魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

122 / 123


 Q.ドクター生きてる?
 A.死んでないので生きてる。心はもうポッキリ折れちゃった。兎恐怖症になった模様。

 Q.ナインは回復魔法使えなかったの?
 A.個性複数持ちの時点で【魔法】は何かしらと結びつくのが確定してたから使えなかった。回復魔法が使える脳無は軒並み調整中、もしくはイレイザーヘッドに【抹消】されてた。

 Q.これで蛇腔病院終わり?
 A.蛇腔病院は終わり。後は画面外で脳無の回収やら患者と職員への対応やらをするだけ。





122.切り札

 

 

 

 地上でナインが異形化を果たしていた頃。地下空間では異能解放軍による会議が行われていた。

 

 そこにはトランペットやキュリオスといった幹部陣もおり、タルタロス襲撃作戦を一から確認しつつ、士気を高めんとリ・デストロの演説やトランペットの【扇動】が響き渡っていたのだが。

 

 

 そこにある一報が飛び込んできたことで状況は一変した。

 

 

「大変ですリ・デストロぉ!!」

「騒がしいぞ。何事だ?」

「今は大事な会議が──……」

「ヒーローの奴らが攻めてきました!」

「…………何?」

 

 

 まだ世間に知られていないはずの異能解放軍の存在が知られていて、挙句の果てにこの地下空間に繋がる通路を塞がれてしまった。

 

 残っているのは館内に繋がる通路のみで、そちらもヒーロー達が張っていて突破できない、と。

 

 迫る解放の時を思いニコニコと微笑みを浮かべていたリ・デストロの表情が歪み、黒いオーラが噴き出した。

 

 リ・デストロ。彼の異能の名は【ストレス】。ストレスを溜めてパワーに変える能力。ストレスを溜め込む程に強靭に、そして巨躯となっていく。

 

 黒いオーラは彼のストレスが変換されたエネルギーであり、それが噴き出したということはつまり、それだけの憤怒を抱えたという事。

 

 何故、なんて考えるまでもない。こうなった原因などリ・デストロには一つしか思い浮かばない。

 

 

「ホークス……やってくれたな……!!」

 

 

 現No.2にして異能解放軍の新参者。まんまと懐に入り込んだ鼠ならぬ鷹に喉元まで食いつかれた。少なくともリ・デストロはそう結論付けた。

 

 しかしここで憤っていても何も変わらない。むしろ足を止めれば止めるほど益々不利になっていく。間違いなく残りの通路も潰されるという確信があった。

 

 即座に通路へと向かおうとし──そのうちの二つが爆ぜた。

 

 

「ぬっ!? これは……」

「リ・デストロ!」

 

 

 一方は強烈な爆撃。厳密にはその余波が地下まで到達したらしく、通路を一つまるごと崩落させてしまった。

 

 もう一方は青い炎。地上から地下までの通路内を余すことなく焼き尽くしながら、コンクリートをも溶かす超火力が噴き出した。

 

 前者は完全に使用不可。後者は通れなくはないものの、炎が残した灼熱と融解したコンクリートの通路を進める者は極わずかだろう。

 

 残った通路は三つ。しかし報告が確かならばそちらにも確実にヒーローが待ち構えている。それに通路の狭さを考えると一度に出られる人数には限りがある。

 

 解放戦士達の間に『詰み』の二文字が浮かび始めたその時だった。

 

 

「……リ・デストロ」

「何だ!」

 

 

 この場の誰も起こす術を持たないはずの巨人。彼らにとっての切り札、ギガントマキアが立っていたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

「なんっっじゃありゃあ!?」

「デケェ……! さっきのきめぇ奴よりもずっと……!」

 

 

 通路塞ぎも全てが無意味。その巨体は地面を砕き、掻き分けるようにして現れた。

 

 そのサイズは異形化したナインなど比べ物にならない。それどころかMt.レディをも凌駕する程。

 

 更にギガントマキアが砕いた地面から異能解放軍も現れた。最高指導者であるリ・デストロやその忠臣である外典といった幹部格、彼らに続いて名も無き構成員まで。

 

