魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.森岸舐めプしてない?
 A.様子見もあったけど想像以上に弱かったから困惑してた。長年求めていた攻撃魔法がアレだったから実はちょっとだけショックを受けてた。

 Q.【ドラゴラム】なら森岸も使えたりしない?
 A.開発すれば使える。ただ、森岸としてはドラゴンに変身する必要がないので多分使わない。

 Q.ナインが変身したのってドラクエの『ヒドラ』とか『ヤマタノオロチ』みたいな感じ?
 A.大体そんな感じ。感情に任せて強引にやったせいか本家より劣化しており、若干キモさが増している。また個性の数よりも頭が少ないのは不完全さ故。

 Q.ナインって森岸がいなかったら強かった?
 A.オール・フォー・ワンとは別方向での魔王になれたくらいには強い。魔力が切れる寸前まで攻撃魔法をばら蒔き、限界が近くなったら【ドラゴラム】で暴れるという第二形態持ちレイドボスになれた。

 Q.じゃあ森岸がいると?
 A.ただのカカシですな。





120.サイズ差もどうしようもない

 

 

 

 戦場に突如として現れた巨躯は、敵味方を問わず多くの視線を引き付けた。

 

 個性としての意味ではなく、そのままの意味での異形。明らかに理性のない、血のように紅い目の怪物。

 

 その正体はたった一人の人間の怒りと殺意で切られた切り札。オール・フォー・ワンと殻木球大の手によって与えられた個性因子を半ば暴走状態まで活性化させた強引な肉体変化。

 

 ナインは己の誇りと信念の為にも負ける訳にはいかなかった。たとえ人性を擲ってでも目の前のオリジナルを許すわけにはいかなかった。

 

 

 

「グルルオオォォッ!!!」

 

 

「なんだあの怪物!?」

「あれも脳無なのか!?」

 

「ナイン!」

「そんな……アレはオールマイトクラスへの切り札じゃなかったか……!?」

 

 

 

 理性や思考を放棄し、己の殺意と怒りのままに全てを破壊する異形の怪物と化したナイン。その力を誇示するように五つの首を持ち上げ、地の底から響くようなおぞましい雄叫びを放った。

 

 ビリビリと大気が震える。生半なヒーローであればその雄叫びだけで戦意をへし折ることもできただろう。

 

 しかしこの場にいるヒーローは違う。誰もが己の役割を全うし、一人でも多くの敵を倒す為に戦っている。怯むことはあれど戦意を失う者は一人もいない。

 

 そして彼等もまた然り。

 

 

「うるっせー……こりゃ常闇行かせなくてもよかったかも」

「大きいから目立ってるしね。まあ少しでも早くってんなら間違ってないんじゃない?」

「俺の放電効くと思う?」

「サイズ的にあんまり意味無いだろうな。指示はこっちで出すからそれまで待機しててくれ」

「オッケー」

 

 

 つい先程までナインを圧倒していた森岸。そして森岸を心配して駆けつけた耳郎と上鳴。今この場にはいないが常闇と、雄英生四人は堂々たる佇まいでナインを見つめていた。

 

 だがナインの視界にいるのは森岸のみ。彼の目には最早森岸以外は何も映らない程怒りに支配されている。

 

 十の目が全て森岸へと向けられ、ナインは大きく息を吸い込み出し、それを見た森岸は何かを察した。

 

 

「それはちょっとマズいな……響香、カウンター任せた」

「え? あ、うん!」

 

 

 狙いは明らさまな程に自分に向けられている。そう判断した森岸は【スピオキルト】によって強化された身体能力で大きく跳躍。そこから更に【トベルーラ】を使用して一時的な浮遊効果を発動した。

 

 

 次の瞬間、五つの口から強烈な吐息が放たれた。頭ごとに吐息の様相は異なり、炎や氷に雷と人間の状態で使っていた【魔法】をそのまま吐息に変えたような攻撃。

 

 森岸の推測通りその全ては跳躍した森岸たった一人へと向けられ、放たれた吐息はアッサリと森岸の身体を呑み込んだ。

 

 が。

 

 

