Q.リ・デストロが某上院議員みたいなこと言ってたら森岸はどんな反応してたの?
A.ちょっと感心するけどそれ以上にドン引く。少なくともステインと比較してもおかしくないイカレ敵と認識する。
Q.リ・デストロ死んでない?大丈夫?
A.森岸が致命傷寸前のところまでは回復したので死んでないし死なない。でも腕は両方まともには動かなくなった。
「おーおー……いくら異能解放軍のトップでもアイツらにかかればあんなものか」
蒼い炎を揺らめかせながら、燈矢は苦笑いを浮かべて結末を見ていた。
爆豪とかいう雄英生が一人で戦い始めた時は流石に焦っていたけれど、そこにもう二人……そのうちの一人が弟であるのを確認して一旦心配を打ち切っていた。
それからリ・デストロがパワードスーツを着た辺りでもう一度焦り、森岸が到着したのを見て『勝ったな風呂入ってくる』と今度こそ心配しなくなった。
そして燈矢が戦っていた相手、外典はというと。燈矢の足元で伏せたまま、立ち上がることもできずにリ・デストロへと手を伸ばすことしかできなかった。
「あ、ああ……リ・デストロ様……」
「……お前も大概しぶといな。散々焼かれて殴られてまだ喋る元気があるのか」
整った顔も風に揺れていた美しい髪も、今となっては見る影もなく焼かれている。猛威を振るっていた氷も一欠片足りとも残ってはいなかった。
元々外典と燈矢の相性は最悪だった。如何に氷を操ろうとも燈矢の炎の前では溶かされてしまい、補充よりも早く氷が失われていった。
何より外典にとって想定外だったのはその火力。並大抵どころかエンデヴァークラスの炎でもなければ防ぎ切れるつもりでいたのだが、燈矢はそのエンデヴァーをも凌駕する火力を有していた。
幾重もの氷の装甲を生み出そうとも燈矢の【蒼炎】を受け止めることは叶わず、最終的にはなけなしの氷を掻き集めた防御ごと蒼い炎に焼かれて撃墜された。
「さて……後はあのデカブツくらいか?」
解放軍自体はまだ数多く残っている。しかしリ・デストロや外典といった幹部格の者達はほとんど討伐されているらしく、全面戦争から掃討戦という空気に変わりつつあった。
少し騒がしい方に目を向けてみれば自分の雇い主がすっげぇいい笑顔でスケプティックとキュリオスを殴り倒しているのも見えた。何してんだホークス。
しかしだ。逆に言えばまだ肝心な奴が残っているとも言える。
ギガントマキア。殻木球大とリ・デストロに並んで確実に逮捕せねばならない存在。特にギガントマキアに関しては最もタルタロスを破壊しうる敵として警戒されている。最悪殺してでも……とすら言われるほどに。
幸いというべきかギガントマキアは脳無化されているようなので一切躊躇する必要がない事だけは救いかもしれない。
それに───
「……Mt.レディとオールマイトいるからなんとでもなるか」
──今更サイズ差にビビる様なヒーローなんてこの場にはいない。
いたとしてもMt.レディとオールマイトがいるのだから問題ない。燈矢は頭の中からギガントマキアへの興味を切り捨て、未だ抗う解放軍を一人でも多く制圧する為に動き出した。
◇
そのギガントマキアを蹴り飛ばしたヒーロー。常軌を逸した巨体にただ一人食らいつける個性の持ち主Mt.レディ。
ゆっくりと起き上がるギガントマキアを前にした彼女の感想はたった一言。
「うーん……思ったより硬いわね……」
面倒くさそうに、しかし警戒心を滲ませながらそう零した。
森岸から与えられた【魔法】はMt.レディにとっては過剰にすら思えるものだった。
Mt.レディが【巨大化】した時のサイズは約20メートル。同じような個性の持ち主でもない限りまず追いつけないレベルだ。