 だが、それを見た爆豪は怯むどころか口角を吊り上げ、歯を剥き出しにして笑った。

 

 

「! おい! アレがそうだな!?」

「どれのこっちゃ! 最高指導者の事やったらアイツであっとる!」

「だったら……仕留めても構わねえよなァ!!」

「ちょっ……一人で逸んなアホ!?」

 

 

 ここまで爆豪は比較的後方に配置されていた。無論他のA組やB組と比べれば前線寄りではあるものの、森岸や耳郎達とは異なり戦力としてのカウントとは言い難い位置にいた。

 

 じゃあ何故ファットガムがこんな所まで連れてきたのかと言うと、そもそも爆豪が自ら前線まで突っ込んで来ていたからである。

 

 理由など言うまでもない。森岸や耳郎が最前線なのに何故自分達はここなのかと不満に思っていたからだ。

 

 同じエリアに配置されていた緑谷と轟の引き留めも振り払い、前線に出てきた所をファットガムに見つかった事で『せやったらせめて目の届くところにおり!』と連行されていた。

 

 

 で、そんな状態の爆豪が異能解放軍最高指導者という超大物を目にして黙っていられるはずもなく。

 

 リ・デストロが爆豪に目を向けた時には既に目の前まで迫っていた。

 

 

 

「死ねェェ!!」

 

「ぬうっ!?」

「殺したらアカンよバクゴー君!?」

 

 

 圧縮されたニトロのような汗の粒が爆ぜる。一瞬の瞬きの後、轟音と共に強烈な爆発が起こりリ・デストロの身体を吹き飛ばした。

 

 

「ぐ……! なんという異能……! だが、私には及ばん!!」

「知らねえのかハゲ。今は異能じゃなくて個性っつうんだ」

「……取り繕った名称に何の意味がある。生温いヒーロー社会の若者が! 知った風な口をきいてるんじゃあない!!」

 

 

 ズ……とリ・デストロの身体を黒いオーラが包み込む。並を通り越してネームド敵の中でも最上位クラスの圧力を放つ。

 

 しかしそれを前にして爆豪は獰猛に笑う。何故ならそんなものよりももっと凄まじいものを知っている。

 

 

「来るがいい! ものを知らぬ君に異能というものを教えてあげよう!!」

「テメェに教わるもんなんざ一つもねェわハゲ!!」

 

 

 解放を望みドス黒い感情を武器とするリ・デストロと、頂点を目指し闘志を滾らせる爆豪。研ぎ澄まされた異能と個性が衝突した。

 

 

 

 

「リ・デストロ!」

「おいおい、行かせると思うか?」

「邪魔をっ、するなァ!!」

 

 

 爆豪とリ・デストロがぶつかり出した位置から少し離れた場所。氷と共に荒れ狂う外典を前に燈矢はヘラヘラと笑いながら立ち塞がっていた。

 

 ギガントマキアとリ・デストロと共に地上に出てきた瞬間、外典が氷を操っているのを確認した燈矢は相性の有利を悟り躊躇なく青い炎を解き放った。

 

 咄嗟に氷で防ぐことには成功した外典。しかし凄まじい勢いで放たれた炎の温度を防ぐことはできても、空中で持ち堪えることはできずリ・デストロ達から遠い位置へと吹き飛ばされてしまっていた。

 

 そしてタイミング悪く、その瞬間に爆豪がリ・デストロを襲っているのが見えてしまい、今の外典は頭に血が上りきっている。燈矢との相性不利すら頭の中からすっぽ抜けている。

 

 今の外典の頭にあるのはリ・デストロの心配と爆豪への殺意、そして自分の前に立ちはだかっている邪魔者の排除だけだ。

 

 奇しくも異なる世界線(原作)で戦っていた二人が、ヒーローと解放軍という立場で衝突した。

 

 

 

 

 

 ズン、とたったの一踏みで地面が陥没する。

 

 ギリシャ神話における巨人族と神々の戦いの名を持つ怪物。ギガントマキア。

 

