Q.マキアどうなんの?
A.脳無化してるのもあって死刑。ちなみにオールマイトのトドメの一撃で瀕死状態となっているので、後に相澤が【巨大化】を【抹消】して縮んだ後に行われた。
Q.オールマイト強すぎない?
A.下手するとこれでも全盛期と同じくらいの可能性があるので元々そんなもん。むしろコレとやり合ってたオール・フォー・ワンの方がヤバい。
Q.で、AFOの策はまだ何かあるんです?
A.ノーコメントで。
歓声と悲鳴の爆発は同時だった。
リ・デストロ、及びギガントマキアの討伐は瞬く間に戦場全域へと伝えられた。
異能解放軍、並びにオール・フォー・ワンの残党にとっての切り札であり、ヒーロー達にとって重要とされていた二人が倒れた事で戦場は大きく揺らいだ。
勢いづくヒーロー達に対し、解放軍は完全に心を折られたのか抵抗すら止める者も少なくなかった。
それでも幹部格の構成員を始めとした一部の者達は思想に殉じたのか、或いはただただ諦めきれなかったのか最後まで抗おうとしていたが……無駄な抵抗と言う他なかった。
「オールマイトさん、それ死人出してませんよね? 大丈夫なんです?」
「ちゃんと加減はしてるさ! それに……」
「それに?」
「……たまにレディ・ナガンに狙撃される人を見ちゃうんだけど、あっちの方がまずくない?」
「あー……まあ、その辺の加減ができない人じゃないと思うんで。はい」
「本当かなあ!? オジサン不安になってきたよ!?」
何せ異能解放軍と違いヒーロー側の戦力は誰一人として欠けてはいない。戦いが始まってからずっと数を減らしていたのは異能解放軍だけだった。
オールマイトとホークスがど真ん中を突っ切れば、遅れて解放軍達がその場に崩れ落ちる。
ならば孤立しているヒーローを、と燈矢を狙った者はため息の後に一秒程度の火炎放射に吹き飛ばされた。
せめて子供には勝てるはず、となけなしの度胸を振り絞って雄英生へ向かえば電気に炎に氷、爆発に超パワーに爆音の衝撃波、トドメに色々強化を受け取った無敵の【黒影】に黙らされる。
リ・デストロとギガントマキアが陥落した事でこの戦いは最早一方的な蹂躙としか言えなくなっていた。
一人、また一人と解放軍は倒れていき……やがて解放軍の中から立ち上がれる者は一人もいなくなっていた。
蛇腔総合病院、及び群訝山荘での決戦は数時間と経たないうちに決着となった。
◇
やあ。他のA組が働いてる中『随分無茶をさせてしまったから』と一人だけ休ませてもらってる森岸だよ。ちょいちょいヒーローの方々からお礼を言われるからあんまり休めてる気しないけどね。
いやあ、こんな大人数に【魔法】を使い続ける経験なんてなかったから流石に疲れた。【デメキエル】作ってなかったら絶対無理だったなコレ。少なくとも【インテ】重ねがけの頭痛で死にかけてただろうし。
頑張ればワンチャンできたかもしれないけど、万が一途中で切れたりしたら危ないからね。【デメキエル】と【インテ】で俺自身の性能かさ増ししてやっとこさって感じだった。
今はもう全部解除してる。唯一オールマイトの分だけは残してるけど、それ以外の人は皆元の身体能力に戻ってる。
やはりというか、強化した身体能力から急に元に戻されたせいでどこか違和感を覚える人が多いようだ。時々「さっきはいけたのに……」とか「俺足遅っせェ!」とか聞こえてくる。
だからだろう。お礼を言いに来るヒーローの中には時折口には出さないけど、物欲しそうな目を向けてくる人がいる。多分無意識なんだろうけど。
「や、お疲れ様。今回のMVP」
「うわでた食らえ【ヘナトス】」
「何で!?」
あ、やべ。反射的にホークスに【ヘナトス】かけてしまった。癖になってんだ、ホークスに【ヘナトス】かけんの。
お詫びに【ヘナトス】を解いてから【ベホマ】を使うと凄く微妙な顔をされた。どうしたホークス。そんな『有難いけど素直に喜べない』みたいな顔して。
「そのまんまだよ……今キツイのは身体より心だから……」
「あー……うちの同級生がご迷惑をお掛けしました」
「それと先輩ね。タルタロスとここの往復で死ぬかと思った」
先輩? って、ナガンさんか。え、あの人タルタロスの方にいたの? 何で? トップ10のつよつよヒーローだよね?