ギガントマキアという存在についても聞いてはいたけれど、正確なサイズまでは判明していなかった為に『それでも私より下、良くて同じくらいじゃない?』とタカをくくっていたりもした。
で、実際にお出しされたのがこれだ。自分よりもデカいわ色々個性を与えられてるわで森岸の【魔法】様々だった。正直それがなければまともに戦えたかすら怪しい。
「まともに顎に入ったはずなんだけど……まるで堪えてないわね」
「主ゅは……?」
「……どっちにしろ効いたかどうかなんて分かりそうにないか」
そのギガントマキアは顔色ひとつ変えやしない。というより変わらないのかもしれない。彼の目は何者も映してはおらず、とにかくヒーローらしきものを片っ端から潰そうとするだけだ。
こうして相対しているMt.レディでも同じ。おそらくギガントマキアという人間はもうどこにもいないのだろう、いるはずもない主を探して胡乱な言葉を吐くばかり。
同情はしよう。しかしオール・フォー・ワンに仕えたのは彼自身の意志によるものだろう。ならばヒーローとしてやることは一つ。
「アンタが入るようなのがあるかは分からないけど……キッチリ檻の中にいれてやらないと、ね!」
「主ぅぅ……!」
ガバリとマキアが起き上がる。その体躯はMt.レディを7メートル程上回っており、二階建ての一軒家くらいの差があった。
しかしMt.レディは微塵も怯まない。マキアから繰り出された拳を躱しながらカウンターの拳をその顔面へと突き立てた。
返ってくるのは重く硬い感触。そしてバキバキと何かが砕けるような音。筋力と質量による抵抗の上からMt.レディは強引に腕を振り抜いた。
「ああもう硬っっったい!!」
「ぐぅ……!」
鼻っ面を叩かれ歯を砕かれながら仰け反るマキア。最初の【キャニオンカノン】の時点で分かってはいたが、あまりにも打たれ強過ぎる。カウンターがまともに入ってコレでは愚痴のひとつも漏れよう。
対するマキアは自分が殴られるなどと露ほども思っていなかったのか、怒りよりも戸惑いの方が大きい。僅かに残った自我とも言えぬ思考では何故を解決することもできず、もう一度同じように攻撃を繰り返した。
ならばもう一度カウンターを叩き込んでやる。Mt.レディもまた拳を握り締め──
「【DETROIT SMASH】!!」
「わっ!?」
「…………っ!?」
──それよりも早くオールマイトの一撃がマキアの拳と衝突した。
Mt.レディと違いマキアとの体格差は歴然。他人よりも一回り程大きいその身体でさえマキアの拳よりも小さいというのに。
オールマイトが放った一撃は相殺を通り越して一方的にマキアの拳を砕いていた。
超常社会となって尚目を疑うような光景にMt.レディは素っ頓狂な声を上げて驚いている。
「オールマイト!?」
「HAHAHA! そうさ! 私が来た!」
「いや、だって貴方引退したって……ええ……?」
Mt.レディとてオールマイトの事を知らないわけではない。引退とは言ったもののもう戦えないという程ではなく、衰えを感じるようになってしまったからと聞いている。
しかしどうだろう。今しがた目の前で繰り広げられた光景は到底衰えたとは思えないものだった。
圧倒的な体格差をものともしないパワー。先に出されたパンチに割り込むスピード。どれを取っても衰えたようには見えない。
が、Mt.レディはすぐに理解した。オールマイトは今の自分と同じなのだろうと。
「ああ、そういう……あの子と貴方がいたらもうそれでいいのでは?」
「いや流石の私も一人であの巨体を相手するのは少し骨が折れる。少し隙を作ってくれるかい?」
「勿論! オールマイトとのチームアップを嫌がるヒーローなんて──……いや、エンデヴァーはどうかしら……?」
「えっ」
