魔法って言うならもっとこう……あるだろう!?   作:南亭骨帯

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 Q.これOFA完遂した事になりそう?
 A.解決したなら完遂した判定でいいんじゃないかな。中の人達は微妙な顔な模様。

 Q.爆豪の除籍で何で緑谷が顔を青くしてたの?
 A.幼馴染が見たことないくらい顔を青ざめさせてたので自暴自棄になるんじゃないかとちょっと心配してた。半分くらいは厄介ファン的な感情。

 Q.で、爆豪留年になるの?
 A.アレと同級生にされる新入生が可哀想なので留年にはならない。その代わり事ある毎にネタにされる。






129.懺悔のお時間

 

 

 

 相澤消太は教師である。

 

 イレイザーヘッドという名でヒーロー活動を行ったりもしているけれど、どちらが本業かと問われると迷いなく教師と即答するくらいには教師である。

 

 先日の蛇腔病院では『ハイエンド脳無に対する切り札』的な扱いをされていたけれども、教え子のやらかしに頭を抱えたり頭を下げたりするくらいには教師である。

 

 そんなやんちゃ(オブラート十枚重ね)な生徒達を持ってから一年が経ちそうになっている今、ちょっとしたやらかし程度であれば顔色ひとつ変えずに対処できるかもしれない……なんて考えたのが甘かった。

 

 

「…………すまん、もう一度言ってくれるか」

「はい……」

 

 

 彼の目の前にいるのは青を通り越して真っ白な顔で震えている教え子。いつもキザな態度を取っているが級友からは雑に扱われ、それでも孤立することなく仲良くやっていたはずの男子生徒。

 

 

 

「僕は……オール・フォー・ワンから個性を貰ったんです……!」

「…………流石に俺だけでは判断しかねる。少し待ってろ」

 

 

 声も身体も震えながら、涙を流し懺悔する青山優雅に対し相澤は頭を抱えた。もう最近ずっと抱えてる気がする。

 

 

 

 青山優雅。個性【ネビルレーザー】はヘソから光線を放つというシンプルな能力。入学当初からしばらくの間は使い過ぎるとお腹を壊すというデメリットを持っていた。

 

 しかし強化合宿以降……というか森岸の【魔法】を受けながら訓練を続けた結果、デメリットを克服。今の彼はお腹を壊すことはなく、限界を超えたとしても少し腹筋が筋肉痛を起こすくらいになっている。

 

 そんな彼の個性はオール・フォー・ワンから受け取ったものだと言う。それは一体どういう事なのか。

 

 急遽集められた教師や校長の前で青山はもう一度最初から、己の罪をポツポツと吐露した。

 

 

「僕は……"無個性"だったんです……」

「……!」

「無個性差別か……」

 

 

 彼は裕福な家庭の元で生まれ育った。食べるものにも着るものにも困らなかったけれど……唯一個性だけには恵まれなかった。

 

 子供とは良くも悪くも無邪気。大人であれば踏み越えられない一歩目をちょっとした感情一つで容易く踏み越えられてしまう。

 

 個性を持たない青山は虐められた。富裕層の家系だったが為に、尚更"無個性"という欠点(・・)に目をつけられてしまった。

 

 

「……それで個性を貰って、脅されたのね」

「っ…………」

 

 

 頷きたいけれど、頷けない。ここで被害者面ができるならわざわざ自分から話したりはしない。

 

 最初はUSJ……否、雄英に入るところからだった。

 

 オールマイトが教師になるという話を耳にしたオール・フォー・ワンからの指示で雄英を受験した。

 

 敵連合を送り込む為にクラスが孤立するタイミングを、USJに向かうタイミングを問われた。

 

 再び敵連合を送り込む為、合宿先がどこなのかを問われた。

 

 そうして神野でオール・フォー・ワンは敗れた。敵連合も解散し、自分達は自由になれたんだと……そう勘違いしてしまった。

 

 

