彼らはラストチャンス故に懸ける情熱と積み上げた経験値による戦略により、1、2年生と比べても見応えがあるのだ。

 

 それも今年に限っては1年生への注目が集まっているという。それだけ(ヴィラン)との戦いを経験したという触れ込みが大きいんだろう。

 

 ただでさえ衆目に晒されて緊張するってのに、更に人が多いなんてどうしたらいいのか。

 

 

 

 

 

「皆準備はできてるか!? もうじき入場だ!」

「コスチューム着たかったなー」

「公平を期す為着用不可なんだって」

 

 

 ……うん、まあそうだよね。皆平常運転だね!

 

 もうすぐ入場するっていうのに雑談してるし、君達の心臓って毛ボーボーだったりすんの? それとも俺がノミの肝っ玉なだけ?

 

 

「……アンタは緊張、しないの?」

「いや、してる。俺の足産まれたての小鹿通り越してバイブレーションになってる」

「うわ本当だ」

 

 

 響香も緊張してるみたいだ。俺は一応見た目だけなら冷静っぽく取り繕えるけど、内心はガクブル状態なんだよ。つつくな笑うな。

 

 でも一人黙って抱え込むよかマシか? 何か話してたらちょっとずつ緊張が解れてきた気がする。

 

 

 

「緑谷」

「? 轟くん……何?」

 

 

 おや、珍しい。普段あんまり喋らない轟が緑谷に声かけにいった。

 

 

 轟焦凍。八百万百と並んでA組の推薦入学を成し遂げた男子。

 

 先の対人戦闘訓練ではビル一棟を凍りつかせるという規格外な出力を見せていたが……何で緑谷? 何か絡みあった?

 

 

「……客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う」

「へ!? うっ、うん……」

 

 

 おおう……とても友好的とは思えない話の切り口だな。緑谷もビックリして声上擦っちゃってるじゃん。

 でも何か轟の奴、滅茶苦茶ピリピリしてるな。緊張? というには何か違う気がする。どっちかって言うと怒ってる、に近いか?

 

 

「お前、オールマイトに目ェかけられてるよな」

「!!」

「別にそこ詮索するつもりはねェが……」

 

 

 

「お前には勝つぞ」

 

 

 

 オールマイト……? まあ、目をかけてるといえばかけてるけど……嫉妬か? 違うか。

 

 

 確かに緑谷はこの二週間で結構見違えたとは思う。あの日【フルカウル】を習得してから一気に成長してるし。

 

 でも轟が警戒するんなら爆豪とか八百万百さんとかだと思ってた。こう言っちゃなんだが今の緑谷は見違えたとはいえパッと見でわかる程は変わってないし。

 少なくとも今この時点で轟と緑谷が戦っても普通に轟が勝つと思うぞ。

 

 

「僕も本気で……獲りに行く!」

 

 

 ……まあ、外野の言うことなんか関係ないか。それは今から確かめられることだし。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

『どうせテメェらアレだろ! コイツらだろ!? 敵の襲撃を受けたにも拘わらず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!』

 

 

『ヒーロー科! 1年A組だろおおお!!?』

 

 

 

 爆発的な歓声……ってのはこういう事を言うんだろうな。プレゼントマイクが放送室で声を張り上げてんのに掻き消されちまってる。

 

 いっそ地鳴りの方が近いくらいの大歓声。今までモニター越しでしか知らなかった景色……やべ、何か緊張してきた。

 

 

『B組に続いて普通科C・D・E組!! サポート科F・G・H組も来たぞ!! そして経営科──……』

 

 

 ……露骨に紹介の差をつけてるな。今の数秒で他からの視線が少し鋭くなった気がする。分かりやすく引き立て役扱いして競争心でも煽っているのだろうか。

 

 今年度のA組に限って言えばとばっちりもいいところだろ。文句あるなら俺達を睨むんじゃなくて敵の方にいけ。

 

 にしても……分かりきった事だけど、ここにいる人達って全員紛れもないエリートなんだよな。

 サポート科や経営科もそうだが、普通科の人達だって入試という狭き門を潜り抜けたことに変わりはないし。番狂わせもゼロではない、か。

 

 

 

 

「選手宣誓!」

 

 

 

 おや、今年の1年の部はミッドナイト先生なのか。でもあの人の肩書きって『18禁ヒーロー』じゃなかったっけ? 高校にいていい人?

 

 

「静かにしなさい! 選手代表──爆豪勝己!!」

 

「えっ」

 

 

 え、爆豪? 何で? あ、アイツが入試1位だったの!? マジかー……でも戦闘能力は抜群だったし、妥当と言えば妥当か?