と、尋ねてみたいのだが露骨に嫌そうな顔をされたので止めておいた。ホークスやナガンさんがそういう顔をする時は決まって踏み込まない方がいい事だし。
なら話題を変えてあげよう。聞きたいことはいくらでもあるし。
「じゃあ、この後俺らは何をしたらいいんで?」
「ん? 学生はミッドナイトとかセメントスの引率で帰るだけだよ?」
「え。何もしないんです?」
「当たり前じゃん。学徒動員しといてなんだけど、君らまだ学生だもん。この先は大人の仕事〜ってね」
マジか。てっきりもう一個の病院の方でお手伝いとかあると思ってたんだが。
まあでもホークスの言う通りでもある。俺達に期待されていた役目はあくまでも戦力。戦いが終わったのなら役目は果たしたと言っていいだろう。
特に最前線にいた俺や響香、上鳴に常闇なんかはそうだろうな。後方で避難誘導とかしてたならともかく、あれだけ戦った後で疲れてる子供を駆り出す程ではないか。
なんて考えていると、後ろから頭に手を置かれた。
「よう、見てたぞ。随分と大活躍だったじゃないか」
「ナガンさん」
ああタルタロス帰り(誤解を招く表現)の……どっから撃ってたんだろうかナガンさん。見えた限りだと間違いなく一箇所からじゃ無理な軌道だったんだが。
しかし尋ねる前に乱雑に撫でられたものだから口を開けなかった。ナガンさん俺に会う度に撫でたがるのなんなんだ。もうデカい男子なんですけど。
「あのデカいトカゲみたいになった奴を倒したり、同級生を守ったり……よくやった」
「そっから見てたんです?」
「あの敵達はどうしても目立つからな。嫌でも目が向いた……なんだ後輩。言いたいことがあるならハッキリ言え」
「イイエナニモー」
まあそりゃそうか。異能解放軍のトップと巨大化した怪物なんざ遠くから見てたら尚更目立つわな。ホークスはなんか思うところがあるらしいが聞いても言ってくれなさそうだ。
あ、それで思い出した。今響香どこにいるんだろうか。
ナインとかいう奴を倒した後は別行動になってたけど、そのまま前線で続投されてたはずだし。ホークスかナガンさん知りません?
「ああ、あの子か。イヤホン=ジャックなら他の前線にいた子らと一緒に休憩中だよ。もう少ししたら雄英の先生方が迎えに来るさ。セメントスだけは残るだろうけど」
「セメントス先生いると作業効率全然違いそうですもんね」
「あの人現代社会だと最強クラスの個性だから……」
ついでに聞いた話によると、あの後の響香達も響香達で大暴れしていたらしい。
エンデヴァーの下で更なる鍛錬を積んだ事で進化した【イヤホンジャック】の爆音攻撃を撒き散らし、立ちはだかる解放軍を紙屑のように吹き飛ばしていたり。
【デメキエル】で消耗も反動も無視できるようになった上鳴が、敵軍ど真ん中で無差別放電をぶっぱなしてついでに幹部っぽい奴まで倒したり。
強化されてややハイテンションになった【黒影】に振り回されながらも、その無敵の身体と凄まじいリーチで攻撃ごと薙ぎ払っていた常闇とか。
……それでもう一個思い出した。
「あのー……爆豪達はどうなりました?」
「ああ……彼らは……」
◇
戦いは終わった。後は異能解放軍がアジトにしていた館や地下空間を調査したり、捕縛した解放軍達を投獄したりと後始末くらい。
生命の危険がない、しかし積み重なったタスクの消化にヒーロー達がてんてこ舞いとなっている中、現場の片隅では少しばかり異質な雰囲気が漂っていた。
そこにいるのは最後の大仕事を終えたオールマイトと、前線にいた生徒達の引率を担当していたミッドナイト。そして正座をさせられている爆豪と緑谷と轟の三人。
困った様子のオールマイトに対し、ミッドナイトは能面のような顔で三人を見下ろしていた。
「…………それで、何か言い訳はあるかしら?」
「「「…………」」」
その声は至って平坦。怒鳴りつけるでもなければ日常会話のような感情による抑揚もない、あまりにも淡白な声音。