「日が経つに連れて……罪悪感に押し潰されそうになって……もう……黙っていられなかったんです……」

「…………」

「……お前の親は何と?」

「…………」

 

 

 彼の両親は今度こそ自由になれたと喜んでいた。彼らにとって最も大切なのは息子の幸福だった。

 

 そして同時に、オール・フォー・ワンを何よりも恐れた。

 

 人間とは、大義名分ができてしまえば行動できてしまえる生き物。自分達の命が危なくて、我が子の幸福の為という理由を得てしまったが故にオール・フォー・ワンの命令を聞いてしまった。

 

 ではその大義名分が、オール・フォー・ワンによる命の危険が無くなってしまえばどうなるか。

 

 

「『優雅は何も悪くない』と言われました……でも、それでいいはずがない……!」

「……そうか」

 

 

 答えは簡単。我が子の幸福の為に罪を隠そうとする。

 

 だって悪いのはオール・フォー・ワンだから、息子は何も知らなかったんだから……と、己を正当化させてしまう。それが当然の反応だろう。

 

 だが、ヒーローを目指す子供がそれを黙って受け入れられるはずもなかった。

 

 例えヒーローになれなくなっても、犯罪者と言われてしまっても。何も知らぬ顔でこれ以上友人と笑いあっていられる程、青山優雅は強くなかった。

 

 

「僕のせいで……僕のせいで森岸君の【魔法】が複製されて……! 皆を危ない目にあわせたんです……! 僕は───!」

「青山」

 

 

 クズの敵だ。そう口にしようとして、相澤がそれを止めた。

 

 溢れる涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった彼と目を合わせ、ゆっくりと口を開いた。

 

 

「……よく、言ってくれた」

「え……」

「それから、気づいてやれなくて悪かった」

 

 

 青山は呆然とした顔で、何を言われたのかも分からないように、信じられないといった様子で相澤を見つめていた。

 

 だってそうだろう。自分の為に同級生の生命すら売り飛ばすような真似をしたのだ。これが敵でなくてなんだと言うのか。もし敵でないとしても、そんな事をした自分がヒーローになれるはずがない。

 

 揺れる目を見つめながら、もう一度相澤は口を開く。

 

 

「……俺はお前を除籍するつもりはない」

「! な……どうして……?」

「A組担任として……ちゃんと見てやらなきゃならない」

 

 

 黙っていようと思えば、きっと誰にも気づかれぬまま墓まで持っていけた。事実、こうして青山自ら話しに来るまでプレゼントマイクが懸念していた内通者の存在をすっかり忘れていた。

 

 それでも彼は自ら己の過ちを語った。それだけでも相澤にとっては信頼できる。

 

 それに──……

 

 

「このまま雄英を去って、罪に苛まれたまま、うっすら死んでいくことは許さない」

「っ……」

「俺が担任で、お前が生徒である限り……この先一生負い目を抱える生き方なんて、先生(おれ)は生徒に教えない」

 

 

 彼は自分の生徒なのだから。相澤はそう断言した。

 

 

「……とは言いましたが、どうなります?」

「えっ」

「ちょっと相澤君……最後までちゃんとしてあげなさいよ」

 

 

 が、それはそれ、これはこれ。情状酌量の余地しかないけれど、オール・フォー・ワンの内通者という罪はしらばっくれるには流石に重すぎる。

 

 なるべく手を尽くすつもりではいるが、実際どうなるのか。相澤は先程から黙っていた根津校長へと問いかけた。

 

 

「……一番簡単な方法は『何も無かったことにする』なのさ。内通者なんていなかった、青山優雅は普通のヒーロー科生徒だった、とすればいい」

「それは……」

「それじゃ青山君自身が納得できない。そうだろう?」

「……はい」

 

 

 波風を立てない方法は単純だ。この場にいる全員が口を噤めばそれでいい。そもそも生徒達は内通者の存在など知り得ないのだから。

 

 しかしそれでは何も変わらない。青山が勇気を振り絞って懺悔をしてくれた事が全て無駄になる。

 