 

「ヒーロー科の、入試1位な」

「ふん……」

 

 でも絶対やめた方がいいと思う。ろくなこと言わないの目に見えて分かるじゃん。今からでも変えない? あ、その場合俺に回ってくるのか。じゃあいいです。

 

 

 

宣誓(せんせー)

 

 

 

 

 

「俺が1位になる」

 

 

 

 ほら見たことかァ!? ブーイング起こってんじゃねェか! せめて言葉を濁せ! もうちょいそれらしいニュアンスになるワードを選べる語彙力あんだろお前!

 

 あーもうダメだこりゃ。同じヒーロー科のB組は勿論、サポート科や普通科からも睨みつけてくるやついるじゃ「せめて跳ねの良い踏み台になってくれ」誰かアイツを黙らせてくんない?

 

 

「さて! それじゃあ早速第一種目と行きましょう! いわゆる予選よ! 毎年ここで多くの者が涙を飲むわ(ティアドリンク)!!」

 

「運命の第一種目! 今年は……コレ!!」

 

 

 『障害物競走』か。

 

 コースはこのスタジアムの外周4キロで、コースさえ守れば何をしても構わない……え、いいんです? 本当に?

 

 じゃあ、少し後ろの方で構えるか。前行っていいよー、俺後ろからスタートしたいし。

 

 

 

 

 

 

 

「スタ───ト!」

 

 

 

 

 

「いやあ……これなら何とかなりそうだ。まず【ピオラ】と、そんで……【トベルーラ】」

 

 

 案の定、詰まるよな。入試ん時も似たような状況だったよ……これだけの数が一斉に動けばどうしたって停滞するさ。

 

 だから俺は()から行かせてもらいまーす。

 

 

「あ! アイツずりぃ!!」

「森岸お前飛べんのかよおおお!!?」

「一瞬だけでーす。お先ー」

 

 

 【トベルーラ】……使用から10秒間だけ飛行能力を得られる【魔法】だ。これでスタートダッシュを遮る物は何も無くなる。

 

 うわ、下見たら轟が凍らせてやがる。ただでさえ狭いスタートで更に詰まらせるつもりか。上から行って正解だったな。

 

 

「そう上手くいかせねえよ半分野郎!!」

「……チッ」

 

 

 というか、他の皆も避けてんな。前に轟が構えた時点で警戒してたのか? いやでも轟の個性知らないはずの他の学科の人達も結構避けてるな。

 

 

『ターゲット……大量!』

「へ? うぉわっ!?」

 

 

 あっっっ……ぶねェ!? 下見てたら何か飛んできた……って、コイツ入試ん時の仮想敵か!? そういや障害物競走だもんな。これも障害物のひとつか。

 

 それもポイントが入る小型のやつだけじゃない。奥の方にはギミック呼ばわりされてた0ポイントのクソデカロボットもいるな。

 

 クソ、不意打ちに動揺して時間無駄にした。もう【トベルーラ】が解けちまうし、一回降りよう。まだ【ピオラ】があるからスピード負けはしないはずだ。

 

 そうこうしているうちに轟が一体を凍らせて停止させ、そのままぶっ倒してる。スピードで負けなくても対応が後手に回るとマズイか。

 

 

「でも、一々相手してる暇もねェ。もっかい【トベルーラ】だな」

 

 

 幸い数は多いが配置は横に広い。10秒もあれば上を超えて避けられる。爆豪や瀬呂、常闇も同じように突破してる。

 

 そういや響香は……普通に下すり抜けてるか。小型の方は今更敵じゃないだろうし、心配するだけ無駄か。

 

 

 

 

 

『オイオイ第一関門はチョロいってよ!? んじゃ第二はどうだ!』

 

『落ちればアウト!! それが嫌なら這いずりな! ザ・フォール!!』

 

 

 この光景何かどっかで見たことある気がする。マンガだっけゲームだっけ?