むしろパワーで言えばMt.レディをも上回っている。ならば自分の役割は決まったようなものだろうと、Mt.レディはオールマイトの提案にノータイムで肯定を返した。
ちょっぴり落ち込むオールマイトから目を逸らし、再び立ち上がるギガントマキアを睨む。痛覚の類は働いていないのだろう、見ているだけで痛々しい拳と顔を気にも留めず動いている。
見た目通りケモノのような唸り声を上げてMt.レディを睨んでおり、今にも喉を噛みちぎってやらんとばかりに牙を剥いている。
そしてどちらからともなく動き出す。ズ、と足が僅かに沈みこみ、両者の距離がゴッソリと縮んでいく。
「おおオおオオオッ!!」
「やっかましいのよアンタ!!」
殴り合い──ではなく掴み合い。真っ向からがっぷり四つ組みとなり押し合いが始まる。7メートルの体格差もあってMt.レディが上から押し込まれるような形なりながら、しかし力負けすること無くギシギシと音を立てる。
このまま続けば素の能力差……即ち体力差で押し切られる。それが分かっているからこそMt.レディは何としてでも押し切ろうと抗い、本能でそれを感じ取ったらしいマキアもまた全身全霊でもって押し込もうとする。
足が更に沈み込む。最早肉体より先に足元が保たないのではとさえ思う程に揺れ、ヒーローも異能解放軍も思わず手を止めて行く末を見守り始めた。
押し返せ、負けるな、と声援が飛び交う。特に幹部が次々と討伐された解放軍はヒーロー達よりも必死に声を飛ばすが、拮抗したパワーバランスはそう簡単には動かない。
まるで鍔迫り合いの様相となった巨人同士のぶつかり合い。その勝者はどちらでもなかった。
「SMASH!!」
「っっっっ!!?」
歯を食いしばっていたマキアの顎をオールマイトがかち上げた。バキリ、と歯が砕け力が緩む。
その瞬間、天秤はMt.レディへと傾いた。
「おっ……らあっ!!」
ギガントマキアの腕が跳ね除けられる。押し負けたマキアの身体はグラリと後ろへ倒れていき、再び一際大きな揺れを引き起こした。
しかしまだ倒れてはくれない。無数の異形型個性を注ぎ込まれた事でただでさえ打たれ強かったマキアの身体は止まらない。
まるで不死身の怪物かのように何事もなく立ち上がろうとし──その土手っ腹をMt.レディが踏みつけた。
「【カルデラストンプ】ッ!!」
「ゲオッ……ぐ……!?」
無理やり酸素を吐き出させられるような一撃。痛覚がなかろうと生身の身体である限り逃れようのない苦しみがマキアの身体をほんの僅かな間縛り付けた。
こうなってしまえば体格差など無意味。踏みつけられたままマキアは起き上がれず、身体にかかる重みに耐えることしかできない。
そして──
「これで最後だオール・フォー・ワン……! 貴様との因縁も、これで……っ!!」
とっくに消えるべきだった、しかし己の意地と執念のみで絶やさずにいた残り火の全てをかけたオールマイトが拳を振り上げていた。
「【UNITED STATE OF SMASH】!!」
それはまさにオールマイトの集大成。残る全てを拳に乗せた、長きに渡る因縁を終わらせる為の一撃。
真っ直ぐに、ただ愚直に貫いてきた信念の拳がギガントマキアの顔面へと叩き込まれた。
想像を絶する威力は暴風の如き余波を撒き散らす。土砂を巻き上げ木々をもへし折り、解放軍に悲鳴を上げさせていた。
「う、うわあああああ!?」
「余波でこれかよ!? 何なんだあの化け物は!?」
「ぐ……これは……」
「どうなった!?」
やがて土煙が晴れた先。遮るもののない青空の下。
左腕を掲げ、勝利のスタンディングを飾るオールマイトが立っていた。
オールマイト「────!」
Mt.レディ「えっ? 何?」
オールマイト「────?」
Mt.レディ「ごめんなさい、何て?」
オールマイト(一回ジャンプするか)