Q.爆豪何してんの?
A.精神的な方での成長は原作と対して変わってないのに、実力だけ最終決戦編近くまで来てるせいでこうなった。まあまあ驕ってる。
Q.除籍されないこれ?
A.ここまで来ると除籍して野放しにする方がマズいので除籍はされない。その代わり死ぬほど怒られる。
Q.ギガントマキアの変化に元ネタとかあるの?
A.若干ドラクエの『ブオーン』というモンスターを意識してる。あれそのままというわけではない。
Q.もう一回聞くけど異能解放軍に勝ち目ある?
A.オールマイトが全部食っちまった。次ァ魔王を連れてくるといい。
「なっ……オールマイトだと!?」
戦場のど真ん中。異能解放軍で情報戦の要である男、スケプティックは悲鳴のような声を上げた。
オールマイト。力無き市民にとって平和の象徴であり、敵にとっての絶望。引退するその時まで並び立つ者など一人も現れなかった紛うことなき怪物。
それが何故ここにいるのか。異能解放軍には理解できない。会見を開き己の衰えを語り、引退を表明したはずの男が、どうしてこれ程の圧力を放っているのかも。
ギガントマキアとMt.レディの戦いすら遠くに感じる程、解放軍に緊張が走る。目の前のヒーローすら差し置いて視線を向けて、縫い付けられたかのように足が竦む。
そうしてオールマイトがゆっくりと、見せつけるように一歩目を踏み出し、プレッシャーに耐えられなかった者が弾かれたように駆け出した。
「う、うおおおお!!」
「平和の象徴は衰えてる! 俺達でも勝てるはずだ!」
「死ね! オールマイ───」
「悪いが君達に割ける時間は無くてね」
一歩目の先がブレる。視線の先には残像すらなかった。強く、強く踏み締められた跡だけがあった。
そして飛びかかった解放戦士達の意識はそこで途切れる。糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ち、白目を剥いたまま立ち上がる様子もない。
オールマイトの目が向けられているのは少し遠く。Mt.レディによって蹴り飛ばされたギガントマキアがいる先。
オールマイトにとって解放軍など警戒にすら値しない有象無象でしかない。そう突きつけるような態度を咎められる者など一人もいやしない。それどころか戦意を保つことさえ叶わなかった者からその場にへたりこんでいく。
「ひっ……!」
「な、何が衰えただよ……全然化け物じゃねえか……」
「む、むしろ強くなってねえか……?」
そうして戦えなくなった者から順に、次々と捕縛されていく。だが彼らはむしろ賢明だったかもしれない。
ともすればこの戦場にいるヒーローは全て、オールマイトに匹敵しうることを知らぬまま檻の中へと逃げられるのだから。
ほんの一瞬で二桁に上る解放戦士をノックアウトし、その光景だけで更に倍近くを戦意喪失させたオールマイト。次は誰が狙われるのかと戦々恐々とする解放軍を他所に、キョロキョロと周囲を見回していた。
「さて……まずは緑谷少年を探しに行った方がいいかな……?」
「──彼ならあっちで同級生達とリ・デストロ相手してますよ」
「何? って、ホークス! 君今までどこにいたんだい!?」
そんなオールマイトの隣に現れたのはホークス。バサリと【剛翼】を広げて呆れたような顔で声をかけた。
オールマイトから出た言葉は礼ではなく心配。というのもホークス、異能解放軍に潜入捜査をしていると聞いてはいたものの、作戦が始まってから姿が見えなかったものだから何人かのヒーローが無線でちょくちょく探しているのが聞こえていた。
今まで何処で何をしていたのかを尋ねると、ホークスは少し困ったような顔をして解放戦士を片手間に処理しながら語り出した。
「先輩……本当は作戦に組み込まれてなかったレディ・ナガンを連れてきてたんですよ」
「ナガンを? というか彼女、作戦に入ってなかったの?」
「ええ。念の為にタルタロスの防衛を……という名目で除け者にされてたみたいで」
オールマイトは目を丸くして驚いた。だってさっきからちょくちょく特徴的な弾丸がどこからともなく飛来し、解放軍を一人ずつ的確に無力化しているのが見えていたから。
どうやらヒーロー公安委員会の上層部……の、極一部の人間は余程ナガンが怖い様子。
プロヒーローの主力はほとんど今作戦に投じられている為、万が一ナガンの銃口が自分達に向けられると止められない……と考えたようだ。
勿論ナガンはそんなことをするつもりはない。しかし長らく銃口を突きつけられた──つもりでいた──者からすればどうにかして遠ざけたいと思うのも道理。