 

 まあどちらにせよこの関門は俺には無いも同然。【トベルーラ】で足場を伝っていけばそれで済む。問題があるとすれば……。

 

 

「待てや魔法野郎!」

「そう、くるよなァ!」

 

 

 俺を直接攻撃してくる奴が出てくるってことだな。特に【爆破】で飛べる爆豪や、遠距離攻撃の手段がある八百万さんや轟みたいな奴ら。

 

 八百万さんと轟は関門に集中せざるを得ないようだが、爆豪は違う。コイツは俺と同じ空中というフィールドで戦えるから避けようがない。【スカラ】使ってなかったら叩き落とされてたかも。

 

 振り抜かれた右手を躱しつつ、一旦着地。再び飛行して回避と防御に撤しながら進む。そうすりゃ、スピードではこっちが勝ってるから突き放せる。

 

 

「よっ、轟。デッドヒートは好きか?」

「森岸……!」

 

 

 というか轟が速いのはなんなんだ。爆豪は個性でスピード出してるの分かるけど、お前ほぼ個性関係なくそのスピードなのかよ。

 いくらこっちが慣れてない飛行で来てるとはいえ、今の今まで前を走られていたことに驚きだよ。

 

 あと後ろに爆発さん太郎も来てるからね。悪いけどアレの相手は任せたよ。

 

 

 

 

 

『ハッハァー! 抜きつ抜かれつのトップ3! そして早くも最終関門!』

 

『かくしてその実態は──一面地雷原!! 怒りのアフガンだ!!』

 

 

 地雷……地雷? ほなまた飛んでたら終わるやんけ。俺4キロほとんど飛行してるだけで終わることになるんですけどいいんです?

 

 って言ってる場合じゃないな。すぐ後ろに轟と爆豪がいるし、迷ってる暇は無い。こういう時は走った方が速いわな。

 

 

「……? 森岸が、降りてきた?」

「クソ、舐めやがって……!」

 

 

 いや舐めプじゃないから。むしろその逆だよ。今からもっと効率のいい手段を取らせてもらうだけだ。

 

 

「飛ぶより走るほうが慣れてるんでね。あ、ついて来ない方がいいぞー」

「なっ……!?」

「何だ……!? 地雷を、踏んでねェ!」

 

 

 やった事は単純。ただ飛行をやめて普通に走るように切り替えただけ。地雷? そんなもん踏みませんけど?

 

 いやあ、【トラマナ】って使い所全然ないと思ってたけどピンポイントな出番が来るとは思わなかった。足が地面から5センチ程浮くようになるから地雷型のトラップが無意味になるんだよね。

 

 【トベルーラ】と【ピオラ】で爆豪達と互角だったけど、【ピオラ】で走った途端に距離が開いた。やっぱ【トベルーラ】もう少し速くできないかな。

 

 

 

 

 

 BoooooM!!!

 

 

 

 

 

「っ、はぁっ!!?」

 

 

 何だ今の──と思ったら緑谷がカッ飛んで来た!? お前まさか、自分から地雷踏んで加速してきたのか!?

 

 ヤッバイ! 今のアイツには【フルカウル】がある! 多少の地雷なら気にせず踏み越えて走れるだけのスピードがあるやんけ!

 

 あ、ヤバい抜かれ────

 

 

 

 

『さぁさぁ、序盤の展開から誰が予想できた!? 今一番にスタジアムへ還ってきたその男───』

 

 

 

『緑谷出久の存在を!!』

 

 

 クッッッッソ! 最後の最後で抜かれた! 入試に続いてまた2位止まりかよ!

 

 

「お前……随分無茶な手使ったなぁ……」

「ぅ……そうでもしないと、君に、追いつけなかった、から……っ」

「あー悪かった悪かった。まず一回呼吸を整えろ」

 

 

 まあその俺の後ろで轟と爆豪が物凄い顔してこっち見てるんですけどね。誰か助けてくんない?

 

 

 






・トベルーラ

 ゲームではなく【ダイの大冒険】というドラクエを題材としたマンガ、アニメ作品にて登場した魔法。
 ゲームでは【ルーラ】という所謂ファストトラベル用の魔法が存在しており、それを元にした応用的な魔法。本作品では舞空術のようなものになっているが、森岸が使い慣れてないのでそんなに速く飛べないし長く保たない。


・トラマナ

 毒の沼地や溶岩といったダメージ床を踏んでもダメージを受けなくなる魔法。
 昔はそこそこ需要があったけれど、そもそもこの魔法を使える頃にはダメージ床のダメージが気にならなくなる作品が多いのであまり使われない。最近の作品だとダメージ床自体が少ないのもあってそもそも覚えないことが多い。
 本作品ではドラ〇もんのように地面から浮くことで地雷の類を踏まなくなる。手当たり次第に色々試してたら何かできたらしい。


森岸「……なあなあ、響香ー」
耳郎「何? どしたの?」
森岸「足見て、足」
耳郎「足?」
森岸「ドラ〇もんみたいにちょっと浮いてる」
耳郎「なwwwんwwwでwww」
森岸「何かできた」
耳郎「どこで使うのそれwww」


耳郎「……使い所、あったね」
森岸「あったな」


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