 魔王の忠実なる下僕は今、かつてのような感情や理性を剥奪され、名実共に真の怪物となっていた。

 

 

 

「シ主……は……?」

 

「何だコイツは……!? まさかギガントマキアって奴か!?」

「写真と全然違うじゃねえか!?」

 

 

 唯一残ったのはオール・フォー・ワンへの忠誠心のみ。それさえも殻木によって植え付けられたプログラムにより、異能解放軍の幹部や殻木を優先させられてしまう。

 

 かつての原始人を思わせる風貌は無数の改造によってまるで別物に。ありったけの異形型個性を捩じ込まれ、とにかく戦闘力のみを追求された。

 

 辛うじて人間味を残していた肌は獣の如き毛皮へと変わり、頭から角が、背中からは悪魔のような羽根を生やしていた。

 

 手足もまた歪。人間と同じ五本指でありながらその指先は蹄のようなものに覆われており、牛や馬と人間の手足を無理やり混ぜたような姿だった。

 

 極めつけはその顔。目に光はなく、獣のマズルができており閉じきらない口の端からはドロリとした涎が落ちている。

 

 生ける屍にして、獣であり巨人。それが今のギガントマキアだ。

 

 

「どうすりゃいいんだこんなの……! デカすぎてちょっとやそっとじゃ全然効かねえぞ!?」

「もう人間の手に負えるようなものじゃないって!」

 

「ひーロー……せ殲滅せネバ……」

 

「ひっ……!」

 

 

 そのマキアに与えられた司令は至ってシンプル。殻木から遠隔で送られたそれは『ヒーローを殲滅せよ』というもの。

 

 足元で小バエのように動き回るヒーローを認識したマキアの手がゆっくりと持ち上げられ──

 

 

 

 

「【キャニオンカノン】ッ!!」

「ぐ……!?」

 

 

 

 ──その横っ面をMt.レディの蹴りが打ち抜いた。

 

 Mt.レディが約20メートルに対し、ギガントマキアは約27メートル。しかしその体格差をものともしないだけの強化があった。

 

 言ってしまえばただただ強烈なだけの飛び蹴り。だがそれが20メートルの巨人による一撃ともなれば土砂崩れのような轟音が響く。

 

 まともに食らったギガントマキアの身体は大きく揺れ、一瞬宙に浮いた後地面へと倒れ込む。それだけで一つの災害クラスの破壊が起こった。

 

 

「うわあああああ!?」

「逃げろ! 巻き込まれるぞ!!」

 

「今だ! Mt.レディがあのデカブツを引き受けているうちに、解放軍を捕えろ!」

「巻き込まれて死ななきゃいいんだが……」

 

 

 異能解放軍は堪ったものではない。解放思想に殉じるならばともかく、怪物達の戦いに巻き込まれて人知れず死ぬなど御免だ。

 

 ヒーローは違う。森岸の強化があるし、最悪死んでなければ治してくれると聞いている。それにどちらにせよMt.レディ達の戦いは長引かないだろうという確信があった。

 

 

 何故なら──

 

 

 

「何故って? そう……」

 

 

 市民だけではない。同じヒーローだからこそ、彼の力を知っている。

 

 

 

「私が来たァ!!」

 

 

 

 おそらく異能解放軍にとって最上級のイレギュラー。とっくに引退して戦えなくなっていたはずの平和の象徴。

 

 

 オールマイトが参戦した。

 

 

 

「出てくるのはいいですけど、先に強化受け取ってくれません?」

「あ、ごめんね……つい……」

「ありったけぶっ込むんで好き放題やってきてください。あ、後ついでに緑谷向こうに行きましたよ」

「マジで!? 何で前にいるの!?」

 

 

 ……ちょっと締まらないけれど。

 

 

 






リ・デストロ「オールマイトはもういない!」
スケプティック「怖いもの無しだ!」
トランペット「今こそ解放を!」

オールマイト「私が来たァ!」

リ・デストロ「」
スケプティック「」
トランペット「」
キュリオス「」
その他解放軍「」



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。