結局ナガンはタルタロスの方に配置された──が、納得できるはずもなく。
「……作戦開始直後に個別無線で『迎えに来い』って言われましてね」
「ああ……」
「ナガンさん連れて来たらでっかいのが暴れてるわ、予定にない雄英生が最前線で戦ってるわで……色々伝達して今に至ります」
「その、お疲れ……様?」
つまりホークスはタルタロスと戦場を往復しており、そのついでに爆豪を連れ戻そうとして戦う羽目になった緑谷や轟のフォローをしていたという事になる。
当然だが爆豪の独断専行は褒められたものではないし、きっとこの後は相澤からこっ酷く怒られるだろう。仮免の学生がやっていい事じゃ無さすぎる。
だがそれはそれとしてだ。その爆豪を追いかけて自分達まで最前線に出てくるのはどうなんだとホークスは苦い顔をしていた。
「何なんすかねー……あの子。俺達に任せろって言ってんのにバクゴー君見つけるなり『かっちゃん!』って叫んで行っちゃったし」
「絶対緑谷少年だそれ!? うちの生徒が本当にごめんなさい!!」
「本当は引き摺ってでも連れ戻したかったんですけどね。俺異能解放軍からすんごい恨み買ってるんで中々余裕がないんですよ」
「……さっきから滅茶苦茶敵が増えてるの君のせいなの?」
「ですね」
どこか投げやりな態度のまま、ホークスはもう数えるのも面倒になった解放戦士を返り討ちにしながらそう答えた。
それもそのはず、ホークスは異能解放軍から情報を抜き取り、異能解放軍にとって致命的なこの状況を作り上げたヒーローだ。
中には『ホークスだけは殺さないと気が済まない』というくらいに殺意と怒りを滾らせている者も少なくなく、ホークスを見かけた瞬間全力で飛びかかってくるのだ。
そんな連中ばかり相手していたものだから当初の予定通りの動きなどできるわけがない。子供達の回収など以ての外。
「まあ危なくなっても先輩が見てるんで多分大丈夫でしょ。最悪森岸君いるから何とかなるなる」
「君絶対疲れてるよね!? これが終わったらしっかり休んでね!?」
「やす……み……?」
「悲しき生き物みたいになってる!」
ただでさえ酷使されまくっている所に爆豪達というクソタスクを抱え込まされたホークスはやさぐれてしまった。
この後森岸のところまで向かい、強化を貰って思い切り暴れ始めるのにそう時間はかからなかった。
◇
「邪魔すんなテメェらァ!!」
「何してんの!? いや本当に何してんのかっちゃん!?」
「爆豪お前……今度こそ除籍されるんじゃねえか……?」
「お喋りとは随分余裕だな!?」
「……なあ環。お前の後輩どないなっとん?」
「知らない……怖い……」
「一人でもどうかと思うのに更に二人増えてんねんけど」
「俺は、何も、知らない……!」
その頃緑谷達。独断専行をやらかした爆豪を連れ戻すつもりでいたのだが、リ・デストロという超大物敵と戦っている所を目撃し慌てて乱入。リ・デストロの横っ腹を思い切り蹴り飛ばした。
とうとう50%で安定しつつある【フルカウル】のキックは【ストレス】発動中の肉体であっても少なくないダメージを与えてしまい、かえってリ・デストロに警戒されるように。
元々逃がすつもりもなかったリ・デストロだが、緑谷のパワーを警戒対象として認定。目の前の爆豪よりも緑谷を優先しようとし、余計に爆豪の怒りを買ってしまった。
少し遅れて轟が合流した時にはどう見ても逃げる気ゼロの爆豪と、爆豪を連れ帰ることを諦めリ・デストロを倒してからにしようと考えたらしい二人の姿があった。
それで現在、A組でもトップクラスの実力者三人とリ・デストロの戦いとなっているのだが……リ・デストロは自分を目の前にして口喧嘩をする彼らに少なくない怒りを抱いていた。
「三人がかりなら学生でも勝てると思ったか!? 舐められたものだな!」
「適正評価だろハゲ!」
「でもこいつ、相当強い……!」
爆豪と緑谷の脳裏を過ぎるのは期末テストの実技試験。オールマイトという暴力の嵐のような存在と戦っていた時の事を思い出させる。
【ストレス】によって黒く染まった腕が振り抜かれる。それだけで轟が作り出した氷壁が砕かれ、爆豪が放った爆撃を相殺する。
未だ拙いとはいえ【ワン・フォー・オール】が乗った【黒鞭】すら跳ね除け、乱暴な一撃を止めるには叶わない。一瞬の均衡の後に力ずくで振り抜かれてしまう。
だが、リ・デストロとてその表情に余裕はない。
リ・デストロからすれば目の前の子供達程度に手間取っていること自体が論外だ。
(冗談じゃない! この後にオールマイトやエンデヴァーが控えているのだぞ!? 三人がかりと言えど子供相手に苦戦してる暇などないというのに……!!)