 何より当の本人が裁かれたがっている。そうなるとこの手法は取れない。ならば。

 

 

「君の口から、自分の言葉で友人に話すんだ。たとえ嫌われようとも、拒まれようとも……それ以外の方法はない」

「っ……はいっ……」

 

 

 自分の罪を自分で赦す事は難しい。だからこそ、大人がその背中を押してやらなければならない。例えどのような結果に終わろうとも、何もせずにいるよりはずっとマシなのだから。

 

 未だ怯えが残る青山をひとまず残し、根津達は部屋を後にした。そして──

 

 

 

「ちょっと警察と公安委員会と話つけてくるね」

「校長?」

「大丈夫! ありとあらゆる手を尽くして絶対に青山君を守ってみせるのさ!」

「校長??」

「何だったら権力と金にものを言わせよう! こっちにはオールマイトもいるし! 最悪力ずくになったら勝つのはこっちなのさ!」

「誰か森岸連れてこい! 校長のお目目がグルグル巻きになってる!」

 

 

 

 ──【ハイスペック】にも限界はあったらしい。

 

 根津校長は積み重なるタスクと責任の前にお目目をグルグル巻きにしてとんでもない事を口走っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 ……という話があったらしく、現在俺達の前では青山が相澤先生の隣でブルブルと震えながら全てを語った。

 

 いや、あの……何で校長の件まで話したんですか相澤先生。青山のこと真面目に考えたいのに根津校長の方が心配になるんですけど。何する気だあの人。

 

 

 それはともかくとして。

 

 青山がオール・フォー・ワンから個性を貰ってた、か。なるほど、あの個性使い過ぎの反動は身体に合わない個性を与えられていたからだったのか。

 

 何か一人だけ反動の方向性が違うなとは思ってたけども。外付け個性だったからと言われれば納得だ。

 

 

「……テメェ()元無個性だとは……世の中狭ぇな」

「……!」

 

 

 爆豪がポツリと零した。その言い方だとまるで()無個性が近くにいたみたいなんだが……まさかお前。

 

 と思ったら爆豪は首を緩く横に振った。まあそうか。少なくとも爆豪が青山みたいに個性の反動で苦しんでいる所なんて見たことないし。強いて言えば無理やり出力を上げた時に手のひらを痛めてるくらいか?

 

 …………いや待てよ? 個性の反動で苦しんでたっていうと……緑谷もそれに当てはまるか?

 

 いや違うか? アイツの場合は反動もそうだけど、それ以上に個性の制御が覚束ないって感じだったはず。それこそ個性を発現したばかりの子供のように(・・・・・・・・・・・・・・・・・)──あ。

 

 爆豪から視線を緑谷に移してみる。すると緑谷もこちらを見ていたらしく視線がパチリとぶつかり合い、口を真一文字に結んだまま小さく頷いていた。

 

 

「……僕も、皆に言わなきゃいけない事があるんだ」

「!」

 

 

 それから緑谷も同じように、懺悔でもするように秘密を語り出した。

 

 

 緑谷も元無個性の人間であり、今彼が持っている個性は他人から与えられた個性なのだと。

 

 しかしそれはオール・フォー・ワンからではなく、対照的な存在……オールマイトから、与えられたのではなく受け継いだ力だと、そう語った。

 

 

「……それって俺達が聞いていい話なの?」

「オールマイトと話をして、もう話しても問題ないだろうって言ってもらえたよ」

 

 

 その個性の名は【ワン・フォー・オール】……緑谷は九代目にあたるらしく、人から人へと託されてきたオール・フォー・ワンに対抗する為の力だったそうだ。

 

 で、その対抗する存在だったオール・フォー・ワンが完全に敗れたからもう話してもよくなった、と。それまではどこで誰が聞き耳を立てているか分からないから黙っているしかなかったのか。

 

 

「まあウチはうっかり聞いちゃったんだけど……」

「響香さん???」

「話す場所考えろやマジで……」

 