「【バーハ】まであるといよいよノーダメージだなこりゃ……」

 

 

 吐息が途切れた後にいたのはやっぱり無傷な森岸の姿。どうも今の吐息も判定としては【魔法】になるらしく、そこへ更に【バーハ】を足した事でほぼ全てのダメージがカットされていた。

 

 最悪耐えれなければ【アストロン】でも使ってやろうと思っていた森岸だったが、これだけ変化していてもナインにとって相性最悪である事に変わりはないらしい。

 

 ならばと森岸は腕を大きく引き絞り、大量の強化で獲得した超パワーを遺憾無く発揮する。

 

 

「【ウイングブロウ】!!」

『グギャアッ!?』

 

 

 オールマイトみたいな派手な一撃を夢見た力ずくの攻撃が五つあるうちの一つを叩き落とした。超パワーによるパンチの風圧を飛ばすという脳筋の極みの如き一撃が攻撃直後のナインに悲鳴をあげさせる。

 

 

「【ハートビートキャノン】!!」

『ギアッ……!?』

「詠士ばっかり見てると足元掬われるよ?」

 

 

 更に地上から耳郎による追撃。増幅され一直線に放たれた音の衝撃波がもう一つの頭をかち上げた。

 

 サイズ差故にほぼ真下からの一撃。分かたれたとはいえ頭を大きく揺らされるのは堪えるのか、他の頭も同時にグラグラと揺れていた。

 

 そんな事をされれば嫌でも森岸以外の人間も視界に入る。ダメージを受けた二つを除いた残りの頭が地上へと向けられ、牙を剥いて噛み砕かんと迫る。

 

 その前に立ちはだかるのは上鳴。あまりのサイズ差に若干脚が震えているが、不敵な笑みを保ったまま森岸の指示を受け取り耳郎を庇うように飛び出した。

 

 

「あいよ! 待ってましたァ!!」

『!!』

「後先考えねえ! MAXパワー放電!!」

『グガアアアッ!?』

 

 

 注意を引き付け集められた残りの頭への全力全開の放電。普通ならショートして使い物にならなくなっていたが、事前に【デメキエル】をかけられた事でノーリスクとなっていた。

 

 そしてその全力全開を受けた三つの頭は堪ったものではない。放電によるダメージもそうだが、間近の距離で爆ぜた電気は網膜をも焼いた。

 

 耐え切れるはずもなく頭を引っ込めようとするが、感電した身体は言うことを聞いてくれない。藻掻くように震わせながら、たっぷりと電気を浴びせられてようやく上鳴の攻撃範囲から逃れるのが精一杯だった。

 

 これで五つの頭全てに少なくないダメージが入った。頭を持ち上げる首もどこか弱々しくなったが、それでも森岸は攻撃の手を緩めない。

 

 

『ガアアアッ!?』

「──【メタ・ストライク】効いたろ?」

 

 

 耳郎と上鳴の攻撃に悶えているうちに高く上昇し、そこで全身を無敵の重金属へと変化させる【アストロン】を発動。重力にしたがって加速した重金属がナインの胴体へと着弾した。

 

 体格差をひっくり返すような速度と重さによる一撃は踏ん張っていた四本の脚をも折らせ、一拍遅れて五つの頭までも地面へと落ちる。

 

 それでもまだ倒れないのか、ナインはどうにかして立ち上がろうと首を持ち上げる。せめて、せめてあの小僧だけでもとボロボロになった頭で森岸を探していると──

 

 

 

「あら、本当に大きいわね」

『…………!!?』

 

 

 

 ──己の倍もある巨人に見下ろされていた。

 

 ただでさえ【魔法】で負けていたところにサイズでも己を上回る何者かが現れた事にナインは酷く動揺していた。

 

 

 

 少し時は遡り、ナインが【ドラゴラム】を発動した直後の事。

 

 

「多分俺達だけでも勝とうと思えば勝てるけど、周囲への被害も出そうなんだよな」

「まあ……アレ、デカいし……」

「やるとしたら上鳴の全力放電か響香が直に爆音ぶち込むかなんだけど……下手すると殺しちまいそうだし」

 

 