その理由は圧倒的な戦力の差。ほんの一瞬、視線だけを動かして周囲を睨みつけながらリ・デストロは焦燥を隠すために必死になった。
確かに目の前の三人は強い。解放軍と比較しても上から数えた方が早いくらいの実力を有してはいる。
だがそれ以上に他のヒーローがマズい。どういう訳か名前も顔もよく知らぬヒーローすら解放軍幹部クラスの力を持っている。
であればオールマイトやエンデヴァーといったヒーロー側の
「……仕方あるまい」
「!」
故に、出し惜しみしている場合はないと判断した。
近年、欧米を中心に飛躍的に発展した超圧縮技術によって極限まで小型化されていたサポートアイテム。
そこへウォルフラムがi・アイランドで持ち帰った手土産を組み込む事で更なる進化を遂げたリ・デストロ専用装備。
「負荷増幅高圧機構……【クレストロ】」
「何だありゃ……!?」
「パワードスーツ……?」
展開されたアーマーがリ・デストロの全身を覆っていく。無数の駆動音と金属音が連続し、瞬く間にその姿が変貌する。
その機能は至って単純。装着者であるリ・デストロに負荷を与える事で【ストレス】を増幅させ、全力のその先のパワーを引き出す。
本来であればそのパワーと対価に機動力が損なわれていたが、i・アイランドの技術がデメリットを帳消しにした。つまり──
「今の私はオールマイトと同等という事だ!!」
「! 速───」
均衡が崩れる。三人がかりの攻撃で保っていたパワーバランスがリ・デストロへと大きく傾いた。
三人の視界に残像だけを残し、轟の背後へと回り込んだリ・デストロの拳が固く握られる。
グシャリ、と水っぽい、何かが潰れるような音が響き渡った。
リ・デストロの腕から。
「…………!!?!?」
「危ねえ危ねえ……間に合ってよかったよ本当に」
轟の身体には傷一つついていなかった。まるで全身が
その真横。何の影響もないはずがない至近距離で、彼は少しの焦りを滲ませながらも平然と言ってのける。
伸ばされた手は轟に触れたまま、無造作にひしゃげた腕を蹴り上げた。
「一旦離れてもらおうか」
「がっ……!?」
「───あ? 森岸……か?」
「はい森岸です。お前達何でこんな所にいんの?」
ただでさえ砕けた左腕。そこへ森岸の蹴りまで叩き込まれた事でダメージは致命的。パワードスーツごと砕かれた腕はダラリと垂れ下がり、使い物にならなくなっていた。
轟は金属変化……【アストロン】が解けた瞬間キョトンとしていた。何が起こったのかも分かっておらず、いつの間にか目の前に森岸が立っていたように感じていた。
「かっちゃんが一人で突っ込んで行っちゃって……連れ戻さなきゃと思って……」
「ええ……? 爆豪お前何してんの……?」
「テメェや耳が前線にいんのに黙ってられっか!」
「お前後で知らんぞマジで……相澤先生ブチ切れ案件じゃん」
今しがた死にかけたとは思えないほどいつも通りの態度。爆豪の言い分にドン引きしている森岸だが、腕を砕かれたリ・デストロからすれば森岸の様子こそ理解できない。
まるで何でもない日常のような振る舞い。目の前の敵を認識していながら学校の休み時間の雑談中の如き態度。パワードアーマーの中で背筋を冷たいものが伝った。
「しゃーない。コイツ倒したら流石に下がれよ? 下手すると……いや下手しなくても除籍になりかねんからな?」
「チッ、わーっとるわ」
「……助けられたらしいな。悪い」
「今かよ。まあいいけど」
だって、その姿には見覚えしかなかった。
異能解放軍にとって邪魔で邪魔で仕方がなかった平和の象徴と同じ。かつて誰かが口にしていた下らない仮説が今、リ・デストロの脳裏を過ぎっていた。
──突き抜けた実力を持ったヒーローは画風が違っている。
「さ、好きに戦えお前ら」
「大丈夫、俺がいる」
まるで魔王を討伐する勇者であり、勇者を迎え撃つ魔王。
ナガン「ちょっとツラ貸せ後輩」
ホークス「ハイ……」
ホークス「さて今度こそ作戦に……うん?」
爆豪「死ねハゲ敵!」
ホークス「」
緑谷「かっちゃん何してんのさ!」
轟「お前まで行ってどうすんだ」
ホークス「」