 

 と思ったらダダ漏れしてんじゃねえか。え、B組との対抗戦の時? それ下手すると宍戸とかにも聞かれてた可能性あったのでは? 何してんの緑谷とオールマイト。

 

 

 少し話が逸れたが、緑谷が言いたいのはそうじゃない。

 

 

「僕だって皆に隠し事をしていた……オール・フォー・ワンが何としても欲しがっていたという個性を持っていることを、隠していたんだ」

「っ、でもそれは……僕とは……」

「皆を危険に晒していたという意味じゃ同じだ。神野のオール・フォー・ワンが僕を狙って雄英に来ていた可能性だってあったんだから」

 

 

 残党と本人への尋問で判明した事だが、オール・フォー・ワンは【ワン・フォー・オール】をずっと求めていたそうだ。

 

 それが何故なのかまでは知らされていないけれど、その【ワン・フォー・オール】が緑谷にあったということは……緑谷の言い分はそういう事だ。

 

 青山はオール・フォー・ワンの指示に従う事で皆の生命を危険に晒し、緑谷は【ワン・フォー・オール】を持っていたことでオール・フォー・ワンが来る可能性を作り出していた、と。そう言いたいのだろう。

 

 

「……僕に青山君を責める権利はないよ。むしろ、僕だって責められるべきだ」

「違う! これは僕が───!」

「それだと俺もか?」

「……森岸君?」

 

 

 いやだって、そうならね? アイツら俺の【魔法】も研究してたし。なんなら腕持ってかれて脳無や他の敵に移植してたっぽいし。

 

 流石に【ワン・フォー・オール】程じゃないけど、オール・フォー・ワンが来る可能性を作ってたっていうなら俺も同罪だわな。

 

 俺の言いたいことが伝わったのか、緑谷は顔を青ざめさせて慌てて訂正しようとした。

 

 

「あ、いや違っ……そういう意味じゃ……!」

「分かってるって。責めるつもりで言ってないし」

 

 

 別に俺もそんな風には思ってない。というか青山に関しては仕方ないし、緑谷についても責める気なんて微塵もない。

 

 これは突き詰めると『やっぱオール・フォー・ワンってクソでは?』で終わる話だと思ってる。だってそうするように脅したのもアイツだし、緑谷の【ワン・フォー・オール】を狙ってたのもアイツだし。

 

 

「それに合宿での唯一の被害者(・・・・・・)が気にしてないんだ、それでよくないか?」

「……お前なあ」

 

 

 あと、言っていいのか凄く悩んだけど、敵連合とオール・フォー・ワンが俺達に与えた損害って言うほど大きくないんだよな。

 

 USJでは相澤先生とオールマイトが全部蹴散らしてたし、合宿先では俺が皆の負傷を治してたから俺の腕が持っていかれた以外の負傷者はいなかったし。

 

 まあ精神的なダメージについては何も言えないが……少なくとも公的な記録に残っている被害者明確な被害者は俺一人だ。

 

 その俺が許すって言ったらどうにかならないだろうか。皆が嫌だってんならそうもいかないだろうけど……

 

 

「……お前達もそれでいいんだな?」

 

 

 ヒーロー科に来るような奴がここで頷かないわけがない。誰一人青山を拒絶するものはおらず、裏切りを許していた。

 

 

 

 

 

「で、刑事罰とかは大丈夫なんです?」

「……根津校長がカートゥーンでしか聞かないような笑い声を上げてたから大丈夫だ。多分」

 

 

 それ根津校長がマズいヤツでは?

 

 

 






根津「お話しようよ☆」
警察「ヒエッ」
公安「ヒエッ」
根津「(これ)か?権力(これ)か?力ずく(こっちの方)がいいかな?」
警察「」
公安「」

相澤「森岸、後で校長に【ベホマ】を頼む」
森岸「……念の為【キアリー】とか【ザメハ】とかも使っておきますね」



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