 正直に言うと自分達だけでもあの姿になったナインは倒せる。それが森岸の意見だった。

 

 しかしその場合はナインの生命が保証できない。というか確実性を期す事になるので過剰火力気味で攻撃しなければならないので、それにナインが耐えられるかどうか分からないのだ。

 

 いくら敵とはいえヒーロー、それも学生の自分達が殺すというのは後味が悪い。ひょっとしたら今後に支障をきたす可能性だってある。

 

 ではどうするのか、という疑問に森岸はこう答えた。

 

 

「トドメはMt.レディに頼もう」

「……いけるか?」

「アレ多分Mt.レディの半分くらいしかないしいける。少なくとも俺達より確実に加減して制圧できる」

 

 

 それはサイズ差の天秤をひっくり返す作戦。デカブツ相手ならもっと適したヒーローがいる。

 

 自分達が戦っている間にMt.レディを連れて来てもらい、上から叩き潰してもらえばいい。森岸はアッサリとそう言ってのけた。

 

 そもそもMt.レディがナインに勝てるのか? という懸念は森岸がいる時点で無意味。勝てるようになるまで強化すればいい。

 

 

「向こうは多分俺狙いだし、そうなると人連れてくるのに向いてるのは常闇だ」

「承知。すぐにでも向かおう」

「……うん、今Mt.レディに連絡入れといたよ。向こうにいるって」

 

 

 

 そうして耳郎から連絡を受け取り、常闇に連れられたMt.レディはナインの目の前で【巨大化】を発動。その高さは何と20メートル。ほぼナインの倍のサイズとなっていた。

 

 

「これも脳無?」

「いや、幹部格と思われる敵です。生け捕りの方がいいでしょう」

「どんな個性なのよコイツ……まあいいか」

 

 

 未だ動揺から抜け出せないナインに対し、Mt.レディの態度はいつも通り。再び【トベルーラ】で近寄ってきた森岸に確認を取りつつ、ナインを見つめたまま動き出す。

 

 やることは簡単。持ち上げた脚で上からナインを踏みつけるだけ。

 

 しかしその単純極まりない攻撃こそ、ナインに抵抗する術はなかった。

 

 

『グギッ……!? ギ……!』

「抵抗は無駄だからやめておきなさい。あの子の【魔法】もあるから……貴方、絶対私に勝てないわよ?」

『カ……ァ……!!』

 

 

 ミシミシと全身が軋む。しかし何をしようとも動かない。【スピオキルト】に加え【バイキルト】と【ズッシード】を与えられたMt.レディの踏みつけを跳ね除けられない。

 

 吐息を繰り出そうにも踏みつけられているせいで満足に息が吸えない。それどころか圧力に押し潰されて呼吸すらままならない。

 

 そうして暴れることもできぬまま口をパクパクとさせる事しかできなくなったナインの頭部へ、森岸達が近づいた。

 

 

「弱いものイジメしてる気分だよ本当に」

「Mt.レディ強えー……」

「詠士の強化もあるしこんなもんでしょ。ほら、今のうちにさっさとやるよ」

「哀れな……」

 

 

 ナインから理性や思考が消えていたのはある意味幸運だったと言えよう。

 

 何せここから先の屈辱を知らぬまま意識を手放せたのだから。

 

 

 押さえつけられ動けなくなった五つの頭を一つずつ叩いていく。森岸や【黒影】の打撃が、耳郎の【イヤホンジャック】が、上鳴の放電が……確実に、丁寧に。

 

 最後の一つに全員の攻撃が叩き込まれ、とうとうナインの意識は途絶えた。

 

 

「すぐには元に戻らない感じかこれ」

「徐々に縮んでいくっぽい?」

「Mt.レディー!! もう足退けていいよー!」

「え? 何!?」

「……森岸、飛んで来た方が早いぞ」

「みたいだな」

 

 

 






ナイン「人の心とかないのかお前らァ!」
森岸「敵が何言ってんだ」
耳郎「人の心先に捨てたのそっちでは?」
常闇「敵側はルール無用だろう」
上鳴「これでも加減はしたよ?」
ナイン「」


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