しかしそれがあまりにも恐ろしい。どれくらいかというとあの爆豪が冷や汗ダラッダラで何も言えなくなるくらいキンッキンに冷えきった空気になるくらい。
対してオールマイトは言葉を選んでいる真っ最中。元々ヒーロー業以外はトコトンポンコツな脳筋。何と言ったらいいのか分からない状況を前にオールマイト.exeは応答停止寸前まできている。
このまま黙っていてもただただ無駄な時間が流れるだけ。そう思ったミッドナイトはチラと緑谷に視線を向けるとゆっくり口を開いた。
「なら一人ずつ聞こうかしら。緑谷君?」
「はっ、はい!? そ、その……前線に行ったかっちゃんを連れ戻そうと思、いまして……」
「ふうん」
怖い。怒るなら一思いに怒って欲しい。その「ふうん」が一番怖い。この後何をされるんだと緑谷の恐怖はバイブレーションへと化けた。超音波とか出そうだね。
ミッドナイトは何を言うでもなく視線を轟へと移す。色々と鈍い部分がある轟だが、流石にこの状況で何も分からない程ではない。ビクリと大きく肩を跳ねさせた後、恐る恐る口を開いた。
「お、俺も似たような感じで……爆豪を連れ戻しに行った緑谷を止めようと思ったら……やべぇ敵がいて……そのまま、戦闘に……」
「ふうん」
轟は泣きそうになった。自分の両親とは別の意味で恐ろしい大人の圧力を前に幼い少年のように泣きたくなった。
これがエンデヴァーであれば反抗の言葉の一つくらいは絞り出せたかもしれないが、相手は雄英高校の先生。反骨精神が顔を出せるはずもなく、膝の上においた拳をキュッと握りしめるくらいしかできなかった。
そして最後。一番の問題児爆豪へと視線が動いた。
「……森岸とか耳郎が最前線にいてズリィと思って……それで」
「それで?」
気温が下がった気がした。轟個性使った? 使ってない? そっかあ。
ミッドナイトの目はあまりにも冷たい。なんなら轟の個性よりも外典の氷よりも冷たい。絶対零度ってこういう事を言うんだ、って感じの冷たさ。
なんなら隣にいるオールマイトもちょっと怯えてる。何故かグラントリノや七代目継承者の顔が頭を過ぎった。怖い。
「……お、俺だって戦えんのにって……」
「…………ふうん」
哀れ爆豪。同級生を止めようとした、という理由が存在する緑谷と轟に比べ、爆豪の独断専行は言い訳のしようもない大やらかし。心做しかミッドナイトの声音が更に冷たくなった。
一応理屈らしい理屈をつけるなら、爆豪とて焦っていたりする。これまで見下していた幼馴染が【ワン・フォー・オール】を半分まで引き出せるようになったり、インターンで森岸や耳郎に遅れをとったりと、自尊心の塊であるが故に黙っていられなかった部分はある。
しかしそれはそれ、これはこれ。トッププロ全投入の大規模な作戦でやらかしていいことでは無い。
「……雄英に帰ったらちゃんと相澤君に言っておくから、覚悟しておきなさい?」
「「「はい…………」」」
残念ながら今はそれどころではない。諸々の後始末で忙しく、病院側もやる事が山積みとなっている。
処分は雄英に着いてから下す。そう告げられた三人の顔はまさに刑の執行を待つ罪人のような顔をしていたとか。
爆豪……雄英に戻るまでの間『私は勝手に最前線に出た大馬鹿者です』と書かれた札を首から提げさせられていた。その後一度除籍(という名の謹慎)処分を下された。
緑谷……雄英に戻るまでの間『私は合宿の時と同じことをやらかした大馬鹿者です』と書かれた札を首から提げさせられていた。その後普通に謹慎処分となった。
轟……雄英に着いた後謹慎処分となった。
切島「何をしてんの? 本当に何をしてんの?」
上鳴「馬鹿だろお前ら……」
爆豪「」
飯田「流石にどうかと思う」
麗日「デクくんそれは……ちょっと……」
緑谷「ゔっ」
エンデヴァー「……焦凍」
燈矢「後でお母さん達にも言っとくからな」
轟「……ごめんなさい」